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災害の前に措置を指示できるのはどこまでか|設備または物件の範囲と指示の時期

災害の前に措置を指示できるのはどこまでかを解説するアイキャッチ画像

大雨が続いて、崖の下の家が危ない。
災害が起きてからでは間に合わないので、先に手を打ちたい。
災害対策基本法第59条は、そのための事前措置を定めています。
ただしいつでも出せる指示ではありません

災害対策本部を立ち上げる前でも、事前措置の指示は出せますか。

時期は災害対策本部の設置には関係ないとされています。本部ができていなくても指示できます。

では、毎年の梅雨入り前に一律で指示を出しておけばよいのでは。

それはできません。具体的に災害が予想され拡大するおそれがある場合に必要限度で指示できるもので、通常の状態の予想に基づく場合は該当しないとされています。

この記事の結論
  • 災害対策基本法第59条第1項の「設備又は物件」には、土地や土じよう等も含まれるものと解されています
  • 事前措置は具体的に災害が予想され拡大するおそれがある場合に必要限度で指示できるもので、通常の状態の予想に基づく場合は該当しません
  • 指示する時期は災害対策本部の設置には関係ありません
  • 予想される被害の程度が全体として大規模であれば、個々の被害の大小にかかわらず必要限度の指示ができます
  • 水防計画はできる限り防災計画の中に統合することが望ましいとされました

設備または物件に土地は含まれるか

事前措置の対象となる設備または物件に土地や土じようも含まれることを示したイメージ
災害対策基本法第59条第1項は、災害が発生するおそれがあるときに、市町村長が災害を受けるおそれのある設備または物件の占有者等に対して、必要な措置をとることを指示できると定めています。
この設備または物件という言葉が、どこまでを指すのか。
建物や工作物はいいとして、土地そのものや土は入るのか、という照会です。
問 災害対策基本法第59条第1項中の「設備又は物件」には、土地、土じよう等が含まれるか
答 含まれるものと解する
土地も土も入ります
たった一行の回答ですが、事前措置が使える場面を大きく広げています。
設備または物件という語をものだけに限って読むと、崖や盛土そのものには手が出せません。実際に危ないのは、たいてい土のほうです。
含まれると解することで、土砂の除去や斜面の養生といった措置を指示できるようになります。
自分の敷地に古い擁壁や盛土を抱えている事業所は、この条文の対象になり得るということです。指示を受けてから慌てないよう、雨期の前に一度見ておく価値があります。

崖の下の家に措置を指示できるか

大雨で斜面の土砂が流出し下側の家屋に被害が生じるおそれがある場面のイメージ
大雨や長雨が降れば、斜面の土砂が流れ出して下の家屋に被害が出そうだ。
この段階で第59条の事前措置として指示を出してよいか。
問 災害対策基本法第59条の事前措置として、大雨、長雨等が降れば土砂の流出崩壊等によつて下側の家屋に相当な被害を生ずるおそれがある場合、必要な措置を指示して差し支えないか
答 同上による事前措置は、具体的に災害が予想され、拡大するおそれがある場合に、必要限度で指示できるもので、通常の状態の予想に基づく場合は該当しないと解する。
具体的に予想される段階からです
差し支えないともいけないとも書かれていません。条件が示されています。
必要なのは3つです。具体的に災害が予想されること。拡大するおそれがあること。そして指示は必要限度にとどめること
逆に該当しないのが、通常の状態の予想に基づく場合です。ここが線引きになります。
毎年梅雨になれば土砂が出るかもしれない、という一般的な心配は通常の状態の予想です。それだけでは指示できません。現に大雨が降り続いていて、その斜面が具体的に危ないという段階になって初めて指示できます。
事前措置は先手を打つ仕組みですが、無制限の先手ではありません。

指示は災害対策本部を作ってからか

災害対策本部が設置されていなくても事前措置の指示ができることを示したイメージ
昭和39年4月3日付けの自消丙総第77号は、指示を出す時期についての回答です。
第59条の措置を指示できるのは、災害対策本部を開設したあとだけなのか。
あわせて、被害の程度をどう見るかも問われました。
問 災害対策基本法第59条の措置を指示する時期は、災害対策本部の開設後のみか、または本部の開設と否とに関係しないか
また、被害の程度は家屋敷の多少ならびに家自体の被害の状況(床下埋没倒かい等)等に関係があるか。
答 時期は、災害対策本部の設置には関係ない
被害の程度は、予想される被害の程度が全体として大規模である場合には、個々の被害の大小にかかわらず、必要限度の指示を行なうことができるものと解する。
本部の有無は関係ありません
前半は明快です。本部ができていなくても指示できます。事前措置は災害の前に打つ手なので、本部の設置を待っていては意味がありません。
後半が実務的です。判断の単位は、個々の家ではなく全体です。
予想される被害の程度が全体として大規模なら、1軒ずつの被害が大きいか小さいかを問わず指示できます。逆にいえば、被害が小さそうな家だからという理由で対象から外す必要はありません。
前の項目と合わせると、事前措置の輪郭が見えてきます。きっかけは具体的な予想。範囲は全体で見る。程度は必要限度。

