粉末消火設備の設置工事が完了すると、試験結果報告書を作成して消防長や消防署長へ届け出ます。
加圧式の粉末消火設備には定圧作動装置という機器があり、報告書には作動圧力と作動時間の実測値を書き込む欄があります。
局所放出方式で駐車場を防護する設置例では、貯蔵タンクの系統や設計放出時間の数値まで細かく記載されます。
今回は粉末消火設備の試験結果報告書に実際にどんな数値が書き込まれるのか、定圧作動装置の仕組みとあわせて解説します。
粉末消火設備にも、実測値を書き込む試験結果報告書があるんですか?
はい、定圧作動装置の作動圧力と作動時間まで数値で残すんですよ。
加圧式ならではの装置なんですね。
はい、蓄圧式には無い装置なので見分け方も含めて見ていきましょう。
- 粉末消火設備の試験結果報告書は別記様式第8で作成する
- 加圧式の粉末消火設備には定圧作動装置を設けることが消防法施行規則第21条第4項第9号で定められている
- 定圧作動装置は起動装置の作動後、貯蔵容器等の圧力が設定圧力になったとき放出弁を開放させる仕組み
- 記載例の実測値は作動圧力1.65メガパスカル・作動時間14秒と13秒(2系統)
- 貯蔵タンクはA系統・B系統に分け、局所放出方式の設計放出時間25秒・第三種粉末420キログラム×2基という設置例も記載される
▼

目次
粉末消火設備の試験結果報告書にはどんな数値が記載されるのか

どんな様式に何を書くかは、消防用設備等ごとに消防庁長官が定めています。
様式の名前は別記様式第8で、放出方式(全域放出方式・局所放出方式・移動式)と設計放出時間を書く欄、貯蔵消火剤等・加圧用ガス容器の外観試験欄、機能試験・総合作動試験の結果を書く欄で構成されています。
記載例では、設置階は地階、防護対象物の種別は駐車場という設定で、放出方式は局所放出方式が選ばれています。
つまりこの1枚は、消火剤の量だけでなく、どの防護対象物をどの方式で守っているかまで示す書類だということです。
粉末消火設備の報告書にも、どの防護対象物を守っているかまで書かれているんですね。
はい、放出方式と設計放出時間まで欄が分かれているんです。
定圧作動装置とはどんな役割を持つ装置なのか

この装置は、加圧式の粉末消火設備だけに設けるものです。
起動装置が作動しても、圧力が設定値に届くまでは放出弁が開きません。
これは蓄圧式の粉末消火設備には設けない、加圧式だけの仕組みです。
蓄圧式は常に一定の圧力でガスと消火剤を蓄えているのに対し、加圧式は起動のたびに加圧用ガスを送り込むため、圧力が整うタイミングを確認する装置が必要になります。
起動装置が動いても、すぐには放出されないんですね。
はい、圧力が整うまでの一呼吸を確かめる装置なんです。
作動圧力と作動時間はなぜ2系統に分けて測るのか

記載例では、この数値が2系統ぶん並んで記載されています。
記載例では、貯蔵タンクをA系統とB系統の2系統に分け、それぞれに定圧作動装置を設けた設置例で、作動圧力は両系統とも1.65メガパスカル、作動時間は14秒と13秒という近い数値が記録されています。
系統を分けているのは、複数の貯蔵タンクを防護区画ごとに使い分けるためで、定圧作動装置も系統の数だけ用意することになります。
2つの系統でほぼ同じ数値が並ぶのは、同じ仕様の機器を系統ごとに設置していることの裏付けにもなります。
2系統もあると、定圧作動装置も2台必要になるんですか?
はい、系統の数だけ用意する決まりです。
局所放出方式ならではの数値はどこに表れるのか

局所放出方式は、防護対象物そのものを狙って消火剤を放射する方式です。
記載例の設計放出時間は25秒で、基準の上限を下回る設計になっています。
防護対象物は駐車場、消火剤の種別は第三種粉末、量は420キログラム×2基、加圧用ガスの量は30キログラムと記載されています。
設計放出時間・消火剤の量・加圧用ガスの量は、いずれも防護対象物の広さや火災の性質に合わせて設計者が決める数値で、法令が定める上限や算定式の範囲内に収まっているかを報告書で確認します。
設計放出時間って、基準ぴったりにしないといけないんですか?
いえ、基準の範囲内であれば短く設計してもよいんです。
試験結果報告書は消防検査でどう使われるのか

消防長や消防署長が行う検査でも使われます。
定圧作動装置試験の作動圧力と作動時間、設計放出時間や消火剤の量といった記載例の数値も、この照合の対象です。
数値が実際の設備と食い違っていれば、その場で確認や是正を求められることになります。
試験結果報告書は、届出のためだけでなく、検査当日の照合資料として最後まで役割を持つ書類だということです。
つまり報告書の数値は、検査の当日まで使われ続けるんですね。
はい、検査で照合される資料として最後まで生きています。
よくある質問
まとめ
定圧作動装置の作動圧力と作動時間の見方がよく分かりました。
試験結果報告書の作成までお手伝いできます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行規則第21条(粉末消火設備に関する基準)第2項第1号・第4項第9号
- 消防法施行規則第31条の3(消防用設備等又は特殊消防用設備等の届出及び検査)第5項
- 消防用設備等試験結果報告書の様式を定める件(平成元年12月1日消防庁告示第4号、最終改正 令和2年4月1日消防庁告示第2号)別記様式第8
- 消防庁「消防用設備等の試験基準に係る運用について」(平成14年9月30日消防予第283号)記3(1)ア
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





