古い建物は、今の建築基準に合っていなくても、そのままで使い続けられることがあります。
これは「既存不適格」と呼ばれる仕組みで、法律違反ではありません。
ただし、建物の劣化が進むと、行政はこの既存不適格の建物にも関与してきます。
指導・助言から勧告、そして命令へと進む手続きの流れを知っておくことが、管理権原者を守ります
うちの建物、実は今の基準には合っていないところがあるんです。
古いから仕方ないですよね。
既存不適格という扱いで、違反ではありませんよ。
ただ、老朽化が進むと話が変わってきます。
え、違反じゃないのに行政から何か言われるんですか。
はい。損傷や腐食が進むと、指導や勧告、命令の対象になり得ます。
順番に見ていきましょう。
- 既存不適格の建物は、老朽化しても直ちに違反にはなりませんが、劣化が進むと第九条の四により行政の指導・助言の対象になります。
- 指導で改善されない場合、第十条第一項により除却や修繕などの勧告が行われます。
- 正当な理由なく勧告に従わないと、第十条第二項により法的拘束力のある命令に進みます。
- 著しく危険な場合は、第十条第三項により勧告を経ずに命令される場合もあります。
- 命令の前には、意見書の提出や公開の意見聴取を求める機会が用意されています。
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目次
古い建物が今の基準に合っていなくてもなぜそのままでいられるのか

ところが、法律が変わるたびに古い建物をすべて建て替えさせるわけにはいきません。
法律や条例が施行・適用された時点ですでに建っていた建物や、工事中だった建物には、新しい規定は適用されません。
建て替えたり大規模な修繕・模様替をしたりすると、その時点で現行基準への適合が求められますが、それまでは違反ではないまま使い続けられます。
ただし、これは今の基準を満たさなくてよいという話であって、劣化しても放置してよいという意味ではありません。
じゃあ、うちの建物みたいな古いのも、別に問題ないってことですよね。
基準に合っていなくても、それ自体は違反ではありません。
ただ、老朽化が進んだときの話は別に用意されています。
既存不適格の建物が老朽化するとなにが起こるのか

建築基準法は、この劣化に対して行政が関与できる規定を置いています。
対象になるのは、損傷や腐食などの劣化が進み、そのまま放置すれば保安上危険、または衛生上有害になるおそれがある状態です。
特定行政庁とは、建築主事を置く市町村の長、または都道府県知事のことです。
この段階の指導・助言には法的な拘束力はありませんが、応じないまま放置すると次の段階に進みます。
指導ってことは、無視しても罰則はないんですか。
この段階には罰則はありません。
ただ、ここで対応しておくほうが結果的に楽ですよ。
指導で終わらないとどう進むのか

建築基準法第十条が、勧告と命令の二段構えを定めています。
第九条の四の指導・助言よりも一段階深刻な状況です。
勧告に正当な理由なく従わなかった場合、特定行政庁は第十条第二項により命令を出すことができます。
命令には行政上の強制力があり、履行しないと行政代執行の対象にもなり得ます。
勧告と命令って、何が違うんですか。
勧告はまだお願いの段階、命令は法的な義務になります。
従わない理由が無ければ、必ず段階を踏んで進んでいきます。
命令の前に建物側にはどんな機会があるのか

そのため、命じられる側にも手続き上の機会が用意されています。
特定行政庁はまず通知書を交付し、意見書や証拠を提出する機会を与えなければなりません。
通知を受けてから三日以内であれば、意見書の提出に代えて公開の意見聴取を請求することもできます。
緊急の必要がある場合に限り、これらの手続きを経ずに仮の使用禁止・使用制限命令が出されることもありますが、その場合も事後に意見聴取を請求する権利は残ります。
反論するチャンスはちゃんとあるんですね。
はい。ただ、機会を使わずに放置すると、そのまま命令が確定します。
早めの相談が大切です。
命令が出たらどうなるのか

従わない場合の仕組みまで知っておくと、判断の材料になります。
命令を受けた所有者・管理者・占有者は、この標識の設置を拒んだり妨げたりしてはいけません。
それでも措置を履行しない場合は、行政代執行法に基づき、行政が代わりに除却や修繕を行い、費用を所有者側に負担させることもできます。
ここまで進む前に、日頃からの点検と早めの修繕で済ませておくのが、結局いちばん負担が少ない方法です。
うちも、そろそろちゃんと点検してもらったほうがよさそうです。
早めの点検が一番のコストダウンになります。
気になる箇所があれば、いつでもご相談ください。
よくある質問
まとめ
うちの建物、まずは劣化がないか一度ちゃんと見てもらいます!
早めの点検が老朽化への一番の備えです。㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法第三条・第六条・第九条・第九条の四・第十条(e-Gov法令検索)
※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。個別の建物の状況により判断が異なる場合があります。具体的な対応は所轄の特定行政庁または専門家にご確認ください。





