消防用設備等の非常電源として、鉛蓄電池やアルカリ蓄電池に代わってリチウムイオン蓄電池を使う建物が増えています。
ところが平成26年の告示改正で、リチウムイオン蓄電池には鉛蓄電池と同じ計算式が使えなくなりました。
「最低許容電圧」という言葉を知らないまま点検すると、肝心な確認を見落とすおそれがあります。
今回はリチウムイオン蓄電池の最低許容電圧がなぜ表示義務になったのか、告示は何を変えたのかを解説します
うちの自家発電の予備電源、最近リチウムイオンの蓄電池に交換したんやけど。
ラベルに最低許容電圧とか書いてあって、これ何なんかいな。
それはリチウムイオン蓄電池を使う設備に義務付けられた表示です。
平成26年の告示改正で追加されました。
鉛蓄電池のときは、そんな表示は見たことなかった気がするけど。
はい。
鉛蓄電池と違って一律の計算式が無いための措置なんです。
- 平成26年4月14日の消防庁告示第10号で、蓄電池設備の基準(昭和48年消防庁告示第2号)が改正された
- 産業用リチウム二次電池のJIS規格制定を受け、リチウムイオン蓄電池の構造・性能基準が新たに整備された
- リチウムイオン蓄電池以外の蓄電池の最低許容電圧は公称電圧の80パーセントと定められている
- リチウムイオン蓄電池には一律の計算式が無く、組電池当たりの公称電圧・定格容量・最低許容電圧の表示義務が新設された
- 点検の際は鉛蓄電池のように計算せず、銘板の表示値を確認することが欠かせない
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目次
リチウムイオン蓄電池の告示改正はなぜ必要になったのか

その技術基準は、蓄電池の種類が増えるたびに見直されてきました。
それまで「蓄電池設備の基準」は鉛蓄電池やアルカリ蓄電池を念頭に作られており、リチウムイオン蓄電池はポータブル機器用のJIS規格に適合するものしか想定されていませんでした。
大型の蓄電池システムに使う産業用のリチウム二次電池にJIS規格が制定されたことで、消防用設備の非常電源としての採用が現実的になりました。
そこで消防庁は平成26年4月14日、告示第10号でリチウムイオン蓄電池の構造・性能・最低許容電圧の扱いをまとめて整備したのです。
鉛蓄電池からリチウムイオンに変えただけで、告示まで関係あるとは思わへんかったわ。
はい。
使う蓄電池の種類が変わると、適用される基準も変わります。
どんな蓄電池設備のどんな蓄電池が対象になるのか

まずは根拠になる条文を確認します。
屋内消火栓設備・自動火災報知設備・スプリンクラー設備など、施行規則が非常電源として蓄電池設備を認めている設備であれば、リチウムイオン蓄電池を採用した時点でこの基準が関わってきます。
条文にある「消防庁長官が定める基準」とは、まさに今回改正された蓄電池設備の基準(昭和48年消防庁告示第2号)のことです。
鉛蓄電池やアルカリ蓄電池からリチウムイオン蓄電池に更新した設備は、設置場所を問わずこの基準の対象になります。
うちは自動火災報知設備の予備電源も蓄電池なんやけど、これも関係あるんかいな。
はい。
自動火災報知設備の蓄電池設備にも同じ基準が適用されます。
改正でリチウムイオン蓄電池の基準は何が変わったのか

告示の条文で確認しましょう。
まず、産業用の大型リチウムイオン蓄電池を対象にしたJIS規格への適合が、蓄電池の種類として新たに認められました。
次に、最低許容電圧という言葉の定義が明確にされました。
そして、リチウムイオン蓄電池を用いる蓄電池設備には、最低許容電圧そのものを表示する義務が新しく設けられました。
鉛蓄電池・アルカリ蓄電池の規定を土台にしながら、リチウムイオン蓄電池だけの扱いが枝分かれした改正だといえます。
JISの規格がまず追加されて、そこから表示の話につながってるんやな。
そのとおりです。
次の章で、その表示の中身を詳しく見ていきましょう。
最低許容電圧の確認で見落としやすいのはどこか

ここを混同すると、点検の判断を誤ります。
鉛蓄電池やアルカリ蓄電池は、公称電圧の80パーセントという一律の計算式で最低許容電圧が決まります。
ところがリチウムイオン蓄電池には、この一律の計算式が定められていません。
その代わりに、組電池当たりの公称電圧・定格容量・最低許容電圧の3項目を機器本体に表示することが義務付けられ、数値は表示ラベルを見て確認する仕組みになっています。
点検員が鉛蓄電池の感覚で「公称電圧の80パーセントだろう」と暗算してしまうと、実際の表示値とずれるおそれがあります。
てっきり、どの電池でも公称電圧の80パーセントで計算すればええと思ってたわ。
リチウムイオン蓄電池だけは計算せず、表示された数値を見ます。
ここが一番の見落としどころです。
点検や新設のときに何を確認すればよいのか

特別な工具は要りません。
組電池当たりの公称電圧・定格容量・最低許容電圧の3つが表示されているかを見て、点検票にその数値をそのまま記録します。
新設や更新の工事では、施工業者にJIS規格(産業用はJISC8715-1・8715-2)への適合を確認してもらいましょう。
充電装置についても、定電流定電圧充電か浮動充電への自動切り替えに対応しているかを合わせて確認します。
表示が見当たらない、数値の意味が分からないといった場合は、無理に自己判断せず所轄消防署や設置業者に相談するのが確実です。
今度の点検、うちの蓄電池のラベルも銘板の3項目を確認してみるわ。
それが一番確実です。
見慣れない表示があれば、遠慮なく確認してください。
よくある質問
まとめ
リチウムイオン蓄電池のラベル、今度からちゃんと見るようにするわ。
組電池ごとの数値を確認するだけで安心感が変わります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防予第167号(平成26年4月14日・消防庁予防課長)「蓄電池設備の基準の一部を改正する件等の公布について」第一
- 蓄電池設備の基準(昭和48年消防庁告示第2号、最終改正 平成26年4月14日消防庁告示第10号)第二・第三・附則
- 消防法施行規則第12条第1項第4号・第24条第4号
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





