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危険工室はなぜ消防用設備等の設置基準から外れるのか|火薬類取締法が定める代わりの基準を解説

危険工室はなぜ設備基準が外れるのか

工場や製造所を担当していると、消火器も自動火災報知設備も見当たらない小さな建物に出くわすことがあります。
実はその建物、火薬類を扱う「危険工室」に当たるため、消防法施行令の設備基準がそもそも適用されない区画かもしれません。
とはいえ、外れるのは設備の設置基準だけで、消防法上のすべての義務が消えるわけではありません。
何が外れて何が残るのかを、条文にそって整理します。

うちの敷地の奥に、消火器も自火報も付いていない建物があるんです。
点検表にも載っていなくて、少し不安になります。

それはもしかすると危険工室かもしれません。
火薬類を扱う建物には、消防法とは別の法律が基準を定めているんです。

消防法の基準がそもそも及ばないということですか。

はい、そのとおりです。
ただし免除されるのは設備の設置基準だけで、防火管理者を置く義務などは別に残ります。

この記事の結論
  • 危険工室とは、火薬類取締法施行規則が定める「爆発又は発火の危険がある工室」のことです
  • 危険工室に該当すると、消防法施行令第二章第三節第二款が定める消防用設備等の設置基準はそもそも適用されません
  • 代わりに標識の掲示・危険区域の明示・保安距離の確保という、火薬類取締法施行規則独自の基準が求められます
  • 免除されるのは設備基準だけで、防火管理者の選任や消防計画の作成義務はそのまま続きます
  • 該当性や基準の充足は消防署ではなく火薬類取締法の許可権者が判断するため、迷ったら両方に確認します

危険工室は消防法ではなく火薬類取締法が基準を定める仕組み

危険工室とは何を指すのか

工場の建物と、離れた場所に建つ土をかぶせた危険工室
敷地内にある建物なのに、消火器も自動火災報知設備も見当たらない区画に気づくことがあります。
その正体は、火薬類を扱う工場だけに存在する特別な区分かもしれません。
消防法施行規則第三十二条の二 令第三十一条第一項の総務省令で定める防火対象物は、火薬類取締法施行規則第一条第五号に規定する危険工室とする。
2 前項の危険工室については、令第二章第三節第二款の規定は、適用しない。
火薬類取締法施行規則第一条第五号 危険工室 工室であつて、爆発又は発火の危険があるもの。
危険工室とは、火薬類を製造する工室のうち爆発や発火の危険があるものを指します。
消防法施行令別表第一(十二)項イの工場に当たる建物の中でも、この区分に入る一室だけは扱いが別になります。
条文が定めているのは「該当する」という事実だけで、それが具体的に何を意味するかは次の章で見ていきます。
まずは自分の敷地にこの種の建物があるかどうかを意識することが出発点です。

敷地の奥にある小さな建物、消火器の点検表に載っていないんです。

それは危険工室に当たる可能性があります。
火薬類を扱う工室のうち、爆発や発火の危険があるものがこの区分です。

どんな建物が危険工室に当てはまるのか

危険区域を示す縞模様のテープと警戒札の標識に囲まれた危険工室
「危険工室」という言葉は消防法ではなく、火薬類取締法施行規則に出てくる用語です。
まずはどの建物がこの区分に入るのかを、定義から順に確認します。
火薬類取締法施行規則第一条第三号 工室 製造所内で火薬類の製造作業を行うために設けられた建築物(鋼製チャンバに該当するものを除く。)
同条第五号 危険工室 工室であつて、爆発又は発火の危険があるもの。
対象になるのは、火薬類の製造所内に設けられた「工室」のうち、爆発や発火の危険があるものだけです。
製造所の敷地全体ではなく、個々の建築物ごとに危険の有無が判断されます。
不発弾等を解体するために設ける「鋼製チャンバ」は別の区分として扱われ、この危険工室には含まれません。
自分の建物が該当するかどうかは、都道府県への火薬類製造の許可申請の書類で確認できます。

うちは花火の原料を扱う工場なんですが、それも当てはまりますか。

製造作業をする建物で、爆発や発火の危険があると認められれば当てはまります。
許可申請の書類に区分が明記されているはずです。

消防用設備等の基準の代わりに何を求められるのか

消火器と警報ベルを備えた普通の建物と、それらを備えていない危険工室の比較
消防用設備等の基準が及ばないというと、何も規制されていないように聞こえるかもしれません。
実際には、火薬類取締法施行規則が独自の基準を用意しています。
火薬類取締法施行規則第四条(抜粋) 一 製造所内の見やすい場所に火薬類の製造所である旨の標識を掲げ、かつ、爆発又は発火に関し必要な事項を掲示し、製造所内は、危険区域を明瞭に定め、危険区域の周囲には、危険区域が明確に判別できるような措置を講じ、見やすい場所に警戒札を掲示すること。
二 危険区域には、製造その他の作業上やむを得ない施設以外のものは設置しないこと。
四 危険工室(略)は、製造所外の保安物件に対して(略)保安距離をとること。
求められるのは、危険区域の明示・警戒札の掲示・保安距離の確保という、消防用設備等とは違う種類の対策です。
消火器や自動火災報知設備を置く代わりに、そもそも被害の及ぶ範囲を狭める発想になっています。
危険区域の中には、作業上やむを得ない設備以外は置かないことも定められています。
これらの基準を満たしているかどうかは、消防署ではなく火薬類取締法の許可権者が審査します。

