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漏電火災警報器の設置義務はなぜ建物ごとに違うのか|鉄網入りの壁と用途別延べ面積の基準を解説

古い建物の外壁の一部で鉄網入りの下地が露出している写真

古い木造モルタルの建物を点検すると、漏電火災警報器が付いている建物とそうでない建物があることに気づきます。
同じような延べ面積・同じような用途に見えても、片方には設置義務があり、もう片方には無いということが実際に起こります。
その分かれ目は壁や床や天井の中に鉄網が入っているかどうかという、図面を見ないと分からない条件で決まっています。
どんな構造の建物に、どんな用途と延べ面積の組み合わせで義務が生じるのかを、消防法施行令の条文にもとづいて解説します。

うちの隣のビルには漏電火災警報器が付いているのに、うちには付いていません。
延べ面積はそんなに変わらないんですが、これって大丈夫なんでしょうか。

実は消防法施行令第22条には、延べ面積の前に建物の壁の中の構造そのものを問う条件があるんです。

壁の中の構造なんて、見ただけでは分かりません。

そのとおりで、図面か仕様書で確認するしかありません
順番に条件を確認していきましょう。

この記事の結論
  • 漏電火災警報器は間柱や下地が準不燃材料以外の鉄網入りの壁・床・天井を持つ建物だけが対象です(消防法施行令第22条
  • 鉄網入りの建物のうち、用途と延べ面積の組み合わせで対象になるかどうかが決まります
  • 契約電流容量が50アンペアを超える建物は延べ面積に関係なく対象になります
  • 鉄網が入っていないRC造や鉄骨造の乾式壁は、用途や面積を満たしても対象外です
  • 対象かどうかは外観では分からず、図面や竣工時の仕様書で確認する必要があります

漏電火災警報器の設置基準は鉄網入りの構造と用途別延べ面積と契約電流容量で決まることを示した図解

漏電火災警報器はなぜ設置対象が限定されているのか

鉄網入りの壁の断面図とRC造の壁の断面図が並び片方だけに対象の印が付いているイメージ
漏電火災警報器は、壁の中を電気が伝いやすい構造の建物で電気火災のリスクが高いために設けられている設備です。
そのため消防法施行令は、用途や延べ面積の前に建物の構造そのものを最初の条件として定めています。
消防法施行令第22条(漏電火災警報器に関する基準) 漏電火災警報器は、次に掲げる防火対象物で、間柱若しくは下地を準不燃材料(建築基準法施行令第一条第五号に規定する準不燃材料をいう。以下この項において同じ。)以外の材料で造つた鉄網入りの壁、根太若しくは下地を準不燃材料以外の材料で造つた鉄網入りの床又は天井野縁若しくは下地を準不燃材料以外の材料で造つた鉄網入りの天井を有するものに設置するものとする。
漏電火災警報器の対象は鉄網入りの壁・床・天井を持つ建物に限られます
条文が挙げているのは、間柱や下地が準不燃材料以外の材料で造られた鉄網入りの壁・床・天井の三つです。
古い木造モルタル造の建物のように、下地に木材を使い、その上に鉄網を張ってモルタルを塗った壁がこれにあたります。
逆にRC造や鉄骨造で、鉄網を使わない乾式のボード壁だけで造られた建物は、この構造要件そのものに当てはまりません。
次は、この構造要件を満たした建物のうち、どの用途と延べ面積が対象になるのかを見ていきます。

うちは木造モルタルなので、たぶん鉄網入りだと思います。

木造モルタルは典型的な対象構造です。
次に用途と面積の条件を確認しましょう。

どんな用途と延べ面積の組み合わせで設置義務が生じるのか

用途ごとに区分された建物のブロックが延べ面積のグリッドの上に並ぶイメージ
構造要件を満たした建物は、さらに用途ごとに異なる延べ面積の基準をクリアすると設置義務が生じます。
用途が危険性の高いものほど、必要な延べ面積の基準は小さく設定されています。
消防法施行令第22条第1項 一 別表第一(十七)項に掲げる建築物 二 別表第一(五)項及び(九)項に掲げる建築物で、延べ面積が百五十平方メートル以上のもの 三 別表第一(一)項から(四)項まで、(六)項、(十二)項及び(十六の二)項に掲げる防火対象物で、延べ面積が三百平方メートル以上のもの 四 別表第一(七)項、(八)項、(十)項及び(十一)項に掲げる建築物で、延べ面積が五百平方メートル以上のもの 五 別表第一(十四)項及び(十五)項に掲げる建築物で、延べ面積が千平方メートル以上のもの
対象の延べ面積は用途によって150平方メートルから1,000平方メートルまで五段階に分かれます
最も厳しいのは(17)項(映画スタジオ・テレビスタジオ)で、延べ面積を問わず対象になります。
旅館・ホテル((5)項イ)や病院・福祉施設等((9)項イ)は150平方メートル以上、劇場・飲食店・百貨店・工場・複合用途防火対象物等((1)項から(4)項・(6)項・(12)項・(16の2)項)は300平方メートル以上が基準です。
倉庫や駐車場等((7)項・(8)項・(10)項・(11)項)は500平方メートル以上、神社仏閣や事務所等((14)項・(15)項)は1,000平方メートル以上と、用途ごとに基準が変わります。
次は、複合用途の建物や、この五区分に当てはまらない建物の扱いを確認します。

