BLOG

審査中の危険物許可申請は行政庁が変わったらどうなるのか|規則第七十一条が定める十四日以内の事務引継を解説

行政庁が変わったときの事務引継のルールを解説する記事のアイキャッチ画像

消防本部の設置や市町村の合併があると、危険物施設の許可権者である行政庁が変わることがあります。
すでに出した許可や届出の効力がそのまま引き継がれることは、以前の記事で確認しました。
では、ちょうど審査中の申請書や、まだ手を付けていない案件はどう扱われるのでしょうか。
この記事では行政庁が変わるときの事務の引継ぎのルールを整理します

消防本部が統合されると、うちの施設の許可の窓口も変わるらしいんです。

行政庁が変わっても、それまでの許可や届出の効力自体はみなし規定で維持されます。
ただし審査中の案件をどう引き継ぐかは、別の条文が定めています。

ちょうど申請中のものがあるので、そこが気になります。

危険物の規制に関する規則第七十一条を確認していきましょう。

この記事の結論
  • 行政庁が変わっても、それまでの許可や届出の効力自体は維持されます
  • 規則第七十一条第一項は、変更前の行政庁変更の日から十四日以内の事務引継ぎを義務付けています
  • 引継ぎでは書類及び帳簿を調整し、未処理の案件は処理の順序・方法・意見を記載します
  • 十四日という期限はあくまで行政庁間の内部手続きで、審査そのものの完了を保証するものではありません
  • 審査中の案件がある施設は、変更後の行政庁に進捗を確認するのが確実です

行政庁の変更から十四日以内の事務引継までの流れを示す図解

行政庁が変わっても許可はなぜそのまま引き継がれるのか

二つの市役所のような建物の間を書類フォルダが渡されていくイメージ
消防本部や消防署の設置・廃止、市町村の合併や境界変更があると、危険物施設の許可権者である行政庁が変わることがあります。
この場面のルールは、大きく二つの条文に分かれています。
  • 消防法第十六条の七 行政庁が変わる場面そのものと、特例を政令に委任することを定める
  • 危険物の規制に関する政令第四十一条の二 変更前の行政庁がした許可や受理した届出を、変更後の行政庁のものとみなす
この二つの条文で、すでに成立した許可や届出の効力は途切れません
しかし、この二条文はどちらも「終わった手続き」の扱いを定めるもので、審査中や未着手の案件を誰がどう引き継ぐかまでは書いていません。
その引継ぎの中身を定めているのが、規則第七十一条です。

効力が維持されるのは分かりましたが、審査中の書類は誰が持っているんでしょうか。

そこに期限のルールがあります。
次で確認しましょう。

事務の引継ぎには十四日という期限があるのか

日付に丸のついたカレンダーとリボン付きの書類フォルダが並ぶイメージ
規則第七十一条は、行政庁が変わったときに何をいつまでにするかを定めています。
まず確認すべきは、引継ぎそのものの期限です。
危険物の規制に関する規則第七十一条第一項 法第十六条の七の規定による当該行政庁に変更があつた場合においては、変更前の行政庁は、変更の日から十四日以内にその担任する事務を変更後の行政庁に引き継がなければならない。
引継ぎの期限は、行政庁の変更があった日から十四日以内と決められています
義務を負うのは変更前の行政庁で、変更後の行政庁ではありません。
引き継がれる対象は「その担任する事務」という広い書き方で、特定の危険物施設だけに限定されていません。
つまり、この十四日は施設側が申請するための期限ではなく、行政庁同士が内部で処理を終わらせるための期限です。

施設側がなにか十四日以内に出さないといけないわけではないんですね。

はい、あくまで行政庁側の期限です。
次は引継ぎの中身を見てみましょう。

引継ぎでは書類のほかになにを申し送るのか

書類フォルダと台帳が二つの山に整理され札が添えられているイメージ
十四日という期限だけでなく、規則第七十一条は引継ぎの中身も具体的に定めています。
単に書類を渡すだけでは足りません。
危険物の規制に関する規則第七十一条第二項 前項の規定による事務引継の場合においては、変更前の行政庁は、書類及び帳簿を調整し、処分未了若しくは未着手の事項又は将来企画すべき事項については、その処理の順序及び方法並びにこれに対する意見を記載しなければならない。
引継ぎは「書類を渡す」だけでなく「申し送りを書く」ところまでが義務です
変更前の行政庁は、まず書類及び帳簿を整理します。
そのうえで、処分未了・未着手・将来企画すべき事項については、どの順番でどう処理するかという方針と、それに対する意見まで書き残さなければなりません。
審査中の申請書は、まさにこの「処分未了」に当たる典型例です。

