非常放送が必要なビルにエレベーターがあるとき、かごの中にもスピーカーを付けるのでしょうか。
国の消防法施行規則は放送区域やスピーカーの間隔を細かく決めていますが、エレベーターという言葉は出てきません。
鴻巣市・桶川市・北本市を所管する埼玉県央広域消防本部の審査基準は、エレベーター内にスピーカーを設け、居室や廊下とは別の報知区域にするよう求めています。
同じ趣旨の定めは鈴鹿市・四日市市・大阪市・堺市にもあり、四日市市だけが荷物用などを除くと書いています。
鴻巣市で5階建ての事務所ビルを改修していて、非常放送の工事の見積りを取っています。
エレベーターのかごの中にもスピーカーが入っていて、本当に要るのか迷っています。
埼玉県央広域の審査基準は、エレベーター内にスピーカーを設けるよう求めています。
国の規則には書かれていない指導なので、根拠を順にたどってみましょう。
ほかの市でも同じようにかごの中に付けるのですか。
鈴鹿市・大阪市・堺市も同じで、四日市市は荷物専用エレベーターなどを除くと書いています。
国の規則から順に見ていきましょう。
- 消防法施行規則第25条の2は放送区域とスピーカーの間隔を決めているが、エレベーターの定めはない
- 埼玉県央広域はエレベーター内にスピーカーを設け、居室や廊下と別の報知区域にするよう指導している
- 階段は居室と別の報知区域にし、最下階から垂直距離45mごとに区切るよう求めている
- 鈴鹿市・大阪市・堺市もかご内のスピーカーを求め、四日市市は荷物専用エレベーターなどを除いている
- 津市の審査基準にはエレベーターの記載がないので所轄の消防署で確かめる
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目次
国の規則はエレベーターのかごの中のスピーカーを決めているのか

スピーカーは「放送区域」ごとに付けるのが基本で、その放送区域の決め方が書かれています。
ロ スピーカーの設置は、次に定めるところによること。
(イ)スピーカーは、階段又は傾斜路以外の場所に設置する場合、百平方メートルを超える放送区域(防火対象物の二以上の階にわたらず、かつ、床、壁又は戸(障子、ふすま等遮音性能の著しく低いものを除く。)で区画された部分をいう。以下(ロ)において同じ。)に設置するものにあつてはL級のもの、(略)を設けること。
(ロ)スピーカーは、(イ)に規定する場所に設置する場合、放送区域ごとに、当該放送区域の各部分から一のスピーカーまでの水平距離が十メートル以下となるように設けること。(略)
(ハ)スピーカーは、階段又は傾斜路に設置する場合、垂直距離十五メートルにつきL級のものを一個以上設けること。
スピーカーは、床・壁・戸で区切られた放送区域ごとに、各部分から10m以内に届くように付けるのが基本です。
階段と傾斜路だけは別扱いで、高さ15mごとにL級を1個以上とされています。
ところがエレベーターのかごについては、放送区域に当たるのか、付けなくてよいのかを規則は書いていません。
この空白をどう埋めるかは、各消防本部の審査基準を見て確かめることになります。
国の決まりだけを読むと、かごの中は何も書かれていないのですね。
はい、そこで鴻巣市を所管する埼玉県央広域の審査基準を開きます。
次はその書き方を見ていきましょう。
鴻巣市を所管する埼玉県央広域は何を求めているのか

印の「▲」は、この基準で行政指導の基準として示されているものです。
⑽ スピーカー
ア 設置場所
(ア) スピーカーの設置場所は、第10 自動火災報知設備8⑴(クを除く。)を準用すること。
(イ) エレベーターが設置される防火対象物にあっては、エレベーター内にスピーカーを設けること。▲
(イ)の一文は▲が付いた行政指導で、エレベーターのある建物ではかご内にもスピーカーを設けるよう求めています。
一方、(ア)はスピーカーの置き場所を自動火災報知設備の地区音響装置の決まりから借りています。
たどり方は次の3段です。
- 第14 ⑽ア(ア):スピーカーの設置場所は「第10 自動火災報知設備8⑴(クを除く。)」を準用する
- 第10 8⑴:地区音響装置の設置場所としてア〜コを並べている(障害物のある場所を避ける、屋上やテラスを継続して使うなら設ける▲、50㎡以下の小さな階は上下階の音響装置で省略できる など)
- このうちクの「各部分で原則65dB(居室は60dB)以上」だけが除かれ、残りがスピーカーにも当てはまる。エレベーター内は⑽ア(イ)で別に書き足されている
準用先の第10 8⑴のどの項目が自分の建物に関わるかも、図面と照らして所轄の消防署に確認しておくと手戻りが減ります。
かご内の一文は指導で、置き場所の決まりは自動火災報知設備から借りているのですね。
そうです、準用の先まで読むと置き場所の考え方がそろいます。
次は報知区域の分け方です。
エレベーターの報知区域はなぜ居室や廊下と分けるのか

