漏電火災警報器は、用途と延べ面積の基準のほかに、契約電流容量が50アンペアを超える建物にも要ります。
ところが電力会社との契約は、アンペアではなくキロボルトアンペアやキロワットで結ばれていることがよくあります。
2棟に1つの契約、動力と電灯で契約が別々といった場合の数え方も、政令には細かく書かれていません。
この記事では鴻巣市を受け持つ埼玉県央広域消防本部の算定式を入口に、三重・大阪の消防本部の基準と並べて比べます。
鴻巣市で木造モルタルの2階建て店舗を管理しています。
電気の契約書を見ても、アンペアの数字がどこにも書いていません。
キロワットやキロボルトアンペアの契約は、標準電圧で割ってアンペアに直します。
埼玉県央広域の基準にその式が載っています。
動力と電灯で契約が2つあるのですが、足し算するのですか。
政令は種別が違えば大きいほうを使うと定め、同じ種別が2つなら合計するのが各市の基準です。
条文から順に見ていきましょう。
- 消防法施行令第22条第1項第7号は、(1)項から(6)項・(15)項・(16)項の建築物で契約電流容量が50アンペアを超えるものに設置を求め、種別の異なる契約があるときは最大のものを使うとしています
- 埼玉県央広域は、契約容量や契約電力を標準電圧と力率1.0で割ってアンペアに直す式を置いています
- 同じ敷地の2棟以上に契約が1つのときは各棟の負荷設備総容量に需要係数0.6を掛けて求め、同じ契約種別が2以上なら合計します
- 鈴鹿市・四日市市・堺市・大阪市も同じ骨組みですが、需要係数の付け方や従量電灯の扱いに違いがあります
- 津市と東大阪市は今回確かめた資料に算定方法が見当たらず、行田市・羽生市は審査基準を公開していないので管轄の消防本部に確かめます
▼

目次
漏電火災警報器の契約電流容量50アンペアは政令でどう決まっているのか

契約電流容量の基準は、その最後の第7号に出てきます。
(第一号から第六号まで略)
七 前各号に掲げるもののほか、別表第一(一)項から(六)項まで、(十五)項及び(十六)項に掲げる建築物で、当該建築物における契約電流容量(同一建築物で契約種別の異なる電気が供給されているものにあつては、そのうちの最大契約電流容量)が五十アンペアを超えるもの
第7号は、第1号から第6号の用途・延べ面積の基準に当たらない建物でも、契約電流容量が50アンペアを超えれば設置が要るという規定です。
対象は(1)項から(6)項・(15)項・(16)項の建築物で、鉄網入りの壁・床・天井があることが前提です。
ただし政令は、契約がキロボルトアンペアやキロワットで結ばれているときの換算や、同じ種別の契約が2つあるときの扱いまでは書いていません。
その部分を各消防本部の審査基準が補っていて、つながりは次のとおりです。
- 施行令第22条第1項で、鉄網入りの壁・床・天井がある建物が対象になる
- 同項第7号で、(1)項から(6)項・(15)項・(16)項の建築物は契約電流容量50アンペア超が基準になる
- 種別の異なる契約がある建物は、そのうち最大の契約電流容量で判定する
- 契約容量・契約電力の換算と、同じ種別が2以上あるときの扱いは各消防本部の審査基準が定めている
うちの店舗は(4)項で、延べ面積は200平方メートルです。
面積の基準には当たらないと聞いています。
その場合でも第7号で契約電流容量を確かめる必要があります。
まず電力会社との契約の種別と数字を書き出しましょう。
埼玉県央広域は契約容量や契約電力をどうやってアンペアに直すのか

