マンションやビルの裏に、避難はしごや救助袋で降りてくる場所があります。
その地面に自転車を並べたり、植木を植えたりしてよいのかは、管理の現場でよく迷うところです。
東大阪市消防局の「避難器具の設置に係る運用基準」は、この降りる場所に駐車場、駐輪場、植栽を設けないことを、はっきり書いています。
この記事では、国の基準と東大阪市の運用基準を分けて、避難器具までの通り道と降りる場所の決まりを順にたどります。
東大阪市でマンションを管理しています。
避難はしごの下に、駐輪場を広げたいと言われました。
東大阪市の運用基準は、降りる場所に駐輪場を設けないと書いています。
まず、国の基準から整理しましょう。
防犯のため、器具のある部屋に鍵をかけたいという声もあります。
鍵はかけてもよいのですか。
鍵の扱いも、同じ運用基準に書かれています。
通り道、隔板、降りる場所の順に読みましょう。
- 国の消防法施行令第25条第2項第2号は、避難器具を避難に際して容易に接近することができる位置に設けるとしています
- 東大阪市の運用基準は、避難器具に至る経路の扉に施錠装置を設けないとし、サムターン錠やクレセント錠などは認めています
- バルコニーの隔板は、おおむね幅60センチメートル以上、高さ80センチメートル以上、下端15センチメートル以下とし、4つの事項を表示します
- 避難空地は同じ敷地内とし、駐車場、駐輪場、植栽(芝生など草丈の低いものを除く)を設けないとしています
- 大阪市と堺市の避難器具の基準には、鍵や駐輪場の定めは見当たらず、東大阪市の運用基準に特有の書き方です
▼

目次
国の基準では避難器具のまわりに何を確保すると決まっているのか

避難器具をどこに設けるかは、消防法施行令第25条第2項第2号が定めています。
その告示が、平成8年消防庁告示第2号「避難器具の設置及び維持に関する技術上の基準の細目」です。
告示は、降りた先の地面を「避難空地」、そこから外へ抜ける道を「避難通路」と呼んでいます。
六 避難通路 避難空地から避難上安全な広場、道路等に通ずる避難上有効な通路をいう。
ト 避難空地には、当該避難空地の最大幅員(一メートルを超えるものにあっては、一メートルとすること。)以上で、かつ、避難上の安全性が確保されている避難通路が設けられていること。
一方、告示の文言には、駐輪場や植栽、扉の鍵といった具体的な言葉は出てきません。
器具ごとの操作面積や降下空間の寸法は、避難器具のまわりはどれだけ空けておくのかの記事で解説しています。
国の告示には、駐輪場という言葉は出てこないのですね。
はい、そこで東大阪市の運用基準の出番です。
次は、器具までの通り道を見ましょう。
東大阪市では避難器具までの通り道にある扉の鍵をどう扱うのか

冒頭で、国の基準によるほか、次によるとしています。
2 共通事項の(1)は、国の「容易に接近することができ」を次のように読んでいます。
ア 避難器具に至る経路に扉がある場合は、施錠装置を設置しないこと。ただし、サムターン錠、クレセント錠等の当該経路の内側から鍵を用いることなく容易に開錠できる構造の扉にあっては、この限りでない。
イ 管理権原が異なる等の理由により、避難器具に至る経路に施錠装置が設けられ、当該経路が確保できない場合は、避難器具に至ることができる経路ごとに避難器具を設置すること。●
内側から鍵なしで開けられるサムターン錠やクレセント錠なら、施錠装置を設けないという扱いから外れます。
イは●の行政指導で、鍵のかかる経路があるなら、その経路ごとに器具を設けるという考え方です。
運用基準の図1は、例を2つ挙げています。
- 共同住宅:住戸のバルコニーを容易に破壊できる隔板で仕切り、隣の住戸のバルコニーを通って避難器具に至る例
- 飲食店:飲食店Aと飲食店Bの営業時間が異なり、階の各部分から器具に至る経路が確保できないので、店ごとに避難器具を設ける例
テナントが入れ替わって扉に鍵を付けたときは、器具に行けなくなる区画が出ていないかを図面で確かめます。
営業時間の違う店どうしだと、器具を店ごとに分けるのですね。
はい、閉店した店の中を通る経路は使えません。
次は、バルコニーの隔板を見ましょう。
東大阪市ではバルコニーの隔板に何を表示しておくのか

そのとき、間の隔板が破れなければ通り道になりません。
ア 当該バルコニー等が避難経路として使用される旨
イ 当該隔板等を開放し、除去し、又は破壊する方法
ウ 当該隔板等の近傍に避難上支障となる物品を置くことを禁ずる旨
エ 避難器具が設置されている旨(避難器具設置住戸に隣接する住戸側の隔板面に限る。)
大きさの目安まで書かれているので、隔板を取り替えるときは寸法も確かめます。
隔板の前に植木鉢や物置を置くと、ウの表示があっても通れなくなります。
避難器具用ハッチに格納した避難はしごについては、3 設置方法(3)クが次のように書いています。
ハッチのふたの構造は、避難器具用ハッチのふたの記事で解説しています。
隔板の表示は、隣の住戸側にも必要なのですか。
エの器具がある旨は、隣の住戸側の面に表示します。
次は、いよいよ降りる場所です。
東大阪市では避難器具の降りる場所に駐輪場や植栽を置けるのか

