避難器具は、階ごとの収容人員に応じた個数を設けるのが国の基準です。
国の消防法施行規則は、建築基準法施行令の避難階段や特別避難階段がある階に限って、その数だけ個数を引くことを認めています。
大阪市消防局の消防用設備等の設置に係る運用基準には、これとは別に、条件に合う屋外階段の数を引ける特例が書かれています。
この記事では、大阪市の屋外階段等の特例を、国の条文、建築基準法施行令、消防庁の告示へと参照の順にたどり、東大阪市と堺市の基準とも比べます。
大阪市内のテナントビルで防火管理者をしています。
各階に避難はしごがあるのですが、屋外に階段もあるので、数を減らせないかと考えています。
国の基準で引けるのは、建築基準法施行令の避難階段と特別避難階段に限られます。
大阪市の運用基準には、条件に合う屋外階段を数に入れられる特例があります。
屋外階段があれば、その階の避難器具はすべて外せるのですか。
うちの階段は屋内と屋外に1つずつあります。
引ける数には、直通階段の数から1を引いた数までという上限があります。
しかも自動的に認められるものではなく、消防長又は消防署長が認めたときに使える特例です。
- 国の消防法施行規則第26条第2項が避難器具の個数から引けるとしているのは、避難階段と特別避難階段の数です
- 大阪市の運用基準は、直通階段が2以上ある建物で、条件に合う屋外階段等の数も引けるとしています
- 屋外階段の条件は、不燃材料で造ること、建築基準法施行令第23条から第25条までに適合すること、避難階で幅員1メートル以上の避難通路に面することの3つです
- 省略できる個数は、その階の直通階段の数から1を引いた数までです
- 堺市にも同じ趣旨の特例がありますが入口の条件が違い、東大阪市の運用基準には屋外階段の数を引く特例が見当たりません
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目次
大阪市の運用基準は避難器具の個数をどの階段で引けるとしているのか

避難器具の個数は消防法施行令第25条第2項第1号が定めており、そのただし書が、個数を減らせる場合を総務省令に委ねています。
その総務省令が消防法施行規則第26条で、階段にかかわるのは次の第2項です。
屋外に設ける避難階段は、建築基準法施行令第123条第2項で、出入口以外の開口部から2メートル以上離すこと、屋内からの出入口に防火設備を設けること、耐火構造として地上まで直通することが求められています。
この構造に当たらない屋外階段は、国の条文では引く数に入りません。
大阪市の運用基準は、避難器具の節の終わりに「特例基準」を置き、その1つ目に次の項目を挙げています。
1 屋外階段等の取り扱い
避難器具を設置しなければならない防火対象物に直通階段が2以上設けられている場合で、当該階段のうちいずれかが次の(1)又は(2)に適合する屋外階段等である場合は、当該階に設置する避難器具の個数は当該屋外階段等を利用することができる階ごとにそれぞれ令第25条第2項第1号の規定による避難器具の設置個数から当該屋外階段等の数を引いた数とすることができる。
| 比べる点 | 国(消防法施行規則第26条第2項) | 大阪市(避難器具 第8 特例基準 1) |
|---|---|---|
| 数を引ける階段 | 避難階段(屋外に設けるもの、屋内に設けるもので消防庁長官が定める部分を有するもの)と特別避難階段 | (1)に適合する屋外階段と、(2)に適合する地下1階から地上に至る避難上有効な階段 |
| 前提 | 建築基準法施行令第120条から第122条までの規定により必要とされる直通階段であること | 直通階段が2以上設けられていること |
| 引ける数 | 当該避難階段又は特別避難階段の数 | 当該屋外階段等の数。ただし、直通階段の数から1を減じた数以下 |
| 根拠として書かれている条文 | 消防法施行令第25条第2項第1号ただし書 | 令第32条又は条例第47条 |
この項目には、大阪市の行政指導基準を示す◆の記号も付いていません。
ただし、書き方は「適用することができる」「とすることができる」であり、消防長又は消防署長が認めるときという消防法施行令第32条の枠の中にあります。
自分の建物の階段が、建築確認の図面で避難階段とされているかどうかを、先に確かめておいてください。
屋外にある階段なら、どれも避難階段だと思っていました。
建築基準法施行令の構造に合うものだけが避難階段なのですね。
