屋上まで自分で運転して停める立体駐車場を見たことはありませんか。
外壁が無く、金網のような床がむき出しになった鉄骨造りの車庫です。
建築基準法が想定していなかった構造のため、建設大臣の認定とあわせて消防用設備の扱いが通達で示されました。
条件を満たせば消防用設備の一部を簡素なものに置き換えられるという特例です。
うちのテナントビルには、屋上まで自走できる立体駐車場が併設されています。
普通のビルと同じだけの消防設備が要るのでしょうか。
外壁の無い開放的な構造なら話が変わります。
条件を満たせば消火設備や感知器を簡素にできる特例があります。
外壁が無いというだけで、そんなに違うんですか。
はい。
駐車場のどこがどう開いているかを、通達の中身で順に見ていきましょう。
- 外壁の無い1層2段の自走式自動車車庫は、令第32条の特例により消火設備を移動式にできます
- 対象になるのは1階500平方メートル以上・2階200平方メートル以上・屋上部分300平方メートル以上の駐車部分です
- 通報装置等を設置すれば、自動火災報知設備そのものを免除できる場合があります
- 開放性の基準は消火設備と自動火災報知設備で必要な割合が異なります
- 屋根付きのものも同じ取扱いが適用されます
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目次
外壁のない自走式駐車場はなぜ生まれたのか

建築基準法が最初から想定していた造り方ではなかったため、扱いを整理する通達が必要になりました。
外壁を設けず、鉄骨とエキスパンドメタルなどの鋼板製床板で組んだ開放性の高いプレハブ構造の駐車場が対象です。
建築基準法上は建設大臣の認定という特別な手続きを経て建てられるため、消防用設備の側でも別枠の取扱いを用意しておく必要がありました。
つまりこの通達は、新しい建て方が先に認められたあとを追いかけて、消防用設備の取扱いを後から整合させたものだということです。
建物の建て方の話が、そのまま消防設備の話につながるとは思いませんでした。
建築の認定と消防の取扱いはセットで確認する必要があります。
どんな駐車場がこの取扱いの対象になるのか

似た通達に2層3段の自走式自動車車庫を扱うものもありますが、階数と適用範囲が異なります。
どんな立体駐車場でも当てはまるわけではなく、外壁を設けない鋼板製床板の構造で建築基準法上の認定を受けたものに限られます。
この特例は令第32条の一般的な特例基準を、この駐車場の形式向けに具体的な数値で書き下ろしたものです。
自分の建物の駐車場が該当するかは、まず建築確認台帳や図面に建設大臣の認定の記載があるかを確認してください。
うちの駐車場が認定を受けているかどうか、正直分かりません。
竣工時の建築確認書類に手がかりが残っています。
見当たらなければ、設計事務所に確認してみてください。
消防設備はどこまで緩和されるのか

まず消火設備の基準から見ていきます。
消火設備は面積基準を満たしても、壁面や天井の開放性次第で固定設置ではなく移動式で済ませられます。
自動火災報知設備はさらに踏み込み、開放性に加えて通報装置か電話を設置することを条件に、設置そのものを免除できます。
どちらも「不要になる」のではなく、開放性という代わりの安全性で置き換えるという考え方です。
つまり、開けっぴろげな造りだから設備が減らせるということですね。
そのとおりです。
ただし開放性の割合は設備ごとに違うので、次で詳しく見ましょう。
実務で見落としやすいのはどこか

条文と通達をあわせて読むと、見落としの起きやすい場所が見えてきます。
消火設備の開放性は天井の開口部が床面積の15%以上、自動火災報知設備の開放性は20%以上と、割合が違います。
どちらも同じ「開放性」という言葉でまとめて考えると、必要な割合を取り違えかねません。
もう一つは屋根付きの駐車場です。屋根が付いていても同じ取扱いがそのまま適用されますので、屋根の有無だけで対象外と判断しないでください。
古い建物では、平成8年の改正前の基準がそのまま生きている場合もあります。図面がどの時点の基準に基づくかも確認しておきたいところです。
屋根が付いているから対象外だと、勝手に思い込んでいました。
そこはよくある誤解です。
屋根の有無ではなく壁面と天井の開放性で判断してください。
明日からなにを確認すればよいか

確認する順番を、通達の要件に沿って並べておきます。
まず建築確認書類で建設大臣の認定の有無を確かめ、次に現地で壁面や天井の開放部分が塞がれていないかを見て回ります。
最後に自動火災報知設備を免除している場合は、通報装置や電話が壊れていないか、実際に鳴らして確かめてください。
増築や外壁の後付けで開放部分が塞がれると、特例の前提そのものが崩れてしまいます。
駐車場を改修する予定があるときは、着工前に所轄消防署へ相談しておくと手戻りを防げます。
今度の改修で壁を増やす計画があるので、先に確認しておきます。
その判断は正解です。
認定・開放性・通報装置の3つを、着工前にあわせて確認してください。
よくある質問
まとめ
開放性という見慣れない考え方がよく分かりました。
まずは認定の書類を探してみます。
認定・開放性・通報装置の3つを、次の点検からあわせて確認してみてください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 「1層2段の自走式自動車車庫に係る消防用設備等の設置について」(平成3年5月7日 消防予第84号 消防庁予防課長/改正平成8年10月消防予第217号)
- 消防法施行令第13条(水噴霧消火設備等を設置すべき防火対象物)
- 消防法施行令第21条(自動火災報知設備に関する基準)
- 消防法施行令第32条(特例基準)
- 消防法施行規則第23条(自動火災報知設備の感知器等)
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





