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共同住宅用スプリンクラー設備の住戸内はなぜ居住者自身の点検で足りるのか|共同住宅用自動火災報知設備との違いも解説

共同住宅用スプリンクラー設備の住戸内はなぜ居住者自身の点検で足りるのか

共同住宅用スプリンクラー設備や共同住宅用自動火災報知設備の点検では、点検資格者が住戸の中まで一軒ずつ回るわけではありません。
住戸内の部分については、外観上の項目に限って居住者自身の自主点検で足りるという仕組みが点検要領に定められています。
とはいえ住民任せにできるわけではなく、居住者に周知しておくべき事項や、資格者側で別紙に記録する範囲も別に決まっています。
住戸内の自主点検と資格者点検の境目を、4つの周知事項と点検票の記入ルールから整理します。

うちのマンション、共同住宅用スプリンクラーと自動火災報知設備が付いてるんですけど、点検のとき住戸の中まで業者さんが入ってくるんですか。

住戸内は外観上の点検に限って居住者自身の確認で足りることになっています。
ただし周知しておくべき事項が4つ決まっています。

じゃあ住民に何を伝えておけばいいのか、こちらで把握しておきたいです。

点検票への記入ルールと合わせて、今回の記事で順番に確認していきましょう。

この記事の結論
  • 住戸内の部分は、外観上の点検に限って居住者自身の自主点検で足りるとされています。
  • 自主点検を成立させるには、4つの事項を居住者に周知徹底しておく必要があります。
  • 点検票で※印が付いた項目は、住戸・共用室・管理人室ごとに別紙へ記録する仕組みになっています。
  • 共同住宅用自動火災報知設備には、予備電源の読み替えと蓄積機能の解除という追加の留意事項があります。
  • 共同住宅用スプリンクラー設備の送水口には、送水圧力範囲まで示した標識を設ける必要があります。

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共同住宅用設備点検の住戸内自主点検と資格者点検の役割分担をまとめた図解

共同住宅用スプリンクラー設備や自動火災報知設備はなぜ住戸内を居住者自身の点検に任せてよいのか

住戸内のスプリンクラーヘッドを居住者が確認するイメージ
共同住宅は住戸の数が多く、点検資格者が毎回すべての住戸内へ立ち入るのは負担が大きい設備です。
そこで点検要領は、住戸内の範囲に限って居住者自身の確認で済ませる方法を認めています。
問1 共同住宅用スプリンクラー設備及び共同住宅用自動火災報知設備の点検において、住戸内の部分は点検資格者が外観からすべて確認しなければならないか。
答1 住戸内の部分については、外観上の項目について居住者の自主点検をもって足りるものとすること。
住戸内は外観確認に限って、居住者自身の目で確認してよいことになっています。
対象になるのは住戸内の設備機器だけで、共用室や管理人室、送水口といった共用部分は従来どおり点検資格者が点検します。
この取り扱いは共同住宅用スプリンクラー設備・共同住宅用自動火災報知設備のどちらの点検要領にも、ほぼ同じ文言で定められています。
ただし自主点検に任せきりにできるわけではなく、居住者側に周知しておくべき事項が別に決められています。

うちは全部の部屋に業者さんが入って点検してくれると思っていました。

住戸内は外観確認に限って、居住者自身の目で見てもらう取り扱いです。
次は周知事項を見てみましょう。

居住者に周知しておくべき4つの事項とは何を指すのか

自主点検に必要な周知事項を住民が確認するイメージ
自主点検を住民の判断だけに委ねてしまうと、点検すべきかどうかの判断がぶれてしまいます。
そこで点検要領は、居住者に周知徹底しておくべき事項を具体的に4つ定めています。
問2 住戸内を居住者の自主点検に委ねる場合、点検資格者はあらかじめ居住者にどのような事項を周知しておく必要があるか。
答2 外観上の点検を実施する義務、外観上の点検項目、異常が発生している場合の措置、その他の留意事項の4つの事項が、居住者に対して周知徹底されている必要がある。
居住者に伝えるべき事項は、4つに絞られています。
1つめは外観上の点検を実施する義務そのものがあることで、2つめは具体的にどこを見ればよいかという点検項目です。
3つめは変形や損傷など異常を見つけたときの措置、4つめはその他の留意事項で、いずれも住戸内の設備機器が対象です。
この4つが居住者に伝わっていなければ、住戸内の自主点検という仕組み自体が成り立ちません。

住民には何をどう伝えればいいか、こちらも迷っていました。

義務・点検項目・異常時の措置・留意事項の4つを伝えれば足ります。
次は点検票の記入ルールを見てみましょう。

※印の付いた点検項目はなぜ住戸ごとに別紙へ記録するのか

※印の点検項目を住戸ごとの別紙に記録するイメージ
共同住宅用スプリンクラー設備の点検票には、項目の一部に※印が付いています。
この※印は、住戸・共用室・管理人室が多数ある共同住宅特有の記録方法を示す目印です。
問3 共同住宅用スプリンクラー設備の点検票で※印が付いている項目は、点検結果をどこに記入すればよいか。
答3 票中※印のあるものは、(その5)に住戸、共用室又は管理人室ごとの点検結果を記入すること。
※印の項目だけは、住戸ごとに別紙へ記録します。
スプリンクラーヘッドや自動警報装置・制御弁・表示器など住戸ごとに個体が異なる機器は、共通の点検票だけでは全戸分を書き切れません。
そこで※印を付けた項目に限り、(その5)という別紙に住戸・共用室・管理人室ごとの判定を記入する仕組みになっています。
裏を返せば、※印の付いていない項目は共通の点検票だけで足り、住戸ごとに分けて書く必要はありません。