はい、国の条文で引けるのは避難階段と特別避難階段だけです。
まずは建築確認の図面で、階段の種類を確かめましょう。
屋外階段が満たす3つの条件はどこを読めば分かるのか

大阪市の特例基準は、(1)でアからウまでの3つを挙げています。
ア 屋外階段は、不燃材料で造ったものであること
イ 屋外階段の構造は、建基令第23条、第24条及び第25条の規定に適合したものであること
ウ 屋外階段は、避難階において、告示第2号第3第1号(1)トの規定又は第3.1.(3)の例により設けた幅員1メートル以上の避難通路に面していること
「建基令」は建築基準法施行令、「告示第2号」は避難器具の設置及び維持に関する技術上の基準の細目(平成8年消防庁告示第2号)のことで、「第3.1.(3)」は同じ避難器具の節の中の別の項目です。
条件を1つずつ確かめるには、次の順番でたどります。
- 大阪市の避難器具の節の「第8 特例基準」1を開き、その階に直通階段が2以上設けられていることを確かめる
- (1)アを読み、屋外階段が不燃材料で造られていることを確かめる
- (1)イから建築基準法施行令へ進む。第23条は階段と踊場の幅、蹴上げ、踏面の寸法を定め、屋外階段の幅は第120条又は第121条の規定による直通階段では90センチメートル以上とすることができるとしている
- 同じく第24条を読む。階段の高さが4メートル(一部の階段は3メートル)を超える場合に、その高さ以内ごとに踊場を設けることとし、直階段の踊場の踏幅は1.2メートル以上としている
- 第25条を読む。階段には手すりを設け、階段と踊場の両側には、手すりが設けられた側を除き、側壁又はこれに代わるものを設けることとしている
- (1)ウから消防庁の告示第2号の第3第1号(1)トへ進む。避難はしごを降りた先の避難空地に、避難上の安全性が確保されている避難通路を設けるという規定である
- (1)ウのもう一方の参照先である、同じ節の「第3 設置位置等の基準」1(3)を開く。屋内に設ける避難通路の区画の方法と、敷地に隣接する公園等を避難通路として使える場合が書かれている
- 屋外階段を下りた避難階で、階段が幅員1メートル以上の避難通路に面していることを現地で確かめる
大阪市の特例は、「規定又は第3.1.(3)の例により設けた」という書き方で、屋外階段を下りた先にも同じ考え方の通路を求めています。
「例により」は、もともとその規定の対象ではないものに、同じ方法を当てはめるという意味の書き方です。
参照先の第3の1「避難はしご」の見出しには◆が付いていますが、屋外階段の特例では、その例により設けた避難通路に面することが条件として書かれています。
屋外階段の下から道路までの通路の幅を測り、物が置かれて狭くなっていないかを確かめてください。
階段そのものだけでなく、下りた先の通路まで条件に入っているのですね。
うちは階段の下に自転車が並んでいます。
避難通路は幅員1メートル以上が条件として書かれています。
階段の下から道路まで、実際に歩いて幅を測ってみましょう。
大阪市の特例で引ける数と上限は実際の建物でどう数えるのか

大阪市の特例基準1には、次のただし書が付いています。
数え方は、運用基準の文面に沿うと次の順番になります。
- 消防法施行令第25条第2項第1号で、その階に必要な避難器具の個数を出す。たとえば(5)項や(6)項の階は、収容人員が100人以下なら1個以上、100人を超えると100人までを増すごとに1個を加える
- その階から利用することができる屋外階段等のうち、(1)又は(2)に適合するものの数を数える
- その階に設けられている直通階段の数から1を引き、省略できる個数の上限を出す
- 適合する屋外階段等の数と上限のうち、小さいほうの数を必要な個数から引く
| 例 | 必要な個数 | その階の直通階段 | 適合する屋外階段等 | 省略できる上限 | 設置する個数 |
|---|---|---|---|---|---|
| 一 | 2個 | 2(屋内1、屋外1) | 1 | 1個 | 1個 |
| 二 | 3個 | 2(どちらも屋外) | 2 | 1個 | 2個 |
| 三 | 3個 | 3(屋内1、屋外2) | 2 | 2個 | 1個 |
計算は「当該屋外階段等を利用することができる階ごとに」行うと書かれているので、屋外階段が届いていない階は対象になりません。
引いた結果が0になる場合に避難器具を設置しないことができるかどうかは、特例基準1には書かれていません。
