消火器は、建物の各部分から歩行距離20メートル以内に1本あるように置くのが国の基本です。
ところが、メゾネットの住戸や体育館のように、階ごと・場所ごとにきっちり置くとかえって使いにくくなる建物もあります。
鴻巣市・桶川市・北本市を受け持つ埼玉県央広域消防本部の審査基準は、この原則によらない置き方を4つの場面に分けて書いています。
この記事では、その4つの場面を国の条文から順にたどり、鈴鹿市・四日市市・津市と大阪府内の3市の基準と並べて違いを整理します。
鴻巣市でメゾネットの共同住宅を管理しています。
上と下の階の両方に消火器が要るのか迷っています。
埼玉県央広域消防本部の審査基準に、メゾネットの特例があります。
条件を満たせば、上か下の階の消火器を使えることがあります。
消火器は20メートルごとに置くもの、とだけ覚えていました。
例外があるとは知りませんでした。
例外は政令第32条を使う形で書かれています。
国の条文、県央広域の基準、ほかの市の基準の順に読みましょう。
- 国の消防法施行規則第6条第6項は、消火器具を防火対象物の階ごとに、各部分から歩行距離20メートル以下となるように置くとしています
- 埼玉県央広域消防本部の審査基準は、第4章 第1 消火器具 3 設置場所の⑼から⑿で、20メートルの原則によらない置き方を4つの場面に分けて書いています
- ⑽メゾネット・⑾客席や大空間・⑿いたずらが多い施設の3つは政令第32条を適用すると明記し、4つとも能力単位の数値を満たすことが条件です
- メゾネットの扱いは、上か下の階の消火器を使う型(県央広域・鈴鹿市)と、一住戸を一階層とみなす型(東大阪市・堺市)などに分かれます
- 大阪市は劇場と映画館の客席等で周壁や廊下の出入口への分散配置を認める代わりに、所要数の20パーセント増しを求めています
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目次
国の基準は消火器の歩行距離をどう決めているのか

消火器の置き方は、消防法施行令第10条と消防法施行規則第6条で決まっています。
一 第一項及び第五項に規定するもの(次号に掲げるものを除く。) 防火対象物の階ごとに、当該防火対象物の各部分
ここでいう歩行距離は、直線の距離ではなく、実際に歩いて行ける経路で測る距離です。
県央広域の審査基準も3 ⑸で、机や什器など床に固定された物や動かしにくい物があれば、それを避けて歩ける導線で測り、廊下の中心線で求める必要はないとしています。
「階ごとに」と書かれているので、消火器が要る建物では階の数だけ消火器を置くのが原則です。
この原則によらない置き方を認める根拠になるのが、消防法施行令第32条です。
各市の審査基準は、どんな場面なら認めるのかを前もって文書で示しています。
階ごとに20メートル、が基本なのですね。
例外は消防署が認めたときだけなのですか。
令第32条は消防長又は消防署長が認める形です。
まず、自分の建物が審査基準に書かれた場面に当たるかを確かめましょう。
埼玉県央広域消防本部は20メートルを超えてよい場面をどう書いているのか

「埼玉県央広域消防本部消防用設備等に関する審査基準」を組合のサイトで公開していて、令和5年4月1日から適用しています。
ただし、1階のB部分が狭小で、火気の使用がなく、多量の可燃物が存しない場合は、能力単位の数値が満足するものに限り、当該部分からA又はB部分上階の消火器に至る歩行距離が20m以下となる場合は、1階のB部分に設置しないことができる。
4つとも、能力単位の数値を満たすことが条件になっています。
⑽から⑿の3つは「政令第32条の規定を適用して」と書いていますが、⑼にはその言葉がありません(理由までは書かれていません)。
また、この4項目には、行政指導を示す▲や●の印が付いていません。
県央広域の凡例は、▲を行政指導基準、●を法令基準に行政指導を加えた基準としているので、この4項目は行政指導としてではなく、基準の扱いとして書かれていると読めます。
| 項目 | 場面 | 置き方 | 政令第32条 |
|---|---|---|---|
| ⑼ | 複合用途の建物で1階の狭い部分(火気の使用がなく多量の可燃物がない) | 上の階の消火器まで20メートル以下なら、1階のその部分に置かない | 記載なし |
| ⑽ | メゾネットなど2階層以上で一つの住戸になっているもの | 上の階か下の階の消火器まで20メートル以下なら、その階に置かない | 適用 |
| ⑾ | 劇場・映画館などの客席、体育館・プール・展示場などの大空間 | 通行・観覧・競技の邪魔にならない周壁か、最も近い廊下・通路に置く | 適用 |
| ⑿ | 精神病床・認知症高齢者グループホームなどで、いたずらが著しい施設 | 20メートルを超えても、職員が常駐する室に集めて置く | 適用 |
同じ表の中でも、政令第32条と書いてある項目と無い項目があるのですね。
はい、だからどの項目に当たるかを先に決めるのが大事です。
当たる項目が決まれば、相談で確かめることが絞れます。
メゾネットの住戸では上か下の階の消火器を使ってよいのか

