給油取扱所の隣にLPガス(オートガス)スタンドを併設したい——そんな計画のとき、境界に設ける防火塀(防火壁)は「車両が出入りする側だから」「設備を後退させたから」「同じ会社が管理しているから」といった理由で免除・緩和できると考えていませんか。
実務ではこれらの理由はいずれも認められていません。
この記事では、給油取扱所とLPガススタンドを併設する際の防火塀の考え方を、実際の質疑応答をもとに、なぜこれほど厳格に運用されているのかという背景も含めて詳しく解説します。
境界の防火塀は、車が出入りする側なので設けなくてよいのでしょうか。
「自動車等の出入りする側」であることを理由に境界の防火塀を免除することはできません。
計量機を道路境界から下げれば、その分だけ塀も減らせないでしょうか。
それも認められません。
同一管理者の共同管理でも既設の防火壁の一部撤去は不可です。
この記事でまとめて解説します!
- 「自動車等の出入りする側」であることを理由に、境界の防火塀を免除することはできない
- 固定給油設備を道路境界から後退させても、その分だけ防火塀を後退・省略することは認められない
- 同一管理者による共同管理であっても、既設の防火壁の一部撤去は認められない
- これらの規制が厳格な理由は、燃料の種類が異なる危険物施設同士の延焼防止という防火塀本来の目的にある
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目次
なぜ防火塀の規制はこれほど厳格なのか
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給油取扱所の防火塀(政令第17条第1項第13号)は、給油取扱所内で万が一出火した場合に、隣接する施設や住宅等への延焼を防ぐための設備です。
LPガス(液化石油ガス)スタンドは、ガソリンとは異なる高圧ガス取締法の規制対象であり、危険物としての性質・貯蔵形態・漏えい時の挙動もガソリンとは異なります。
異なる種類の危険性物質を扱う施設同士が隣接する場合、一方の施設の火災がもう一方に波及するリスクは、同種施設が隣接する場合よりも予測しにくく、被害も拡大しやすいと考えられます。
だからこそ、次に紹介するような「もっともらしい理由」であっても、防火塀の免除・緩和は一貫して認められていません。
燃料の種類が違う施設どうしだから、厳しく見られるのですね。
漏えいしたときの挙動が違うためです。
併設の計画があるなら、塀の位置を先に決めてから配置を考えてください。
給油取扱所とLPガススタンド、境界の防火塀は「自動車出入り側」でも免除できない
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危険物の規制に関する政令第17条第1項第13号では、給油取扱所の周囲には、自動車の出入りする側を除き高さ2m以上の耐火構造の塀又は壁を設けることとされています。
この「自動車の出入りする側」という規定を根拠に、隣接するLPガス(オートガス)スタンドとの境界についても防火塀の設置を免除できないか、という照会が実際にありました。
| 誤解しやすいポイント | 実際の扱い |
|---|---|
| 自動車が出入りする境界なら防火塀を免除できる | 誤り。「自動車等の出入りする側」とは、給油を受ける自動車等が出入りするための、主たる道路に接する給油取扱所の空地の側を指す。隣接施設との境界には適用されない |
| 燃料の種類が違う(ガソリンとLPガス)から規制の考え方も別 | 誤り。高圧ガス取締法には防火塀の規制はないが、消防法側からは一方的に規制がかかる |
出入り口の側なら免除されると思っていました。
その理由では免除できません。
境界線の全長で、塀が必要な範囲を図面に落としてみてください。
固定給油設備を道路境界から後退させても、防火塀の一部省略は認められない
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「防火塀の設置が免除されないなら、固定給油設備やLPガスの充填機を前面道路の境界線からあらかじめ後退させておき、その後退させた分だけ防火塀の設置範囲を減らせないか」という提案も実際に照会されましたが、これも認められていません。
- 固定給油設備等を道路境界線から後退させることと、防火塀の設置義務とは別の話であり、後退させた分だけ塀の設置を省略することはできない
- 自動車の出入りを容易にする目的での設備後退であっても、防火塀の設置範囲を変える理由にはならない
設備を下げても、塀の義務とは別なのですね。
別の話として扱われます。
見通しを良くしたい場合は、塀以外の方法をあわせて検討しましょう。
共同管理・工事上の理由でも、既設の防火壁の一部撤去は認められない
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既存の給油取扱所に隣接してLPガススタンドを設置し、両施設の敷地・設備の管理者が同一であることを理由に、管理上の利便性(自動車出入りの見通し改善等)のために、境界の防火壁の一部を取り除きたいという申請があった事例もあります。
管理者が同じでも、壁を外すことはできないのですね。
認められていません。
管理上の都合ではなく、延焼防止の観点で説明できるかを基準にしてください。
併設を計画する場合の現実的な対応策
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防火塀の免除・緩和が一貫して認められない以上、給油取扱所とLPガススタンドの併設を計画する際は、防火塀・防火壁の設置を前提に敷地計画を組み立てる必要があります。
- 両施設の境界に必要な防火塀・防火壁の面積をあらかじめ確保したうえで、給油空地や充填設備のレイアウトを検討する
- 「後退すれば塀を減らせる」「共同管理なら緩和できる」という発想ではなく、防火塀は既定どおり設置したうえで、動線や見通しの課題は別の手段(配置の工夫、ミラーの設置等)で解決する
- 敷地が手狭で防火塀込みのレイアウトが難しい場合は、設計段階の早い時期に所轄消防署へ相談し、実現可能な配置案を一緒に検討する
最初から塀を前提に敷地を組み立てるということですね。
それが確実です。
必要な塀の面積を確保したうえで、給油空地の配置を検討してください。
よくある質問
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まとめ
- 「自動車出入り側」を理由にした境界の防火塀免除は認められない
- 固定給油設備の後退による防火塀の一部省略も認められない
- 同一管理者による共同管理でも、既設の防火壁の一部撤去は認められない
- 規制が厳格な背景には、異種の危険性物質を扱う施設間の延焼防止という目的がある
- LPガス併設を計画する際は、防火塀・防火壁を前提とした敷地計画が必要
塀は見た目の話ではなく、延焼を止めるためのものなのですね。
すっきりしました。
そのとおりです。
燃料の種類が異なる危険物施設同士の延焼防止という本来の目的から、緩和は厳しく見られます。
参考・出典
- 危険物の規制に関する政令第17条第1項第13号 e-Gov法令検索
- 「消防実務六法 質疑応答編」(消防実務研究会編・東京法令出版)給油取扱所とLPガス(液化石油ガス)スタンド併設時の防火塀・防火壁に関する質疑応答を参考に、独自に解説を作成
※本記事は2026年8月時点の法令解釈に基づく一般的な解説です。個別の設置計画については所轄消防署にご確認ください。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)




