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LPガス充てん所はなぜ消防用の消火栓や火災報知設備が少なくて済むのか|液化石油ガス保安規則との二重規制解消を解説

LPガス充てん所はなぜ消防設備が少なくて済むのかを表すアイキャッチ画像。ガス貯蔵容器を点検する作業員の写真

LPガスの容器に充てんを行う防火対象物には、消防法に基づく消火設備や警報設備の設置が義務づけられています。
一方で、高圧ガス保安法の側でも、液化石油ガス保安規則に基づいて別の消火設備や警報設備の設置が求められていました。
同じ建物に似たような設備を二重に設けることになりかねないため、消防庁は取扱いを整理する通知を出しました。
一定の要件を満たせば、消防法上の消火設備や警報設備の設置を免除できるという特例です

うちで扱っているLPガス充てん所ですが、液化石油ガス保安規則の設備とは別に、消防用の消火栓まで揃える必要があるのでしょうか。

根拠となる法律が違うだけで、設備の中身が重なっていることは消防庁も把握しています

同じような設備を二重に用意しなくてよいということですか。

はい。
通知の中身を順に見ていきましょう。

この記事の結論
  • LPガス充てん所は、液化石油ガス保安規則側の設備で足りていれば消防法上の消火設備・警報設備を免除できます
  • 対象は液石則第2条第1項第20号〜第22号に定める製造設備を持つ充てん所に限られます
  • 免除には主要構造部・仕上げの不燃化や火気管理の徹底など4つの要件をすべて満たす必要があります
  • 免除できるのは屋内消火栓設備等の消火設備と自動火災報知設備等の警報設備です
  • 一般高圧ガス保安規則やコンビナート等保安規則が適用される充てん所にも、同じ考え方が広げられています

LPガス充てん所の消防用設備の特例のしくみを示す図解。液石則で設備義務あり、消防法の基準と重複、施行令32条の特例を適用、四要件を満たせば免除という手順を整理

LPガス充てん所の消防設備はなぜ二重に義務づけられていたのか

LPガス充てん所の建物にガス貯蔵容器とタンクローリーが並び、壁に屋内消火栓設備と自動火災報知設備のベルが並んで設置されている様子を示したイメージ
LPガスの容器への充てんを行う防火対象物には、消防法第17条の規定に基づいて消防用設備等の設置が義務づけられています。
これとは別に、高圧ガス保安法の適用を受ける充てん所には、液化石油ガス保安規則に基づく消火設備・警報設備の設置も義務づけられていました。
「LPガス充てん所に係る消防用設備等の技術上の基準の特例について」(平成10年12月3日 消防予第209号 消防庁予防課長) LPガスの容器(車両に固定した燃料容器を含む。以下同じ。)への充てんを行う防火対象物(以下「充てん所」という。)については、消防法(昭和23年法律第186号。以下「法」という。)第17条の規定に基づき、その規模、構造等に応じて消防用設備等の設置が義務づけられている。一方、高圧ガス保安法(昭和26年法律第204号)の適用を受ける充てん所については、液化石油ガス保安規則(昭和41年通商産業省令第52号。以下「液石則」という。)に従って消火設備、警報設備等の設置が別途義務づけられている
同じ充てん所に、似た設備が二重に義務づけられていたということです
消防法は法第17条の規定で消防用設備等の設置を求め、高圧ガス保安法は液石則で消火設備や警報設備の設置を求めます。
建物としては一つでも、根拠となる法律が違うため、それぞれ別々に設備を揃える必要が生じていました。
このままでは同じような設備を二重に設置することになりかねないため、消防庁が整理のための通知を出しました。

