泡消火設備に使う泡消火薬剤は、現場に届く前に工場や試験機関で発泡性能や消火性能を細かく試験されています。
発泡倍率や還元時間という聞き慣れない数字も、この試験の中で確かめられる基準の一部です。
低発泡と高発泡、たん白泡消火薬剤と合成界面活性剤泡消火薬剤とでは、試験の条件も合格の基準もまったく違います。
この記事では泡消火薬剤の技術上の規格を定める省令をもとに、発泡性能と消火性能を確かめる試験のしくみを整理します。
泡消火設備の点検で、発泡倍率という言葉を見かけました。
薬剤そのものの品質を試験する技術基準があります。
順番に見ていきましょう。
薬剤の種類によって基準も変わるんでしょうか。
低発泡と高発泡で試験の条件がまったく異なります。
まずは低発泡から確認します。
- 泡消火薬剤は工場や試験機関で発泡性能と消火性能を試験されてから現場に届きます
- 低発泡の泡消火薬剤は膨脹率六倍以上(水成膜は五倍以上)が基準です
- 還元時間は泡が燃焼面を覆い続けられるかを確かめる数字です
- 消火性能試験ではガソリンを使った模型火災を五分以内に消さなければなりません
- 合成界面活性剤の泡消火薬剤は低発泡と高発泡の両方で試験されます
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目次
泡消火薬剤の発泡性能はどうやって確かめるのか

決められた条件で実際に発泡させて、できた泡の量を測る試験が定められています。
水圧〇・六九メガパスカル、放水量十リットル毎分という条件で、標準発泡ノズルを使って発泡させます。
できた泡の体積が、もとの泡水溶液の体積の何倍になったかを膨脹率と呼び、たん白泡消火薬剤と合成界面活性剤泡消火薬剤は六倍以上、水成膜泡消火薬剤は五倍以上あれば合格です。
同じ試験条件でも、薬剤の種類によって合格ラインが変わる点は覚えておきたいところです。
水圧まで決まっているとは思わず、容器のラベルだけで判断するのかと思っていました。
ラベルだけでなく実際に発泡させた結果で判断します。
次は還元時間を見てみましょう。
還元時間はなにを確かめるための数字なのか

そこでもう一つ、泡から水分が抜けていく速さを確かめる試験が用意されています。
発泡させた直後の泡水溶液の量の二十五パーセントが、泡から水分となって抜け落ちるまでにかかる時間を測ります。
この時間が長いほど泡は崩れにくく燃焼面を覆い続けられると考えられ、低発泡の泡消火薬剤は一分以上が基準です。
還元時間が短い泡は、燃えている面に届く前や届いた直後に崩れてしまい、消火の効果が続きにくくなります。
泡がすぐ崩れてしまうと、せっかく発泡しても意味が無いということですね。
泡の持続力を示す数字だと考えてください。
次は実際に火が消えるかどうかです。
泡消火薬剤は実際に火を消せるかどうかも試験されるのか

実際に火を消せるかどうかを確かめる、もう一段階の試験が控えています。
水とガソリンを入れた模型に点火し、一分後から泡消火薬剤を五分間連続して放射し、その間に消火できるかを確かめます。
消火までにかかった時間が五分以内であることに加え、発泡を終えてから十五分間は炎を近づけても再燃しないことまで求められます。
発泡性能の数字だけでなく、実際の消火力まで確認したうえで合格した薬剤だけが現場で使われているということです。
数字の基準だけでなく、実際に燃やして確かめているとは思いませんでした。
再燃しないことまで確認します。
次は合成界面活性剤の泡消火薬剤です。
合成界面活性剤の泡消火薬剤はなぜ発泡性能を二重に試験されるのか

合成界面活性剤泡消火薬剤は、これに加えてもう一つの試験を受けます。
水圧は〇・一メガパスカル、風を送る風量十三立方メートル毎分という条件で、専用の標準発泡装置を使って発泡させます。
合格ラインも膨脹率五百倍以上、還元時間三分以上と、低発泡の基準とは桁が違います。
合成界面活性剤泡消火薬剤は、部屋全体を泡で満たす高発泡の用途にも使われるため、低発泡と高発泡の両方の基準をクリアしなければなりません。
同じ薬剤なのに、二つの試験に合格しないといけないんですね。
用途が低発泡と高発泡の両方にまたがるためです。
最後に消火性能の違いを見ましょう。
高発泡の消火性能試験は低発泡とどこが違うのか

使う模型も、消火にかけられる時間も異なります。
水とガソリンの量も少なく、点火から三十秒後に発泡を始め、消火までの持ち時間は三分以内と低発泡より短く区切られています。
これとは別に、炎が残らないことや発泡を終えてから一定時間は再燃しないことを確かめる、もう一つの模型を使った試験も課されます。
低発泡と高発泡で試験の中身がここまで違うのは、部屋を泡で満たす高発泡ならではの使われ方が理由だと考えられます。
模型も時間も別で、用途に合わせて試験そのものを分けているんですね。
その理解で問題ありません。
最後によくある質問を見てみましょう。
よくある質問
まとめ
泡消火薬剤にもこんな試験があったんですね。
点検のときに聞いてみます!
発泡性能と消火性能の両方が合格の条件です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 泡消火薬剤の技術上の規格を定める省令(昭和五十年自治省令第二十六号)第十二条・第十三条
- 消防法施行規則第十八条
※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。実際の試験結果報告書の記載方法や個別の判定は、点検資格者や所轄消防署にご確認ください。





