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蓄電池の規制区分はなぜキロワット時に変わったのか|出火防止措置による適用除外の仕組みを解説

蓄電池設備の規制区分がキロワット時に変わったことを示すアイキャッチ

防火対象物の設備を見て回っていると、灰色の金属製キャビネットが並ぶ蓄電池設備を見かけることが増えてきました。
この蓄電池設備は、対象火気設備等というくくりで消防法令の規制を受けています。
実はこの規制、令和5年の改正で対象になる基準そのものが大きく変わりました。
今回は、その区分の考え方と実務での確認ポイントを解説します

最近、屋外に蓄電池の設備が増えてきたんですが。
これも消防法令の対象になるんでしょうか?

容量によって対象かどうかが決まります。
実は令和5年に基準が変わっているんですよ。

そうなんですか。
何が変わったのか詳しく知りたいです。

キロワット時という単位が新しく使われるようになりました。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 蓄電池設備の規制区分は、令和5年の改正でアンペアアワー・セルからキロワット時に変わりました
  • 10キロワット時以下の蓄電池設備は対象火気設備等から外れます。
  • 10キロワット時を超え20キロワット時以下でも、出火防止措置があれば対象外になります。
  • 開放形鉛蓄電池以外は耐酸性の床の設置義務がなくなりました
  • 建築物からの3メートルの離隔距離も、延焼防止措置があれば緩和されます。

蓄電池の規制区分がキロワット時に変わったことを4つの要素で示した図解

蓄電池設備の規制区分はなぜ見直されたのか

検討部会の報告書と屋外の蓄電池設備を並べたイラスト
蓄電池を使う設備は、身近な建物にも増えています。
この規制の区分は、実は令和5年に大きく変わりました。
消防予第306号(令和5年5月31日・消防庁次長通知)「消防法施行規則及び対象火気設備等の位置、構造及び管理並びに対象火気器具等の取扱いに関する条例の制定に関する基準を定める省令の一部を改正する省令等の公布等について」 「蓄電池設備のリスクに応じた防火安全対策検討部会」における検討結果を踏まえ、見直しを行うものです
見直しの主役は容量の測り方です
以前の対象火気省令は、蓄電池設備をアンペアアワー・セルという古い単位で線引きしていました。
今回の改正では、電気エネルギー貯蔵システムの安全性を評価するときに広く使われるキロワット時という容量の単位に置き換えられました。
検討部会には大学教授が部会長として加わり、実際のリスクに合わせた区分になるよう検討が重ねられました。
この見直しは令和6年1月1日から施行されています。

うちにも蓄電池を置く設備があるんですが。
これも対象になるんですか?

容量によります。
キロワット時という単位で数えるのがポイントです。

どんな蓄電池がこの見直しの対象になるのか

小さな蓄電池設備と大きな蓄電池設備を比べたイラスト
対象になるかどうかは、容量の数値で決まります。
まずは現行の条文を確認します。
対象火気設備等の位置、構造及び管理並びに対象火気器具等の取扱いに関する条例の制定に関する基準を定める省令第3条第18号 蓄電池設備(蓄電池容量が十キロワット時以下のもの及び蓄電池容量が十キロワット時を超え二十キロワット時以下のものであって出火防止措置が講じられたものとして消防庁長官が定めるものを除く。以下同じ。)
線引きは10キロワット時と20キロワット時の2つです
10キロワット時以下の小さな蓄電池設備は、そもそも対象火気設備等に該当しません。
10キロワット時を超え20キロワット時以下のものは、消防庁長官が定める出火防止措置が講じられていれば、同じく対象から外れます。
一方、20キロワット時を超えるもの、または出火防止措置のないものは、引き続き対象火気設備等として位置・構造・管理の基準がかかります。
容量の数字だけでなく、措置の有無まで確認することが欠かせません。

うちの設備はそんなに大きくないので対象外かと思ってました。
数字だけで決まるものじゃないんですね。

はい、容量と措置の両方を見る必要があります。
まずは銘板の容量表示を確認しましょう。

具体的に何が変わったのか

開放形鉛蓄電池と密閉型の蓄電池設備の設置基準を比べたイラスト
容量区分のほかにも、設置基準そのものが緩和された項目があります。
代表的な2つを見ていきます。
改正省令等の公布等について(消防予第306号) 耐酸性の床上等に設けなければならない蓄電池設備の見直しについて 開放形鉛蓄電池を用いたもの以外については耐酸性の床上等に設けなくてもよいこととした
同令第12条第8号 蓄電池設備(開放形鉛蓄電池を用いたものに限る。)にあっては、その電槽は、耐酸性の床上又は台上に転倒しないように設けること。
耐酸性の床は、もう全ての蓄電池設備には要りません
以前は蓄電池設備全般に耐酸性の床や台の上に設ける義務がありましたが、改正後は電解液が漏れるおそれのある開放形鉛蓄電池だけに絞られました。
密閉型のリチウムイオン蓄電池などは、この基準の対象から外れています。
屋外に設ける蓄電池設備についても、防水措置はキュービクル式という限定が外れ、雨水の浸入を防ぐ筐体であれば足りることになりました。
形式ごとに基準が違う点を、設置前に必ず確認してください。

うちの蓄電池はリチウムイオン式です。
床の工事までは要らないということですか?