うちはテナントがいろいろ入っている雑居ビルなんですが、どの区分で見ればいいんでしょうか。

複合用途には専用の按分基準があります。
次で確認しましょう。

複合用途や契約電流容量はどう扱われるのか

分電盤とアンペアメーターのクローズアップと複合用途ビルの断面が並ぶイメージ
五区分に当てはまらない建物にも、電気設備そのものの大きさを基準にした受け皿の規定があります。
複合用途の建物と、契約電流容量による基準の二つを見ていきます。
消防法施行令第22条第1項 六 別表第一(十六)項イに掲げる防火対象物のうち、延べ面積が五百平方メートル以上で、かつ、同表(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項又は(九)項イに掲げる防火対象物の用途に供される部分の床面積の合計が三百平方メートル以上のもの 七 前各号に掲げるもののほか、別表第一(一)項から(六)項まで、(十五)項及び(十六)項に掲げる建築物で、当該建築物における契約電流容量(同一建築物で契約種別の異なる電気が供給されているものにあつては、そのうちの最大契約電流容量)が五十アンペアを超えるもの
複合用途ビル((16)項イ)は建物全体が500平方メートル以上、かつ危険用途部分の合計が300平方メートル以上で対象になります
さらに第六号までのどれにも当てはまらない建物でも、契約電流容量が50アンペアを超える場合は第七号により対象になります。
契約電流容量は延べ面積とは別の物差しで、電気の使用量そのものが多い建物を拾うための基準です。
同じ建物で契約種別が複数ある場合は、そのうち最大の契約電流容量で判定します。
条件を満たしていても、次に見る建物の構造そのものが要件から外れていれば設置義務は生じません。

契約電流容量なら電力会社の契約書を見れば分かりますね。

そのとおりです。
ただし構造要件を満たさなければ意味がありません

木造モルタルの建物なら必ず対象になるのか

外観が同じに見える二棟の建物を虫眼鏡で見ると片方だけ壁の中に鉄網が見えるイメージ
用途と延べ面積、あるいは契約電流容量の条件を満たしていても、それだけで対象が決まるわけではありません。
最後にもう一度、設置した漏電火災警報器そのものの働き方を確認しておきます。
消防法施行令第22条第2項 前項の漏電火災警報器は、建築物の屋内電気配線に係る火災を有効に感知することができるように設置するものとする。
外観が同じように見える二棟でも、壁の中の構造が違えば結論は変わります
新築時の仕様書や竣工図で下地・間柱の材料と鉄網の有無を確認しない限り、見た目だけで対象かどうかを判断することはできません
改修でボード壁に張り替えた部分など、建物の一部だけ構造が異なる場合もあります。
第2項が定める「有効に感知することができるように」という要件も、対象となる屋内配線の範囲を正しく把握していなければ満たせません。
自己判断で「延べ面積を満たしているから対象のはず」と決めつけず、構造の裏付けを取ってから判断することが必要です。

うちは増築のときに壁を張り替えた部分があります。
そこも同じ扱いになるんでしょうか。

張り替えた部分だけ別の構造になっている場合があります。
次で確認の手順を見ましょう。

明日からなにを確認すればよいのか

点検口を開けて壁の中を確認しながら図面とチェックリストを見比べているイメージ
ここまでの条件を踏まえると、確認すべき順番が見えてきます。
最後に、そもそもの設置義務がどこから来ているかもおさえておきましょう。
消防法第17条第1項 (略)関係者は、政令で定める消防の用に供する設備、消防用水及び消火活動上必要な施設について消火、避難その他の消防の活動のために必要とされる性能を有するように、政令で定める技術上の基準に従つて、設置し、及び維持しなければならない
まず竣工図や仕様書で壁・床・天井の下地に鉄網が使われているかを確認してください
次に建物の用途区分と延べ面積を照らし合わせ、該当する区分が無いかを確認します。
どの区分にも当てはまらなくても、契約電流容量が50アンペアを超えていないかを電力会社の契約内容で確認してください。
自己判断で設置の要否を決めず、判断に迷う場合は所轄消防署に確認してから進めてください。

まずは竣工図を引っ張り出して壁の構造を確認してみます!

図面が残っていない建物ほど判断を誤りやすいので、必ず確認してから進めてください。

よくある質問

QRC造なら漏電火災警報器の設置義務は絶対に無いのですか?
A絶対にとは言えません。条文が対象とするのは鉄網入りの壁・床・天井を持つ建物で、RC造でも内部の間仕切り壁などに鉄網入りの構造を使っていれば対象になり得ます。構造の確認が必要です。
Q用途が(17)項の建物は延べ面積に関係なく対象になりますか?
Aはい。第一号は面積要件を定めておらず、(17)項に掲げる建築物であれば延べ面積を問わず対象になります。ただし鉄網入りの構造要件は他の区分と同じく満たす必要があります。
Q契約電流容量が50アンペア以下なら常に設置は不要ですか?
Aいいえ。第七号は他の号に当てはまらない建物の受け皿にすぎません。用途と延べ面積の五区分や複合用途の第六号に該当すれば、契約電流容量が50アンペア以下でも設置義務が生じます。
Q増築で壁の構造が変わった場合はどう判定すればよいですか?
A増築部分と既存部分で構造が異なることがあるため、部分ごとに鉄網の有無を確認する必要があります。判断に迷う場合は所轄消防署に確認してください。

まとめ

施行令第22条が漏電火災警報器の設置基準の根拠です
対象はまず鉄網入りの壁・床・天井を持つ建物に限られます
用途と延べ面積の組み合わせで五区分に分かれます
複合用途ビルは延べ面積500平方メートル以上かつ危険用途部分300平方メートル以上で対象になります
契約電流容量が50アンペアを超える建物は面積に関係なく対象になります
対象かどうかは見た目では分からず図面での確認が必要です
消防法第17条第1項により設置した設備を維持する義務も続きます

うちの建物が対象かどうか、まず図面から確認する理由がよく分かりました。
さっそく竣工図を探してみます。

判断に迷ったら早めのご相談が安心です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法第17条
  • 消防法施行令第22条
  • e-Gov 法令検索

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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