屋外の巨大な貯蔵タンクの中で、浮きぶたが沈んでいるとしたら気づけるでしょうか。
外からは油面が静かに揺れているだけに見えても、タンクの内部では異常が進行していることがあります。
消防庁は内部浮きぶた付き屋外貯蔵タンクで相次いだ事故を受け、通知を発出しました。
そこで示されたのは、浮きぶたの異常は火災になっていなくても直ちに通報しなければならないという仕組みです。
うちのタンクは屋外貯蔵タンクで、内部に浮きぶたが入っている構造なんです。
異常があっても外からは分かりにくくて心配です。
それはまさに消防庁の通知が名指しした対象です。
浮きぶたの損傷や沈没が実際に相次いで報告されています。
火が出ていないのに、そんなに大ごとになるものなんですか。
はい。
浮きぶた上の空間に可燃性蒸気がたまり、爆発範囲内の濃度になるおそれがあるとされています。
- 内部浮きぶた付き屋外貯蔵タンクの浮きぶたの損傷・溢流・傾斜・沈没等の異常は消防法第16条の3第1項の「その他の事故」に該当します
- 火災になっていなくても、発見した者は直ちに消防署等へ通報する義務があります
- 危険物の受け入れに伴う気泡の流入時や地震時は事後速やかに浮きぶたの異常有無を確認することが求められます
- 応急措置に必要な不活性ガスの調達手段をあらかじめ計画しておくことが必要です
- 外周のシールが劣化・脱落した場合は速やかに耐油性・耐久性のある材料に取り替えることが求められます
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目次
内部浮きぶた付き屋外貯蔵タンクの事故はなぜ通知が出るまでになったのか

そうした異常が、複数のタンクで相次いで報告されました。
浮きぶたは油面を覆って可燃性蒸気の発生を抑えるふたの役割を持ちますが、損傷や沈没が起きると本来の機能が失われます。
しかも貯蔵している危険物の多くは引火点の低いものなので、浮きぶた上に蒸気が滞留すると爆発範囲内の濃度に達しやすいという特有の危うさがあります。
外見が変わらないまま内部で異常が進むからこそ、通知は事故を待たずに確認と通報の仕組みを整えるよう求めました。
外からは分からないというのが、いちばん怖いところですね。
だからこそ、決まったタイミングで確認する仕組みが必要になるんです。
どのタンクの浮きぶたが対象になるのか

その異常は、消防法上「その他の事故」として扱われます。
浮きぶたの損傷や沈没は、それ自体では燃えていません。
しかし条文は危険物の流出その他の事故と書いていて、火災に限定していません。
浮きぶたの異常もこの「その他の事故」に含まれるため、所有者等には応急措置の義務が、発見者には直ちに通報する義務が生じます。
石油コンビナートの特定事業所であれば、あわせて石油コンビナート等災害防止法第23条の通報義務も重なります。
燃えてもいないのに、そこまで義務がかかるんですね。
条文が「その他の事故」までカバーしているからです。
異常に気づいた時点がスタートラインになります。
通知は具体的になにを求めているのか

どれも普段の運用の中で確認できる内容です。
まず通報体制の再確認、次に気泡の流入時と地震時の浮きぶた確認、そして不活性ガスの調達手段の事前計画が並びます。
受け入れの場面では配管内の空気抜きと受入速度への注意が求められ、最後に外周のシールの劣化・脱落への対応が続きます。
特別な設備投資というより、点検・受入・保守それぞれの手順に落とし込める内容です。
5つとも、うちの点検表に落とし込めそうな内容ですね。
そのとおりです。
受け入れのたびに気にかける項目として組み込んでおくと確実です。
実務で見落としやすいのはどこか

外部からの兆候を軽視すると、発見が遅れます。
この事例では、朝の通報段階で消防本部が調査を要請したにもかかわらず、事業所は「異常なし」と報告しています。
実際に沈没が確認されたのは、同じ日の夕方の定期パトロールでした。
外部からの臭気の通報は、タンク内部で進行中の異常を知る数少ない手がかりです。
「異常なし」で終わらせず、検尺測定などタンク内部の状況まで確かめる手順を持っておく必要があります。
「異常なし」で終わらせずに、もう一段確認する習慣が大事なんですね。
臭気の通報があった時点で、内部の検尺まで踏み込んで確認してください。
明日からなにを確認すればよいのか

まずは自施設の体制を照らし合わせてみてください。
次に、直近の危険物受け入れや地震のあと、浮きぶたの異常有無を確認した記録が残っているかを見直します。
不活性ガスの調達手段を事前に決めているか、外周シールの劣化を定期点検の項目に入れているかもあわせて確認してください。
どれも大掛かりな設備投資ではなく、既存の点検・受入手順に組み込める内容です。
「異常なし」で済ませず、少しでも臭気や違和感があれば検尺まで確かめる姿勢が、覚知の遅れを防ぎます。
通報体制の再確認から、うちも始めてみます。
受け入れや地震のたびに浮きぶたを気にかける、それだけで異常の発見が早まります。
よくある質問
まとめ
受け入れと地震のたびに、浮きぶたの状態を気にかけるようにします。
安心しました。
「異常なし」で終わらせず、確認と通報の体制を整えておいてください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 内部浮きぶた付き屋外貯蔵タンクの事故防止対策と応急措置体制の整備について(平成19年10月19日消防危第235号消防庁危険物保安室長・消防特第142号消防庁特殊災害室長)
- 消防法第16条の3
- 石油コンビナート等災害防止法第23条
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