水防計画は防災計画に統合するか

水防計画を防災計画の中に統合することが望ましいとされたことを示したイメージ
昭和41年6月9日付けの自消丙発第132号は、鹿児島県あての回答です。
水防計画は水防法に基づく計画で、担当も土木部門に置かれることが多い。これを防災計画の中に取り込んでよいか。
問 水防計画については、防災計画の中の水防計画であるとして土木部と交渉中であり、また、市町村においても統合することを要望しているところであるが、今後水防計画との関係についてどのようにすべきであるか
答 できる限り防災計画の中に統合することが望ましいとの考えで、消防庁において努力中である。
統合が望ましいとされました
努力中であるという結び方に、当時の状況が表れています。方向は決まっているが、まだ整っていない。
統合が望ましいとされる理由は、災害の側が計画の縦割りを気にしてくれないからです。大雨で堤防が危うくなり、同時に土砂も崩れ、避難所も要る。計画が分かれていると、その場で3冊を突き合わせることになります。
前の記事で見たとおり、消防計画は地域防災計画とは別に持ちます。ただしそれは粒度が違うからで、同じ粒度の計画が並んでいる場合は話が別です。
事業所の側でも同じことが起きます。消防計画、防災管理に係る消防計画、事業継続計画。それぞれ根拠が違っても、動く人と手順が重なるなら、突き合わせておく必要があります。

協議会が作る計画は誰が事項を決めるか

指定地域市町村防災計画で定める事項を都道府県防災会議が指定する場合を示したイメージ
市町村防災会議の協議会は、指定地域市町村防災計画を作ります。
そこで定める事項は、必ず都道府県防災会議が指定するのか、という照会です。
問 市町村防災会議の協議会が作成する指定地域市町村防災計画において定める事項は、必ず都道府県防災会議が指定するのか
答 市町村防災会議が義務設置であるとき(災害対策基本法第19条第1項)であるときは都道府県防災会議が指定し(同法第44条第2項)任意設置であるとき(同法第17条第1項)は、明文の規定はないが、協議により定めるものと解される
設置の根拠で分かれます
必ずかどうかを聞かれて、場合分けが返ってきました。分かれ目は協議会が義務設置か任意設置かです。
義務設置のときは第44条第2項という明文があり、都道府県防災会議が指定します。任意設置のときは明文の規定がなく、協議により定めるものと解されます。
明文の規定はないがと断ったうえで解釈を示すという書き方に注目してください。
条文がないところは自動的に自由になるのではなく、当事者間で決めるという答えです。決め方は自分たちで決めるにしても、決めておくこと自体は省けません。

よくある質問

Q事前措置の対象に土地は入りますか?
A回答は、災害対策基本法第59条第1項中の「設備又は物件」に土地、土じよう等が含まれるかという問いに対し、含まれるものと解するとしています。建物や工作物だけでなく、土地そのものや土も対象になります。
Q毎年の梅雨前に一律で指示を出せますか?
A回答は、事前措置は具体的に災害が予想され拡大するおそれがある場合に必要限度で指示できるもので、通常の状態の予想に基づく場合は該当しないと解するとしています。一般的な心配だけでは指示できません。
Q被害が小さそうな家は対象から外すのですか?
A回答は、予想される被害の程度が全体として大規模である場合には、個々の被害の大小にかかわらず必要限度の指示を行なうことができるものと解するとしています。判断の単位は個々の家ではなく全体です。
Q水防計画は防災計画と別に持つべきですか?
A回答は、できる限り防災計画の中に統合することが望ましいとの考えで消防庁において努力中であるとしています。消防計画のように粒度が違う計画は別に持ちますが、同じ粒度の計画は統合の方向が示されました。

まとめ

  • 災害対策基本法第59条第1項の「設備又は物件」には土地や土じよう等も含まれます
  • 事前措置は具体的に災害が予想され拡大するおそれがある場合に指示できます
  • 通常の状態の予想では該当しません
  • 指示は必要限度にとどめます
  • 指示する時期は災害対策本部の設置に関係しません
  • 全体として大規模なら、個々の被害の大小にかかわらず必要限度の指示ができます
  • 水防計画はできる限り防災計画に統合することが望ましいとされました

先手は打てるけれど、無制限ではないということですね。

擁壁や盛土を抱えている敷地は、雨期の前に見ておくのが確実です。㈱防災屋でもご相談を承っています。

参考・出典

  • 設備または物件にはどのようなものが含まれるか
  • 大雨、長雨等によつて家屋に相当な被害を生ずるおそれがある場合の事前措置の指示について
  • 災害の生ずるおそれがある場合、事前の措置を指示する時期について(昭和39年4月3日 自消丙総第77号)
  • 防災計画と水防計画との関係について(昭和41年6月9日 自消丙発第132号 鹿児島県あて回答)
  • 指定地域市町村防災計画について
  • 災害対策基本法第17条第1項・第19条第1項・第44条第2項・第59条
  • 水防法
  • 消防実務六法 質疑応答編

※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。掲載した回答には昭和30年代から40年代のものが含まれ、条番号や機関の名称等は当時のものです。個別の事案についての適用は、所轄消防署または自治体にご確認ください。

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