石油類を配管で移送する施設は「移送取扱所」として許可を受ける必要がありますが、桟橋で船から受け入れるだけの短い配管や、コンクリート製のダイクで囲って漏えい対策をした配管まで移送取扱所になるのか、判断に迷う場面があります。
実際に照会された4つのケースの判定と、規則第28条の16第3号ただし書きの「保安上必要な措置」の内容を、質疑応答をもとに解説します。
桟橋から受け入れるだけの短い配管です。
コンクリートのダイクで囲っていますが、それでも移送取扱所になるのでしょうか。
いずれも移送取扱所に該当するという回答が示されています。
ダイクを設けても区分そのものは変わりません。
それではダイクを設けた意味がありません。
何のための措置なのでしょうか。
区分の判定とは別に、移送取扱所の基準の中で評価されます。
規則第28条の16第3号ただし書きの保安上必要な措置がまさにそれです。
この記事でまとめて解説します!
- 受入桟橋の配管にコンクリート製のダイクを設けて漏えい防止措置をとっていても、移送取扱所に該当する
- L字型で延長30メートルを超える配管や、防波堤上に80メートル敷設した受入配管もいずれも移送取扱所に該当する
- 危険物の規制に関する規則第28条の16第3号ただし書きの保安上必要な措置とは、水密構造で両端を閉塞した防護構造物や、危険物の流出拡散を防止できる防火上有効な塀等の工作物を保安上有効に設置した場合の措置をいう
- あわせて、事業者が延焼防止上有効であることと消防活動上の支障がないことを検証し、市町村長等が当該検証内容を適当と認めた措置も該当する
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目次
移送取扱所は配管等によって危険物を移送する取扱所
移送取扱所は、危険物の規制に関する政令第3条第3号において、配管およびポンプならびにこれらに附属する設備によって危険物の移送の取扱いを行う取扱所として区分されています。
石油コンビナートの事業所間を結ぶパイプラインや、海上の桟橋から陸上のタンクへ石油類を受け入れる配管が典型例です。
移送取扱所は、給油取扱所や販売取扱所のように建築物の一部を区画して基準を掛けるのではなく、配管そのものとその経路が規制の対象になります。そのため「どこからどこまでが移送取扱所なのか」という区分の判定が実務上の最初の関門になります。
配管とポンプで移送する取扱所が、移送取扱所なのですね。
その区分です。
自分の施設の配管が、どこからどこまでかを図面で押さえてください。
受入桟橋の配管はダイクを設けても移送取扱所に該当する
移送取扱所の区分について、次の各項目についてそれぞれ移送取扱所とすべきか、という照会がありました。まず桟橋に関する2つのケースです。
- 第一石油類の受入桟橋で移送する配管の内径が350ミリメートルであるが、コンクリート製で周囲に高さ20センチメートルのダイクを設けて漏えい防止のあるもの
- 第一石油類の受入桟橋で配管の内径が300ミリメートルであるが、コンクリート製で周囲に高さ25センチメートルのダイクを設けて漏えい防止のあるもの
いずれも桟橋という限られた範囲の配管であり、コンクリート製のダイクによって万一の漏えい時にも危険物が拡散しない構造としているケースです。
漏えい防止の設備があっても、区分は変わらないのですね。
区分の判定とは別に評価されます。
まず許可の区分から確認してください。
L字型で延長30メートルを超える配管や防波堤上の配管も該当する
同じ照会では、残る2つのケースについても判定が問われています。
- 第二石油類の払出桟橋で各々200ミリメートルの配管内径であるが、L字型の延長は30メートルを超えるものについて、なおコンクリート製で30センチメートルのダイクがあるもの
- 第三石油類の受入配管で内径100ミリメートルのものを、入海の防波堤上に延長80メートル敷設してあるもの
延長や設置場所によっても、判定が変わるのですね。
条件ごとに整理されています。
配管の内径と延長を一覧にしておきましょう。
保安上必要な措置は防護構造物や塀等の設置が該当する
移送取扱所に該当すると判定された後は、技術基準の中で流出防止措置が評価されます。この点について、危険物の規制に関する規則第28条の16第3号ただし書きの保安上必要な措置とはどのような措置か、という照会がなされています。
1 水密構造で両端を閉塞した防護構造物、危険物の流出拡散を防止することができる防火上有効な塀等の工作物を、周囲の状況に応じて保安上有効に設置した場合の措置
2 当該配管の周囲の状況に応じて、配管から流出した危険物に火災が発生した場合またはその周囲の建築物等が火災になった場合に相互に延焼を防止するために有効であり、かつ、消防活動上の支障がないことを事業者が検証し、市町村長等が当該検証内容を適当と認めた措置
1はあらかじめ形が示されている措置です。
水密構造で両端を閉塞した防護構造物、つまり配管を箱状の構造物で囲い、両端を閉じて漏えいした危険物が外へ出ないようにしたものや、流出拡散を防止できる防火上有効な塀等の工作物が該当します。
ここで重要なのは「周囲の状況に応じて保安上有効に」という限定で、構造物を設ければ形式的に足りるという趣旨ではありません。
防護構造物や塀を設けることが、その措置に当たるのですね。
形が示されている類型です。
既設の設備がどれに当たるか、図面で確かめてください。
事業者の検証と市町村長等の認定による措置も認められる
2は形を限定せず、検証と認定という手続きによって同等性を確保する類型です。事業者が自ら次の2点を検証し、市町村長等がその検証内容を適当と認めることで、保安上必要な措置として扱われます。
- 配管から流出した危険物に火災が発生した場合、またはその周囲の建築物等が火災になった場合に、相互に延焼を防止するために有効であること
- 消防活動上の支障がないこと
事業者が自ら検証して認めてもらう方法もあるのですね。
市町村長等の認定が要ります。
検証の資料をそろえてから相談してください。
よくある質問
まとめ
- 移送取扱所は配管およびポンプならびにこれらに附属する設備によって危険物の移送の取扱いを行う取扱所で、配管そのものと経路が規制の対象になる
- 受入桟橋の配管にコンクリート製のダイクを設けていても移送取扱所に該当する
- L字型で延長30メートルを超える配管や防波堤上に80メートル敷設した受入配管もいずれも移送取扱所に該当し、類別や内径の大小で区分は変わらない
- 保安上必要な措置は、水密構造で両端を閉塞した防護構造物や流出拡散を防止できる防火上有効な塀等の工作物を保安上有効に設置した場合の措置をいう
- 事業者が延焼防止上の有効性と消防活動上の支障がないことを検証し、市町村長等が適当と認めた措置も保安上必要な措置に該当する
該当するかどうかと、どう守るかは別の話だったのですね。
すっきりしました。
そのとおりです。
まず移送取扱所として区分を確定し、そのうえで防護構造物や検証による措置を検討する順序になります。
参考・出典
- 危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)第3条第3号 e-Gov法令検索
- 危険物の規制に関する規則(昭和34年総理府令第55号)第28条の16 e-Gov法令検索
- 移送取扱所に関する疑義について(昭和51年7月12日付け消防危第23の10号 香川県あて回答)
- 「危険物規制事務に関する執務資料の送付について」(平成23年12月1日付け消防危第273号 危険物保安室長から各都道府県消防防災主管部長・東京消防庁・各指定都市消防長あて)別紙(移送取扱所関係)問2
- 「消防実務六法 質疑応答編」(消防実務研究会編・東京法令出版)移送取扱所の基準に関する質疑応答を参考に、独自に解説を作成
※本記事は2026年6月時点の法令解釈に基づく一般的な解説です。個別の運用については所轄消防署にご確認ください。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)