国の消防法施行規則第26条第2項には「引いた数が一に満たないときは、当該階に避難器具を設置しないことができる」という一文がありますが、特例基準1にはこれに当たる文がないため、所轄の消防署に確かめてください。
そもそも、この特例の根拠は次の条文です。
なお、この屋外階段の条件は、同じ特例基準の別の項目からも借りられています。
- 特例基準4は、上の階の壁面が下の階より後退していて避難器具を付けにくい建物について、下の階の屋上やバルコニー等を降りる先として扱う項目である
- その(4)は、降りる先の階に設ける避難器具の個数から引ける階段として、消防法施行規則第26条第2項に規定する階段、特例基準1(1)に適合する階段、特例基準2に適合する屋内避難階段の3つを挙げている
- 借りられているのは(1)の屋外階段だけで、(2)の地下1階からの階段は挙がっていない
- 特例基準4(4)には「引いた数が1に満たないときは避難器具を設置しないことができる」という文がある
うちは屋内と屋外に1つずつなので、引けるのは1個までですね。
各階に1個しかない避難はしごは、外せるのでしょうか。
引いた結果が0になる場合の扱いは、この項目には書かれていません。
所轄の消防署に図面を持って相談するのが確実です。
地下1階から地上へ上がる階段は大阪市ではどんな条件で数に入るのか

条件はアからクまで8つあり、中心になるのは次のウです。
8つの条件を整理すると、次のとおりです。
| 項目 | 書かれている条件 |
|---|---|
| ア | (1)のアとイに適合すること(不燃材料で造り、建築基準法施行令第23条から第25条までに適合する) |
| イ | 地下1階の出入口以外は、屋内部分と耐火構造の壁で区画すること。はめ殺しの特定防火設備である防火戸を設けた開口部、はめ殺しの防火戸と煙感知器の作動と連動して閉鎖する特定防火設備である防火戸を併設した開口部、階段から2メートルを超える部分の開口部は設けることができる |
| ウ | 上面又は側面で、階段の上方2メートルを超える部分が、水平投影面積の2分の1以上、かつ、4平方メートル以上、常時外気に開放されていること |
| エ | ウで側面を開放する場合、その前面は同一敷地内で水平距離50センチメートル以上が屋外の空間であること |
| オ | 階段の仕上げは、下地を含み不燃材料でしていること |
| カ | 地下1階の階段の出入口に、常時閉鎖式の防火戸又は煙感知器の作動と連動して閉鎖する防火戸を設けること |
| キ | 階段は、地上で幅員1メートル以上の屋外通路又はピロティーに面していること |
| ク | キの屋外通路又はピロティーは、告示第2号第3第1号(1)トの規定又は第3.1.(3)の例により設けた幅員1メートル以上の避難通路に通じていること |
つまり、地下1階からの階段も、不燃材料、建築基準法施行令の階段の規定、避難通路という3つの土台は屋外階段と共通で、そこに区画と外気への開放の条件が加わる形です。
運用基準には、階段の上部の一部が外気に開放されている場合と、階段の上方に屋根がかかっていて側面が開放されている場合の2つの例が図で示されています。
対象として書かれているのは地下1階から地上に至る階段で、地下2階以下からの階段は書かれていません。
地下に店舗や事務所がある建物では、階段の上に後から屋根や囲いが付け足されていないか、開放部分が看板や物でふさがれていないかを確かめてください。
地下の店舗から地上へ直接上がる階段があります。
雨よけに屋根を付けようかと話していたところでした。
屋根や囲いで外気に開いた部分が減ると、条件から外れるおそれがあります。
工事の前に、開放部分の面積を図面で確かめましょう。
東大阪市や堺市では屋外階段の扱いはどう書かれているのか

堺市の審査基準には、大阪市とよく似た項目があります。
ただし、設置を省略できる避難器具の個数は、当該階に設けられている直通階段の数から1を減じた数以下であること。
(1) 屋外階段は、不燃材料で造ったものであること。
(2) 屋外階段の構造は、建基政令第23条、第24条及び第25条の規定に適合したものであること。
(3) 屋外階段は、避難階において、幅員1m以上で、かつ、避難上の安全性が確保されている避難通路に面していること。
各市の公開資料で確認できた範囲を並べると、次のとおりです。
| 比べる点 | 大阪市 | 東大阪市 | 堺市 |
|---|---|---|---|
