消防法の基準を満たして危険物取扱いの許可や届出を済ませていても、それだけで安心はできません。
建築基準法は、火薬類やガス、石油類といった危険物を貯蔵・処理する建築物について、用途地域ごとに扱ってよい数量の上限を別に定めています。
消防法の許可を取った後になってこの数量制限に気づき、貯蔵量を減らさざるを得なくなるケースもあります。
危険物を貯蔵・処理する建築物は、建築基準法施行令第百三十条の九により用途地域ごとの数量上限を守らなければなりません
消防法の許可はもう取ったので、危険物の保管量はこれ以上気にしなくていいですよね。
実は建築基準法にも別の数量制限があります。
まず条文で仕組みを確認しましょう。
同じ危険物なのに、法律が二つも関係してくるんですか。
はい、消防法と建築基準法は目的が別の法律です。
順番に見ていきましょう。
- 危険物を貯蔵・処理する建築物には、消防法とは別に建築基準法施行令第百三十条の九の数量制限がかかります。
- この制限は準住居地域・商業地域・準工業地域の三つの用途地域だけに適用され、地域ごとに上限の数量が変わります。
- 上限の基準となる数量は第百十六条が定めており、消防法上の危険物は指定数量の十倍が基準になります。
- 消防法の許可や届出を満たしていても、この建築基準法の数量上限は別に確認しなければなりません。
- 超過するおそれがあるときは、貯蔵量を減らすか特定行政庁の窓口へ早めに相談する必要があります。
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目次
危険物を扱う建物は建築基準法でも制限されるのか

消防法の許可や届出をきちんと済ませていても、それで終わりとは限りません。
建物そのものにも、もう一つ別の法律の制限がかかっていることがあります。
建築基準法は、危険物を貯蔵・処理する建築物について、用途地域ごとに扱える数量の上限を政令で定めています。
これは消防法や危険物の規制に関する政令とは別の、建築基準法だけの制限です。
条文が指しているのは建築基準法施行令第百三十条の九で、危険物の種類ごとに数量の表が定められています。
消防法の許可を受けていても、この表の数量を超えていれば建築基準法違反になります。
まずはこの制限がどの建物に、どの地域でかかるのかを確認しましょう。
消防法の許可があれば、それだけで十分だと思っていました。
建築基準法は別の基準で数量の上限を定めています。
次はどの用途地域で制限されるのかを見てみましょう。
どの用途地域でこの数量制限がかかるのか

建築基準法の数量制限は、すべての用途地域に一律にかかるわけではありません。
条文が指定している地域を確認しましょう。
この数量制限がかかるのは、準住居地域・商業地域・準工業地域の三つの用途地域だけです。
第一種低層住居専用地域のような住居系の地域では、そもそも危険物の貯蔵・処理に供する建築物自体が原則として建てられません。
逆に工業地域や工業専用地域では、この表による数量制限の対象にはならず、別の基準で扱われます。
自分の建物がどの用途地域に属しているかは、市区町村の都市計画課や特定行政庁の窓口で確認できます。
用途地域が変われば同じ建物でも扱える数量が変わるため、まずは自分の建物の用途地域を正確に把握することが出発点になります。
うちの建物がどの用途地域にあるかなんて、今まで気にしたことがなかったです。
準住居・商業・準工業の三つの地域だけが対象です。
次は具体的な数量を見てみましょう。
具体的にどれだけの数量まで認められるのか

用途地域ごとに認められる数量には、地域が広くなるほど緩くなる共通の考え方があります。
条文が定める基準となる数量を確認しましょう。
条文の数量は、基準となる数量「A」を地域ごとに何倍・何分の一にするかという形で決まっています。
消防法上の危険物であれば、Aは指定数量の十倍にあたる数量です(第百十六条)。
たとえばガソリンや灯油などの第一石油類から第四石油類は、準住居地域でAの二分の一まで、商業地域でAまで、準工業地域でAの五倍まで認められます。
それ以外の消防法上の危険物は、準住居地域でAの十分の一まで、商業地域でAの五分の一まで、準工業地域でAの二倍までと、より厳しく抑えられています。
地域が広がるほど倍率が緩くなる一方で、地域が狭いほど早く上限に達してしまう点に注意が必要です。
同じ危険物でも、地域によってこんなに数量の余裕が違うんですね。
はい、地域が狭いほど上限も低くなります。
次は見落としやすい落とし穴を見てみましょう。
消防法の基準を満たしていても見落とす落とし穴はどこか

消防法の許可や届出を満たしていることと、建築基準法の数量制限を満たしていることは、まったく別の話です。
実際に見落としやすいポイントを整理します。
消防法の許可や届出は、危険物そのものの取扱い方法や施設の安全性を審査するものです。
一方、建築基準法の数量制限はその建物がある用途地域を基準に上限を決めるもので、審査の視点がまったく異なります。
そのため消防法の許可を受けて事業を始めた後になって、建築基準法の数量制限を超えていることに気づくケースがあります。
ただし危険物の規制に関する政令が定める基準に適合した屋内貯蔵所や販売取扱所であれば、上限が緩和される仕組みもあります。
自分の施設がこの緩和の対象になるかどうかも含めて、消防法と建築基準法の両方を別々に確認する必要があります。
消防法の許可さえ取れば大丈夫だと思い込んでいました。
建築基準法の数量制限は別に確認が必要です。
次は明日からの確認手順を見てみましょう。
明日から何を確認すればよいのか

用途地域による数量制限は、事前に確認しておけば防げるトラブルです。
明日から確認しておきたい手順を整理します。
- 自分の建物がある用途地域が、準住居地域・商業地域・準工業地域のいずれかに当たるかを確認する
- 取り扱っている危険物の種類と数量を洗い出し、建築基準法施行令第百三十条の九の表と照らし合わせる
- 消防法上の危険物であれば、指定数量の十倍を基準となる数量として計算する
- 特定屋内貯蔵所や第一種販売取扱所など、数量が緩和される施設に該当するかを確認する
- 上限を超えるおそれがあれば、貯蔵量を減らすか特定行政庁の窓口に相談する
窓口に相談する前に、自分でここまで確認しておけば安心そうです。
用途地域と数量の確認が最初の一歩です。
次はよくある質問を見ていきましょう。
よくある質問
まとめ
自分の建物の用途地域と数量、まず確認してみます!
用途地域の確認も含めて、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法施行令第百三十条の九・第百十六条(e-Gov法令検索)
- 危険物の規制に関する政令(e-Gov法令検索)
※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。危険物の種類や数量の判定、緩和の適用は個別の施設によって異なる場合があります。個別の判断は所轄の特定行政庁または消防署にご確認ください。





