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渦電流探傷試験はなぜ屋外貯蔵タンクの内部点検に使えるようになったのか|対比試験片の基準傷と適用条件を解説

渦電流探傷試験なら屋外貯蔵タンクの内部点検をコーティングのまま行えることを示すアイキャッチ画像

屋外タンク貯蔵所の底部の溶接継手を確認する内部点検では、これまで磁粉探傷試験か浸透探傷試験のどちらかしか選べず、既存のコーティングを剥がす作業が避けられませんでした。
令和7年12月、危険物の規制に関する規則が改正され、条件を満たせば渦電流探傷試験という新しい選択肢が加わりました。
コーティングを保ったまま底部の状態を確認できる場面が増える一方で、対象になる条件や合否の決め方を誤解すると現場でつまずきます。
どんなタンクが対象になり、どこまでコーティングを剥がさずに済むのかを、この記事で確認しておきましょう。

屋外タンクの内部点検のたびに、底部の溶接継手のコーティングを剥がすのが正直つらいんです。

実は令和7年12月、底部の溶接継手の試験方法が増えました。
コーティングを剥がさずに済む場合があるんです。

それは初耳です。
どんな試験なんですか。

渦電流探傷試験という新しい方法です。
条件を満たせば、今より手間が減りますよ。

この記事の結論
  • 危険物の規制に関する規則の一部改正(令和7年総務省令第112号)により、令和7年12月24日から特定屋外貯蔵タンクの底部の溶接継手の試験に渦電流探傷試験が加わった
  • 対象は磁粉探傷試験等で既に合格基準への適合が確認された継手で、コーティングがないか非磁性かつ非導電性で傷のないコーティングに限られる。
  • 規則第62条の5に基づく内部点検にも渦電流探傷試験を適用して差し支えない。
  • 合否は対比試験片に作った基準傷(長さ4.0mm・深さ1.5mm)の検出信号を超えるかどうかで判定する
  • 新設・取替補修・重ね補修・溶接部補修で新たに施工された継手には、引き続き磁粉探傷試験又は浸透探傷試験が必要。

渦電流探傷試験の合格基準を対象確認基準傷の測定継手の走査検出信号の比較という四つの手順で示す図解

渦電流探傷試験はなぜ底部の溶接継手の試験に加わったのか

屋外貯蔵タンクと新しい通知の発出を示すイメージ
屋外タンク貯蔵所の底部の溶接継手の試験は、長らく磁粉探傷試験と浸透探傷試験の二択でした。
令和7年の年末、この選択肢に新しい試験方法が加わりました。
消防危第257号 「危険物の規制に関する規則の一部改正に伴う屋外貯蔵タンクにおける渦電流探傷試験に関する運用について」(令和7年12月23日) 危険物の規制に関する規則の一部を改正する省令(令和7年総務省令第112号)が本日公布され、令和7年12月24日から施行されることとなりました。今回の改正は、特定屋外貯蔵タンク(以下「タンク」という。)の側板とアニュラ板(略)、アニュラ板とアニュラ板、アニュラ板と底板及び底板と底板との溶接継手(以下「底部の溶接継手」という。)に対する試験方法に、渦電流探傷試験を新たに追加するものです。
試験方法が一つ増えただけで、従来の試験が廃止されたわけではありません。
背景にあるのは「令和6年度新技術を活用した屋外貯蔵タンクの効果的な予防保全に関する調査検討会」の検討結果です。
座長は東京電機大学工学部機械工学科の辻裕一特定教授が務めました。
検討会の結果を踏まえ、消防危第257号(令和7年12月23日、消防庁危険物保安室長発出)に別記としてガイドラインが示されています。
底部の溶接継手を確認するたびにコーティングを剥がしていた現場の負担を減らす狙いがあります。