そのとおりです。
ただし設置形式によって条件が変わるので、機種ごとに確認しましょう。

実務で見落としやすいのはどこか

建物に近い蓄電池設備の可否をマークで示したイラスト
見落としやすいのは、建物との距離の考え方です。
単純な数字だけでは判断できません。
同令第16条第4号 燃料電池発電設備、変電設備、内燃機関を原動力とする発電設備、蓄電池設備及び急速充電設備のうち、屋外に設けるものにあっては、建築物から三メートル以上の距離を保つこと。ただし、蓄電池設備のうち、延焼防止措置が講じられたものとして消防庁長官が定めるもの又は消防長若しくは消防署長が火災予防上支障がないと認める構造を有するキュービクル式のもの等にあっては、この限りでない。
3メートルという数字だけを覚えるのは危険です
建築物からの離隔距離は原則として3メートル以上とされていますが、消防庁長官が定める延焼防止措置が講じられていれば、この距離を確保しなくても差し支えありません。
延焼防止措置の具体的な内容は、令和5年消防庁告示第7号に定められており、蓄電池設備の外観だけを見て自己判断することはできません。
実務では、3メートル未満に置かれた蓄電池設備を見つけたときに、即座に違反と決めつけず、告示の要件を満たす措置があるかどうかを確認する必要があります。
措置の有無は、設置業者からの資料や消防署への確認で裏付けることが確実です。

建物にくっつけて置いてある蓄電池を見たことがあります。
あれは違反なんでしょうか?

措置次第では問題ない場合もあります。
まずは告示の要件を満たしているか確認しましょう。

明日からなにを確認すればよいのか

蓄電池設備の銘板を確認する作業着姿の人物のイラスト
最後に、現場でできる確認の手順を整理します。
むずかしい判断はここまでの内容で足ります。
改正省令等の公布等について(消防予第306号) 施行期日等に関する事項 1 施行期日について 改正省令のうち対象火気省令の一部改正及び7号告示については令和6年1月1日から施行することとしたこと
確認は容量表示から始めます
蓄電池設備の銘板に記載された容量(キロワット時)を確認し、10キロワット時を超えるものは出火防止措置の有無を業者や消防署に確認してください。
建物に近接して設置されているものは、延焼防止措置の有無もあわせて確認します。
すでに設置されている設備には経過措置が設けられている場合があるため、いつ設置されたものかも記録しておくと安心です。
判断に迷う場合は、自己判断せず所轄の消防署へ相談することをおすすめします。

まずは銘板を確認してみます。
数字が読み取れないときはどうすれば?

設置業者に問い合わせれば教えてもらえます。
記録を残しておくと次の点検でも役立ちます。

よくある質問

Q蓄電池設備の容量はどこで確認できますか?
A多くの場合、蓄電池設備本体の銘板または取扱説明書にキロワット時で記載されています。数値が読み取れない場合は設置業者に確認してください。
Q10キロワット時以下の蓄電池設備なら消防署への相談は不要ですか?
A対象火気省令上の対象外にはなりますが、他の消防法令(危険物規制など)に該当する場合もあるため、規模や用途によっては所轄消防署への確認をおすすめします。
Q出火防止措置や延焼防止措置は自分で判断してよいですか?
Aいいえ、いずれも消防庁長官が定める具体的な基準(令和5年消防庁告示第7号)に適合しているかどうかで判断されるため、設置業者の資料や消防署への確認が必要です。
Q令和5年の改正より前から設置している蓄電池設備はどうなりますか?
A新たに規制の対象となるものについては経過措置が設けられている場合があります。設置時期を記録し、詳細は所轄消防署に確認してください。

まとめ

蓄電池設備の規制対象は、令和5年の省令改正でキロワット時による区分に変わりました
10キロワット時以下は対象火気設備等から除外されます。
10キロワット時超20キロワット時以下でも出火防止措置があれば除外されます。
開放形鉛蓄電池以外は耐酸性の床上に設ける義務がありません
屋外設置の防水措置は筐体の措置で足りるようになりました。
建築物からの3メートル離隔も延焼防止措置で緩和されます。
措置の有無は自己判断せず、設置業者や所轄消防署に確認することが確実です

蓄電池の設備を見る目が変わりました!
キロワット時の数字を必ず確認します。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防予第306号(令和5年5月31日・消防庁次長通知)「消防法施行規則及び対象火気設備等の位置、構造及び管理並びに対象火気器具等の取扱いに関する条例の制定に関する基準を定める省令の一部を改正する省令等の公布等について」
  • 対象火気設備等の位置、構造及び管理並びに対象火気器具等の取扱いに関する条例の制定に関する基準を定める省令(平成14年総務省令第24号)第3条第18号・第12条第8号・第14条第5号・第16条第4号
  • 蓄電池設備の出火防止措置及び延焼防止措置に関する基準(令和5年消防庁告示第7号)
  • e-Gov法令検索(デジタル庁)

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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