大阪市の有料老人ホームで火災が起き、9人が煙を吸うなどして負傷しました。
消防庁は令和5年12月1日、消防予第661号で防火対策の更なる徹底を全国の消防機関に求めました。
被害を広げたのは、廊下や階段室に流れ込んだ煙だったとみられています。
通知が求める5つの対策を、施設管理者の視点で整理します。
うちは特別養護老人ホームなので、有料老人ホームの話は関係ないですよね。
通知の名宛ては有料老人ホーム等ですが、自力避難が困難な高齢者等が利用する施設という考え方は共通します。
それなら他人事ではありません。
中身が気になります。
大阪市の火災を受けて出された通知の中身を、順番に見ていきましょう。
- 令和5年11月28日、大阪市の有料老人ホームで火災が発生し、9人が負傷しました(消防予第661号)。
- 電気コンセントのたこ足配線やリチウムイオン電池の取り扱いなど、出火防止対策の徹底が求められています。
- 廊下・階段・避難口・防火戸は消防法第8条の2の4に基づく維持管理義務の対象です。
- 夜間・少人数を想定した自衛消防訓練の実施が重点として求められています。
- 消防法令違反があれば早急に是正し、介護保険部局や建築部局との連携も必要です。
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目次
大阪市の有料老人ホーム火災はなぜ全国への注意喚起につながったのか

火災原因は調査中ですが、避難の途中で煙を吸うなどして負傷者が出ています。
有料老人ホーム等は自力避難が困難な高齢者等が利用する施設であり、日頃からの火災予防と火災時の避難誘導が極めて重要とされています。
これを受けて消防庁は令和5年12月1日、消防予第661号で防火対策の更なる徹底を全国の消防機関に求めました。
通知は消防組織法第37条に基づく助言として発出されており、法的な義務そのものではなく行政指導の位置付けです。
それでも立入検査等の機会を通じて、現場の実務に落とし込むことが求められています。
うちも高齢の入所者が多いので、他人事とは思えません。
通知が求める中身を、対象から順に見ていきましょう。
どの施設のどんな行為が対象になるのか

通知はまず、日頃の出火防止対策の徹底を求めています。
たこ足配線や劣化した電気コードの使用は、居室点検の際に見落としやすいポイントです。
入所者本人が管理するリチウムイオン電池を使う機器も、充電の仕方まで含めて確認が必要です。
「住宅防火 いのちを守る10のポイント」は一般家庭向けの資料ですが、居室という単位で見ればそのまま応用できます。
立入検査の際は、共用部だけでなく居室の電気設備まで目を向けることが求められます。
入居者の私物の電化製品までは、正直目が届きにくいです。
巡回のときに居室のコンセント回りだけ見る、という決め方でも効果はありますよ。
通知は避難施設と防火戸の管理に何を求めているのか

条文の裏付けとあわせて見ていきます。
廊下や階段に物を置かない、という基本が法第8条の2の4の維持管理義務そのものにあたります。
防火戸についても、閉まらなくなる物件を置かないことまで含めて管理義務の対象です。
防火戸が未設置だったり機能していなかったりする場合は、建築部局と連携した改修指導も想定されています。
消防だけでなく建築の基準にもまたがる論点だと理解しておくと話が早くなります。
廊下に置いてある荷物、そろそろ片付けろと言われそうです。
防火戸の前に物がないかも、あわせて確認しておきましょう。
実務で見落としやすいのはどこか

訓練の想定そのものを見直す必要があります。
夜間・少人数を想定した避難誘導訓練を、実際にやってみることが通知の求める水準です。
避難する際に、火元の部屋や階段室の防火戸を閉めてから移動するという一手間も、訓練に組み込む必要があります。
自力避難が困難な入所者がいる施設では、廊下の先の安全な場所へいったん退避する「水平避難」の考え方も参考になります。
既存の避難訓練マニュアルやガイドラインを、夜間を想定した形に読み替えて使うのが現実的です。
夜勤は1人か2人ですし、訓練も昼にしかやっていません。
次回は夜間を想定して、防火戸を閉めるところまで通してやってみましょう。
明日から何を確認すればよいのか

自施設だけで完結しない対応も含まれています。
指摘された不備は早急に是正する姿勢が、通知でも重点的な改善指導の対象として位置付けられています。
介護保険部局や建築部局と消防が連携し、合同で立入検査を実施する仕組みも用意されています。
明日からできることとして、居室のコンセント周り、廊下・階段の物件放置、防火戸の閉鎖状況の3点をまず自主点検してみましょう。
夜間を想定した避難訓練まで実施できていれば、通知の求める水準にほぼ届きます。
是正の指摘、後回しにしがちでした。
明日、居室のコンセント周りから見てみましょう。
よくある質問
まとめ
今日から居室のコンセント周りと廊下の物件放置を見直します!
夜間の避難訓練の見直しも、ぜひ次の計画に組み込んでください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 「有料老人ホーム等に係る防火対策の更なる徹底について」(令和5年12月1日付け消防予第661号 消防庁予防課長)
- 消防法第8条の2の4
- 「自力避難困難な者が利用する施設における一時待避場所への水平避難訓練マニュアルについて」(平成30年3月30日付け消防予第258号)
- 「直通階段が一つの建築物向けの避難行動に関するガイドラインの策定について」(令和4年12月16日付け消防予第639号)
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