試験方法が増えたのは分かりましたが、
うちのタンクにもすぐ使えるんですか。

対象になる条件が決まっています。
次の項目で確認しましょう。

どんな屋外貯蔵タンクが渦電流探傷試験の対象になるのか

コーティングの有無が異なる二枚の試験面のイメージ
渦電流探傷試験は、どんな溶接継手にでも自由に使えるわけではありません。
ガイドラインは対象となる条件を示しています。
別記「渦電流探傷試験を活用した屋外貯蔵タンクの底部の検査等に係るガイドライン」 第2 渦電流探傷試験の対象は、次の1に該当し、かつ、2又は3のいずれかに該当する底部の溶接継手(略)であること。1 消防法第11条の2に基づく完成検査前検査又は消防法第14条の3に基づく保安検査において、規則第20条の8に定める磁粉探傷試験又は浸透探傷試験(以下「磁粉探傷試験等」という。)を行い、合格の基準に適合していることが確認されているもの。2 タンクの試験面にコーティングを有しないもの。3 タンクの試験面にコーティングを有するものにあっては、当該コーティングが非磁性かつ非導電性であり、膨れ、割れ、剥離、傷又は異物の混入がないもの
対象になるのは、既に合格が確認されている継手だけです。
完成検査前検査や保安検査で磁粉探傷試験等に既に合格している継手であることが、まず条件の一つです。
そのうえで、試験面にコーティングがないか、非磁性かつ非導電性で膨れ・割れ・剥離・傷・異物の混入がないコーティングであることが求められます。
コーティングを除去した試験面は、コーティングがない場合として扱えます。

うちのタンクは何年も前に検査を通っているので、
条件には当てはまりそうです。

コーティングの状態も忘れずに確認してくださいね。
次は合否の決め方を見てみましょう。

対比試験片と合否の基準に、ガイドラインは何を求めているのか

基準傷のある試験片と探傷器のイメージ
渦電流探傷試験の合否は、目視ではなく検出信号の大きさで判定します。
基準になるのは「対比試験片」に作った小さな傷です。
別記ガイドライン 第3 対比試験片について 1 対比試験片は、タンクの材質と同材質を用いて作製すること。ただし、タンクの材質と日本産業規格(以下「JIS」という。)G3106「溶接構造用圧延鋼材」のSM400等の一定の品質が保証された鋼板を比較して、判定の基準となる傷(略)の検出性に影響がない場合は、この限りではない。4 対比試験片には基準傷を設けること。基準傷は、長さ4.0mm、深さ1.5mm、幅0.5mm以下の矩形スリットとすること
危険物の規制に関する規則第20条の8第4項 渦電流探傷試験に関する合格の基準は、試験の対象となる溶接継手を走査したときに生ずる電圧又は電流の値(略)が、当該溶接継手を模した試験片に製作した基準となる傷(長さが四ミリメートル、深さが一・五ミリメートルである傷とする。)を走査したときに生ずる電圧又は電流の値を超えないこととする。
合否を決めるのは検出信号の大きさで、目や勘で決めるものではありません。
対比試験片はタンクと同じ材質で作るのが原則ですが、JIS G3106のSM400等で代用できる場合もあります。
基準傷は長さ4.0mm・深さ1.5mm・幅0.5mm以下の矩形スリットで、この傷を走査したときの検出信号を超えなければ合格です。
なお、幾何学的効果から生じる検出信号やノイズ信号等の疑似指示は、合否の判定対象にはしません。

数値で決まるなら、
担当者による判定のばらつきも減りそうですね。

そのとおりです。
次は実務で見落としやすい点を確認しましょう。

実務で見落としやすいのはどこか

内部点検の時期を示す時計とタンクのイメージ
渦電流探傷試験は、コーティングを剥がさずに済む場面が増える一方、対象を誤解しやすい試験でもあります。
特に見落としやすい3点を確認します。
消防危第257号 第3 その他 1 新設並びに取替補修、重ね補修及び溶接部補修により新たに施工された底部の溶接継手については、消防法第11条の2に基づく完成検査前検査又は法第14条の3に基づく保安検査において、磁粉探傷試験又は浸透探傷試験により規則第20条の8第2項又は第3項の合格の基準に適合する必要があること。2 規則第62条の5に基づく内部点検に、渦電流探傷試験を適用して差し支えないこと。3 コーティングを有するタンクについて、以下の試験等を行う場合は、取替補修、重ね補修及び溶接部補修により新たに施工された底部の溶接継手以外のコーティングを剥離する必要はないこと
新しく作った継手には、渦電流探傷試験を使えません。
新設や、取替補修・重ね補修・溶接部補修で新たに施工された底部の溶接継手は、引き続き磁粉探傷試験又は浸透探傷試験で合格基準に適合する必要があります。
規則第62条の5に基づく内部点検(原則十三年、一定の保安措置が講じられ届出をしていれば十五年ごと)には、渦電流探傷試験を適用して差し支えありません。
コーティングを剥がさずに済むのも、新たに施工された継手以外の部分に限られる点を取り違えないようにします。