まず契約の結び方ごとに、アンペアへの直し方が決まっています。
政令第22条第1項第7号に規定する契約電流容量は、次によること。
⑴ 防火対象物の関係者(所有者、管理者又は占有者をいう。)と電気事業者間でなされた契約電流(契約上使用できる最大電流(A)をいう。)、契約容量(契約上使用できる最大容量(kVA)をいう。)及び契約電力(契約上使用できる最大電力(kW)をいう。)とし、契約電流(アンペア契約)にあってはその契約の電流値、契約容量又は契約電力にあっては、標準電圧を100V又は200V、力率を1.0として第12-1式により求めた値とすること。
| 契約の結び方 | 契約電流容量の求め方 | 計算の例 |
|---|---|---|
| アンペア契約 | 契約の電流値をそのまま使う | 40アンペア契約なら40アンペア |
| 契約容量(キロボルトアンペア)・契約電力(キロワット)で単相3線式 | 数値×1,000÷(標準電圧200ボルト×力率1.0) | 12キロボルトアンペアなら12,000÷200=60アンペア |
| 同じく三相3線式 | 標準電圧に√3を掛けて割る | 12キロボルトアンペアなら12,000÷(200×√3)≒34.6アンペア |
第12-1式は、契約容量又は契約電力に1,000を掛け、標準電圧(100ボルト又は200ボルト)と力率1.0を掛けたもので割る式です。
注として、三相3線式なら標準電圧に√3を掛け、単相3線式なら標準電圧を200ボルトとすると書かれています。
上の表のように、同じ12キロボルトアンペアでも単相3線式なら60アンペア、三相3線式なら約34.6アンペアと、50アンペアを挟んで結論が分かれます。
この3⑴には、埼玉県央広域の凡例の▲(行政指導)や●(法令基準+行政指導)の記号は付いていません。
契約書の電気方式まで見ないと、50アンペアを超えるか分からないのですね。
そのとおりです。
契約種別・電気方式・契約の数字の3つをそろえておきましょう。
同じ敷地に2棟あって契約が1つのときや高圧で受電しているときはどう数えるのか

埼玉県央広域は、この場合と高圧受電の場合に別の式を用意しています。
⑵ 同一敷地内に防火対象物が2以上ある場合で、契約種別が1である場合にあっては、当該防火対象物の契約電流容量を当該防火対象物の低圧屋内電路に接続されている負荷設備総容量(kVA又はkW)から第12-2式によって求めた値とすること。
⑶ 高圧又は特別高圧の変電設備を有する防火対象物の契約電流容量は、低圧側において第12-2式により算出した値とすること。
⑷ 同一の防火対象物に、同一契約種別が2以上となる場合の契約電流容量は、その合計値とすること。
第12-2式は、その棟の負荷設備総容量に1,000を掛けて標準電圧と力率1.0で割り、さらに需要係数0.6を掛ける式です。
例えば三相3線式200ボルトで負荷設備総容量が30キロワットの棟なら、30,000÷(200×√3)×0.6で約52.0アンペアとなり、50アンペアを超えます。
高圧や特別高圧で受電する建物も、変圧器の低圧側でこの第12-2式を使います。
同じ種別の契約が2つ以上あれば合計し、種別が違えば施行令どおり最大のものを使う、という二段構えです。
なお警報器そのものは、管理権原者が同じで引込線を共用する2以上の建物なら、共用の引込線に1個で足りるとしています(同 5⑵)。
2棟で1つの契約なら、棟ごとの負荷の合計から数えるのですね。
はい、棟ごとに需要係数0.6を掛けて判定します。
電気工事の図面から負荷の一覧を出してもらいましょう。
鈴鹿市・四日市市・堺市・大阪市の算定式はどこが違うのか

ただし式の細部と、書いてある項目の数が違います。
(オ) 複合用途防火対象物については、用途を問わず、建築物全体が50アンペアをこえる場合は、当該建築物に漏電火災警報器を設けること。
(カ) 同一の用途に供される建築物に同一契約種別の電力が2以上供給されている場合について、最大契約電流容量はその合計値とすること。
| 消防本部 | 契約容量・契約電力の式 | 2棟1契約・高圧の式 | 同じ種別が2以上 | 従量電灯 |
|---|---|---|---|---|
| 埼玉県央広域 | 標準電圧×力率1.0で割る | 負荷設備総容量×需要係数0.6 | 合計 | 記載なし |
| 鈴鹿市 | 式に需要係数0.6も書かれている | 負荷設備総容量×需要係数0.6 | 合計(同一の用途の建築物) | 1契約は50アンペア以下・2以上は1契約3キロボルトアンペアで合計 |
| 四日市市 | 標準電圧×力率1.0で割る | 式に需要係数の記載なし | 合計 | 記載なし |
| 堺市 | 標準電圧×力率1.0で割る | 負荷設備総容量×需要係数0.6 | 合計 | 記載なし |
| 大阪市 | 標準電圧×力率1.0で割る | 負荷設備総容量×0.6(施行令第8条で別とみなす部分も含む) | 合計 | 1契約は50アンペア以下・2以上は1契約3キロボルトアンペアで合計 |
| 津市 | 漏電火災警報器の基準に算定方法の記載なし | |||
| 東大阪市 | 今回確かめた公開資料に漏電火災警報器の基準が見当たらない | |||
鈴鹿市の第12-1式は、契約容量や契約電力を割った値にも需要係数0.6を掛ける形で書かれていますが、本文の(ア)は標準電圧と力率1.0にしか触れていません。
反対に四日市市は、2棟1契約のときの式に需要係数が書かれていません。
どちらも式の書き方の違いなので、どちらで計算するかは管轄の消防本部に確かめるのが確実です。
大阪市は2棟の数え方に、施行令第8条で別の防火対象物とみなされる部分が2以上ある場合も含めています。
鈴鹿市は(オ)で、複合用途の建物は用途を問わず建築物全体で50アンペアを判定すると書いています。
同じ式に見えても、0.6を掛けるかどうかで結果が変わるのですね。
50アンペアの前後なら結論が逆になることもあります。
計算の前提を消防本部と合わせておきましょう。
従量電灯の契約しかない建物では何を確かめればよいのか

