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国際海上輸送に対応した移動タンク貯蔵所はなぜ間仕切と防波板が不要になるのか|IMDGコードに適合するタンクローリー車の基準の特例を解説

国際海上輸送に対応したタンクローリー車はなぜ間仕切と防波板が不要になるのかを示すアイキャッチ

国際海上輸送のために作られたタンクローリー車には、国内の移動タンク貯蔵所と同じ間仕切や防波板がありません。
なぜそのままの構造で設置が認められるのでしょうか。
消防危第35号は、IMDGコードに適合する車両だけに認められた特例を整理した通知です。
IMDGコードに適合する移動タンク貯蔵所は、間仕切と防波板の設置義務そのものが適用除外になります。

うちで扱う移動タンク貯蔵所、海外から来たタンクローリー車は中の仕切りが無いって聞いたんですが、それで大丈夫なんですか。

IMDGコードに適合していれば、間仕切や防波板が無くても認められます。
順番に見ていきましょう。

国際基準に合っていれば、国内の基準は一部省略されるということですか。

そのとおりです。
どこまで省略できるかには線引きがあります。

この記事の結論
  • 消防危第35号は、IMDGコードに適合する移動タンク貯蔵所(IMDGコード型タンクローリー車)の特例を整理した通知です(平成16年)。
  • 特例の根拠は危険物の規制に関する政令第15条第5項と同令の規則第24条の9の3です。
  • 適合する車両は、間仕切(政令第15条第1項第3号)と防波板(同項第4号)を設置しないことができます。
  • ただし常置場所や注入ホースの結合金具など、適用除外にならない基準も残っています。
  • 設置許可や完成検査では、IMO表示板の確認が簡素化のポイントになります。

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IMDGコードに適合する移動タンク貯蔵所の特例を4ステップで示した図解

国際基準に合わせたタンクローリー車の特例はなぜ必要になったのか

規制改革の書類とタンクローリー車の車両ブロックが矢印でつながるイラスト
国際輸送に使われるタンクローリー車は、もともと国内の移動タンク貯蔵所とは違う構造で作られています。
国内基準をそのまま当てはめると、せっかくの車両が国内で使えなくなってしまいます。
消防危第35号 危険物の規制に関する政令の一部を改正する政令(平成15年政令第517号)及び危険物の規制に関する規則の一部を改正する省令(平成15年総務省令第143号)がそれぞれ公布され、平成16年4月1日から施行されることとなりました。(略)今回の改正事項は、「規制改革推進3か年計画(再改定)」において移動タンク貯蔵所(タンクローリー車)について、欧米の輸送実態の検証等を行い、積載物の種類や容量の制限、タンクの構造強化等により、安全性を損なわないことを条件に、間仕切及び防波板の設置義務の緩和・撤廃の可否について検討し、所要の措置を講ずることとされていたことに対応するもの。
欧米で使われているタンクローリー車は、積み方や構造の考え方が国内の基準と異なります。
国内基準をそのまま当てはめると、国際輸送に対応した車両が国内で使えなくなってしまいます。
そこで、安全性を損なわない範囲で基準を緩和できないかが検討されました。
国際的な輸送実態に合わせて、基準の緩和が検討されたのがこの通知の出発点です。

海外の車両をそのまま国内の基準に合わせようとすると、無理が出るということですね。

はい。
そこで国際基準に適合する車両だけの特例が作られました。

IMDGコードに適合するタンクローリー車とはどんな車両か

小さな表示板が付いたタンク車両ブロックの横に国際基準を示す輪のマークが並ぶイラスト
対象になるのは、どんなタンクローリー車でもよいわけではありません。
国際海上輸送のルールに適合していることが条件です。
消防危第35号 国際海事機関が採択した危険物の運送に関する規程(国際海上危険物規程、IMDGコード)に定める基準に適合する移動タンク貯蔵所(以下「IMDGコード型移動タンク貯蔵所」という。)について、位置、構造及び設備に係る特例規定として、政令第15条第5項及び規則第24条の9の3が追加された。IMDGコード型移動タンク貯蔵所のうち積載式のもの(IMDGコード型タンクコンテナ)については、従前から規則において特例規定が設けられていたところであるが、今回の改正により、積載式以外のもの(以下「IMDGコード型タンクローリー車」という。)について、新たに特例規定が整備されたものである。
危険物の規制に関する政令第15条第5項 国際海事機関が採択した危険物の運送に関する規程に定める基準に適合する移動タンク貯蔵所については、総務省令で、第1項、第2項及び前項に掲げる基準の特例を定めることができる。
対象になるのは、IMDGコードという国際海上輸送のルールに適合した車両です。
積み替え式のタンクコンテナにはすでに特例がありましたが、車両に固定されたタンクローリー車の特例は今回新しく整備されました。
国内生まれの車両には関係のない話で、あくまで国際輸送に対応した車両だけが対象です。
IMDGコードに適合しているかどうかが、特例を受けられるかの境目になります。

