屋上の駐車場や車路に、二酸化炭素を使う移動式の消火設備を置けないかと考えたことはないでしょうか。
消防法施行規則第19条は、不活性ガス消火設備を全域放出方式・局所放出方式・移動式の三つに分け、それぞれ設置できる場所を細かく定めています。
なかでも移動式は、煙が充満する場所や道路の部分について特有の制限を受ける方式です。
この記事では、移動式の不活性ガス消火設備がどこに置けて、どこに置けないのかを条文から確認します。
うちのビル、屋上に駐車場と車路があるんです。
そこに移動式の二酸化炭素消火設備を置けないか気になっています。
移動式は、置ける場所が条文でかなり絞られています。
順番に確認していきましょう。
駐車場ならどこでも良いわけではないんですね。
はい、駐車の用に供される部分と道路の用に供される部分では扱いが違います。
まずはそこから見ていきます。
- 移動式の不活性ガス消火設備は二酸化炭素専用で、全域放出方式や局所放出方式とは基準が分けて定められている
- 火災のとき煙が著しく充満するおそれのある場所には設置できない
- 道路の用に供される部分に設置する場合は屋上部分に限り認められる
- ノズルは温度20度で毎分60キログラム以上の消火剤を放射できるものであることが必要
- 貯蔵容器の近くに赤色の灯火と移動式である旨の標識を設けなければならない
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目次
移動式の不活性ガス消火設備とはどんな設備なのか

このうち移動式は、人がホースを持って操作する方式です。
全域放出方式や局所放出方式では窒素やIG―五五なども選べますが、移動式にはこの規定があるため二酸化炭素以外の消火剤を使うことはできません。
人がホースを持って狙った場所に放射する方式なので、部屋ごと薬剤で満たす全域放出方式とは前提が異なります。
消火剤の種類だけでなく、設置できる場所そのものにも移動式ならではの制限があります。
自分の建物の設備がどの方式に当たるかを、まず設計図書で確認してください。
うちの設備、消火剤の種類まで見たことがありませんでした。
移動式なら二酸化炭素のはずです。
設計図書のラベルを確認してみましょう。
煙が著しく充満するおそれのある場所になぜ置けないのか

ところが、ある条件の場所ではこの移動式そのものが使えません。
理由までは条文に書かれていませんが、視界や呼吸が奪われた状況では、人がホースを持って現場にたどり着けないおそれがあるためと考えられます。
駐車場や指定可燃物を扱う倉庫のように、火災時に煙がこもりやすい区画は特に注意が必要です。
自分の建物のどの部分がこの制限に当たるかは、設置時の設計図書で確認できます。
うちの駐車場、煙がこもりやすい場所な気がします。
煙が充満するおそれのある場所では移動式は使えません。
設計図書で方式を確認しましょう。
屋上の道路部分だけ移動式が使えるのはなぜか

このうち移動式に例外が用意されているのは、道路の部分だけです。
同じ屋上でも、単なる屋上駐車場としての利用であれば駐車の用に供される部分に当たり、この号の対象にはなりません。
車両の通行が可能な道路として扱われる部分かどうかが、移動式を選べるかどうかの分かれ目になります。
地上や地下にある道路の部分には、この例外は適用されません。
建物のどの範囲が道路の部分に当たるのかを、まず平面図で確かめてください。
屋上駐車場だから大丈夫だと思っていました。
駐車場としての利用なら対象外です。
道路として扱われる部分かどうかを確かめましょう。
移動式のノズルにはどんな放射能力が求められるのか

移動式のノズルには、放射能力の基準が定められています。
温度20度という条件が付いているので、極端に低い温度での性能をそのまま当てはめることはできません。
この数値は一のノズルにつきの基準なので、複数のノズルを設ける場合もそれぞれが満たす必要があります。
機器の仕様書やカタログの放射量の欄で確認できます。
点検のたびに、ノズルの型式が設計時と変わっていないかもあわせて見ておいてください。
うちのノズル、性能まで見たことがありませんでした。
仕様書に放射量が載っているはずです。
点検業者にも確認してもらいましょう。
移動式を設置したら何を表示すればよいのか

移動式には、遠くからでも分かるようにするための決まりがあります。
標識には移動式不活性ガス消火設備である旨と消火剤の種類の両方を書く必要があります。
貯蔵容器はホースを設置する場所ごとに設けることになっているため、設置場所の数だけ表示と容器の組を確認することになります。
点検では、灯火が点灯するかと標識の文字が読めるかの両方を見てください。
表示が薄れていたり灯火が切れていたりすると、いざというとき見つけるまでの時間が延びてしまいます。
うちの表示、色あせていないか確認してみます。
点検のたびに灯火と標識をあわせて見てください。
よくある質問
まとめ
屋上のどの部分が道路の用に供される部分に当たるか、図面で確認します!
移動式の設置や点検でお困りでしたら、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行規則第19条(不活性ガス消火設備に関する基準)
- 消防法施行令第13条(水噴霧消火設備等を設置すべき防火対象物)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