点検票、住戸の数だけ別々に用意するのかと思っていました。

※印の項目だけ、住戸ごとに別紙へ記入する仕組みです。
次は自動火災報知設備だけの留意事項を見てみましょう。

共同住宅用自動火災報知設備にだけ追加されている2つの留意事項とは何か

予備電源の読み替えと蓄積機能の解除のイメージ
共同住宅用自動火災報知設備の点検要領には、スプリンクラー設備側には出てこない留意事項が2つ加わっています。
いずれも住戸ごとに機器構成が異なることに関係した内容です。
問4 共同住宅用自動火災報知設備の点検要領で、共同住宅用スプリンクラー設備の点検要領には明記されていない留意事項は何か。
答4 予備電源の容量が非常電源の容量を上回る場合は、当該予備電源を非常電源と読み替えることができること、及び感知器作動試験は蓄積機能を有する回線に接続されているものにあっては、当該蓄積機能を解除して行ってもよいこと。
自動火災報知設備だけに、もう2つの留意事項があります。
1つめは予備電源と非常電源の読み替えで、予備電源の容量が非常電源の容量を上回っていれば、わざわざ非常電源を別に備えなくても予備電源で読み替えてよいとされています。
2つめは感知器作動試験時の蓄積機能の解除で、蓄積機能を持つ回線でも、試験のときだけ機能を解除して確認してよいことになっています。
どちらも住戸ごとに機器構成が異なる共同住宅特有の事情に配慮した留意事項です。

スプリンクラーと自動火災報知設備、点検の中身は同じだと思っていました。

予備電源の読み替えと蓄積機能の解除が追加されています。
最後に送水口の標識を見てみましょう。

共同住宅用スプリンクラー設備の送水口はなぜ送水圧力範囲まで標識に表示するのか

送水口の標識に送水圧力範囲を表示するイメージ
送水口は消防隊が外部から送水するための設備で、建物の外壁などに設置されています。
共同住宅用スプリンクラー設備の送水口には、ほかの設備にはない独自の表示事項があります。
問5 共同住宅用スプリンクラー設備の送水口の標識には、どのような内容を表示しておく必要があるか。
答5 共同住宅用スプリンクラー設備用送水口である旨及び送水圧力範囲を表示した標識が適正に設けられていること。
送水口の標識には、送水圧力の範囲まで示しておきます。
総合点検では、試験弁にヘッドと同等の性能を持つオリフィスを取り付けて加圧送水装置を起動し、放水圧力が0.1MPa以上1MPa以下であることを確認します。
消防隊が送水する際にこの範囲を外れた圧力で送水してしまうと設備の性能を発揮できないおそれがあるため、標識であらかじめ範囲を示しておく必要があります。
共同住宅用スプリンクラー設備用送水口である旨の表示と合わせて、損傷や脱落、汚損がないことも点検基準に定められています。

送水口の標識、ただの目印だと思っていました。

送水圧力の範囲まで示して、送水時の圧力オーバーを防ぎます。
最後に全体を整理しましょう。

よくある質問

Q住戸内の自主点検を怠った場合、資格者が行う点検結果報告書には影響しますか?
A居住者への周知が不十分なまま自主点検が行われていなければ、点検資格者は外観上の確認が済んでいないものとして取り扱う必要があります。周知の状況を確認したうえで報告書を作成してください。
Q共用部分も居住者が自主点検してよいのですか?
Aいいえ。住戸内の部分だけが自主点検の対象で、共用室や管理人室、送水口などの共用部分は従来どおり点検資格者が点検します。
Q※印の付いた項目を記入する(その5)は、どの設備の点検票にありますか?
A今回取り上げた共同住宅用スプリンクラー設備の別記様式に設けられています。住戸・共用室・管理人室ごとに判定を記入する専用の別紙です。
Q共同住宅用自動火災報知設備で蓄積機能を解除してよいのは、どの場面ですか?
A感知器作動試験を行うときに限られます。蓄積機能を持つ回線に接続されたものであっても、試験時だけ解除して確認してよいとされています。

まとめ

✔共同住宅用スプリンクラー設備・自動火災報知設備は、住戸内に限って居住者自身の自主点検で足ります
✔自主点検の対象は外観上の項目だけで、機能の点検までは含みません
✔居住者には外観点検の義務・点検項目・異常時の措置・その他の留意事項の4つを周知しておきます
✔住戸内以外の共用室・管理人室・送水口などは、従来どおり点検資格者が点検します
✔※印の付いた項目は、(その5)の別紙へ住戸・共用室・管理人室ごとに記入します
✔共同住宅用自動火災報知設備には、予備電源の読み替えと蓄積機能の解除という追加の留意事項があります
✔送水口の標識には送水圧力範囲まで表示し、送水時の圧力オーバーを防ぎます

住戸内と共用部で担い手が分かれているのがよく分かりました!

点検票への記入ルールまで含めて、不安な点があれば㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法第17条の3の3、消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第31条の6
  • 消防法施行規則の規定に基づき、消防用設備等又は特殊消防用設備等の種類及び点検内容に応じて行う点検の期間、点検の方法並びに点検の結果についての報告書の様式を定める件(平成16年5月31日消防庁告示第9号)の一部を改正する件(平成18年消防庁告示第32号)別表第30・別表第31及び点検要領第30・第31
  • 共同住宅用スプリンクラー設備の設置及び維持に関する技術上の基準を定める件(平成18年消防庁告示第17号)
  • 共同住宅用自動火災報知設備の設置及び維持に関する技術上の基準を定める件(平成18年消防庁告示第18号)
  • 特定共同住宅等における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令(平成17年総務省令第40号)

※本記事は公表されている法令、告示および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。点検の基準や点検要領は改正されることがあります。個別の判断は、消防設備士や所轄消防署にご確認ください。

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