IMDGコードに適合しているかどうかは、どこを見て判断するんですか。

車両に貼られたIMO表示板が目印です。
のちほど説明します。

特例でどの基準が適用除外になるのか

内部に仕切り線のあるタンクブロックと仕切り線を無くした厚い外殻のタンクブロックが並ぶイラスト
特例を受けると、具体的にどの基準が外れるのでしょうか。
省略できる範囲には、はっきりとした線引きがあります。
消防危第35号 IMDGコード型タンクローリー車については、間仕切及び防波板(政令第15条第1項第3号及び第4号)を設置しないことができるが、タンク本体の構造等について強化されている部分があるほか、移送時の充てん率が20%以下又は80%以上に指定されているので管理上留意する必要があること(従来のIMDGコード型タンクコンテナと同じ)。
危険物の規制に関する規則第24条の9の3第2項 前項の移動タンク貯蔵所については、令第15条第1項第2号から第5号まで及び第7号から第14号まで(略)の規定は、適用しない。
省略できるのは間仕切(政令第15条第1項第3号)と防波板(同項第4号)です。
あわせて、タンクの水圧試験の方法など複数の号がまとめて適用除外になります。
ただし省略できる代わりに、タンク本体の強度が高められているほか、充てん率20%以下又は80%以上という積み方の制限が付きます。
間仕切や防波板が無い分、タンクの強度と充てん率の管理で安全性を補っています。

中の仕切りが無い代わりに、積み方そのものが決められているんですね。

そうです。
充てん率の管理が欠かせません。

特例でも守らなければならない基準はどこか

タンク車両ブロックに標識板が付き横にホースの結合金具が置かれたイラスト
省略できる基準がある一方で、そのまま適用される基準も残っています。
特例の範囲を正しく区別しておく必要があります。
消防危第35号 設置許可に当たっては、当該タンクローリー車にIMO表示板(IMDGコードに適合している旨を示す表示板)が貼付されている場合には、IMO表示板の交付に係る各国政府機関又はこれに代わる機関の許可書等の写し等をもって、設置許可申請において必要とされる添付書類とすることができること。完成検査前検査については、政令第8条の2第4項第3号の規定を適用し、簡素化を図ることができること。完成検査に当たっては、移動貯蔵タンクに漏れや変形がなく健全な状態であることの確認、IMO表示板の確認並びに標識及び掲示板の確認により行うことができること。
危険物の規制に関する政令第8条の2第4項第3号 (略)液体危険物タンクについて国際海事機関が採択した危険物の運送に関する規程に定める基準(水圧試験に関する部分に限る。)に適合している旨の総務省令で定める表示がされているものは、前項第4号の規定は適用しない。
間仕切・防波板以外にも、適用除外にならない基準があります。
常置場所の基準、可燃性蒸気を回収する設備の構造、注入ホースの結合金具、静電気を防ぐ装置、タンクの表示や標識は、IMDGコード型タンクローリー車にもそのまま適用されます。
その代わり、設置許可や完成検査ではIMO表示板の確認を軸にした簡素化が認められています。
省略されるのは一部の基準だけで、常置場所や表示などはそのまま適用される点を見落とさないようにします。

特例があるからといって、全部の基準が無くなるわけじゃないんですね。

はい。
省略される号は限られています。

特例を使うときに何を確認すればよいか

チェックリストを持つクリップボードと小さな表示板が線でつながるイラスト
考え方が分かったところで、実務ではどの順番で確認すればよいのでしょうか。
確認の起点は、いつも車両そのものの表示です。
消防危第35号 完成検査に当たっては、移動貯蔵タンクに漏れや変形がなく健全な状態であることの確認、IMO表示板の確認並びに標識及び掲示板の確認により行うことができること。
実務では、まず車両にIMO表示板が貼付されているかを確認します。
表示板があれば、交付した政府機関等の許可書等の写しを添えて設置許可を申請できます。
完成検査では、漏れや変形がないことと表示・掲示板の確認が軸になりますが、常置場所や注入ホースなど除外されない基準は通常どおり確認します。
IMO表示板の有無を起点に、省略される基準と残る基準を仕分けて確認するのが実務の進め方です。

つまり、IMO表示板があるかどうかがまず最初の確認ポイントなんですね。

そのとおりです。
表示板の有無からすべての確認が始まります。

よくある質問

QIMDGコード型タンクローリー車とはどんな車両ですか?
A国際海事機関が採択したIMDGコード(国際海上危険物規程)に定める基準に適合する、積載式ではないタンクローリー車のことです。
Q特例で省略できる基準は何ですか?
A間仕切(政令第15条第1項第3号)と防波板(同項第4号)など、複数の号が適用除外になります。
Q省略できる代わりに何が求められますか?
Aタンク本体の構造強化のほか、充てん率20%以下又は80%以上という積み方の制限が課されます。
Q設置許可や完成検査はどう簡素化されますか?
A車両にIMO表示板が貼付されていれば、許可書等の写しを添付書類にできるほか、完成検査前検査も政令第8条の2第4項第3号により簡素化されます。

まとめ

✔消防危第35号は、IMDGコードに適合する移動タンク貯蔵所(IMDGコード型タンクローリー車)の特例運用を整理した通知です(平成16年)。
✔根拠は政令第15条第5項と規則第24条の9の3です。
✔適合する車両は、間仕切(第15条第1項第3号)と防波板(同項第4号)を設置しないことができます。
✔省略の代わりに、タンク本体の強化と充てん率20%以下又は80%以上の管理が求められます。
✔常置場所や注入ホースの結合金具など、適用除外にならない基準も残っています。
✔設置許可や完成検査は、IMO表示板の確認を軸に簡素化されています。
✔確認するときは、まず車両にIMO表示板があるかどうかから始めます。

IMO表示板から確認すればいいんですね!

特例の範囲さえ押さえれば大丈夫です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防危第35号「移動タンク貯蔵所の技術上の基準等(IMDGコード型タンクローリー車、運転要員の確保関係)に係る運用について」(平成16年3月23日、消防庁危険物保安室長)
  • 危険物の規制に関する政令第15条第1項・第5項、第8条の2第4項第3号
  • 危険物の規制に関する規則第24条の9の3

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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