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内部浮きぶた付き屋外貯蔵タンクはなぜ通報体制まで求められるのか|浮きぶた沈没事故の教訓と5つの留意事項を解説

内部浮きぶた付き屋外貯蔵タンクの外観写真

屋外の巨大な貯蔵タンクの中で、浮きぶたが沈んでいるとしたら気づけるでしょうか。
外からは油面が静かに揺れているだけに見えても、タンクの内部では異常が進行していることがあります。
消防庁は内部浮きぶた付き屋外貯蔵タンクで相次いだ事故を受け、通知を発出しました。
そこで示されたのは、浮きぶたの異常は火災になっていなくても直ちに通報しなければならないという仕組みです。

うちのタンクは屋外貯蔵タンクで、内部に浮きぶたが入っている構造なんです。
異常があっても外からは分かりにくくて心配です。

それはまさに消防庁の通知が名指しした対象です。
浮きぶたの損傷や沈没が実際に相次いで報告されています。

火が出ていないのに、そんなに大ごとになるものなんですか。

はい。
浮きぶた上の空間に可燃性蒸気がたまり、爆発範囲内の濃度になるおそれがあるとされています。

この記事の結論
  • 内部浮きぶた付き屋外貯蔵タンクの浮きぶたの損傷・溢流・傾斜・沈没等の異常は消防法第16条の3第1項の「その他の事故」に該当します
  • 火災になっていなくても、発見した者は直ちに消防署等へ通報する義務があります
  • 危険物の受け入れに伴う気泡の流入時や地震時は事後速やかに浮きぶたの異常有無を確認することが求められます
  • 応急措置に必要な不活性ガスの調達手段をあらかじめ計画しておくことが必要です
  • 外周のシールが劣化・脱落した場合は速やかに耐油性・耐久性のある材料に取り替えることが求められます

内部浮きぶたの損傷溢流傾斜沈没という異常はその他の事故として直ちに通報し気泡流入時と地震時の確認不活性ガス調達の事前計画シール劣化時の交換を求める図解

内部浮きぶた付き屋外貯蔵タンクの事故はなぜ通知が出るまでになったのか

浮きぶたが沈んで油面下に沈んだタンクと通常運転中のタンクを並べたイメージ
浮きぶたが沈む、傾く、シールが劣化する。
そうした異常が、複数のタンクで相次いで報告されました。
内部浮きぶた付き屋外貯蔵タンクの事故防止対策と応急措置体制の整備について(平成19年10月19日消防危第235号消防庁危険物保安室長・消防特第142号消防庁特殊災害室長) 最近、内部浮きぶた付き屋外貯蔵タンクにおいて、浮きぶたの損傷、浮きぶた上への危険物の溢流、浮きぶたの傾斜又は沈没等(以下「内部浮きぶたの異常」という。)の事案が相次いで発生しています。内部浮きぶた付き屋外貯蔵タンクは、引火点の低い危険物を貯蔵することが多く、内部浮きぶたの異常が生じた場合には、タンク内部の浮きぶた上の空間に可燃性蒸気が滞留し、その構造上の特徴から、爆発範囲内の濃度になるおそれが大きいという特性を有しています。
浮きぶたが正常に浮いているかどうかは、外から一目では分かりません。
浮きぶたは油面を覆って可燃性蒸気の発生を抑えるふたの役割を持ちますが、損傷や沈没が起きると本来の機能が失われます。
しかも貯蔵している危険物の多くは引火点の低いものなので、浮きぶた上に蒸気が滞留すると爆発範囲内の濃度に達しやすいという特有の危うさがあります。
外見が変わらないまま内部で異常が進むからこそ、通知は事故を待たずに確認と通報の仕組みを整えるよう求めました。