国の条文どおりに読むと、住戸の中の階ごとに消火器が要ることになります。
条件は、階ごとに設けるのが適当でないと認められること、能力単位の数値を満たすこと、歩行距離が20メートル以下になることの3つです。
鈴鹿市の審査基準 第4章 第1 2 ⑼もほぼ同じ文で、上階か下階の消火器までの歩行距離で判断しますが、政令第32条の言葉は入っていません。
一方、東大阪市と堺市は「一住戸を一階層とみなし」て、歩行距離20メートル以下ごとに置くとしています。
大阪市は、廊下のある階(廊下階)の廊下や通路で持ち出しやすい場所に置き、各部分から20メートル以下になるなら、規則第6条第6項第1号又は第2号によらないことができるとしています。
| 市 | メゾネットの書き方 | 根拠の示し方 | 印 |
|---|---|---|---|
| 鴻巣市・桶川市・北本市(県央広域) | 上の階か下の階の消火器まで20メートル以下なら、その階に置かない | 政令第32条を適用 | なし |
| 鈴鹿市 | 上の階か下の階の消火器まで20メートル以下なら、その階には設置を要しない | 記載なし | なし |
| 東大阪市 | 一住戸を一階層とみなし、20メートル以下ごとに配置 | 令第32条又は条例第52条を適用 | なし |
| 堺市 | 一住戸を一階層とみなし、20メートル以下ごとに配置 | 政令第32条又は条例第72条を適用 | ★(市独自) |
| 大阪市 | 廊下階の廊下・通路に置き、各部分から20メートル以下 | 令第32条又は条例第47条を適用 | なし |
| 四日市市・津市 | 消火器具の節にメゾネットの項目は見当たらない | - | - |
つまり、上下の階の消火器を使う市と、一つの階とみなす市があるのですね。
同じメゾネットでも市ごとに書き方が違います。
住戸の図面に、上下の消火器までの経路を描いて相談しましょう。
客席や体育館のような広い場所では消火器をどこに置くのか

かといって壁際だけに置くと、歩行距離が20メートルを超える場所が出ることがあります。
鈴鹿市(⑽)もほぼ同じ文で、周壁か最も近い廊下・通路に置くことで「足りると解して差し支えない」と書いています。
東大阪市は「それぞれの実態に応じて配置することができる」とし、堺市はボーリング場・アイススケート場・ダンスホール・舞台・集会場・ラック式倉庫まで例に挙げています。
大阪市はいちばん具体的で、劇場と映画館の客席等に限って、周壁か最も近い廊下の出入口部分に分散配置し、客席の中に置いた場合の所要数の20パーセント増しの個数を置くとしています。
大阪市は同じ形で、冷蔵室や冷凍室の収容室にも、出入口部分への分散配置と20パーセント増しを認めています。
| 市 | 対象 | 置き場所 | 条件 |
|---|---|---|---|
| 鴻巣市・桶川市・北本市(県央広域) | 客席・体育館・プール・展示場その他大空間 | 支障のない周壁か最も近い廊下・通路 | 能力単位の数値を満たすこと |
| 鈴鹿市 | 客席・体育館・プール・展示場その他大空間 | 支障のない周壁か最も近い廊下・通路 | 能力単位の数値を満たすこと |
| 東大阪市 | 客席・体育館・プール・展示場その他大空間 | それぞれの実態に応じて配置 | 能力単位の数値を満たすこと |
| 堺市 | ボーリング場・アイススケート場・ダンスホール・体育館・舞台・集会場・ラック式倉庫など | それぞれの実態に応じて配置 | 記載なし |
| 大阪市 | 劇場・映画館の客席等(冷蔵室・冷凍室の収容室は別の項目) | 周壁か最も近い廊下の出入口部分に分散配置 | 所要数の20パーセント増し |
体育館のある施設だと、市によって消火器の本数が変わることもあるのですね。
はい、大阪市の客席なら2割増しが条件です。
まず客席や競技場の図面に、壁際の配置を描いてみましょう。
いたずらが多い施設で消火器を職員の部屋に集めるには何が要るのか

