大きな地震が来る前に、消防が動き出すことがあります。
消防法には、まだ火災が起きていない段階から使える特別な規定があります。
きっかけは、気象庁から伝わる地震予知情報です。
消防法第三十六条の二の二は、警戒宣言が出た場合に消火活動の緊急通行権と水利の緊急使用権を前倒しで使えるようにしています。
地震の警戒宣言って、消防にも関係あるんですか。
実は消防法にも、警戒宣言が出たときの特別規定があるんです。
火災が起きる前から動けるってことですか。
はい。
緊急通行権と水利の使用権が前倒しで使えるようになります。
- 警戒宣言が発せられると、消防法第二十七条と第三十条第一項が前倒しで使えるようになります
- 緊急通行権は、火災が実際に発生する前でも使えるように読み替えられます
- ただし水災による被害のおそれだけを理由にした通行は、この規定の対象外です
- 水利の緊急使用権も同じ読み替えで、出火前の水門・制水弁の操作が可能になります
- 警戒宣言は気象庁長官からの地震予知情報を受けて内閣総理大臣が閣議で発するものです
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目次
警戒宣言が出たら消防法のどの条文が動くのか

その裏側で、消防法の条文がどう動くのかはあまり知られていません。
対象になるのは、消防隊が現場へ急行するための通行権を定めた消防法第二十七条と、消火用の水利を確保する権限を定めた第三十条第一項です。
この二つの条文は、もともと「火災の現場」を前提にした規定です。
警戒宣言が出た場面では、この「火災の現場」という言葉が読み替えられ、実際の火災発生前でも使えるようになります。
読み替えの内容は、条文によって少しずつ違います。
警戒宣言って聞いたことはありますが、消防との関係は知らなかったです。
第二十七条と第三十条が、警戒宣言のときだけ特別に読み替えられるんです。
火災が起きていなくても緊急通行権は使えるのか

警戒宣言が出た場面では、この通行権の範囲がさらに広がります。
けれど第二十七条の「火災の現場」という言葉は、警戒宣言のときだけ特別に読み替えられます。
読み替え後の意味は、地震が起きたら人命や財産に大きな被害が出るおそれが著しく大きい場所です。
つまり、実際の火災発生を待たずに、消防隊は私有地や空地、水面を通行できることになります。
緊急地震速報を受けてから火災が起きるまでの短い時間を、少しでも前倒しで使えるようにする仕組みです。
地震が起きる前から、もう通っていいんですね。
はい。
警戒宣言が出た時点で、先回りして動けるようになっています。
なぜ水災による被害は緊急通行権の対象から外れるのか

それが「水災による被害を除く」という部分です。
地震に伴う津波や浸水といった水災への対応は、この条文の対象になっていません。
水災からの避難や防御は、水防法や災害対策基本法など、別の法律の体系で対応する仕組みになっています。
だから、津波のおそれだけを理由に第二十七条の通行権を使うことはできません。
消防が使えるのは、あくまで火災や延焼、人命救助に関わるおそれが大きい場所に限られます。
津波が来そうなときも、この通行権で通れるのかと思ってました。
いえ、水災のおそれだけでは対象外なんです。
水利の緊急使用権はどう変わるのか

この水利の使用権も、警戒宣言のときは前倒しで使えます。
警戒宣言が出た場面では、「火災の現場」が地震が起きたら火災が発生するおそれが著しく大きい場所と読み替えられます。
これにより、消防長や消防署長、消防団の長は、実際の出火前から水利を使用したり、水門や樋門、水道の制水弁を開閉したりできます。
第二十七条の通行権と組み合わせることで、出火前の段階から現場に近づき、水を確保する準備まで進められる仕組みです。
第三十条第二項にある、水利の所有者等とあらかじめ協定を結ぶ規定は、この読み替えの対象にはなっていません。
火が出る前から、水門を開けたりできるんですか。
はい。
水利の確保も前倒しでできる仕組みです。
警戒宣言はどうやって出されるのか

その警戒宣言は、誰がどんな手続きで出すものなのでしょうか。
気象庁長官から地震予知情報の報告を受けた内閣総理大臣が、地震防災応急対策を実施する緊急の必要があると判断したときに、閣議にかけて発します。
対象になるのは、大規模な地震が発生するおそれが特に大きいとして指定された地震防災対策強化地域です。
警戒宣言が出た後、地震の発生するおそれがなくなったと認められれば、今度は警戒解除宣言が発せられます。
消防法第三十六条の二の二の読み替えが効くのは、この警戒宣言から警戒解除宣言までの間に限られます。
総理大臣が出すものだったんですね、知らなかったです。
はい。
閣議にかけて発せられる、重い手続きなんです。
よくある質問
まとめ
地震が来る前から消防が動ける理由が分かりました!
気になる場合は、所轄の消防本部に確認できます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法第二十七条・第二十九条・第三十条・第三十六条の二の二(e-Gov法令検索)
- 大規模地震対策特別措置法第二条・第三条・第九条(昭和五十三年法律第七十三号。e-Gov法令検索)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。実際の運用や判断は、発令された警戒宣言の内容や所轄消防本部の指示によって異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





