同じ敷地に本館と別館が並んでいる。
所有者は同じなのに、防火管理者は棟ごとに要ると言われた――そんな相談が来ることがあります。
逆に、権原がまったく同じ相手にそろっているなら、複数の建物でも1つとして扱われる場面もあります。
質疑応答が示したのは「管理について権原を有する者が同一の者」という言葉ひとつで結論が入れ替わるという線引きです。
うちは本館と別館があるんですが、両方とも同じ会社が持っています。
収容人員はそれぞれ50人未満なので、防火管理者はいらないですよね。
敷地と管理権原の関係によっては、合算して防火管理者が必要になることがあります。
所有者が同じなら、いつも合算されるということですか。
実はそこが違います。
見るのは所有者ではなく管理権原が同一かどうかです。
- 同一敷地内で管理権原者が同一の防火対象物は、消防法施行令第2条により一の防火対象物とみなされます
- 対象になるのは「同一敷地内」と「管理権原が同一」の2つの要件をそろえた場合です
- 所有者が同じでも、各棟の管理権原がA・B・EとC・D・Eのように分かれていれば適用を受けません
- 管理権原者が同一の複数棟は、甲種・乙種の判定に使う面積を合算してよいとされています
- 用途が異なる棟をまとめる場合は、令別表第一(16)項として扱ってよいとされています
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目次
同一敷地内の複数の建物はなぜ1つの防火対象物とみなされることがあるのか

この抜け道をふさぐために置かれているのが消防法施行令第2条です。
消防法施行令第1条は防火管理者を選任すべき防火対象物の要件として収容人員50人以上などを定めていますが、この基準を1棟ごとに小さく分けて逃れることを防ぐのが第2条の役割です。
昭和41年の政令改正で第1条・第2条の規定が整備され、この考え方が明確にされました。
だから複数の棟を持つ敷地では、まず合算の対象になるかもしれないという前提で確認を始める必要があります。
うちは敷地内に小さい倉庫が3棟あるだけなので、対象外だと思っていました。
棟の大きさではなく、合算した収容人員で見る必要があります。
この規定が適用される条件はどこにあるのか

条文を分解すると、要件は2つだけです。
ひとつは敷地が同一であること、もうひとつは管理権原者が同一であることです。
どちらか一方が欠ければ、第2条は適用されず、棟ごとに判定します。
「同じ会社が持っている」というだけでは足りず、実際に管理する権原が同じ相手に及んでいるかを見る必要があります。この管理権原がどこまで一致していれば同一とみなされるのか、続けて実例で確認します。
敷地さえ同じなら、権原の話は関係ないと思っていました。
敷地の一致だけでは足りません。
権原の一致まで確認します。
所有者が同じでも1つの防火対象物にならないのはどんな場合か

消防庁への疑義照会は、そうではない実例を示しました。
この事例では、建物の所有者は同じ人物(E)です。しかし甲棟はA・B・Eの3人、乙棟はC・D・Eの3人が管理権原を持ち、両者の顔ぶれは一致していません。
「管理について権原を有する者が同一の者」という条文の言葉は、登記簿上の所有者ではなく、実際に管理する権原を持つ人の顔ぶれで判定します。
所有者が同じだからと安心せず、各棟の管理規約や賃貸借契約で権原者の範囲を確認しておく必要があります。
持ち主が同じでも、管理を任せている相手が違えば別扱いなんですね。
そのとおりです。
契約書で権原の範囲を確かめてみてください。
管理権原者が同じ複数棟はどう合算して判定するのか

面積と用途、2つの扱いが消防庁の執務資料で示されています。
管理権原者が同一の複数棟は、甲種防火対象物か乙種防火対象物かを判定するときの面積を、棟ごとではなく合算した数値で見ます。
さらに各棟の用途がばらばらでも、令別表第一(16)項として扱ってよいとされました。
面積を合算した結果、乙種で足りていた資格が甲種必須に変わることもあるため、合算後の数値で改めて確認してください。
別々に建てた倉庫と事務所でも、まとめて数えられるんですね。
はい。
合算した面積で甲種・乙種が変わることもあるので、必ず計算し直してください。
自分の建物が対象かどう確かめればよいのか

確認する順番を整理します。 登記簿と契約書の両方を見ます。
まず、敷地が同一かどうかを敷地図や登記簿で確認します。道路や水路で分断されている場合は、別敷地として扱われることがあります。
次に、各棟の管理規約・賃貸借契約・委託契約を確認し、防火管理上の権原が実際に誰に及んでいるかを洗い出します。
所有者が同じでも権原者が違えば合算されず、逆に所有者が違っても管理権原が実質的に同じなら合算の対象になり得ます。
判断に迷うときは、敷地図と権原関係を整理した資料を持って所轄消防署に相談するのが確実です。
まずは敷地図と契約書を並べて確認してみます。
それが一番の近道です。
迷ったら所轄消防署にも相談してください。
よくある質問
まとめ
所有者ではなく権原で見るという考え方が、よく分かりました。
すっきりしました。
敷地の同一性と管理権原の同一性、この2つを順番に確認すれば大きく外しません。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 同一敷地内の防火対象物の解釈について(昭和54年6月22日付消防予第118号〔3〕 予防救急課長から各都道府県消防主管部長あて回答)
- 執務資料の送付について〔抄〕(平成15年9月17日付消防安第177号 消防庁防火安全室長から各都道府県消防主管部長あて)別添1「防火管理に関する執務資料について」問13
- 消防法施行令第2条
- 消防法第8条第1項
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





