二酸化炭素を使う不活性ガス消火設備は、防護区画いっぱいにガスを充満させて濃度で消火する仕組みです。
そのため、設置したときの部屋の大きさや開口部の状態が変わると、せっかく計算した消火剤の量が足りなくなるおそれがあります。
点検要領では、区画の変化・開口部の計算・選択弁や起動装置の表示・緊急停止装置まで、設備そのものだけでなく建物側の変化も確認する項目が定められています。
この記事では、消防法施行規則第19条の条文を基に、点検で見落としやすい4つの確認ポイントを解説します。
うちのビル、去年1階の一部を改装したんですが、二酸化炭素消火設備の点検には関係ありますか?
大いに関係します。
防護区画や開口部が変わると、点検要領が確認を求める項目が増えます。
設備自体は何も変えていないのに、点検で見るところが増えるんですね。
はい。
今日は4つのポイントに分けて、根拠となる条文とあわせてご説明します。
- 防護区画が増築・改築・模様替えで変わると、設計時に計算した消火剤の量では足りなくなるおそれがある
- 自動閉鎖装置のない開口部は、囲壁面積や防護区画の体積に対する比率が法令の範囲内かを点検で確認する
- 選択弁には、選択弁である旨とどの防護区画のものかを表示する必要がある
- 起動装置には、防護区画の名称・取扱い方法・保安上の注意事項を表示する必要がある
- 二酸化炭素を放射する設備は、緊急停止装置を別の点検項目として確認する
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目次
不活性ガス消火設備の点検ではなぜ建物の変化まで見るのか

点検要領には、設備を取り囲む建物側の条件を確認する項目もあります。
消防法施行規則第19条第4項は、防護区画の体積1立方メートルあたりの消火剤の量を定め、この量を基準に貯蔵容器の本数が決まります。
つまり、部屋が広くなったり開口部が増えたりすると、設置時に計算した量では消火に必要な濃度を保てなくなるおそれがあるのです。
点検要領はこの前提を守るため、「区画変更等」という項目を設け、目視と設計図書の照合で建物側の変化を確認することを求めています。
次の項目から、具体的に何を確認するのかを見ていきましょう。
消火剤の量が部屋の大きさで決まっているなんて、知りませんでした。
はい。
だからこそ、点検のたびに部屋の形まで確認するのです。
増築や改築で防護区画が変わったら点検で何を確認するのか

点検要領は、この変化を見逃さないための確認方法を定めています。
点検員は防護区画の現在の状態を目視するだけでなく、設計図書に記載された当初の容積・開口部と見比べます。
倉庫の一角を会議室に区切った、通路の一部を物置にしたといった軽微な変更でも、容積や開口部の数が変わっていれば対象になります。
消防法施行規則第19条第5項第4号イ(イ)は、階段室や非常用エレベーターの乗降ロビーに面する開口部を設けてはならないとも定めており、増改築でこうした場所に新しい開口部ができていないかも確認対象です。
変更があったことが分かったら、設計時の消火剤量で足りているかを設計者や施工者に確認してもらう必要があります。
設計図書なんて、もう手元に残っていないかもしれません。
その場合は消防設備士や設計者に相談し、現状から再計算してもらいましょう。
自動閉鎖装置のない開口部は何を計算して点検するのか

こうした「閉じない穴」には、面積そのものに上限が設けられています。
通信機器室や指定可燃物を扱う部分では囲壁面積の1パーセント以下、それ以外の防護区画では体積と囲壁面積のうち小さいほうの10パーセント以下に抑えなければなりません。
換気ダクトや配管の貫通部が増えると、この合計面積がじわじわ増えていくため、増改築のたびに見直しが必要です。
点検では、現状の開口部の面積を測り直し、設計図書に記載された比率の範囲内に収まっているかを確認します。
範囲を超えていれば、消火剤の量を増やすか開口部をふさぐかのいずれかの対応が必要になります。
換気ダクトを増やしただけでも、比率の計算をやり直すんですね。
その通りです。
見た目は小さな工事でも、比率への影響は必ず確認してください。
選択弁と起動装置にはなぜ防護区画名の表示が必要なのか

だからこそ、弁や起動装置そのものに表示が義務づけられています。
貯蔵容器を複数の防護区画で共用する設備では、防護区画ごとに選択弁を設け、どの区画用かを表示することが決まっています。
起動装置の側にも防護区画の名称と取扱い方法、保安上の注意事項を表示しなければなりません。
点検では、表示の文字が読み取れるか、実際の配管や系統と表示内容が一致しているかまで確認します。
表示が薄れていたり、工事で系統が変わったのに書き換えていなかったりすると、いざというときに誤って別の区画へ放射してしまう危険があります。
系統が変わったのに表示だけ古いままということもありそうですね。
はい。
工事のあとは必ず表示と系統図を照合してください。
緊急停止装置の点検はなぜ二酸化炭素放射設備だけ別項目になっているのか

点検票の構成そのものにも、その違いが表れています。
窒素やIG-55等を使う設備では、起動装置の点検項目の中で非常停止用スイッチの作動まで確認します。
一方、二酸化炭素を放射する全域放出方式の設備には、消火剤の放射を停止する旨の信号を制御盤へ発信するための緊急停止装置を設けることが義務づけられており、点検要領はこれを独立した点検項目として切り出しています。
人体への危害がより強く意識される二酸化炭素だからこそ、放射を止める手段を二重に備え、点検でも別立てで確認する構成になっているのです。
点検票にこの項目が無い設備は窒素系であり、ある設備は二酸化炭素系と見分ける手がかりにもなります。
点検票の項目の違いで、消火剤の種類まで分かるんですね。
そうです。
点検票の構成そのものが、設備の仕組みを教えてくれます。
よくある質問
まとめ
設備だけでなく、建物側も見るべきところが分かりました。
次の点検では設計図書を引っぱり出してみます。
ぜひそうしてください。
判断に迷う点があれば、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行規則第19条第4項・第5項第4号・第11号・第14号・第15号(不活性ガス消火設備に関する基準)
- 消防用設備等の点検要領の全部改正について(平成14年6月11日消防予第172号)別添第6 不活性ガス消火設備
※本記事は記事作成時点の法令・通知に基づく一般的な解説です。個別の建物・設備の判断は所轄消防署にご確認ください。





