建築基準法にもとづく検査・調査の資格には、名前がよく似たものがいくつもあります。
「建築設備検査員」「特定建築物調査員」「建築設備士」――㈱防災屋への問い合わせでも、依頼したい内容とは違う資格の話をしてしまう方が少なくありません。
名前は似ていても、法律上は検査対象も役割もはっきり分かれています。
この記事では、建築基準法と建築士法が定める5つの検査・調査資格の違いを整理して解説します。
検査会社の方から「うちは建築設備士なので」と言われたのですが、いつもお願いしている建築設備検査員と同じ人だと思っていました。
名前は似ていますが、建築設備士と建築設備等検査員はまったく別の資格です。
まず法律上の役割の違いから整理しましょう。
特定建築物調査員という言葉も聞いたことがあります。
これも同じ人にお願いできるものなんでしょうか。
特定建築物調査員は敷地や構造を見る資格で、設備を見る建築設備等検査員とは別物です。
5つの資格を順番に比べていきましょう。
- 建築基準法が定める検査・調査資格は、大きく分けて敷地・構造を見る建築物調査員と、設備を見る建築設備等検査員の系統に分かれる(法第12条第1項〜第3項)
- 建築設備等検査員資格者証は1つの資格ではなく、対象設備によって建築設備検査員・防火設備検査員・昇降機等検査員に種類が分かれる
- 建築設備士は建築士法上の資格で、新築時の設計・工事監理を助言する立場であり、既存設備を検査する建築設備等検査員とは役割が異なる
- 特定建築物調査員と建築設備等検査員の役割分担は、令和7年7月1日施行の告示改正で一部の重複項目が整理された
- 一級建築士・二級建築士は、これらの資格者証を持たなくても各条項の検査・調査を行うことができる
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目次
建築基準法にはなぜ似た名前の検査資格がいくつもあるのか

条文を分けて読むと、検査資格が枝分かれしている理由が見えてきます。
第12条第1項・第2項が定める調査・点検は、建物の土台となる敷地や構造そのものの劣化を確認するもので、担当するのは建築物調査員(実務上は特定建築物調査員という名称で呼ばれることが多い)です。
一方、第3項が定める検査は、換気設備や排煙設備、防火戸、エレベーターといった建築設備等を対象にしており、担当するのは建築設備等検査員です。
㈱防災屋がふだんご案内している換気・排煙・非常用照明・給排水の検査は、この第3項の系統にあたります。
まずは自分が依頼したい内容が「敷地・構造」なのか「設備」なのかを切り分けることが、資格選びの出発点になります。
敷地や構造と、設備とでは、そもそも見るものが違ったんですね。
てっきり同じ人がまとめて見てくれるものだと思っていました。
はい、条文の段階で対象が分かれています。
次は建築設備等検査員の中身をもう少し詳しく見ていきましょう。
建築設備検査員と防火設備検査員・昇降機等検査員はどうやって仕事を分けているのか

実際には検査する設備によって、資格者証そのものが枝分かれしています。
㈱防災屋がご案内している換気設備・排煙設備・非常用の照明装置・給水設備及び排水設備の検査を担当するのが建築設備検査員です。
一方、防火戸や防火シャッターといった防火設備は防火設備検査員、エレベーターやエスカレーターといった昇降機等は昇降機等検査員が担当し、それぞれ別の資格者証・別の報告書が必要になります。
一つの建物に防火戸とエレベーターの両方があれば、検査を依頼する相手も分かれることになります。
「建築設備の検査を頼んだのに防火戸は見てもらえなかった」という行き違いを防ぐには、依頼したい設備がどの区分に属するかを先に確認しておくことが大切です。
うちのビルには防火シャッターもエレベーターもあります。
それぞれ別の人にお願いしないといけないんですね。
そのとおりです。
設備ごとに担当する資格が分かれていることを覚えておくと依頼漏れを防げます。
建築設備検査員と特定建築物調査員はどちらが何を見るのか

ただし実務では、この境界線の細部が最近変わった部分もあります。
特定建築物調査員は建物の敷地・構造・避難施設等(法第12条第1項)を、建築設備検査員は換気・排煙・非常用照明・給排水(同条第3項)を担当するという原則は変わりません。
ただし作動確認のように両方の調査・検査で似た内容を確認していた項目は、令和7年の告示改正で建築設備定期検査の側に一本化されました。
どちらの調査・検査で何を確認するかは、告示の改正内容によって細部が変わることがあるため、最新の告示を確認しておく必要があります。
改正の詳しい経緯は、当サイトの関連記事でも解説しています。
前は同じような確認を2回されていた気がします。
今は1回にまとまったということですね。
はい、令和7年の改正でその重複が解消されました。
詳しくは関連記事もあわせてご覧ください。
建築設備検査員と建築設備士はなにが違うのか

名前が似ているため、依頼の場面で混同されることが少なくありません。
建築設備士は建築設備に関する知識・技能について国土交通大臣が定める資格を持つ者で(建築士法第2条第5項)、新築やリフォームの設計段階で建築士から意見を求められる専門家です。
一方、建築設備等検査員は建物が完成し使われ続けている間、換気・排煙・非常用照明・給排水などの性能が落ちていないかを定期的に検査します。
どちらも建築設備に関わる資格ですが、設計段階か維持管理段階かという活躍する場面がまったく違います。
「設備の資格を持つ人」とひとくくりにせず、依頼したい内容が設計の相談なのか、既存設備の検査なのかを最初に伝えるとスムーズです。
設計の相談をする人と検査をする人が別だなんて、混同していました。
次からは依頼の内容をはっきり伝えるようにします。
それが一番確実です。
㈱防災屋にご依頼いただく際も、検査か相談かをお伝えいただければすぐにご案内できます。
資格者証を持たない一級建築士や二級建築士も検査できるのか

それは、建築士だけは別の扱いを受けているという点です。
これは建築士がもともと建物全体の構造や設備に関する専門知識を有しているとみなされているためです。
とはいえ実際の検査・調査を専門的に受託している事業者の多くは、講習を受けて資格者証の交付を受けた建築物調査員や建築設備等検査員です。
依頼する側としては、相手が建築士なのか資格者証を持つ検査員なのかにかかわらず、身分を証明できるものの提示を求めて確認することが大切です。
名前の似た資格が多い分野だからこそ、最後は提示された証明書で確認する習慣をつけましょう。
建築士の資格があれば、別の資格者証がなくても検査できるんですね。
とはいえ提示を求めることは変わらず大事なんですね。
そのとおりです。
相手の証明書を確認する習慣が、安心して任せる第一歩になります。
よくある質問
まとめ
似ている資格の違いが、これでようやく整理できました!
今度は自分の建物にどの資格の人が来ているのか、確認してみます!
それが確実な第一歩です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法第12条・第12条の2・第12条の3
- 建築士法第2条・第18条
- 建築基準法施行規則第6条
- 平成20年国土交通省告示第285号(令和7年国土交通省告示第53号による改正後)
※本記事は建築基準法・建築士法及び関係告示の現行規定にもとづき、㈱防災屋が独自に解説を作成したものです。実際にどの資格者に検査・調査を依頼すべきかは、建物の設備構成や所管の特定行政庁の指定内容によって異なりますので、個別の判断は所管の特定行政庁又は定期検査報告書の受付事務を担う関係団体に必ずご確認ください。





