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蓄電池設備の充電装置はなぜリチウムイオン蓄電池だけ充電方式が違うのか|トリクル充電が使えない理由と表示・点検装置を解説

蓄電池設備の充電方式はなぜ電池の種類で変わるのか

蓄電池設備というと停電時に電気を送ることばかりに目が行きがちです。
実は充電のしかたそのものにも告示で細かい基準があります。
しかもリチウムイオン蓄電池だけは、他の蓄電池と充電方式が違います。
この記事では蓄電池設備の充電装置の基準を条文に沿って解説します。

うちは非常電源に蓄電池設備を使っています。
充電のやり方まで消防の基準で決まっているのでしょうか。

はい充電装置の構造にも告示で基準があります。
今日はリチウムイオン蓄電池と他の蓄電池の違いを中心に見ていきましょう。

リチウムイオン蓄電池だけ特別なルールがあると聞きました。

はい充電方式そのものが他の蓄電池と違います。
まずは基準の入口から見ていきます。

この記事の結論
  • 充電装置の基準は消防法施行規則第12条第1項第4号ハと蓄電池設備の基準(昭和48年消防庁告示第2号)第二・三にあります。
  • 常用電源が復旧すれば、直交変換装置を持たない蓄電池設備は自動的に常用電源へ戻ります
  • リチウムイオン蓄電池以外は自動充電のうえ、トリクル充電又は浮動充電に自動で切り替わります。
  • リチウムイオン蓄電池は定電流定電圧充電か浮動充電のみで、トリクル充電の選択肢がありません。
  • 充電中である旨の表示装置と、充電状態を点検できる装置は別々の要件として求められています。

蓄電池設備の充電方式の基準を自動で復帰トリクル浮動浮動のみ表示と点検の4段階でまとめた図解

蓄電池設備の充電装置にはなぜ停電復旧後の自動切替まで求められるのか

蓄電池と自動切替スイッチを示す蓄電池設備の外観図
蓄電池設備は停電時に非常電源へ切り替わるだけでは終わりません。
常用電源が戻ってきたときの動きまで、条文で決められています。
消防法施行規則第12条第1項第4号ハ(ロ) 直交変換装置を有しない蓄電池設備にあつては、常用電源が停電した後、常用電源が復旧したときは、自動的に非常電源から常用電源に切り替えられるものであること。
停電時だけでなく、復旧したときの切替えまで自動で行うのが原則です。
直交変換装置を持たない蓄電池設備が対象で、常用電源が戻れば手を出さなくても元に戻ります。
この構造・性能の細かな基準は消防庁長官が定める基準、つまり蓄電池設備の基準(昭和48年消防庁告示第2号)に委ねられています。
「切り替わる」ことだけでなく、充電のしかたそのものにも告示側の基準が続いています。

停電から復旧したとき、誰かが操作しなくても元に戻るのですね。

はい自動的に常用電源へ戻ります
次はリチウムイオン蓄電池以外の充電のしかたです。

リチウムイオン蓄電池以外の充電装置はどう充電するのか

蓄電池の列とトリクル充電浮動充電を切り替える充電装置の図
停電から復旧したあと、蓄電池は空になったままでは次の停電に備えられません。
だからこそ充電装置にも自動化の基準があります。
蓄電池設備の基準(昭和48年消防庁告示第2号)第二 三(一) リチウムイオン蓄電池以外の蓄電池を用いる蓄電池設備の充電装置にあつては、自動的に充電でき、かつ、充電完了後は、トリクル充電又は浮動充電に自動的に切り替えられるものであること。ただし、切替えの必要がないものにあつてはこの限りでない。
鉛蓄電池やアルカリ蓄電池などは、充電が終わったら自動でトリクル充電か浮動充電に切り替わります。
トリクル充電は微小な電流を流し続けて自然放電を補う方式、浮動充電は負荷と充電装置を並列につないだまま常に補い続ける方式です。
どちらを選ぶかは設備の設計次第で、切替えの必要がない構造であればこの限りではありません。
ここまではいわば従来型の蓄電池に共通するルールです。

うちの蓄電池は普通の鉛蓄電池です。
充電が終わったらそのまま放置してよいのでしょうか。

いいえトリクル充電か浮動充電に自動で切り替わる構造が前提です。
次はリチウムイオン蓄電池の場合です。

リチウムイオン蓄電池の充電装置はなぜトリクル充電を使わないのか

リチウムイオン蓄電池と定電流定電圧充電の装置の図
リチウムイオン蓄電池は、他の蓄電池と同じ感覚で充電すると劣化を招きやすい性質があります。
そのため充電装置に求められる方式も変わります。
蓄電池設備の基準(昭和48年消防庁告示第2号)第二 三(二) リチウムイオン蓄電池を用いる蓄電池設備の充電装置にあつては、定電流定電圧充電により充電できるもの又は自動的に充電でき、かつ、充電完了後は、浮動充電に自動的に切り替えられるものであること。
リチウムイオン蓄電池には、トリクル充電という選択肢がありません。
使えるのは定電流定電圧充電、または自動充電のあと浮動充電へ切り替える方式のどちらかだけです。
リチウムイオン電池は過充電に弱く、微小な電流を流し続けるトリクル充電のような方式では劣化や発熱のリスクが高まるためと考えられます。
同じ「蓄電池設備」という名前でも、電池の種類によって充電装置の中身は別物になります。

