停電した事務所で、机の上にろうそくを置けば手早く明かりを確保できます。
しかし、地震後は余震が続き、書類、カーテン、毛布、段ボールなどの可燃物も普段と違う場所へ集まりがちです。
結論は、BCPの非常用照明をろうそくに頼らず、電池式照明を複数の場所へ配置することです。
消防計画の火気管理と避難誘導を、BCPの停電対応へつなぎます。
停電したら、備蓄のろうそくを点けてもええんですか?
余震で倒れるため、電池式照明を優先します。
懐中電灯が少なければ、短時間だけなら大丈夫ですか?
不足する前提で分散備蓄しておきましょう。
- 停電時の明かりは電池式照明を第一選択にします。
- ろうそくは余震や接触で倒れ、可燃物へ着火するおそれがあります。
- 照明は出口、通路、待機場所へ分散配置します。
- 電池、充電、配布、回収を担当表と点検記録で管理します。
- 不足時は裸火で補わず、暗い区域から退出させます。
▼

目次
停電時にろうそくを非常用照明に使ってよいのか

消防法で事業所のろうそくが一律禁止されているわけではありませんが、災害後の不安定な環境では裸火を増やさない判断が実務的です。
消防庁の東日本大震災記録集には、停電で使用していたろうそくが余震などで転倒し、周囲の可燃物へ着火したと考えられる事例が記録されています。
横浜市の防災資料も、停電時は懐中電灯を使い、できるだけろうそくの使用を避けるよう案内しています。
灯りが必要な場面ほど、余震、混雑、離席を前提に火を使わない方法を選びます。
電池式照明が不足した場合もろうそくで埋めず、明るい区域へ集約するか、暗い区域を閉鎖します。
法律で禁止されていないなら、使ってもええんですか?
BCPではより安全な代替手段を先に決めます。
どの場所と照明手段を対象に確認するのか

階段、廊下、トイレ、機械室、備蓄庫、受付、社内待機場所、屋外への出口まで、停電中に人が通る場所を洗い出します。
照明手段は、手持ちの懐中電灯、両手が空くヘッドライト、室内を照らす電池式ランタン、蓄電池式の照明などです。
建築設備である非常用の照明装置や誘導灯は避難を支える設備であり、通常業務を続けるための作業灯とは役割が異なります。
固定設備と持出し照明を別々に数え、点灯時間と使う場所を対応させます。
型式、数量、保管場所、電池種類、充電期限に加え、誰が取りに行くかとどこへ配るかを決めます。
- 出口、階段、廊下の暗くなる位置
- 待機場所と災害対策本部の作業面
- トイレ、備蓄庫、設備室までの動線
- 懐中電灯、ランタン、ヘッドライトの数量
- 電池の種類、残量、使用期限
- 充電器と蓄電池の使用可能時間
- 配布担当者と代行者
倉庫に人数分あれば足りますか?
暗い倉庫まで取りに行けるかも確認しましょう。
火を使わない代替照明をどう配置するのか

出口まで連続して明るさを確認し、段差、曲がり角、扉、受付、トイレ前などへ照明を分散します。
移動する担当者にはヘッドライトを渡し、両手を避難誘導や初期消火に使えるようにします。
ランタンは床の中央へ置かず、蹴られず、避難幅を狭めず、可燃物を加熱しない位置へ固定します。
予備電池は照明本体と同じ場所だけに集中させず、浸水や落下の影響が異なる場所へ分けます。
照明の配置は、暗くして実際に出口まで歩かなければ確認できません。
配布後は残数と設置場所を記録し、巡回担当者と交換時刻を見える化します。
明るいランタンを入口に一つ置けば十分ですか?
段差と曲がり角まで連続して確認します。
短時間なら安全と思い込みやすいのはなぜか

ところが災害時は、余震、緊急連絡、負傷者対応、物資搬入が重なり、監視者がその場を離れる場面が生まれます。
東京消防庁は、ろうそくの転倒、周囲の燃えやすい物、衣服への着火に注意するよう案内しています。
通常時にろうそく立てを使う場合の注意事項があっても、揺れが続く事業所の停電対応では危険条件が増えます。
消防庁の文化財防火マニュアルも、線香やろうそくなどの裸火がある場所を出火危険のある場所として挙げています。
「短時間」「見張っている」「倒れにくい」は、余震と人の移動を消せる条件ではありません。
ろうそくを持ち込んだ人を責めるより、発見時に消火して回収し、代替照明を渡す手順と巡回範囲を決めます。
誰かが持ち込んで点けていたらどうしますか?
安全に消し、電池式照明と交換します。
明日から停電時の照明計画をどう確認するのか

次に、固定設備が消えた状態を想定し、災害対策本部、待機場所、トイレ、階段、出口までの配布先を平面図へ落とします。
訓練では照明を落とし、保管場所への到達、配布、点灯、避難誘導、電池交換、回収まで一続きで試します。
照明が足りない区域は使用を止め、立入禁止表示と退出基準を決めます。
内閣府の事業継続ガイドラインは、利用できる資源を踏まえて対策を実施し、教育、訓練、点検、継続的改善を行う考え方を示しています。
備蓄数だけで終えず、暗闇の中で誰がどこへ届けるかを訓練します。
結果は消防計画の避難誘導と火気管理、BCPの資源管理へ反映し、担当者と代行者、次回点検日を記録します。
- 各階の持出し照明と予備電池を数える
- 停電中に保管扉を開けられるか確認する
- 出口までの暗い段差と曲がり角を洗い出す
- 配布場所を平面図へ記入する
- 担当者と代行者を決める
- 電池交換と回収の時刻を記録する
- 不足区域の退出基準を訓練する
停電訓練で実際に配るところまで試すんですね?
配布と退出判断までが照明計画です。
よくある質問
まとめ
電池式照明の分散配置を見直します!
裸火を増やさない停電対応にしましょう。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- e-Gov法令検索 消防法第8条・第9条
- 消防庁 東日本大震災記録集
- 消防庁 国宝・重要文化財等の防火対策ガイドライン対応マニュアル
- 東京消防庁 ろうそくによる火災を防ぐために
- 横浜市 港南区災害時要援護者支援パンフレット
- 政府広報オンライン 災害時に命を守る一人ひとりの防災対策
- 内閣府 事業継続ガイドライン 令和5年3月
※本記事は公表されている法令および内閣府、消防庁、東京消防庁、自治体等の資料に基づく一般的な解説です。裸火使用の制限、非常用照明の要件、施設の運用は、建物用途、区域、地域の火災予防条例によって異なります。実際の計画変更前に建物管理規程を確認し、必要に応じて建物管理者、電気設備の専門業者、所轄消防署へ相談してください。