外からは分からないというのが、いちばん怖いところですね。

だからこそ、決まったタイミングで確認する仕組みが必要になるんです。

どのタンクの浮きぶたが対象になるのか

内部浮きぶた付き屋外貯蔵タンクの断面と浮きぶたが浮かぶ油面のイメージ
対象は屋外タンク貯蔵所のうち、タンクの中に浮きぶたを備えたものです。
その異常は、消防法上「その他の事故」として扱われます。
製造所、貯蔵所又は取扱所の所有者、管理者又は占有者は、当該製造所、貯蔵所又は取扱所について、危険物の流出その他の事故が発生したときは、直ちに、引き続く危険物の流出及び拡散の防止、流出した危険物の除去その他災害の発生の防止のための応急の措置を講じなければならない。(消防法第十六条の三第一項) 前項の事態を発見した者は、直ちに、その旨を消防署、市町村長の指定した場所、警察署又は海上警備救難機関に通報しなければならない。(同条第二項)
内部浮きぶたの異常は、消防法(昭和23年法律第186号)第16条の3第1項に規定する「その他の事故」に該当するものであり、したがって、屋外タンク貯蔵所の所有者、管理者又は占有者は、応急の措置を講じなければならず、また、同条第2項の規定に基づき、発見した者は、直ちにその旨を消防署等に通報しなければならないこととされています。また、石油コンビナート等災害防止法(昭和50年法律第84号)上の特定事業所である場合には、同法第23条の規定に基づき、異常現象の通報義務が生じることとなります。
火が出ていなくても、「その他の事故」として応急措置と通報の対象になります。
浮きぶたの損傷や沈没は、それ自体では燃えていません。
しかし条文は危険物の流出その他の事故と書いていて、火災に限定していません。
浮きぶたの異常もこの「その他の事故」に含まれるため、所有者等には応急措置の義務が、発見者には直ちに通報する義務が生じます。
石油コンビナートの特定事業所であれば、あわせて石油コンビナート等災害防止法第23条の通報義務も重なります。

燃えてもいないのに、そこまで義務がかかるんですね。

条文が「その他の事故」までカバーしているからです
異常に気づいた時点がスタートラインになります。

通知は具体的になにを求めているのか

気泡の流入や地震のマークとタンク内部の浮きぶたを確認する点検員のイメージ
通知は「記」以下に5つの項目を並べています。
どれも普段の運用の中で確認できる内容です。
記 1 迅速確実な通報の徹底を期すとともに、所有者等は通報体制を再確認しておくこと。 2 危険物の受け入れに伴ってタンク内に気泡が流入した場合又は地震時においては、内部浮きぶたに揺動が発生するおそれがあることから、これらの場合には事後速やかに、安全に十分留意しつつ、内部浮きぶたの異常の有無を確認すること。 3 内部浮きぶたの異常が発生した場合の応急措置に必要となる不活性ガスの調達手段をあらかじめ計画しておくなど、事故時の対応策を事前に定めておくこと。 4 内部浮きぶた付き屋外貯蔵タンクに危険物を受け入れる際は、配管内の空気抜き等を十分行った上で、危険物の受入速度に注意して作業すること。 5 内部浮きぶたの外周に設けるシールが劣化又は脱落した場合は、十分な耐油性、耐久性を有する材料のものに速やかに取り替えること。
5つの項目は、通報・確認・準備・受入時の注意・シール管理に整理できます。
まず通報体制の再確認、次に気泡の流入時と地震時の浮きぶた確認、そして不活性ガスの調達手段の事前計画が並びます。
受け入れの場面では配管内の空気抜きと受入速度への注意が求められ、最後に外周のシールの劣化・脱落への対応が続きます。
特別な設備投資というより、点検・受入・保守それぞれの手順に落とし込める内容です。

5つとも、うちの点検表に落とし込めそうな内容ですね。

そのとおりです。
受け入れのたびに気にかける項目として組み込んでおくと確実です

実務で見落としやすいのはどこか

近隣からの通報を受けて調査する消防本部と定期パトロールの点検員を並べたイメージ
実際に起きた沈没事故では、覚知までに時間がかかりました。
外部からの兆候を軽視すると、発見が遅れます。
別添1 内部浮きぶた付き屋外貯蔵タンクの事故概要 事例1 内部浮きぶたの沈没(覚知年月日/発生都道府県 平成18年8月8日/北海道、貯蔵危険物 第四類第一石油類ナフサ、容量 23,437キロリットル) 発見までの経緯 覚知日の朝、事業所近隣住民から事業所周辺でガス臭がするとの通報を受けた消防本部が、事業所に対して状況を調査するように要請。事業所側からは、「異常なし」との報告を受ける。しかし、同日の夕方、事業所の定期パトロール中に臭気を感知し、タンク上部ハッチから検尺測定した結果、内部浮きぶたの沈没を確認した。事故原因 通常運転中、内部浮きぶた上に油が繰り返し噴き上げて滞留したことにより、内部浮きぶたが浮力を失って沈没したものと推定される。
近隣からの「ガス臭がする」という一報を、最初の調査では見逃していました。
この事例では、朝の通報段階で消防本部が調査を要請したにもかかわらず、事業所は「異常なし」と報告しています。
実際に沈没が確認されたのは、同じ日の夕方の定期パトロールでした。
外部からの臭気の通報は、タンク内部で進行中の異常を知る数少ない手がかりです。
「異常なし」で終わらせず、検尺測定などタンク内部の状況まで確かめる手順を持っておく必要があります。