うちはリチウムイオン蓄電池への切替えを検討しています。
充電装置もそのまま使えるのでしょうか。

いいえ充電方式そのものが違うので充電装置の見直しが必要です。
次は表示と点検の基準です。

充電中の表示灯と点検装置を忘れていないか

充電中の表示灯と充電状態を点検する計器の図
正しい方式で充電できていても、それが見えなければ点検のしようがありません。
告示は充電装置に付ける表示・点検の仕組みも定めています。
蓄電池設備の基準(昭和48年消防庁告示第2号)第二 三(五) 充電中である旨を表示する装置を設けること。 同(六) 蓄電池の充電状態を点検できる装置を設けること。
充電中かどうかは、見た目で分かる表示装置が無ければ確認できません。
あわせて充電状態を点検できる装置も必要で、この二つは別の要件として両方満たす必要があります。
さらに蓄電池設備には、自動的に又は手動で容易に均等充電を行える装置も別途求められており、均等充電を行わなくても機能に異常を生じないものは対象外です。
充電方式の基準を満たしていても、この付帯設備が抜けていれば基準全体を満たしたことにはなりません。

充電中のランプは付いていますが、充電状態を点検する装置までは意識していませんでした。

はい表示と点検は別々の要件です。
最後は点検で確認すべき手順です。

明日からなにを確認すればよいのか

点検チェックリストと計器盤の図
基準を知っているだけでは足りず、実際に現場で確かめることが大切です。
点検のときに見るべき順番を整理しておきます。
  • 蓄電池が鉛・アルカリ・リチウムイオンのどれかを確認し、対応する充電方式が備わっているかを見る
  • 充電完了後にトリクル充電又は浮動充電へ自動的に切り替わっているかを実際に確認する
  • リチウムイオン蓄電池の場合は、定電流定電圧充電または浮動充電への切替えが行われているかを確認する
  • 充電中である旨の表示装置と、充電状態を点検できる装置が正常に動いているかを見る
  • 均等充電装置がある場合は、作動状況を点検記録に残す
チェックの積み重ねが、告示の基準を満たしているかどうかの唯一の証拠になります。
電池の交換や増設のときは、充電装置ごと見直す必要があるかどうかも忘れずに確認してください。

点検のたびに充電方式まで確認すればよいのですね。

はい充電方式と表示・点検装置まで毎回見てください。

よくある質問

Q蓄電池設備の充電装置には、どんな蓄電池でも同じ基準が使えますか?
Aいいえリチウムイオン蓄電池だけ充電方式が違います。他の蓄電池は自動充電後にトリクル充電又は浮動充電へ切り替わる構造が基準です。
Qトリクル充電と浮動充電はどう違うのですか?
Aトリクル充電は微小な電流を流し続けて自然放電を補う方式、浮動充電は負荷と充電装置を並列に接続したまま常に補い続ける方式です。
Qリチウムイオン蓄電池の充電装置はなぜ方式が限られるのですか?
A過充電に弱い性質があるためと考えられ、定電流定電圧充電か浮動充電のどちらかに限られています。
Q充電中の表示装置と充電状態を点検できる装置は同じものでよいですか?
Aいいえ、告示では別々の要件としてそれぞれ設けることが求められています。

まとめ

充電装置の基準は消防法施行規則第12条第1項第4号ハと蓄電池設備の基準(昭和48年消防庁告示第2号)第二・三にあります。
常用電源が復旧すれば、直交変換装置を持たない蓄電池設備は自動的に常用電源へ戻ります
リチウムイオン蓄電池以外は自動充電のうえ、トリクル充電又は浮動充電に自動で切り替わります。
リチウムイオン蓄電池は定電流定電圧充電か浮動充電のみで、トリクル充電の選択肢がありません。
充電中である旨の表示装置と、充電状態を点検できる装置は別々の要件です。
均等充電装置も基準に含まれる別の設備として求められています。
電池の種類を変えるときは、充電装置ごと見直す必要があるかを確認してください。

充電方式の違いから点検までこれでよく分かりました!

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第12条第1項第4号ハ
  • 蓄電池設備の基準(昭和48年消防庁告示第2号)第二 一(六) 三(一)(二)(五)(六)

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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