じゃあ結局、うちの工室には何を用意すればいいんでしょうか。

標識と警戒札、そして周囲との保安距離です。
消火設備の代わりに、この3つを整えることになります。

保安距離さえ確保すれば足りるのか

危険工室から巻尺を伸ばして距離を測り林との間に確保する保安距離
標識を立てて距離を空ければそれで終わり、と考えてしまいがちです。
ところが、危険区域の境界がどこに接しているかによって、追加で必要になる措置があります。
火薬類取締法施行規則第四条第三号 危険区域の境界が森林内に設けられた場合には、火災による延焼を防止するための措置を講ずること。
危険区域の境界が森林に接している場合は、保安距離とは別に延焼を防止する措置が必要です。
距離を確保しただけで安心してしまうと、この延焼防止の措置が抜け落ちがちです。
下草の刈り払いや防火帯の設置など、具体的な方法は現地の状況に応じて判断されます。
敷地の周囲が林に囲まれている工室では、境界の状況を特に注意して確認しておく必要があります。

うちの危険工室は裏が林になっているんですが、それも関係あるんでしょうか。

大いに関係があります。
森林に接する境界には、延焼を防止する措置が別途必要になります。

明日から何を確認すればよいのか

工場の前に置かれたチェックリストと消防計画の書類を立てかけたスタンド
ここまでの基準は、あくまで危険工室という建物単体の話です。
最後に、防火管理者として敷地全体で確認しておくべきことを整理します。
  • その建物が火薬類取締法施行規則第一条第五号の危険工室に当てはまるかどうかを、製造許可の書類で確認する
  • 標識・警戒札・保安距離、そして境界が森林に接する場合は延焼防止の措置が、現地で実際に整っているかを確認する
  • 危険工室そのものに消火器等の設置義務がなくても、敷地内の他の建物には別途基準が及ぶことを確認する
  • 防火管理者の選任や消防計画の作成など、消防法施行令第二章第三節第二款以外の義務は引き続き必要であることを確認する
免除されるのは消防用設備等の設置基準だけで、防火管理者を置く義務や消防計画を作る義務はそのまま続きます。
危険工室があるからといって、敷地全体が消防法の対象外になるわけではありません。
点検や届出の窓口も、火薬類取締法側と消防法側で別々になっている点に注意が必要です。
迷ったときは、火薬類取締法の許可権者と所轄消防署の両方に確認しておくと安全です。

設備の話だけかと思っていましたが、確認することは意外と多いですね。

そうなんです。
建物単体の基準と、敷地全体の義務を分けて整理しておくと迷いません。

よくある質問

Q危険工室に該当すれば、消火器も置かなくてよいのですか?
A消防法施行令第二章第三節第二款が定める設置基準は適用されませんが、代わりに火薬類取締法施行規則が独自の基準(標識・警戒札・保安距離等)を求めています。設備が一切不要になるわけではありません。
Q危険工室かどうかは誰が判断するのですか?
A火薬類の製造許可を出す都道府県知事等が、火薬類取締法にもとづいて判断します。消防署ではなく、火薬類取締法側の許可権者の審査事項です。
Q危険工室がある工場でも防火管理者は必要ですか?
A必要です。免除されるのは消防用設備等の設置基準だけで、防火管理者の選任や消防計画の作成義務は別に続きます。
Q危険区域の境界が森林に接していなければ何もしなくてよいのですか?
A森林に接していなければ延焼防止の措置は不要ですが、標識の掲示と保安距離の確保は境界の状況にかかわらず必要です。

まとめ

危険工室とは、火薬類取締法施行規則が定める「爆発又は発火の危険がある工室」のことです
危険工室に該当すると、消防法施行令第二章第三節第二款の設置基準がそもそも適用されません
代わりに、標識の掲示・危険区域の明示・警戒札の掲示が求められます
保安物件との間には、火薬類取締法施行規則が定める保安距離を確保します
危険区域の境界が森林に接する場合は、延焼を防止する措置も必要になります
免除されるのは設備基準だけで、防火管理者の選任や消防計画の作成義務は別に続きます
該当性や基準の充足は消防署ではなく火薬類取締法の許可権者が判断するため、迷ったら両方に確認します

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㈱防災屋でもご相談を承っております。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法施行令第三十一条
  • 消防法施行規則第三十二条の二
  • 火薬類取締法施行規則第一条・第四条

※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署または火薬類取締法の許可権者にご確認ください。

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