「異常なし」で終わらせずに、もう一段確認する習慣が大事なんですね。

臭気の通報があった時点で、内部の検尺まで踏み込んで確認してください

明日からなにを確認すればよいのか

チェックリストを持つ点検員が屋外貯蔵タンクの浮きぶたまわりを確認しているイメージ
通知が示した5つの項目は、そのまま日々の確認リストになります。
まずは自施設の体制を照らし合わせてみてください。
ついては、下記の事項に留意され、内部浮きぶた付き屋外貯蔵タンクの所有者等に内部浮きぶたの異常の発生防止対策の徹底と応急措置体制の充実強化を図るようご指導いただくとともに、都道府県消防防災主管部長におかれましては、貴都道府県内市町村に対してもこの旨周知されるようお願いします。
まず、通報体制が今も正しく機能するかを再確認してください。
次に、直近の危険物受け入れや地震のあと、浮きぶたの異常有無を確認した記録が残っているかを見直します。
不活性ガスの調達手段を事前に決めているか、外周シールの劣化を定期点検の項目に入れているかもあわせて確認してください。
どれも大掛かりな設備投資ではなく、既存の点検・受入手順に組み込める内容です。
「異常なし」で済ませず、少しでも臭気や違和感があれば検尺まで確かめる姿勢が、覚知の遅れを防ぎます。

通報体制の再確認から、うちも始めてみます。

受け入れや地震のたびに浮きぶたを気にかける、それだけで異常の発見が早まります

よくある質問

Q内部浮きぶたの異常が起きても、火災になっていなければ通報しなくてよいですか?
A回答は、内部浮きぶたの異常は消防法第16条の3第1項の「その他の事故」に該当するとしており、発見した者は火災の有無にかかわらず直ちに消防署等へ通報しなければならないとしています。
Q浮きぶたの異常はどんなタイミングで確認すればよいですか?
A回答は、危険物の受け入れに伴ってタンク内に気泡が流入した場合、または地震のときに、事後速やかに確認するよう求めています。
Q応急措置にはどんな準備が必要ですか?
A回答は、内部浮きぶたの異常が発生した場合に必要となる不活性ガスの調達手段を、あらかじめ計画しておくことを求めています。
Q石油コンビナートの特定事業所ではどんな義務が加わりますか?
A回答は、消防法の通報義務に加えて、石油コンビナート等災害防止法第23条に基づく異常現象の通報義務が生じるとしています。

まとめ

平成19年10月19日消防危第235号・消防特第142号の通知です
内部浮きぶた付き屋外貯蔵タンクで浮きぶたの損傷・溢流・傾斜・沈没が相次いだことが背景です
引火点の低い危険物では浮きぶた上の蒸気が爆発範囲内の濃度になるおそれがあります
内部浮きぶたの異常は消防法第16条の3第1項の「その他の事故」に該当します
発見者は直ちに通報し、所有者等は応急措置の義務を負います
気泡流入時・地震時の確認、不活性ガスの事前計画、受入速度への注意、シールの速やかな交換の4点が実務の要です
「異常なし」で終わらせず検尺測定まで確認する姿勢が覚知の遅れを防ぎます

受け入れと地震のたびに、浮きぶたの状態を気にかけるようにします
安心しました。

「異常なし」で終わらせず、確認と通報の体制を整えておいてください
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 内部浮きぶた付き屋外貯蔵タンクの事故防止対策と応急措置体制の整備について(平成19年10月19日消防危第235号消防庁危険物保安室長・消防特第142号消防庁特殊災害室長)
  • 消防法第16条の3
  • 石油コンビナート等災害防止法第23条

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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