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牛舎や堆肥舎は消防用設備等の基準が外れるのか|消防法施行規則が定める畜舎等の特例と残る設備を解説

牛舎の内部で通路の両側に牛が並ぶ畜舎の写真

牛舎や豚舎そして堆肥舎は、屋根と柱はあっても人がずっと詰めている建物ではありません。
それでも消防法令の上では防火対象物なので、消火設備も警報設備も避難設備も規定の対象になります。
ところが消防法施行規則には畜舎等に係る基準の特例という条が置かれていて、要件を満たすと多くの規定が適用されなくなります。
ただし外れずに残る設備がいくつもあります

牛舎と堆肥舎を建て替えることになりました。
あの建物にも消防用設備等の基準はそのままかかるのでしょうか。

そのままではありません。
消防法施行規則には畜舎等に係る基準の特例という条があって、要件を満たすと外れる規定があります。

では消防の設備はなにも要らないということですか。
それはさすがに違う気がします。

そのとおりです。
消火器具や誘導灯や消防用水はどの区分でも外れません。

この記事の結論
  • 消防法施行令第31条第2項第1号は別表第一(15)項の防火対象物について総務省令で特例を定めてよいとしている
  • 畜舎とその敷地に隣接して一体的に利用する施設をまとめて畜舎等として扱う
  • 特例の対象になるには防火上と避難上そして延焼防止上のいずれについても消防庁長官が定める基準に適合していることが要る
  • 適用しない範囲は保管庫の広さと畜産経営の用に供する部分の広さと収容人員で四つに分かれる
  • どの区分でも消火器具と誘導灯と消防用水は外れずに残る

畜舎等が規模によって外れる消防用設備等の基準の範囲を四つに分けて示した図解

畜舎に消防用設備等の基準はそのままかかるのか

牛舎の形をした建物と法令の書類を並べて畜舎に基準がかかるかを確かめる場面を示した図
畜舎は消防法令の上では別表第一(15)項に落ちる防火対象物です。
その(15)項について、消防法施行令は特例を定めてよいという受け皿を用意しています。
消防法施行令第31条第2項 次に掲げる防火対象物又はその部分については、この節に定める基準に関して、総務省令で特例を定めることができる
一 別表第一(十五)項に掲げる防火対象物で、総務省令で定めるもの
受け皿だけでは何も外れません
この条が言っているのは総務省令で特例を定めることができるということだけで、外れる範囲は書かれていません。
実際に外れる範囲を書いているのは消防法施行規則の第32条の3で、条の見出しは畜舎等に係る基準の特例です。
つまり畜舎だからという理由だけで基準が緩むのではなく、規則の側の要件を満たしてはじめて外れます。
まずは自分の建物が(15)項として台帳に載っているかを所轄消防署で確かめてください。

台帳では工場になっているかもしれません。
その場合も同じ条が使えますか。

この条が向いているのは(15)項の防火対象物です。
用途の区分そのものから確かめる必要があります。

どこまでが畜舎等として扱われるのか

畜舎とその隣に建つ搾乳の小屋と堆肥舎をまとめて畜舎等として扱うことを示した図
畜舎等という言葉は畜舎そのものだけを指すのではありません。
規則は畜舎に付随する施設まで含めて一つの言葉にしています。
消防法施行規則第32条の3第1項 令第三十一条第二項第一号の総務省令で定める防火対象物は、次の各号に掲げる要件を満たす畜舎等(畜舎(家畜の飼養の用に供する施設をいう。以下同じ。)及び次項各号に掲げる畜舎に付随する施設(畜舎の敷地又はこれに隣接し、若しくは近接する土地に建築等をし、当該畜舎と一体的に利用する施設であって、その管理について権原を有する者が当該畜舎の管理について権原を有する者と同一であるものに限る。)をいう。以下同じ。)とする。
敷地と管理権原の二つで囲みます
付随する施設と認められるには、畜舎の敷地かこれに隣接もしくは近接する土地にあり、畜舎と一体的に利用されていることが要ります。
そのうえで管理権原者が畜舎と同一であることまで求められているので、別会社に貸している建物は入りません。
付随する施設として並べられているのは、搾乳施設と集乳施設と貯水施設及び水質浄化施設と保管庫と堆肥舎と排水処理施設と発酵槽、そしてこれらに類する施設の八つです。
このうち類する施設は延べ面積が3,000平方メートル以下のものに限られ、保管庫は消防庁長官が定める物資及び車両しか置けません。
自分の農場のどの建物がこの八つに当てはまるかを、図面の上で先に色分けしておいてください。