四日市市の審査基準は「1回線における当該回路の音響装置の鳴動区域」と説明しています。
⑹ 報知区域
報知区域は、省令第25 条の2第2項第3号チの規定によるほか、次によること。
ア 報知区域は、原則として階別とすること。▲(第14-8図参照)
(略)
ウ エレベーター内は、居室及び廊下又は通路の部分と別な報知区域として設定すること。▲
国の規則第25条の2第2項第3号チは、出火した階とその直上階などに限って警報を発することができる区分鳴動の仕組みを決めています。
県央広域はこれに加えて、報知区域を階ごとに分け、エレベーター内はどの階とも別の区域にするよう指導しています。
第14-8図でも、エレベーターの縦の通り道は各階とは別の番号が振られています。
四日市市・大阪市・堺市は、エレベーター内のスピーカーを停止階のすべての区域の感知器と連動させると書き、どの階で火災を感知してもかごの中に届くようにしています。
別の区域にする理由までは県央広域の基準に書かれていないため、配線や連動の組み方は設計の段階で所轄の消防署と詰めます。
かごはどの階にいるか分からないので、階の区域に入れられないということでしょうか。
理由は書かれていませんが、四日市市などは停止階すべてとの連動を求めています。
連動の組み方は工事の前に確かめておきましょう。
階段の報知区域は高さ45mごとに区切るのか

国の規則が決めているのはスピーカーの数(高さ15mごとにL級1個以上)で、区域の分け方ではありません。
⑹ 報知区域
イ 階段は、居室及び廊下又は通路の部分と別な報知区域に設定され、かつ、最下階を基準とし、垂直距離45mごとに一報知区域とすること。▲
ただし、階段室のない階段については、この限りでない。
県央広域は、階段を居室や廊下と別の区域にしたうえで、最下階から測って高さ45mごとに1つの区域にするよう指導しています。
ただし、階段室のない階段はこの限りではありません。
大阪市は特別避難階段と屋内避難階段に同じ45mを当て、自動火災報知設備と連動するときはその区域と直上の区域を鳴らす例を図で示しています。
四日市市は「高さ45m以下ごと」に加えて、地階と地上の部分を別の区域にするよう書いています(地階が1層ならこの限りではありません)。
45mの数字がどこから来たのかは各基準に書かれていないため、この記事では触れません。
つまり低いビルなら、階段は1つの区域で足りることが多いのですね。
そうです、高さが45mを超える建物で区切りが増えます。
地階の有無も一緒に見ておきましょう。
ほかの市ではかごの中のスピーカーをどう扱っているのか

印の意味は本部ごとに違うので、表の下に読み方を書きます。
| 消防本部 | かご内のスピーカー | エレベーターの報知区域・連動 | 階段の報知区域 |
|---|---|---|---|
| 埼玉県央広域(鴻巣市・桶川市・北本市) | 設ける▲ | 居室・廊下と別▲ | 別の区域・最下階から垂直45mごと▲(階段室のない階段を除く) |
| 鈴鹿市 | 設ける▲ | 居室・廊下と別▲ | 県央広域と同じ文▲ |
| 四日市市 | かご内にも設ける(荷物専用エレベーター等で困難なものを除く) | 居室内の部分と別・停止階のすべての報知区域の感知器と連動 | 特別避難階段・屋内避難階段は別の区域・高さ45m以下ごと・地階と地上は別 |
| 大阪市 | かご内に設ける◆ | 昇降路などのたて穴は居室等と別の回線・停止階のすべての放送区域の感知器等と連動◆ | 特別避難階段等は垂直45mごと◆ |
| 堺市 | 設置する★ | 昇降路の感知器と停止階のすべての放送区域の感知器と連動★ | 特別避難階段・屋内避難階段は別の区域・垂直45mごと★ |
| 津市 | 記載なし | 記載なし | 記載なし |
印は、県央広域と鈴鹿市の▲が行政指導、大阪市の◆が行政指導基準、堺市の★が市独自の指導基準です。
四日市市は印の代わりに下線で行政指導を示していて、かご内のスピーカーの一文と荷物用の除外は下線付きでした。
津市の予防事務審査検査基準の非常警報設備には、エレベーターと報知区域の項目が見当たりません。
東大阪市は公開されている運用基準に放送設備の章がないため、表に入れていません。
荷物用のエレベーターしかない倉庫だと、どう考えればよいですか。
除外を書いているのは四日市市だけなので、ほかの市では所轄の消防署に確かめましょう。
建物のある市の基準を先に開くのが近道です。
よくある質問
まとめ
まずは改修図面でエレベーターの台数を数えてみます!
かご内のスピーカーが見積りに入っているかも確かめましょう。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行規則 第25条の2(e-Gov法令検索)
- 埼玉県央広域消防本部消防用設備等に関する審査基準 第4章 第14 非常警報設備・第10 自動火災報知設備(埼玉県央広域消防本部)
- 鈴鹿市消防用設備等に関する審査基準 第4章 第14 非常警報設備(鈴鹿市消防本部)
- 四日市市消防同意事務審査基準 第2章 第14 非常警報設備(四日市市消防本部)
- 津市予防事務審査検査基準 5-15 非常警報設備(津市消防本部)
- 大阪市消防局 消防用設備等の設置に係る運用基準 放送設備(大阪市消防局)
- 堺市消防同意・消防用設備等審査基準 第16 非常警報設備(堺市消防局)
※本記事は各消防本部が公表している審査基準と消防法施行規則に基づく一般的な解説です。運用基準・条例は改正されることがあるため、最新は管轄の消防署・消防本部で確認してください。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





