危険物施設で事故が起きたとき、その重大性はどう測られているのか。
死者が出た大きな火災も、初期消火で収まった小さなぼやも、同じ「事故」として一括りにされていた時期がありました。
消防庁はこの状態を変えるため、火災事故と流出事故それぞれに4段階の判定軸を設けました。
通達が示したのは、人的被害・影響範囲・収束時間という3つの指標で重大性を数値化する仕組みです。
うちの施設で小さな漏れがあったとき、これは報告するほどの事故なんでしょうか。
いつも判断に迷います。
それを機械的に判定できる物差しが、実は消防庁の通達で決まっているんです。
深刻度という考え方で、事故を4段階に分ける仕組みがあります。
深刻度って、被害の大きさをざっくり見るということですか。
もう少し具体的です。
人的被害・影響範囲・収束時間、この3つを別々の物差しで測ります。
- 危険物施設の火災・流出事故は、消防庁が定めた「深刻度評価指標」で4段階に判定される仕組みになっています
- 火災事故は人的被害・影響範囲・収束時間という3つの指標で評価されます
- 流出事故は、人的被害指標と、流出範囲と指定数量の倍数で決まる流出被害指標で評価されます
- いずれか1つでもレベル1に該当すれば重大事故として扱われます
- 火災事故と流出事故の指標は、それぞれ独立しており単純に比較できないとされています
▼
目次
危険物施設の事故はなぜ深刻度で線引きされるようになったのか

消防庁はこの状態を変えるため、学識経験者や業界団体を交えた検討の場を設け、重大性の物差しづくりに乗り出しました。
以前は、死者が出た火災も小さなぼやも同じ「事故1件」として数えられ、どこから手を付けるべきか見えにくい状態でした。
そこで危険物等事故防止対策情報連絡会という学識経験者・業界・行政の合同の場で検討が重ねられ、事故を機械的に4段階へ分類する物差しがつくられました。
狙いは重大事故の発生を防止するという一点に絞られています。
自分の施設で起きた小さな事故も、この物差しに当てはめれば「軽微」か「重大」かがはっきりします。
うちで起きた小さな漏れも、これに当てはめて考えればいいんですね。
はい。
軽微か重大かを、自分たちでも機械的に判定できるようになります。
深刻度評価指標はどんな事故のどんな場面で使われるのか

ただし、移動タンク貯蔵所が関わる事故には、施設と異なる特有の読み替えが用意されています。
規模の大小を問わず、施設内の設備トラブルから火災に至った事案も、タンクからのわずかな滴下も、同じ物差しに乗せて判定します。
唯一の例外的な扱いが移動タンク貯蔵所です。荷卸し先の事業所内で起きた事故は、「事業所」をその移動タンク貯蔵所が在る事業所と読み替えて判定します。
また流出事故では、交通事故による死傷者は人的被害指標に含めないとされ、危険物の流出と因果関係のない被害まで重大事故に数えないよう線が引かれています。
タンクローリーの出入りがある施設は、この読み替えを特に確認しておく価値があります。
うちはタンクローリーの出入りが多いので、そこは気になるところでした。
荷卸し先での事故は「事業所」の読み替えがあるので、そこだけ覚えておいてください。
火災事故と流出事故はそれぞれ何を基準に判定するのか

どちらも、いずれか1つでもレベル1に該当すれば重大事故として扱われる仕組みです。
死者が出れば人的被害指標でレベル1、事業所の外まで物的被害が及べば影響範囲指標でレベル1、鎮圧までに4時間以上かかれば収束時間指標でレベル1と、それぞれ独立して判定されます。
流出事故は少し形が違い、人的被害指標に加えて、流出した範囲と指定数量の倍数を掛け合わせたマトリックスで流出被害指標を出します。
事業所の敷地境界線から約100メートル以上広範囲に流出し、かつ指定数量の倍数が10以上なら、この指標だけでレベル1になります。
つまり、被害が小さくても複数の指標のうちどれか1つが跳ねれば、その事故全体が重大事故に分類されるということです。
1つでも跳ねたら全体が重大事故になるのは、けっこう厳しい基準ですね。
甘くすると軽微な事故に埋もれて、重大な兆候を見逃してしまうんです。
だからあえて厳しくしてあります。
実務で見落としやすいのはどこか

しかし通達は、この比べ方をはっきりと禁じています。
評価している物差しがそもそも別物だからです。火災は人・範囲・時間、流出は人・範囲と量の掛け合わせで、同じ「重大事故1件」でも中身の重みが違います。
もう一つ見落としやすいのが収束時間の起点です。事故発生日時が不明な場合は、発見から鎮圧までの時間で判定するとされており、覚知が遅れるほど収束時間指標は不利に振れます。
また流出事故では、流出範囲の記載がない場合は事業所外への流出量を100リットル程度とみなして判定するという読み替えも用意されています。
自社の記録に「発生日時不明」「流出範囲未記載」のまま残っている事故がないか、一度棚卸ししておくと安心です。
発生日時がはっきりしない事故、うちにも記録が曖昧なものがあるかもしれません。
発見した時刻からでも記録しておけば、あとから正しく振り返れます。
明日からなにを確認すればよいのか

自分たちの事故対応を振り返る物差しとして、そのまま使えるからです。
死者・負傷者の有無、被害が事業所の外まで及んだか、鎮圧までに何時間かかったか。この3つを記録に残す習慣があれば、次に何を優先して対策すべきかが見えてきます。
予防規程の見直しや危険物保安統括管理者への報告でも、「軽微」「重大」を主観で判断するより、この指標に沿って説明したほうが伝わりやすくなります。
消防機関への報告のときも、深刻度のどの指標でレベル1に触れたのかを一言添えるだけで、やり取りがスムーズになります。
指標そのものを暗記する必要はありません。「人・範囲・時間」の3つを思い出す、それだけで十分です。
人・範囲・時間の3つを思い出せばいいなら、覚えられそうです。
その調子です。
次に事故が起きたときは、この3つから振り返ってみてください。
よくある質問
まとめ
次に事故が起きたら、まず「人・範囲・時間」の3つで振り返ってみます。
すっきりしました。
深刻度は消防機関だけでなく、自施設の振り返りにもそのまま使えます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 危険物施設における火災・流出事故に係る深刻度評価指標について(平成28年11月2日消防危第203号、改正 令和2年12月消防危第287号)
- 危険物等に係る事故防止対策の推進について(平成28年3月28日消防危第45号)
- 消防組織法第37条
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