この場面は、三重県の3市の基準にも同じ趣旨の項目があります。
四日市市と鈴鹿市にもほぼ同じ文があり、四日市市の基準は欄外に昭和53年1月26日消防予第15号を添えています。
四日市市の基準は行政指導の部分に下線を引く決まりですが、この項目には下線が引かれていません。
津市(5-1 2)は同じ内容に加えて、集めて置く部屋の扉などに「消火器設置場所」の標識を付けることと、防火管理者の選任が義務の建物では消防計画に集中設置していることを定めることを求めています。
精神病院で集中設置が認められた国の質疑は、記事の最後に関連記事として挙げています。 ここまでを、明日からの手順にまとめます。
- 自分の建物が⑼から⑿のどれに当たるかを、県央広域の審査基準 第4章 第1 3で確かめる
- 平面図に消火器の位置を描き、各部分から実際に歩ける経路で20メートル以下かを測る(3 ⑸)
- 消火器の能力単位の数値の合計が、規則第6条で必要な数値に足りているかを計算する
- 職員の部屋に集めて置くなら、津市が求めている標識や消防計画への記載のような運用も相談の材料にする
- 平面図と計算を持って、管轄の消防署に相談する(令第32条は消防長又は消防署長が認めるもの)
職員の部屋に集めるなら、扉の表示や消防計画も一緒に考えるのですね。
はい、平面図と能力単位の計算をそろえて、消防署に相談しましょう。
よくある質問
まとめ
県央広域の基準で、うちのメゾネットが⑽に当たるか確かめてみます!
上下の階の消火器までの経路を描いた図面があれば、相談も早く進みます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 埼玉県央広域消防本部「埼玉県央広域消防本部消防用設備等に関する審査基準」(令和5年4月1日適用)第1章 総則 第2 44・45、第4章 第1 消火器具 3 設置場所 ⑸・⑼〜⑿ https://www.ken-o.or.jp/notifiappli/equipment-style/page-9867/
- 鈴鹿市消防本部「鈴鹿市消防用設備等に関する審査基準」第4章 第1 消火器具 2 消火器の設置場所 ⑸・⑻〜⑾ https://www.city.suzuka.lg.jp/shobo/1012943/1016101/index.html
- 四日市市消防本部「四日市市消防同意事務審査基準」(令和6年4月1日適用)総則、第1 消火器具 2 設置場所 四日市市消防本部「審査基準・告示・ガイドライン」のページ
- 津市消防本部「津市予防事務審査検査基準」(令和8年3月1日現在)5-1 消火器具 2 特異施設等における消火器の設置方法 津市消防本部「予防関係審査基準」のページ
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」第1章 第1節 消火器具 第4 特例基準 1・2・7 https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 東大阪市「消火器具の設置に係る運用基準」凡例、5 特例基準 ⑴・⑵
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」第二十二版 第1章 総則 4 凡例、第1 消火器具 Ⅱ 細目 1(3)特例適用基準 https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 消防法施行令第10条・第32条
- 消防法施行規則第6条
※本記事は公表されている法令および各市消防本部・消防局の公開資料に基づく一般的な解説です。運用基準・審査基準・条例は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防本部で確認してください。「見当たらない」とした項目は、各市が公開している基準の該当する節を読んだ範囲でのものです。政令第32条の適用は消防長又は消防署長の判断によるため、個別の建物については所轄消防署にご確認ください。





