防火対象物を見て回っていると、屋外に設置された金属製のキャビネット型蓄電池設備を見かけることが増えてきました。
この蓄電池設備には、消防庁長官が定める出火防止措置・延焼防止措置の基準があり、適合が認められる標準規格が通知でたびたび追加されています。
今回は、新しく追加された標準規格の中身と適合確認の実務ポイントを解説します。
屋外の蓄電池設備、最近は大きなキャビネット型もよく見かけます。
あれも消防法令の基準がかかっているんですか?
はい、容量や措置の有無で基準が変わります。
実は最近、認められる標準規格も新しく増えたんですよ。
標準規格が増えた、というのはどういうことですか?
国内基準と同等以上と認められる海外規格が、通知で追加されたんです。
順番に見ていきましょう。
- 蓄電池設備の出火防止措置・延焼防止措置は、令和5年消防庁告示第7号が定めるJIS規格への適合を基本形としています。
- 令和5年の通知では、これと同等以上の規格としてIEC規格が示されていました。
- 令和7年12月の新しい通知で、同等以上の規格に米国のUL1973・UL9540が追加されました。
- 適合の確認は第三者試験機関に限らず、メーカーや輸入代理店自身の確認でも差し支えありません。
- 規格への適合が確認できれば、出火防止措置による適用除外や離隔距離の緩和につながります。
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目次
蓄電池設備の標準規格になぜ「同等以上」の追加が必要なのか

蓄電池設備の安全基準は、一度決めたら終わりというものではありません。
令和5年の告示のあとも、認められる標準規格は通知でたびたび追加されています。
規格は固定された一覧ではなく、通知でその都度広がっていく仕組みです。
蓄電池設備は容量の大型化や海外製品の普及が進み、国内のJIS規格だけでは実務が追いつかない場面が増えています。
そこで消防庁は、告示が求める安全性と同等以上と認められる規格を、通知という形でその都度示す運用を取っています。
令和5年5月の通知でまず国際規格のIEC規格が示され、令和7年12月の今回の通知でさらに米国のUL規格が加わりました。
「基準が変わった」のではなく「選べる規格が増えた」という理解が実務では欠かせません。
JIS規格の蓄電池しか設置できないと思っていました。
海外規格でもいいんですか?
条件を満たせば認められます。
次はどの設備が対象になるのかを見ていきましょう。
追加された規格が使えるのはどんな蓄電池設備なのか

追加された規格が効いてくるのは、容量や設置場所によって基準が分かれる場面です。
まずは省令の条文で線引きを確認します。
出火防止措置と延焼防止措置は、効果が別々の措置です。
容量10キロワット時を超え20キロワット時以下の蓄電池設備は、出火防止措置の規格に適合すれば、そもそも対象火気設備等から外れます。
一方、20キロワット時を超える蓄電池設備を屋外に置く場合は、延焼防止措置の規格に適合すれば、建築物から三メートルの離隔距離を確保しなくても差し支えありません。
どちらの措置の規格に適合しているのかで、効いてくる条文が変わる点に注意してください。
今回追加されたUL規格も、この二つのどちらに位置づけられるかで意味が変わります。
うちの設備は建物のすぐ近くに置いてあります。
出火防止措置さえ満たせば大丈夫ですか?
いいえ、離隔距離には延焼防止措置の規格が別に必要です。
次の章で規格の中身を見ていきましょう。
追加された標準規格は何を求めているのか

告示そのものはJIS規格を基本形として定めています。
そこに通知で「同等以上」の規格が積み重なっていく構造です。
今回加わったのは、2つの効果それぞれに1本ずつの規格です。
出火防止措置の側では、これまでの国際規格IEC規格に加えて、蓄電システムの製品安全規格であるUL1973が同等以上として認められました。
延焼防止措置の側では、複数の規格に加えて、エネルギー貯蔵システム全体の安全性を評価するUL9540が加わりました。
どちらも米国の非営利安全科学機関が策定した規格で、国内のJIS規格と並ぶ選択肢として位置づけられています。
規格の名前だけでなく、出火防止措置と延焼防止措置のどちらの欄に載っているかを必ず確認してください。
ULの規格って聞いたことはありますが、詳しくは知りませんでした。
JISと同じくらい信頼できるんですか?
消防庁が同等以上と認めた規格なので信頼できます。
ただし確認の手順には見落としやすい点があります。
適合の確認で見落としやすいのはどこか

見落としやすいのは、誰が適合を確認してよいかという点と、二つの措置の関係です。
どちらも条文の構造を正しく読まないと誤解しやすい部分です。
自己確認は認められますが、延焼防止措置には前提条件があります。
まず一つ目は、適合の確認方法です。
第三者試験機関の証明書がなくても、メーカーや輸入代理店が規格の定める試験方法に沿って自ら確認した資料があれば足ります。
二つ目は見落としがちな条文の構造で、告示第3(延焼防止措置)は「第2に定めるもので、かつ」という条件付きになっており、延焼防止措置の規格だけに適合していても、出火防止措置の規格を満たしていなければ延焼防止措置として認められません。
どちらか一方の規格名だけを確認して安心するのは危険です。
延焼防止措置の規格には適合していると聞いていました。
それだけで安心していいわけじゃないんですね。
はい、出火防止措置の適合もあわせて必要です。
最後に確認の手順を整理しましょう。
設置前になにを確認すればよいのか

最後に、現場でできる確認の手順を整理します。
むずかしい判断はここまでの内容で足ります。
確認は容量表示と規格名の両方から始めます。
まず銘板や仕様書で蓄電池容量(キロワット時)を確認し、対象になりそうな設備は出火防止措置の規格適合資料があるかをメーカーや設置業者に確認してください。
建物の近くに屋外設置されている設備は、延焼防止措置の規格適合資料もあわせて確認します。
確認資料は第三者機関の証明書でもメーカーの自己確認書類でもよいので、どちらの規格名に適合しているかを記録として保管してください。
判断に迷う場合は、自己判断せず所轄の消防署へ相談することをおすすめします。
まずは銘板の容量と規格名を確認してみます。
資料が見当たらないときはどうすれば?
設置業者やメーカーに問い合わせれば教えてもらえます。
記録を残しておくと次の点検でも役立ちます。
よくある質問
まとめ
規格の名前だけで判断せず、条文まで確認するようにします!
ご不明な点があれば、いつでもお尋ねください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防予第558号(令和7年12月23日・消防庁予防課長通知)「蓄電池設備の出火防止措置及び延焼防止措置に関する基準における標準規格の例の追加について」
- 消防予第332号(令和5年5月31日・消防庁予防課長通知)「改正火災予防条例(例)の運用等について」別紙1
- 蓄電池設備の出火防止措置及び延焼防止措置に関する基準(令和5年消防庁告示第7号)
- 対象火気設備等の位置、構造及び管理並びに対象火気器具等の取扱いに関する条例の制定に関する基準を定める省令(平成14年総務省令第24号)第3条第18号・第16条第4号
- e-Gov法令検索(デジタル庁)
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