| 屋外階段の数を引く特例 | ある(避難器具 第8 特例基準 1) | 避難器具の設置に係る運用基準の「11 特例基準」に見当たらない | ある(第17 避難器具 Ⅱ 細目 7 特例適用基準) |
| 入口の条件 | 直通階段が2以上設けられている | - | 建築基準法施行令第120条及び第121条の規定に基づき必要とされる最低数を超えて直通階段が設けられている |
| 屋外階段の条件 | 不燃材料、建築基準法施行令第23条から第25条まで、避難階で告示の規定等の例により設けた幅員1メートル以上の避難通路に面する | - | 不燃材料、建築基準法施行令第23条から第25条まで、避難階で幅員1メートル以上かつ避難上の安全性が確保されている避難通路に面する |
| 省略できる個数の上限 | 直通階段の数から1を減じた数以下 | - | 直通階段の数から1を減じた数以下 |
| 地下1階から地上への階段 | (2)の条件に適合すれば数に入る | - | 記載は見当たらない |
| 上の階が後退した建物で引ける階段 | 消防法施行規則第26条第2項の階段、特例基準1(1)の屋外階段、特例基準2の屋内避難階段 | 消防法施行規則第26条第2項に規定する階段(11 特例基準(3)エ) | 同じ趣旨の項目は見当たらない |
| 記号 | ◆は付いていない | - | ★(堺市消防局として定めた指導基準の記号) |
| 特例の根拠として書かれている条文 | 令第32条又は条例第47条 | 令第32条又は条例第52条(11 特例基準の柱書) | 政令第32条又は条例第72条 |
大阪市は「直通階段が2以上」あれば入口の条件を満たしますが、堺市は建築基準法施行令で必要とされる数を超えて設けた階段であることを求めています。
建築基準法施行令第121条で2以上の直通階段が必要とされる階では、階段が2つあるだけでは「最低数を超えて」に当たらないと読めますが、数え方は堺市消防局に確かめてください。
屋外階段の3つの条件と上限は、大阪市と堺市でほぼ同じ内容でした。
東大阪市の運用基準は、上の階が後退した建物の項目で引ける階段を国の規則第26条第2項の階段としており、屋外階段を独自に加える記載は見当たりませんでした。
これは、記載が見当たらない市で特例が認められないという意味ではありません。基準に書かれていない場合は、消防法施行令第32条にもとづいて個別に相談することになります。
複数の市に建物がある場合は、建物ごとに管轄の消防署が示す基準で、数に入れられる階段を確かめ直してください。
つまり、同じ形の屋外階段でも、市によって数に入るかどうかの読み方が変わるのですね。
はい、堺市は必要な数を超えて設けた階段が対象と書かれています。
建物ごとに管轄の消防署で確かめるのが確実です。
よくある質問
まとめ
屋外階段をどこまで数に入れられるのかが分かってすっきりしました。
まずは図面で階ごとの直通階段の数を数えてみます!
階段と通路が分かる図面があれば、消防署への相談もスムーズに進みます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」第3章第1節 避難器具 第8 特例基準 1、4(4)、第3 設置位置等の基準 1(3) https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 東大阪市「避難器具の設置に係る運用基準」11 特例基準 https://www.city.higashiosaka.lg.jp/0000041303.html
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」第3章 第17 避難器具 Ⅱ 細目 7 特例適用基準 https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 消防法施行令第25条第2項第1号、第32条
- 消防法施行規則第26条第2項
- 建築基準法施行令第23条、第24条、第25条、第120条、第121条、第123条
- 避難器具の設置及び維持に関する技術上の基準の細目(平成8年消防庁告示第2号)第3第1号(1)ト
※本記事は公表されている法令および各市消防局の公開資料に基づく一般的な解説です。運用基準は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防局で確認してください。特例を使えるかどうかの個別の判断は、所轄消防署にご確認ください。