内部点検のたびにコーティングを剥がしていたので、
その手間が減るのは助かります。

ただし補修した継手は対象外なので注意してください。
最後に現場での手順を確認しましょう。

明日から何を確認すればよいのか

タンク底部を走査する探傷器と点検記録のイメージ
渦電流探傷試験は、思いつきで走査しても正しい結果になりません。
ガイドラインが示す手順に沿って進めます。
別記ガイドライン 第4 試験の方法 1 タンクの試験面に関する情報の事前確認 タンク底部の設計図書、既往の点検記録等からタンクの試験面に関する情報(溶接継手の形状及び表面処理、コーティングの状態・厚さ、既存のきず及び腐食の位置等)を把握すること。5 検出信号の評価 (2)検出部に合わせて探傷感度を設定し、検出信号が最大となるように評価すること。第7 試験記録 試験記録には、合否判定を含めた試験結果のほか、試験の再現性を確保するため、次の情報を記載すること。(1)探傷器等の探傷感度の設定記録及び探傷感度の設定に用いた対比試験の仕様(2)タンクの試験面と探傷器等についての確認記録(3)探傷器等におけるスリットの大きさに対する検出信号の傾向についての確認記録
準備を省くと、正しい検出信号は得られません。
試験前に設計図面や過去の点検記録で、溶接継手の形状・表面状態・コーティングの状態を確認します。
そのうえで探傷感度の設定、試験面の確認、プローブの走査、検出信号の評価という手順で進めます。
試験記録には、探傷感度の設定内容とタンクの試験面についての確認記録を必ず残してください。

手順どおりに進めれば、
コーティングを保ったまま点検できるんですね。

対比試験片の作製から、
手順に沿って確実に対応します。

よくある質問

Q渦電流探傷試験は誰が実施しても良いのですか?
Aガイドラインは試験の技術的な手順や合否基準を定めたもので、実施者の資格要件までは規定していません。屋外タンク貯蔵所の内部点検は危険物取扱者や専門の点検業者が担うのが実務上一般的で、探傷器の性能や対比試験片の作製方法を熟知した技術者に依頼するのが安全です。
Q磁粉探傷試験や浸透探傷試験は使えなくなるのですか?
Aいいえ、使えます。渦電流探傷試験は選べる試験方法が一つ増えただけで、従来の磁粉探傷試験・浸透探傷試験もそのまま使えます。新設や補修で新たに施工された継手には、引き続きこの二つが必要です。
Q対比試験片は自分のタンクの鋼材で必ず作らなければなりませんか?
A原則はタンクと同じ材質での作製ですが、日本産業規格JIS G3106のSM400等の品質が保証された鋼板でも、基準傷の検出性に影響がなければ代用して差し支えないとされています。
Qコーティングがあるタンクは渦電流探傷試験を使えないのですか?
A使えます。コーティングが非磁性かつ非導電性で、膨れ・割れ・剥離・傷・異物の混入がなければ対象になります。ただし、新たに施工された継手以外はコーティングを剥がさずに試験できるという扱いです。

まとめ

特定屋外貯蔵タンクの底部の溶接継手の試験方法に、渦電流探傷試験という新しい選択肢が加わりました
根拠は危険物の規制に関する規則の一部改正(令和7年総務省令第112号)で、令和7年12月24日から施行されています
対象になるのは、磁粉探傷試験等で既に合格基準への適合が確認された継手だけです
コーティングは非磁性かつ非導電性で異常がなければ、剥がさずに試験できます
規則第62条の5に基づく内部点検にも、渦電流探傷試験を適用して差し支えありません
合否は対比試験片の基準傷(長さ4.0mm・深さ1.5mm)の検出信号を超えるかどうかで判定します
新設・補修で新たに施工された継手には、引き続き磁粉探傷試験又は浸透探傷試験が必要です

次の内部点検では、渦電流探傷試験も選べるか確認してみます!

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 危険物の規制に関する規則の一部改正に伴う屋外貯蔵タンクにおける渦電流探傷試験に関する運用について(令和7年12月23日 消防危第257号 消防庁危険物保安室長)及び別記ガイドライン
  • 危険物の規制に関する規則(昭和34年総理府令第55号)第20条の8、第62条の5
  • 消防法(昭和23年法律第186号)第11条の2、第14条の3

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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