「ガス漏れ検知器って、電池が切れてなければそれで大丈夫」と思っていませんか。
実は検知器の構造や性能、作動の速さまで、消防庁の告示で細かく基準が決められています。
しかも都市ガス用と液化石油ガス用では、適用される基準の系統がまったく違います。
この記事ではガス漏れ検知器並びに液化石油ガスを検知対象とするガス漏れ火災警報設備に使用する中継器及び受信機の基準(昭和56年消防庁告示第2号)の中身を、構造・性能・表示を中心に解説します。
うちの厨房のガス漏れ検知器、去年から一回も鳴ったことないんです。
これって本当にちゃんと働いてるんですかね。
鳴らないのは異常がないからで、むしろ良いことです。
ただ検知器そのものの構造や性能には、実は細かい告示基準があるんですよ。
告示基準ってことは、メーカーが守っている話であって、うちが気にすることじゃないですよね。
点検のときに見るべきポイントがあるんでしょうか。
いえ、点検や更新の判断をするのは防火管理者の皆さんです。
今日は基準の中身を、そのまま実務で使える形でお伝えします。
- ガス漏れ検知器並びに液化石油ガスを検知対象とするガス漏れ火災警報設備に使用する中継器及び受信機の基準は消防法施行規則第24条の2の3第2項に基づく消防庁告示です。
- 検知器の構造は、確実に作動し保守点検が容易であることに加え、警報機能を持つものは警報音の音圧が前方1メートルで70デシベル以上と定められています。
- 検知器の性能はガス濃度が爆発下限界の4分の1以上で確実に作動し200分の1以下で作動しないこと、60秒以内に信号を発することが基準です。
- 本体には型式名や製造年月など11項目の表示が義務付けられています。
- 液化石油ガスを検知対象とする検知器・中継器・受信機は、この告示ではなくそれぞれ別の省令の技術基準に適合するものとされています。
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目次
この基準はどの条文に基づいて定められているのか

根拠をたどると、施行規則から消防庁長官への委任にたどり着きます。
消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号。以下「規則」という。)第24条の2の3第2項に規定するガス漏れ検知器(以下「検知器」という。)並びに液化石油ガスを検知対象とするガス漏れ火災警報設備に使用する中継器及び受信機の構造及び性能の基準を定めるものとする。
正式名称はガス漏れ検知器並びに液化石油ガスを検知対象とするガス漏れ火災警報設備に使用する中継器及び受信機の基準(昭和56年消防庁告示第2号)で、平成20年と令和元年に改正されています。
委任元の施行規則第24条の2の3第2項は「消防庁長官が定める基準に適合するものであること」としか書いておらず、具体的な数値や試験方法はすべてこの告示が担っています。
つまり検知器やLPガス用の中継器・受信機を選ぶときの根拠は、施行規則ではなくこの告示そのものです。
まずはこの委任構造を押さえたうえで、中身を見ていきましょう。
うちは施行規則までは読んだんですけど、そこで基準が止まってて困ってたんです。
告示まで見る必要があるとは知りませんでした。
施行規則は入り口で、告示が本体なんです。
次は検知器そのものの構造基準を見ていきましょう。
検知器の構造にはどんな基準が求められるのか

特に警報音の大きさには、具体的な数値基準があります。
一 検知器(液化石油ガスを検知対象とするものを除く。)の構造の基準は、次に定めるところによる。
(1) 確実に作動し、かつ、取扱い及び保守点検が容易にでき、長時間の使用に耐えること。
(2) 不燃性又は難燃性の外箱で覆われていること。
(5) 通常の使用状態において、水滴が浸入しにくい構造であること。
(8) 警報機能を有するものにあっては、その警報音の音圧は、前方1メートル離れた箇所で70デシベル以上であること。(略)
外箱や金属部分には耐食性のある材料を使うことも定められており、厨房や機械室のような湿気や油煙の多い場所での設置を想定した基準になっています。
なかでも実務で確認しやすいのが警報音で、前方1メートルで70デシベル以上という具体的な数値まで決まっています。
70デシベルはおおむね掃除機の動作音に近い大きさで、厨房の稼働音の中でも聞き取れることを想定した基準です。
点検で検知器を交換するときも、この構造基準を満たした型式であることが前提になります。
警報音の大きさまで数字で決まってるとは知りませんでした。
うちの検知器、ちゃんと聞こえるか今度確認してみます。
はい、厨房の一番奥からでも聞こえるかは実際に確認しておくと安心です。
次は作動する濃度とタイミングの基準を見てみましょう。
検知器はどんな濃度と時間で作動しなければならないのか