飼料を入れている倉庫は保管庫に入りますか。
農機具も一緒に置いています。

置いている物で決まります。
保管庫は防火上支障がない物資及び車両として定められたもの以外を保管しないものに限られています。

特例を受けるとどの規定が適用されなくなるのか

大きさの違う畜舎が並び規模によって適用されない規定が変わることを示した図
外れる範囲は一律ではなく、区分ごとに書き分けられています。
いちばん小さい区分の書きぶりを見ると仕組みがわかります。
消防法施行規則第32条の3第3項 第一項の畜舎等については、次の各号に掲げる区分に応じ、当該各号に定める規定は、適用しない
四 第一項の畜舎等のうち、前三号に掲げるもの以外のもの 令第十条、令第十三条から令第十八条まで、令第二十一条の二、令第二十二条、令第二十六条(無窓階以外の階にあっては、同条第一項第四号を除く。)及び令第二十七条を除く令第二章第三節第二款から第六款までの規定
残る条を先に挙げて残りを外す書き方です
2款から第6款までは消火設備と警報設備と避難設備と消防用水と消火活動上必要な施設で、条でいうと令第10条から令第29条の3までが並びます。
その並びから除くと書かれた条だけが残り、書かれていない条が適用されなくなります。
いちばん小さい区分では、屋内消火栓設備とスプリンクラー設備と屋外消火栓設備と動力消防ポンプ設備、自動火災報知設備と消防機関へ通報する火災報知設備と非常警報器具又は非常警報設備、避難器具、そして排煙設備から無線通信補助設備までが外れます。
外れるのは条の適用そのものなので、設置の免除を個別に申請するという形ではありません。
自分の畜舎等がどの区分に当たるのかを先に決めないと、この一覧は読めません。

つまり除くと書いてある条が残る条なのですね。
読み方が逆で混乱していました。

そこがこの条のいちばんの読みどころです。
除くの後ろにある第2款から第6款までが外れる母集団になります。

規模が大きい畜舎等ではなにが戻ってくるのか

畜舎の前に消火器と誘導の標識と消防用水の水槽が並び外れない設備を示した図
区分は四つあり、上の号ほど残る条が多くなります。
いちばん残る条が多いのが保管庫の広い畜舎等です。
消防法施行規則第32条の3第3項第一号 第一項の畜舎等のうち、保管庫の用に供する部分の床面積の合計が三千平方メートルを超えるもの 令第十条、令第十一条、令第十三条から令第十九条まで、令第二十一条から令第二十二条まで、令第二十六条(無窓階以外の階にあっては、同条第一項第四号を除く。)及び令第二十七条を除く令第二章第三節第二款から第六款までの規定
広くなるほど残る条が増えます
保管庫の用に供する部分の床面積の合計が3,000平方メートルを超える第一号では、令第11条の屋内消火栓設備と令第19条の屋外消火栓設備まで残ります。
畜産経営の用に供する部分の床面積の合計が1,000平方メートル以上で無窓階では300平方メートル以上になる第二号では、令第21条の自動火災報知設備が残ります。
畜産経営の用に供する部分の収容人員の合計が50人以上で無窓階では20人以上になる第三号では、令第24条の非常警報器具又は非常警報設備が残ります。
落とし穴は区分が入れ替わることで、保管庫を増築して3,000平方メートルを超えれば、それまで外れていた屋内消火栓設備が戻ってきます。
建て増しや用途の変更を計画するときは、区分が動くかどうかを先に確かめてください。