法律が違うだけで、実質的には同じような設備が求められていたんですね。

そのとおりです。
だからこそ整理のための特例が必要になりました。

どんな充てん所が特例の対象になるのか

不燃材料で造られたLPガス充てん所の製造施設とガス貯蔵容器の列を示したイメージ
特例の対象は、すべての充てん所ではなく製造設備の種類が決まっている充てん所に限られます。
まずは自分の施設がどの区分に当てはまるかを確認する必要があります。
(前掲の通知より)1 適用範囲 この特例は、充てん所の製造施設(LPガスの製造設備、貯蔵設備、処理設備等を有する建築物その他の工作物をいう。以下同じ。)のうち、LPガスの製造設備が液石則第2条第1項第21号の第1種製造設備、同項第22号の第2種製造設備及び同項第20号の液化石油ガススタンドであるものに適用する
消防法施行令第32条 この節の規定は、消防用設備等について、消防長又は消防署長が、防火対象物の位置、構造又は設備の状況から判断して、この節の規定による消防用設備等の基準によらなくとも、火災の発生又は延焼のおそれが著しく少なく、かつ、火災等の災害による被害を最小限度に止めることができると認めるときにおいては、適用しない。
対象になるのは液石則で区分が決まっている製造設備だけです
液石則第2条第1項に定める第1種製造設備・第2種製造設備・液化石油ガススタンドのいずれかを持つ充てん所が対象になります。
この特例は令第32条という一般的な特例基準を、LPガス充てん所向けに具体的な要件へ書き下ろしたものです。
自分の施設がどの製造設備の区分に当たるかは、液石則の許可申請書類を確認するとわかります。

うちのLPガススタンドが、この区分に当てはまるのかどうか分かりません。

液石則の許可申請書類に製造設備の区分が書かれています。
見当たらなければ、施設を管轄する自治体に確認してみてください。

特例はどんな設備をどこまで免除するのか

LPガス充てん所の建物に設置された屋内消火栓設備と自動火災報知設備のベルに禁止マークが付き、液化石油ガス保安規則側のガス容器には認める印が付いている様子を示したイメージ
要件を満たすと、消防法上の消火設備と警報設備の両方が免除の対象になります。
どの設備が対象になるのか、通知の記載を見ていきます。
(前掲の通知より)2 特例適用の要件 この特例を適用することのできる充てん所の製造施設の要件は、液石則第6条から第8条までの規定のほか、次のとおりとする。(1)製造施設の主要構造部が不燃材料で造られていること。(2)製造施設の壁及び天井の仕上げが不燃材料又は準不燃材料であること。(3)製造施設において、火気の使用がない等、火気管理が徹底していること。(4)製造施設においては、整理・清掃、不必要な物品の除去、出入りする者の管理等、適正な維持管理が行われていること。3 消防用設備等の技術上の基準の特例 前2に掲げる要件を満たす充てん所の製造施設については、令第32条の規定を適用し、(1)消火設備 令第11条、第12条、第19条及び第20条に規定する屋内消火栓設備、スプリンクラー設備、屋外消火栓設備及び動力消防ポンプ設備にあっては、設置を免除してさしつかえないこと。(2)警報設備 令第21条及び第24条に規定する自動火災報知設備並びに非常警報器具及び非常警報設備にあっては、設置を免除してさしつかえないこと
免除の対象は消火設備と警報設備の2系統です
消火設備は屋内消火栓設備・スプリンクラー設備・屋外消火栓設備・動力消防ポンプ設備、警報設備は自動火災報知設備・非常警報器具・非常警報設備が対象になります。
免除できるのは、あくまで液石則側ですでに同等の設備が備わっているという前提があるからです。
免除を受けるには、主要構造部の不燃化や火気管理の徹底など4つの要件をすべて満たしている必要があります。

つまり、液石則の設備で足りているから、消防用の設備は要らないということですね。

そのとおりです。
ただし4つの要件をすべて満たしていることが前提です。

免除は自動的に認められるわけではない点はどこか

不燃材料で整ったLPガス充てん所の建物には認める印が付き、可燃物が散らかった木造の建物には禁止マークが付いている様子を示したイメージ
4つの要件は、どれか一つでも欠けると免除が成り立たない仕組みになっています。
さらに、この特例は令第32条という一般規定を根拠にしていることにも注意が必要です。
「一般高圧ガス保安規則及びコンビナート等保安規則が適用される充てん所に係る消防用設備等の技術上の基準の特例について」(消防庁予防課長) 高圧ガス保安法の適用を受ける充てん所の製造施設で、一般高圧ガス保安規則及びコンビナート等保安規則に従って消火設備、警報設備等の設置が義務付けられている消防用設備等の取り扱いについても令第32条の規定を適用し、下記により特例を認めて差し支えないこととしたので通知します。
特例の対象は後から広げられていますが、無条件ではありません
最初の通知は液石則が適用される充てん所だけを対象にしていましたが、のちに一般高圧ガス保安規則やコンビナート等保安規則が適用される充てん所にも同じ考え方が広げられました。
ただしどちらの通知も、根拠は消防長又は消防署長が個別に認めるという令第32条の仕組みそのものです。
液石則の設備さえあれば自動的に免除されるわけではなく、要件を満たしているかを所轄消防署が確認したうえで認められます
主要構造部が可燃性の材料であったり、施設内が整理されていなかったりすれば、要件を欠いて免除は認められません。