意見まで書いて渡すなら、新しい窓口でもゼロから審査し直しにはならなさそうですね。

条文上はそう読めますが、注意点もあります。
次で確認しましょう。

十四日を過ぎれば審査は自動的に終わるのか

シャッターの下りた窓口の前で困る人と隣の開いた窓口を並べたイメージ
十四日という具体的な数字があると、その日を境に何かが確定するように感じるかもしれません。
しかし、条文が定めているのはあくまで行政庁同士の引継ぎの期限です。
危険物の規制に関する政令第四十一条の二(再掲) 法第十六条の七に規定する行政庁に変更があつた場合には、当該変更があつた日前に、当該変更に係る変更前の行政庁にされている法第三章の規定による許可の申請、届出その他の手続又は変更前行政庁がした同章の規定による許可その他の処分は、当該変更に係る変更後の行政庁にされている同章の規定による許可の申請、届出その他の手続又は変更後行政庁がした同章の規定による許可その他の処分とみなす。
みなし規定が扱うのは「変更前にされていた手続き」で、審査の進み具合そのものではありません
政令第四十一条の二は、申請や届出の宛先が変更後の行政庁に切り替わることを定めているだけで、十四日以内に審査が終わるとは書いていません。
規則第七十一条の十四日も、変更前の行政庁が事務を引き継ぐ期限であって、変更後の行政庁が審査を完了する期限ではありません。
引継ぎが済んだかどうかは施設側からは見えにくいため、待っているだけでは進捗が分からないことがあります。

十四日経ったら安心してよいわけではないんですね。

はい、目安の一つとして使うのが安全です。
最後に実務での動き方を整理します。

審査中に行政庁が変わったらどう動けばよいのか

作業服の担当者が窓口で書類を手渡しているイメージ
条文で定められた引継ぎの中身は、そのまま施設側の確認手順に置き換えられます。
自分の施設に置き換えて、次の順番で確認するとよいでしょう。
危険物の規制に関する規則第七十一条第一項(再掲) 法第十六条の七の規定による当該行政庁に変更があつた場合においては、変更前の行政庁は、変更の日から十四日以内にその担任する事務を変更後の行政庁に引き継がなければならない。
変更の日から十四日を目安に、進捗を自分から確認する姿勢が確実です
まず、施設のある地域で消防本部の統合や市町村の合併が予定されていないかを確認します。
審査中の申請や、まだ提出前の届出がある場合は、変更日と十四日後の日付をメモしておきます。
その日を過ぎても連絡が無ければ、変更後の行政庁の窓口に、案件の引継ぎ状況を問い合わせて確認します。

うちの申請がいつ出したものか、変更日と一緒にメモしておきます。

判断に迷う場合は、いつでもご相談ください。

よくある質問

Q行政庁が変わると、いま持っている許可を取り直す必要がありますか?
Aいいえ、必要ありません。政令第四十一条の二のみなし規定により、変更前の行政庁がした許可は変更後の行政庁がしたものとして扱われ、効力は続きます。
Q十四日以内の事務引継ぎは、施設側にも通知されますか?
A規則第七十一条は行政庁同士の内部手続きを定めるもので、施設側への個別通知までは条文に書かれていません。審査中の案件がある場合は、変更後の行政庁へ自分から確認するほうが確実です。
Q十四日を過ぎても引継ぎが終わっていない場合、申請は無効になりますか?
A条文に無効にするという規定はありません。十四日はあくまで行政庁間の内部の期限で、これを過ぎたことだけを理由に申請の効力が失われるわけではありません。
Q引継がれる書類には具体的にどんなものが含まれますか?
A条文は「書類及び帳簿」とだけ定めており、個別の書類名までは列挙していません。あわせて、処分未了・未着手の事項については処理の順序・方法・意見も記載する必要があります。

まとめ

行政庁が変わっても、それまでの許可や届出の効力自体は維持されます
効力の維持を定めるのは政令第四十一条の二のみなし規定です
規則第七十一条第一項は、変更前の行政庁に十四日以内の事務引継ぎを義務付けています
同条第二項は書類及び帳簿の調整と、未処理事項の処理順序・方法・意見の記載を求めます
十四日という期限は行政庁間の内部手続きで、審査の完了を保証するものではありません
審査中の案件は「処分未了」として引き継がれますが、進み具合は施設側から見えにくいことがあります
変更日から十四日を目安に、変更後の行政庁へ自分から進捗を確認するのが確実です

うちの地域の消防本部の予定、一度確認してみます

ぜひ確認してみてください。
㈱防災屋でもご相談を承っております

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法(昭和二十三年法律第百八十六号)第十六条の七・第十一条第一項
  • 危険物の規制に関する政令(昭和三十四年政令第三百六号)第四十一条の二
  • 危険物の規制に関する規則(昭和三十四年総理府令第五十五号)第七十一条

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

BLOGカテゴリ
最新の記事
防火管理者代行サービス
無料1分概算見積
行政庁が変わったときの事務引継のルールを解説する記事のアイキャッチ画像
消防本部の設置や市町村の合併があると、危険物施設の許可権者である行政庁が変わることがあります。 すでに出した許可や届出の効力がそのまま引き継がれることは、以前の記事で確認しました。 では、ちょうど審査中の申請書や、まだ手...