自動火災報知設備の感知器が作動すると、建物内に設置された「地区音響装置」がベルや音声で火災の発生を知らせます。
このベルやスピーカーには、消防庁告示で定められた音圧・波形・表示の基準があります。
音響式と音声式では基準の数値が違い、音声警報はさらに2段階に分かれていることは条文を読まないと分かりません。
この記事では消防庁告示が定める地区音響装置の基準を、音響式と音声式の違いも含めて整理します。
うちのビルの地区音響装置、ベルとスピーカーが両方付いているんですが同じ基準なんでしょうか。
いいえ、音圧の基準からして音響式と音声式で違います。
スピーカーのほうは声で知らせますよね。
あれも基準が決まっているんですか。
はい、音声警報は2段階に分かれていて、警報音の波形まで細かく決められています。
- 地区音響装置は受信機からの信号を受けて音響または音声で火災の発生を報知する設備です
- 公称音圧の基準は音響式90デシベル以上・音声式92デシベル以上と定められています
- 音声警報は感知器作動警報(女声)と火災警報(男声)の2段階に分かれています
- 火災警報だけに第二警報音(掃引音)が加わるため、警報音を聞き分けることができます
- 地区音響装置の表示は7項目、無線式はさらに3項目が義務付けられています
▼
目次
そもそも地区音響装置とは何か

このベルやスピーカーが「地区音響装置」です。
消防法施行規則第二十四条第5号・第5号の2は、地区音響装置が消防庁長官が定める基準に適合するものでなければならないと定めており、その基準を具体化したのが今回の告示です。
ベルだけのものを「音響式」、スピーカーから声で知らせるものを「音声式」と呼び分けて考えると整理しやすくなります。
ベルとスピーカーは見た目が違うだけで、扱いは同じなんですか。
いいえ。
公称音圧の基準から違います。
公称音圧の基準はなぜ音響式と音声式で数値が違うのか

この数値は、音響式と音声式で同じではありません。
音響式のベルやブザーは90デシベル以上で足りるのに対し、音声で知らせる装置は92デシベル以上とやや高い数値が求められます。
測定位置はどちらも共通で、取り付けられた装置の中心から1メートル離れた地点です。
ダンスホールやカラオケボックスのように周囲の音が聞き取りにくい場所では、公称音圧の数値だけでなく騒音と明らかに区別できるような措置も別途求められています。
デシベルの差はたった2ですけど、意味があるんですか。
条文は数値の理由までは書いていませんが、音声情報を確実に聞き取らせるための基準と考えられます。
音声警報はなぜ感知器作動警報と火災警報の2段階に分かれているのか

いきなり火災警報が流れるわけではありません。
最初に流れる感知器作動警報は女声で、感知器が作動したことだけを知らせます。
その状態が続いたまま新たな信号を受信するか、一定時間が経過すると、火災警報が男声で自動的に流れます。
声の性別を変えているのは、聞いた人がどちらの段階かを瞬時に区別できるようにするためと考えられます。
このほか、音声を送り出す増幅器の最大出力電圧値は、定格出力電圧値の90パーセント以上110パーセント以下と細かく規定されています。
女声から男声に変わったら、もう避難したほうがいいということですか。
はい。
男声の火災警報に切り替わったら避難の準備を始める段階です。
警報音の波形はなぜ第一警報音と第二警報音で違うのか

どちらがどの段階で鳴るかを知っておくと、耳で段階を聞き分けられます。
感知器作動警報は第一警報音(のこぎり波)だけを繰り返す構成で、第二警報音は一切鳴りません。
これに対して火災警報は、同じ第一警報音を2回鳴らしたあとに第二警報音(周波数を掃引する音)が必ず加わります。
さらにスピーカー式は、周波数300ヘルツ以上2キロヘルツ未満では公称音圧以上、2キロヘルツ以上8キロヘルツ以下では公称音圧から20デシベルを減じた音圧以上あればよいとされ、高音域ほど基準が緩やかになります。
波形まで決まっているとは知りませんでした。
はい。
第二警報音が聞こえたら火災警報の段階だと覚えておいてください。
地区音響装置にはどんな表示が義務付けられているのか

無線式の場合は、通常の表示に加えてさらに項目が増えます。
基本の7項目には、製造者名や型式番号のほか公称音圧の数値そのものも含まれており、現場で基準に適合した製品かどうかを表示だけである程度確認できます。
無線式は電波で信号をやり取りする分、「無線式」の文字と対応する受信機の型式番号の表示が追加で求められます。
点検の実務では、この表示と設備の型式が対応しているかを点検資格者が確認します。
公称音圧まで表示に含まれているのは意外でした。
はい。
表示された数値と現場の基準が合っているかも点検の対象です。
よくある質問
まとめ
音響式と音声式で基準が違う理由がよく分かりました!
点検で表示と音圧の確認まできちんと行うことが大切です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 地区音響装置の基準(平成9年6月30日消防庁告示第9号、最終改正 平成20年12月消防庁告示第26号)第二・第三・第四・第五・第七
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第24条第5号・第5号の2
※本記事は消防庁告示に基づく一般的な解説であり、個別の設備や現場に応じた判断を保証するものではありません。実際の点検・整備・改修は、消防用設備等の点検資格者や所轄消防署にご確認のうえで行ってください。





