一人暮らしの高齢者が急病で倒れたとき、電話のある場所まで歩けなければ助けを呼べません。
そこで消防庁は、押しボタン一つで消防機関等に通報できる「緊急通報装置」の技術上の基準を定めています。
建物に設置が義務付けられる火災通報装置とは異なり、こちらは高齢者等の福祉を目的に使われる端末です。
装置を構成する仕組みと、停電時でも通報できる予備電源の基準を知っておくと、現場で迷いません。
うちの親が一人暮らしなんですけど、押しボタンで消防に繋がる機械があると聞きました。
それはおそらく緊急通報装置ですね。
高齢者等の災害弱者のために消防庁が基準を定めている端末です。
建物に付いている火災報知器と同じようなものですか。
違います。
建物に義務設置される火災通報装置とは別の制度ですよ。
- 緊急通報装置は平成3年消防予第41号・消防救第25号で技術上の基準が定められた端末である
- 高齢者等の災害弱者向けに開発された福祉目的の端末であり、消防法令上の設置義務は無い
- 装置は手動起動装置・専用送信機・専用受信装置とこれを受けるセンターで成り立っている
- 停電時は自動で予備電源に切り替わり、待機状態60分間後も通報できる容量が求められる
- 建物に設置が義務付けられる消防機関へ通報する火災報知設備(火災通報装置)とは別の制度である
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目次
緊急通報装置はなぜ技術基準が作られたのか

もともとは福祉事業や民間のホームセキュリティから生まれた機器でした。
発出元は消防庁予防課長と消防庁救急救助課長の連名で、都道府県の消防主管部長宛てに示されました。
ルーツは消防庁自身が実施した「災害弱者緊急通報システムモデル事業」と、一般家庭向けのホームセキュリティシステムの端末装置です。
使用者が高齢者等であることを踏まえ、通報の確実性を製品の最低ラインとして求めたのがこの通知の出発点になっています。
もともとは福祉やホームセキュリティの機械だったんですね。
はい。
だからこそ製品ごとの性能差をそろえる必要があったわけです。
緊急通報装置はどんな仕組みで成り立っているか

用語を混同すると、どこまでが緊急通報装置なのかが分からなくなります。
押しボタンを操作する手動起動装置には、無線式・有線式・本体一体型の3通りが認められています。
通報を受け取る専用受信装置はセンター側の機器で、設置者である消防機関等が用意します。
センターになり得るのは消防本部や消防署だけでなく、市役所や町村役場、社会福祉協議会まで幅広く想定されています。
消防署じゃなくて役場や社会福祉協議会が受けることもあるんですね。
そうです。
福祉の窓口がセンターを兼ねている地域もあります。
無線式の手動起動装置には何が求められているか

携帯する以上、建物に固定する機器とは違う条件が課されています。
電波の届く範囲は家庭内の行動範囲(10m前後)を基準にしており、庭先まで届くことまでは求めていません。
電池の持ちは待機状態で1年間が最低ラインで、日常の点検動作を含めてもこの容量を割り込まないことが条件です。
電池切れに気づけない状態を防ぐため、残量の確認方法まで基準に組み込まれています。
お風呂場でも使えるくらい水に強い必要があるんですね。
はい。
浴室や廊下など家の中のどこでも使える前提の基準です。
火災通報装置と混同しやすいのはどこか

ところが消防庁自身が、両者を区別した通知を別途出しています。
火災通報装置は消防法施行令第23条に基づき特定の防火対象物へ設置が義務付けられ、設置届出や点検義務も発生します。
一方の緊急通報装置には、こうした設置義務の根拠条文が存在しません。福祉事業や個人の判断で導入する端末です。
消防庁がこの2つをわざわざ併記した通知を出しているのは、現場での混同を防ぐ意図があるためです。
両方とも消防に電話回線で繋がるので、てっきり同じ制度だと思っていました。
そこがいちばん間違えやすいポイントです。
通知の名前も別々に出ています。
明日からなにを確認すればよいのか

停電時の動きと、機器表示の2点が中心になります。
停電が起きても自動で予備電源に切り替わり60分間は通報できる設計になっているかを、取扱説明書で確認してください。
あわせて、専用送信機に装置の名称・型式番号・製造者名等の表示があるかも見ておきます。
最後に、緊急通報装置と火災通報装置のどちらを使っている建物なのかを、関係者の間で共有しておくと混同を防げます。
停電時のランプ表示、見たことなかったので確認してみます。
表示の確認から、ぜひ始めてみてください。
よくある質問
まとめ
表示の確認と予備電源の仕組み、親の家でも見てみます。
それがいちばんの安心につながります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 緊急通報装置の取扱いについて(通知)(平成3年3月15日 消防予第41号・消防救第25号 消防庁予防課長・消防庁救急救助課長、改正 平成13年3月消防予第105号・消防救第100号)
- 電話回線を利用する通報装置の設置・維持管理に係る留意事項について(通知)(平成8年9月11日 消防予第180号・消防救第199号、改正 平成13年3月消防予第105号・消防救第100号)
- 消防機関へ通報する火災報知設備の取扱いについて(通知)(平成8年2月16日 消防予第22号)
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





