不活性ガス消火設備やハロゲン化物消火設備の点検で、配管の途中にある選択弁を見たことはありませんか。
消防法施行規則は選択弁そのものの構造を条文で直接定めず、消防庁長官が定める基準に委ねています。
その基準の中身を定めているのが平成7年消防庁告示第2号です。
この記事では告示が定める試験の考え方と、現場で確認すべき手順を解説します。
点検のとき配管の途中に弁がいくつも並んでいて驚きました。
それは、防護区画ごとに配管を切り替える選択弁です。
設置基準は施行規則にありますが、部品自体の基準は別に定められています。
部品そのものの基準は誰が決めているのですか。
消防庁長官が定める基準=告示の試験項目で個別に確認します。
順番に見ていきましょう。
- 不活性ガス消火設備・ハロゲン化物消火設備・粉末消火設備の選択弁は、消防庁長官が定める基準に適合するものでなければなりません。(消防法施行規則第19条第5項第11号ニ等)
- 基準を定めるのが平成7年消防庁告示第2号(不活性ガス消火設備等の選択弁の基準)です。
- 選択弁は常時閉止状態で、開放装置に加えて手動でも容易に開放できる構造でなければなりません。
- 選択弁は耐圧試験・気密試験・作動試験の3つの試験に合格しなければなりません。
- 選択弁には製造者名・製造年・耐圧試験圧力値など表示すべき事項が定められています。(告示第8)
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目次
選択弁の基準はどこで定められているのか

条文は「消防庁長官が定める基準に適合するものであること」とだけ求めています。
この告示は、消防法施行規則(昭和三十六年自治省令第六号)第19条第5項第11号ニ、第20条第4項第10号及び第21条第4項第11号に規定する不活性ガス消火設備、ハロゲン化物消火設備及び粉末消火設備の選択弁の基準を定めるものとする。
告示の正式名称は不活性ガス消火設備等の選択弁の基準で、不活性ガス消火設備・ハロゲン化物消火設備・粉末消火設備という3種類の消火設備に共通して適用されます。
もともとは二酸化炭素消火設備だけを対象にしていましたが、平成13年の改正で現在の名称に改められました。
つまり施行規則は「基準に適合すること」までしか定めておらず、具体的な数値や試験方法はこの告示が担っています。
選択弁を交換するときや点検するときは、まずこの告示が根拠になっていることを押さえてください。
条文には試験の数字が書かれていないのですね。
具体的な数値はすべて告示のほうにあります。
次に構造の要件から見ていきましょう。
どの消火設備の選択弁が対象になるのか

まずは共通して求められる構造の要件を確認します。
選択弁の構造及び機能は、次に定めるところによる。一 常時閉止状態にあって、電気式、ガス圧式等の開放装置により開放できるもので、かつ、手動によっても容易に開放できるもの(開放装置を手動により操作するものを含む。)であること。二 手動により操作する部分(開放装置を操作する部分を含む。)には、操作の方向又は開閉位置を表示すること。(以下略)
選択弁は常時閉止状態にあり、電気式やガス圧式の開放装置で自動的に開くだけでなく、手動によっても容易に開放できる構造でなければなりません。
手動で操作する部分には、操作の方向や開閉の位置を表示することも求められています。
材質についても、弁箱はJISに適合するものか、それと同等以上の強度・耐食性を持つものに限られ、さびやすい部分には防錆処理が必要です。
粉末消火設備に用いる選択弁は、仕切弁や玉形弁のような詰まりやすい構造を使えません。
停電したら選択弁は動かなくなるのですか。
手動でも容易に開放できることが条件になっています。
電気式でも手動操作の経路が必ず用意されています。
選択弁には何回の圧力試験が課されるのか