避難空地には、駐車場、駐輪場、植栽(芝生、地被植物その他草丈が低く避難上支障のないものを除く。)及びその他避難上支障となるものを設けないこと。
例外は、道路と、国や地方公共団体などが管理し、将来も空地のままの公園だけです。
(10)には印が付いていません。
凡例どおりに読めば、法令基準の扱いとして示されていることになります。
ただし、国の告示のどの文言をこう読んだのかは、運用基準には書かれていません。
除かれているのは芝生のように草丈の低いものだけなので、低木の植え込みや駐車枠、駐輪ラックは避難空地に設けない扱いです。
ア 原則として敷地内の屋外の通路とすること。
ウ 避難空地をバルコニー、専用庭等に設けたときは、避難上有効な扉又はくぐり戸を設け、避難通路に到達する経路を確保すること。ただし、扉又はくぐり戸を設けることが困難な場合は、人が容易に乗り越えることができる、手摺り高さ1.2メートル以下のバルコニーの壁、柵等を経路とすることができる。
(16)も、避難階の降下地点が住戸のバルコニーになる場合に、手すりに開放できる扉(下端の高さ1.2メートル以下など)を設けるとしています。
ここまでの連鎖を、番号順にまとめます。
- 消防法施行令第25条第2項第2号が、避難器具を避難に際して容易に接近することができる位置に設けるとします
- 消防法施行規則第27条第2項を受けた告示第2号が、避難空地と避難通路を定義し、空地の広さと通路の幅を決めます
- 東大阪市の運用基準は、令第25条と規則第26条・第27条、1号告示と2号告示の規定によるほか、次によるとします
- 2 共通事項(1)が、「容易に接近」を階の各部分から器具までの経路の確保と読み、扉の施錠装置を原則として認めません
- (3)が隔板の大きさと表示を決め、(9)が避難空地を同じ敷地内とします
- (10)が避難空地に駐車場、駐輪場、植栽を設けないとし、(11)が避難通路を原則として敷地内の屋外とします
芝生ならよくて、低木の植え込みはだめなのですね。
はい、草丈の低いものだけが除かれています。
次は、大阪市と堺市と比べましょう。
大阪市や堺市の基準にも同じ決まりはあるのか

両方の資料で確認できたものだけを、表に並べます。
| 項目 | 東大阪市 | 大阪市 | 堺市 |
|---|---|---|---|
| 器具までの扉の鍵 | 施錠装置を設けない(サムターン錠やクレセント錠などは可) | 避難器具の節に定めは見当たらない | 避難器具の審査基準に定めは見当たらない |
| 鍵のかかる経路があるとき | 経路ごとに避難器具を設ける(●) | 見当たらない | 見当たらない |
| バルコニーの隔板 | おおむね幅60センチメートル以上・高さ80センチメートル以上・下端15センチメートル以下、表示は4つ(●) | 隔板等を破る必要があるものは同一バルコニーに当たらないとする(4階以上のつり下げはしごの乗り換え) | 仕切板はおおむね幅60センチメートル以上・高さ80センチメートル以上で容易に破壊できるもの、表示は3つ(★) |
| 避難空地の場所 | 同一敷地内(道路と公的な公園は例外)(●) | 地方公共団体等が管理する隣の公園等を避難通路として使える場合は、避難通路があるとみなせる | 用語の意義で、道路、公園、広場等に通じている空間とする |
| 降りる場所に置かないもの | 駐車場、駐輪場、植栽(ハッチの降下空間と避難空地は室外機や物干金物も) | 見当たらない | ハッチをバルコニーに設ける場合、室外機や物干し竿等の障害物がないこと |
| 避難階の降下地点が住戸のバルコニー | 手すりに開放できる扉、下端1.2メートル以下など(▲) | 同じ趣旨(避難はしごの項) | 同じ趣旨(★) |
堺市の審査基準は、ハッチをバルコニーに設ける場合について次のように書いています。
なお、隣接住戸等間を仕切る仕切板は、概ね幅60cm 以上、高さ80cm 以上で、容易に破壊できるものであること。★
鍵と駐輪場や植栽の決まりは、3市の中では東大阪市の運用基準がいちばん具体的です。
ただし、大阪市や堺市でも、器具に近づけない状態や避難空地をふさぐ状態が国の基準に合うとは限りません。
大阪市の避難器具の減免は、大阪市で屋外階段があれば避難器具の個数は減らせるのかの記事で解説しています。
隣の市でも、同じように駐輪場を置いてはいけないのですか。
他の市の資料にはこの書き方は見当たりません。
それでも、空地をふさがないのが基本です。
よくある質問
まとめ
降りる場所の駐輪場と、扉の鍵の扱いが分かりました。
まずは避難空地と隔板のまわりを見回ります!
避難器具の配置図があれば、消防署への相談もスムーズに進みます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 東大阪市消防局「避難器具の設置に係る運用基準」1 用語の定義(凡例)、2 共通事項(1)ア・イ(図1)・(2)・(3)・(9)・(10)・(11)・(16)、3 設置方法(3)ク https://www.city.higashiosaka.lg.jp/0000041303.html
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」第3章 第1節 避難器具 第3 1(3)イ・(4)ウ・(5) https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」(第二十二版)第17 避難器具 Ⅰ 2(7)、Ⅱ 1(3)イ・オ・カ・キ https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 消防法施行令第25条第2項第2号
- 消防法施行規則第27条第2項
- 避難器具の設置及び維持に関する技術上の基準の細目(平成8年消防庁告示第2号)第二 五・六、第三 一(一)ヘ・ト https://www.fdma.go.jp/laws/kokuji/assets/h8_kokuji2.pdf
※本記事は公表されている法令および各市消防局の公開資料に基づく一般的な解説です。運用基準や審査基準は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防局で確認してください。「見当たらない」とした項目は、各市が公開している避難器具の資料を読んだ範囲でのものです。個々の建物で避難器具や避難空地が基準に合うかの判断は、所轄消防署にご確認ください。