この場合の扱いを書いているのは、7つのうち大阪市と鈴鹿市です。
2 従量電灯Aその他これに相当する種別で契約が締結されているものにあっては、次による。
(1) 契約が1である場合の電流値は50アンペア以下とすること
(2) 1の建築物で、従量電灯Aその他これに相当する種別の契約が2以上あるものにあっては、1契約あたりの契約容量を3キロボルトアンペアとし、前項により算出した値の合計とすること
大阪市と鈴鹿市は、従量電灯の契約が1つなら50アンペア以下、2つ以上なら1契約3キロボルトアンペアとして計算した値を合計するとしています。
例えば標準電圧を100ボルトとすると1契約30アンペアなので、同じ建物に2契約あれば合計60アンペアで50アンペアを超えます。
鈴鹿市は、この扱いを契約電流容量の算出が困難な場合の特則として置いています。
埼玉県央広域・四日市市・堺市の基準には従量電灯の記述がなく、津市と東大阪市は今回確かめた資料に算定方法がありません。
自分の建物では契約種別ごとの数字を一覧にし、同じ種別は合計・違う種別は最大で50アンペアと比べ、迷うものは管轄の消防本部に相談します。
うちは電灯が従量電灯で2契約、動力が1契約です。
電灯は2契約を合計し、動力とは大きいほうで比べます。
次の点検の前に契約書の写しをそろえましょう。
よくある質問
まとめ
契約書の写しをそろえて、契約種別ごとに計算してみます!
50アンペアに近いときは、計算の前提を消防本部と事前に確認しておくと安心です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令第22条第1項・第2項
- 消防法施行規則第24条の3
- 埼玉県央広域消防本部「埼玉県央広域消防本部消防用設備等に関する審査基準」第4章 第12 漏電火災警報器 3 契約電流容量の算定⑴〜⑷・5 設置方法⑵ 埼玉県央広域消防本部「消防用設備等に関する審査基準」のページ
- 鈴鹿市消防本部「鈴鹿市消防用設備等に関する審査基準」第4章 第12 漏電火災警報器 3⑶ア(ア)〜(カ)・イ 鈴鹿市「消防用設備等に関する審査基準」のページ
- 四日市市消防本部「四日市市消防同意事務審査基準」第2章 第12 漏電火災警報器 7 契約電流容量(1)〜(4) 四日市市消防本部「審査基準・告示・ガイドライン」のページ
- 津市消防本部「津市予防事務審査検査基準」5-13 漏電火災警報器 津市消防本部「予防関係審査基準」のページ
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」第2章 第3節 漏電火災警報器 第2 契約電流容量の算定方法 https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」第3章 第1節 第14 漏電火災警報器 Ⅱ 細目 1 契約電流容量の算定 https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
※本記事は各消防本部が公開している審査基準・運用基準と法令に基づく一般的な解説です。運用基準・条例は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防本部で確認してください。行田市・羽生市は審査基準を公開していないため比較に含めていません。計算例は説明のために数字を置いたもので、実際の判定は電力会社との契約内容と建物の構造・用途によって変わるため、所轄の消防署にご確認ください。