液石則の設備さえ入れておけば、自動的に免除されると思っていました。

要件を満たしているかどうかは所轄消防署の判断が入ります。
思い込みで済ませないようにしてください。

明日から充てん所の管理者は何を確認すればよいのか

作業員がLPガス充てん所の建物とガス貯蔵容器を確認している様子を示したイメージ
特例が使えるかどうかは、書類と現地の両方を確認しないと判断できません。
通知が挙げる要件に沿って、確認する順番を並べておきます。
(前掲の通知を要件ごとに整理)ⅰ 液石則第2条第1項第20号〜第22号に定める製造設備を持つ充てん所であること ⅱ 主要構造部が不燃材料で、壁及び天井の仕上げが不燃材料又は準不燃材料であること ⅲ 火気の使用がない等、火気管理が徹底していること ⅳ 整理・清掃、不必要な物品の除去等、適正な維持管理が行われていること
確認は書類・構造・管理の3段階に分けられます
まず液石則の許可書類で製造設備の区分を確認し、次に建物の主要構造部や壁・天井の仕上げが不燃材料かどうかを見て回ります。
最後に施設内で火気の使用や物品の放置がないかを点検し、日常の維持管理が徹底されているかを確かめてください。
増築や用途変更で可燃性の資材を持ち込むと、要件そのものが崩れて免除が取り消されかねません
判断に迷うときは、着工前に所轄消防署へ相談しておくと手戻りを防げます。

点検のたびに何を見ればいいのか、リストにしておきたいです。

区分・構造・管理の3つを、次の点検からあわせて確認してみてください。

よくある質問

Q液石則の設備が古くなっていても特例は使えますか?
A回答は、液石則第6条から第8条までの規定を満たしていることが前提です。設備が老朽化して液石則の基準を満たさなくなれば、特例の前提も崩れます。
Q一般高圧ガス保安規則が適用されるスタンドにも使えますか?
A回答は、一般高圧ガス保安規則及びコンビナート等保安規則が適用される充てん所についても、後発の通知により同じ令第32条の特例が認められています。
Q増築で建物の一部を可燃性の資材にしたらどうなりますか?
A回答は、要件の一つに主要構造部や仕上げの不燃化を挙げています。増築で可燃性の資材を使えば要件を欠き、特例が使えなくなるおそれがあります。
Q特例が使えるかどうかは誰が判断しますか?
A回答は、令第32条の規定に基づき所轄の消防長又は消防署長が個別に判断するとしています。液石則の設備があるだけで自動的に決まるものではありません。

まとめ

LPガス充てん所は、液化石油ガス保安規則側の設備で足りていれば消防法上の消火設備・警報設備を免除できます
対象は液石則第2条第1項第20号〜第22号に定める製造設備を持つ充てん所に限られます
免除には主要構造部・仕上げの不燃化、火気管理の徹底など4つの要件をすべて満たす必要があります
免除できる設備は屋内消火栓設備・スプリンクラー設備等の消火設備と自動火災報知設備等の警報設備です
一般高圧ガス保安規則やコンビナート等保安規則が適用される充てん所にも、同じ考え方が広げられています
免除の判断は令第32条に基づき所轄消防長又は消防署長が個別に行います
増築や管理不備で要件を欠くと、免除の前提そのものが崩れます

二重規制の理屈がよく分かりました
まずは液石則の許可書類を探してみます。

区分・構造・管理の3つを、次の点検からあわせて確認してみてください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 「LPガス充てん所に係る消防用設備等の技術上の基準の特例について」(平成10年12月3日 消防予第209号 消防庁予防課長)
  • 「一般高圧ガス保安規則及びコンビナート等保安規則が適用される充てん所に係る消防用設備等の技術上の基準の特例について」(消防庁予防課長)
  • 消防法施行令第11条(屋内消火栓設備に関する基準)
  • 消防法施行令第12条(スプリンクラー設備に関する基準)
  • 消防法施行令第19条(屋外消火栓設備に関する基準)
  • 消防法施行令第20条(動力消防ポンプ設備に関する基準)
  • 消防法施行令第21条(自動火災報知設備に関する基準)
  • 消防法施行令第24条(非常警報器具又は非常警報設備に関する基準)
  • 消防法施行令第32条(特例基準)
  • 液化石油ガス保安規則(昭和41年通商産業省令第52号)第2条・第6条から第8条まで

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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