壁の高いところに付いた赤いベル。
あれが地区音響装置で、火災を知らせる音を出す設備です。
基準は施行規則にデシベルの数字で決められていますが、その数字は誰がどうやって確かめているのでしょうか。
試験結果報告書を読み解くと、工事が終わった現場で実際に音圧を測る手順が決まっていることが見えてきます。
自火報の工事をしたら、ベルの音が基準どおりの大きさかどうかまで確かめてもらえるんですか。
確かめます。
実際に騒音計を使って現場で測る手順が決まっているんです。
数字だけ条文に書いてあっても、測り方までは知りませんでした。
そこから確かめましょう。
基準の数字、測り方、そして消防検査との関係を順に見ていきます。
- 地区音響装置の音圧は音響のみが90デシベル以上、音声警報は92デシベル以上と定められています
- 設置後の試験では取り付けられた状態のまま、中心から1m離れた位置で騒音計(A特性)を用いて測定します
- 出荷前の型式試験は無響室という特別な部屋で公称音圧を測る試験で、現場試験とは条件が異なります
- 音声警報の地区音響装置は第二警報音を鳴動させた状態で音圧を測定することとされています
- 実測した音圧は試験結果報告書に記載され消防検査で確認されます
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目次
地区音響装置の音圧はどんな数字で決まっているのか

その音の大きさには、施行規則ではっきりした数字が置かれています。
消防法施行規則第24条第五号が音響のみのものを90デシベル以上、第五号の二が音声で警報を発するものを92デシベル以上と定めています。
どちらも「取り付けられた音響装置の中心から1メートル離れた位置」という同じ測り方が前提になっている点は共通です。
つまり数字だけでなく、測る場所まで条文で決まっているということです。
自分の建物のベルやスピーカーがどちらの型なのか、点検業者に聞いておくと次の話が分かりやすくなります。
音声のほうが基準が2デシベル高いんですね。
そのとおりです。
次は、この数字を現場でどう確かめるのかを見ていきましょう。
工事が終わった現場では音圧をどうやって測るのか

消防庁が示す試験基準には、実際の測り方が書かれています。
消防庁「自動火災報知設備の試験基準」では、騒音計(A特性)という測定器を使い、取り付けられた状態のまま中心から1m離れた位置で音圧を測ることとされています。
「取り付けられた状態」という言葉がポイントです。壁や天井に固定したまま、実際に鳴っている音をそのまま測るということです。
だから工事が終わったら、施工業者が現場で騒音計を使って測定した数値を持っているはずだと考えてよいでしょう。
見積りや工事完了の報告を受けるときは、この実測値が記録に残っているかを確認しておくと安心です。
壁から外して測るわけではないんですね。
そうです。
設置された状態のまま測るのが現場試験の条件です。
出荷前の型式試験とは何が違うのか

現場での試験と、どちらも同じ90デシベルという数字を扱いますが、条件は同じではありません。
出荷前の型式試験は無響室という、音が反射しないように作られた特別な部屋で行います。周りの壁や天井からの反射音が混じらない条件で、製品そのものの実力を測る試験です。
一方、工事完了後の現場試験は、実際に取り付けられた建物の壁や天井の中で測ります。
つまり同じ90デシベルという基準でも、工場での型式試験と現場での設置後試験は別の場面で確認されているということです。
点検のときに「メーカーの試験成績書があるから大丈夫」と言われても、それは型式試験の話であり、設置後の実測値とは別物だと考えておきましょう。
工場のテストと現場の測定は別のものだったんですね。
はい、混同しやすいところです。
次は音声警報のときの測り方を見てみましょう。
音声警報の地区音響装置はどんな状態で測るのか

測定するときの条件にも、その分だけ細かい指定があります。
音声警報は、感知器が作動したことを知らせる音と、実際の火災を知らせる音とで内容が変わる仕組みになっています。
音圧を測定するときは、そのうち第二警報音を鳴らした状態を基準にすることとされています。
どの音で測るかまで決めておかないと、測定するたびに数値がばらついてしまうからでしょう。
点検の記録を見るときは、どの警報音の状態で測定したかまで書かれているかを確認すると、記録の精度が分かります。
どの音を鳴らして測ったかまで、記録に残しておいたほうがよさそうですね。
そのとおりです。
最後に、この実測値がどこへつながるのかを見ていきます。
実測した音圧は消防検査でどう扱われるのか

書類として残し、消防署の検査につなげる仕組みがあります。
消防法施行規則第31条の3第1項により、工事完了後4日以内に試験結果報告書を添えて届け出ることとされています。
そして同条第2項で、消防長又は消防署長がその届出をもとに技術上の基準に適合しているかどうかを検査することが定められています。
つまり地区音響装置の90デシベル・92デシベルという数字は、現場で測った瞬間だけでなく、書類として消防検査まで引き継がれるということです。
建物側としては、工事のたびにこの試験結果報告書が手元に残っているかを確認しておくことが、検査をスムーズに受けるための備えになります。
測った数字がそのまま検査の材料になるんですね。
はい。
工事の完了報告を受け取ったら、試験結果報告書の控えをもらっておいてください。
よくある質問
まとめ
測り方まで決まっていると分かって安心しました。
次の工事報告のときに確認してみます。
基準の数字、測り方、そして試験結果報告書の3つを押さえておけば十分です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行規則第24条第五号・第五号の二(自動火災報知設備に関する基準の細目)
- 消防法施行規則第31条の3(消防用設備等又は特殊消防用設備等の届出及び検査)
- 地区音響装置の基準(平成9年6月30日消防庁告示第9号)
- 自動火災報知設備の試験基準(平成14年9月30日消防予第282号別添)
※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。個別の事案についての適用は、所轄消防署にご確認ください。