早すぎても誤作動になり、遅すぎても危険を見逃します。
(1) ガスの濃度が爆発下限界の4分の1(規則第24条の2の3第1項第1号イ(ロ)又は同号ロ(ロ)に定めるところにより設ける場合にあっては、10分の1。以下同じ。)以上のときに確実に作動し、200分の1以下のときに作動しないこと。
(5) 信号を発する濃度のガスに接したとき、60秒以内に信号(警報機能を有するものにあっては、信号及び警報)を発すること。
4分の1以上で確実に作動し、200分の1以下では作動しないという幅を設けることで、わずかな濃度変化での誤作動を防いでいます。
設置場所によっては、この基準が10分の1まで厳しくなる場合もあります。
そして作動が始まったら、信号を発するまでの時間は60秒以内と決められています。
数値そのものを暗記する必要はありませんが、検知器が「早すぎず遅すぎない」設計で作られていることは知っておいて損はありません。
60秒以内っていうのは、思ったより時間がかかるんですね。
もっと一瞬で反応するものだと思ってました。
完全にゼロ秒だと湯気や油煙にも反応してしまうので、この間が絶妙なんです。
次は液化石油ガス用の扱いを見ていきましょう。
液化石油ガス用の検知器はなぜこの告示の基準が及ばないのか

液化石油ガスを対象とする検知器だけは、扱いが分かれています。
一 液化石油ガスを検知対象とするガス漏れ火災警報設備の検知器は、液化石油ガス器具等の検定等に関する省令(昭和43年通商産業省令第23号)第44条に定める技術上の基準に適合するものであること。
二 液化石油ガスを検知対象とするガス漏れ火災警報設備の中継器は、中継器に係る技術上の規格を定める省令(昭和56年自治省令第18号)に規定する技術上の基準に適合するものであること。
三 液化石油ガスを検知対象とするガス漏れ火災警報設備の受信機は、受信機に係る技術上の規格を定める省令(昭和56年自治省令第19号)に規定する技術上の基準に適合するものであること。
検知器は液化石油ガス器具等の検定等に関する省令、中継器と受信機はそれぞれ別の自治省令が定める技術基準に適合するものとされているためです。
つまり都市ガス用と液化石油ガス用では、根拠になる法令の系統そのものが違います。
現場で見分けるときは、告示ではなく検定や規格の別の省令に基づく表示があるかどうかが手がかりになります。
交換や更新のときにこの違いを知らずに選定すると、根拠となる基準を取り違えるおそれがあります。
うちはプロパンなので、じゃあ今まで見てきた基準とは別物だったんですね。
どうりで数字が合わないと思いました。
はい、都市ガス用とLPガス用は根拠になる法令から違うので、比べても数字は合いません。
最後に表示事項の確認ポイントを見ておきましょう。
検知器の表示は何を確認すればよいのか

点検や更新のときは、まずこの表示を確認するところから始まります。
(1) 型式名又は型式番号(型式名又は型式番号を有するものに限る。)
(2) 製造年月
(3) 製造番号
(4) 製造事業者の氏名又は名称
(5) 適用すべきガス
(略。(6)定格電圧、(7)定格周波数、(8)定格消費電力)
(9) 標準遅延時間
(10) 出力信号の種類
(11) 取扱方法の概要及び取扱いに当たっての注意事項
特に実務で確認しやすいのは製造年月と適用すべきガスで、経年劣化の判断や対象ガスの取り違え防止に直結します。
標準遅延時間や出力信号の種類は、受信機側との組み合わせを確認するときに使う項目です。
表示が薄れて読めなくなっている検知器は、それだけで交換を検討する材料になります。
点検のたびに表示を確認する習慣をつけておくと、更新のタイミングを逃しません。
今度の点検で、表示がちゃんと読めるかまで見てみます。
製造年月が古かったら交換も相談したいです。
はい、表示が読めるかどうかは今日からでも確認できます。
次の点検のときに、ぜひ本体の表示までチェックしてみてください。
よくある質問
まとめ
構造・性能・表示の3つを意識するだけでも点検の見方が変わりますね!
検知器の交換や更新に迷ったら、いつでもご相談ください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- ガス漏れ検知器並びに液化石油ガスを検知対象とするガス漏れ火災警報設備に使用する中継器及び受信機の基準(昭和56年消防庁告示第2号、最終改正:令和元年6月28日消防庁告示第2号)
- 消防法施行規則第24条の2の3
- 総務省消防庁
※本記事は公表されている法令および消防庁告示に基づく一般的な解説です。個別の製品が基準に適合しているかどうかはメーカーの試験成績書で確認してください。設置や交換を計画する際は、必ず所轄消防署または専門業者にご確認ください。





