倉庫に段ボールや梱包材を積み上げているうちに、いつの間にか大変な量になっていた——そんな倉庫は少なくありません。
実は消防法施行令には、建物の用途を一切問わず、指定可燃物の貯蔵量だけでスプリンクラー設置義務が決まる号があります。
病院でも工場でも倉庫でも、扱う品目と数量が基準を超えれば同じ号が適用されます。
この記事では消防法施行令第12条第1項第8号が定める数量基準と、見落としやすい落とし穴を条文だけで確かめます。
うちの倉庫は資材の量がかなり多いんですが、これもスプリンクラーの対象になるんでしょうか。
用途に関係なく、指定可燃物の量だけで判断される号があります。
まずは貯蔵している品目と量を確認しましょう。
品目によって基準が違うなら、色々な資材を扱っていると判断が難しそうです。
そのとおりです。
品目ごとに定められた数量の1,000倍を超えるかどうかがポイントになります。
- 消防法施行令第12条第1項第8号は、用途を問わず指定可燃物の貯蔵量だけでスプリンクラー設置義務を課す号です
- 基準は危険物の規制に関する政令別表第四が品目ごとに定める数量の1,000倍以上を貯蔵または取り扱うことです
- 対象品目は可燃性液体類を除く11区分で、綿花類や糸類、合成樹脂類などが含まれます
- 合成樹脂類の発泡させたものは基準数量が20キログラムと小さく、意外と少ない量で1,000倍の基準に達することがあります
- 建物の用途は関係ないため、倉庫でも工場でも店舗でも、この号は同じ基準で適用されます

目次
指定可燃物を大量に貯蔵するとなぜスプリンクラーが必要になるのか

ところが第12条第1項には、用途を一切問わない号が1つだけ存在します。
第1号から第7号までは病院や劇場、地下街といった用途区分を前提に基準が決まりますが、第8号だけは建物の用途にかかわらず適用されます。
判断材料になるのは貯蔵し、または取り扱う指定可燃物の量だけです。
倉庫はもちろん、工場の資材置き場や店舗のバックヤードでも、量が基準を超えれば同じ号が適用されます。
「うちは倉庫だから関係ない」と決めつけずに、扱っている品目と量を確認することが出発点になります。
用途を問わないというと、うちみたいな倉庫はまず量で見ないといけないんですね。
そのとおりです。
次は具体的にどれくらいの量から義務になるのかを見ていきましょう。
どのくらいの量からスプリンクラー設置義務が生じるのか

この基準数量の何倍を貯蔵しているかで、義務の有無が決まります。
たとえば別表第四が定める基準数量が1,000キログラムの品目であれば、1,000倍にあたる1,000トン以上を貯蔵し、または取り扱うとスプリンクラー設置義務が生じます。
品目ごとに基準数量が異なるため、1,000倍のラインも品目によって大きく変わります。
自社が扱っている品目の基準数量を確認しないまま、感覚だけで「うちは大丈夫」と判断するのは危険です。
次は、対象になる品目の範囲を具体的に見ていきます。
品目によって基準の量そのものが違うんですね。
はい。
次は指定可燃物に含まれる品目を一緒に確認しましょう。
指定可燃物の対象にはどんな品目が含まれるのか

ただし第8号には、対象から明確に除かれる区分があります。
綿花類や糸類、わら類、石炭・木炭類、合成樹脂類などの固体・半固体の指定可燃物が第8号の対象です。
灯油や重油といった可燃性液体類は、危険物の規制に関する政令など別の規制で扱われるため、この号からは除外されています。
自社の倉庫に複数の品目が混在している場合は、品目ごとに該当・非該当を分けて確認する必要があります。
見た目が似ていても、液体か固体かで適用される規制の枠組みが変わる点に注意してください。
液体は別扱いなんですね。
うちは段ボールと発泡スチロールの梱包材が多いです。
その2つはまさに要注意の品目です。
次は見落としやすいポイントを具体的に説明します。
実務で見落としやすいのはどこか

数字で比べてみると、その差がよく分かります。
発泡させた合成樹脂類は基準数量が20キログラムと非常に小さいため、1,000倍でもわずか20トンで設置義務に達します。
一方、石炭・木炭類は基準数量が10,000キログラムあり、1,000倍でも10,000トンとかなりの量まで猶予があります。
発泡スチロールなどの梱包材や緩衝材を大量に保管する倉庫は、見た目の体積のわりに重量が軽いため、基準に達している自覚が薄くなりがちです。
「量が多そうな品目だけ気をつける」という判断は見落としの元になります。
発泡スチロールがそんなに少ない量で基準に届くとは知りませんでした。
軽い品目ほど盲点になりやすいんです。
最後に、明日からの確認手順をお伝えします。
明日からなにを確認すればよいのか

まず品目を洗い出し、次に数量を計算するのが正しい順番です。
- 自社が貯蔵し、または取り扱っている資材の品目をすべて洗い出す
- 危険物の規制に関する政令別表第四で品目ごとの基準数量を確認する
- 実際の貯蔵量が基準数量の1,000倍を超えているかを品目ごとに計算する
- 超えている、または超える可能性がある場合は所轄消防署へ相談する
うちもまず品目と量を棚卸ししてみます。
それが一番確実な第一歩です。
不安な点があればいつでもご相談ください。
よくある質問
まとめ
用途を問わない号があるとわかっただけでも、確認の視点が変わります!
品目ごとの数量確認が一番確実です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令第12条第1項第8号・第2項第1号(スプリンクラー設備を設置する防火対象物)
- 危険物の規制に関する政令別表第四(指定可燃物の品名と数量)
- e-Gov法令検索(デジタル庁)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