まず水を使う耐圧試験の考え方を見てみます。
選択弁の耐圧試験は、次に定めるところによる。一 弁箱は、(略)最高使用圧力(略)の1.5倍の水圧力を2分間加えた場合に、漏れ又は変形を生じないものであること。二 弁を閉止した状態で、弁の一次側に、(略)最高使用圧力の1.5倍の水圧力を2分間加えた場合に、損傷等を生じないものであること。
耐圧試験は弁箱と制御部それぞれに最高使用圧力の1.5倍の水圧を2分間加え、漏れや損傷が無いことを確かめる試験です。
気密試験は水の代わりに窒素ガスや空気圧を使い、弁を開いた状態と閉じた状態の両方で5分間の保持を確認します。
作動試験は消火設備の種類ごとに定められた上限値と下限値の圧力を弁の一次側にかけ、開放装置と手動操作の両方で確実に開くかを確かめます。
最高使用圧力の基準は、低圧式か蓄圧式か加圧式かなど設備の運転方式ごとに定義が異なる点に注意が必要です。
水圧試験だけで足りると思っていました。
気密試験と作動試験も別に課されています。
実際に開くかどうかまで確かめる試験です。
等価管長の基準はなぜ複雑なのか

ここは弁の種類によって基準の作り方が変わります。
選択弁は、水により等価管長を測定した場合に、その値が次に掲げるところによること。一 ボール弁(フルボアのものを除く。)にあっては、50メートル以下であること。二 ボール弁以外のものにあっては、呼び径50以下のものの場合には50メートル以下、呼び径65以上のものの場合には100メートル以下であること。三 ボール弁のうちフルボアのものにあっては、呼び径及び鋼管の種別に応じ、次の表に掲げる値であること(略)。
フルボアではないボール弁は50メートル以下、ボール弁以外の弁は呼び径によって50メートルまたは100メートル以下という上限で管理されます。
一方でフルボアのボール弁だけは、呼び径と鋼管の種別(配管用炭素鋼鋼管かスケジュール40か80か)の組み合わせごとに、個別の数値が表で定められています。
この表の数値は呼び径が大きくなるほど大きくなり、同じ呼び径でも鋼管の種別によってわずかに変わります。
現場でこの数値を直接測ることはできないため、選択弁のカタログや試験成績書で確認することになります。
ボール弁ならどれも同じ扱いだと思っていました。
フルボアかどうかで扱いが変わります。
迷ったらメーカーの試験成績書を確認してください。
選択弁の表示は何を確認すればよいのか

選択弁本体には、次の事項が見やすい箇所に消えないよう表示されています。
選択弁には、次に掲げる事項を見やすい箇所に容易に消えないよう表示すること。一 製造者名又は商標 二 製造年 三 耐圧試験圧力値 四 窒素、IG-55又はIG-541を放射する不活性ガス消火設備に用いるものにあっては、作動試験の下限値 五 型式記号 六 流体の流れ方向(流れ方向に制限のない場合は除く。)
製造者名・製造年・耐圧試験圧力値・型式記号・流体の流れ方向の表示が消えていないかを目視で確かめます。
窒素やIG-55・IG-541を放射する不活性ガス消火設備の選択弁には、作動試験の下限値も表示されているはずです。
表示が薄れて読めない場合は、設備図面や試験成績書と照らし合わせて型式を特定し、点検業者に相談してください。
表示の有無は日常の巡視でも確認できるので、防火管理者自身の点検項目に加えておくと安心です。
表示を見るだけで試験の内容までは分からないですよね。
試験成績書は別途メーカーに保管されています。
表示は製品を特定する手がかりと考えてください。
よくある質問
まとめ
次の巡視で選択弁の銘板を確認します!
選択弁は試験と表示で基準適合を確認します。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 不活性ガス消火設備等の選択弁の基準(平成7年1月12日消防庁告示第2号、最終改正:令和元年6月28日消防庁告示第2号)
- 消防法施行規則(昭和三十六年自治省令第六号)第19条第5項第11号、第20条第4項第10号、第21条第4項第11号
※本記事は公表されている法令および消防庁告示に基づく一般的な解説です。個別の製品が基準に適合しているかどうかはメーカーの試験成績書で確認してください。設置や交換を計画する際は、必ず所轄消防署または専門業者にご確認ください。