堆肥舎を一棟足すだけのつもりでした。
それでも区分が動くことがあるのですね。

動きます。
床面積の合計と収容人員の合計はどちらも畜舎等の全体で数えます。

明日からなにを確かめればよいのか

管理者が図面を持って畜舎と付随する施設の範囲を確かめている図
どの区分でも残るのが消火器具と誘導灯と消防用水です。
この消防用水については、畜舎等のための読み替えが別に置かれています。
消防法施行規則第32条の3第4項 前項第二号から第四号までの畜舎等に対する令第二十七条第一項第一号及び第二項の規定の適用については、これらの規定中「準耐火建築物」とあるのは「準耐火建築物又は延焼のおそれが少ないものとして消防庁長官が定める構造を有する建築物」とする。
残る条にも畜舎等むけの手当てがあります
令第27条は敷地面積と床面積の合計で消防用水を求める条で、建物の造りによって基準となる面積が変わります。
その造りの読み替えが第4項に置かれ、さらに第6項では渡り廊下その他これに類する部分のみで接続された二以上の部分を、消防用水についてそれぞれ別の防火対象物とみなす定めがあります。
明日やることは三つで、まず図面に畜舎と付随する八つの施設を色分けし、次に保管庫と畜産経営の用に供する部分の床面積の合計を出し、最後に収容人員を数えます。
そのうえで消防庁長官が定める基準に適合しているかどうかを所轄消防署に確かめれば、どの号に当たるかがはっきりします。

まず図面に色を塗るところからですね。
面積と人数はそのあとに出します。

その順番で足ります。
色分けができていれば区分の判断は署とすぐ話が通じます。

よくある質問

Q畜舎に付いている事務所も畜舎等に入りますか?
A消防法施行規則第32条の3第2項が並べているのは搾乳施設や集乳施設や堆肥舎などで、事務所そのものは並んでいません。ただし第3項がいう畜産経営の用に供する部分には、畜産経営に関する軽微な執務又は作業その他これらに類する目的で使う部分が含まれます。
Q特例を受けるのに消防署へ申請が要りますか?
A消防法施行規則第32条の3は要件を満たす畜舎等について当該各号に定める規定は適用しないと書いており、許可や認定という形をとる条文ではありません。ただし消防庁長官が定める基準に適合していることが前提なので、所轄消防署に確かめてください。
Q保管庫にはなんでも置いてよいのですか?
A置けません。第2項第4号の保管庫は防火上支障がない物資及び車両として消防庁長官が定めるもの以外を保管しないものに限られているので、置く物が変われば畜舎等の範囲から外れることがあります。
Q誘導標識も要らなくなるのですか?
A階によって変わります。第3項の各号は令第26条を除くとしながら、無窓階以外の階については同条第1項第4号を除くと書いているので、無窓階以外の階では誘導標識の規定が適用されません。

まとめ

特例の根拠は消防法施行令第31条第2項第1号と消防法施行規則第32条の3である
畜舎に付随する施設は搾乳施設から発酵槽まで八つが並べられている
付随する施設は畜舎と管理権原者が同一で一体的に利用するものに限られる
外れるのは令第2款から第6款までのうち各号が除くと書いていない条である
保管庫が3,000平方メートルを超える区分では屋内消火栓設備と屋外消火栓設備が残る
畜産経営の用に供する部分が1,000平方メートル以上の区分では自動火災報知設備が残る
消火器具と誘導灯と消防用水はどの区分でも外れない

明日いちばんに図面へ畜舎等の範囲を書き込んでみます。

そこまで描けていれば署との相談が早く進みます。
迷うところがあれば㈱防災屋でもご相談を承っております。

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
主な活動

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

参考・出典

  • 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第31条第2項・第10条・第11条・第19条・第21条・第24条・第26条・第27条
  • 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第32条の3
  • 消防法施行令別表第一
  • e-Gov法令検索

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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