石油コンビナート等の特定事業所には、流出油等防止堤を設けなければなりません。
油が漏れたときに、敷地の外へ流れ出さないよう受け止める堤です。
ところが現場には、堤を単独で設けるのが難しい事情がいくつもあります。
そこでどこまで代替が認められるかが問われました。
門扉の代わりに土のうを準備しておけば足りるのでしょうか。
足りません。
土のう等を準備しておくことは門扉の外側に講ずる措置として考えられますが、土のうのみで門扉の設置に代えることは認められないとされています。
隣の事業所と1つの堤を共用することはできるでしょうか。
隣接事業所との境界において共用することは差し支えないとされました。
ただし防油堤による代替措置は一般には認められません。
- 火気を使用する施設の設置地盤面を十分に高くできる場合は、危険物等の流入を防止するための措置を行ったこととみなせます
- 止液板にエラスチックフイラー等のゴム製材料は認められません
- 土のう等の準備は門扉の外側に講ずる措置として考えられますが、土のうのみで門扉の設置に代えることは認められません
- 隣接事業所との境界において共用することは差し支えありませんが、防油堤による代替措置は一般には認められません
- 県の管理する防潮堤を代替措置とすることは一般的には認められず、特殊なケースは個別に検討が必要です
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目次
地盤面を高くすれば流入防止措置になるか

流出油等防止堤の内側に火気を使用する施設があると、漏れた油が流れ込んで着火するおそれがあります。
そこで危険物等の流入を防止するための措置が求められます。その施設を高い場所に据えれば、措置をしたことになるのか。
認められました。ただし条件が1つ付いています。十分に高くできる場合、という限定です。
措置の目的は、油が施設に届かないようにすることです。目的が達せられる高さなら手段は問われません。逆に、少し上げただけで届いてしまうなら措置になりません。
どこからが十分かは書かれていません。堤内に溜まりうる油の量と高さから逆算します。防止堤の容量は最大の防油堤の容量以上とされているので、その水位を想定して比べることになります。
この考え方は、防火区画の代わりに距離をとる話とよく似ています。求められているのは設備の形ではなく、危険が届かない状態です。
地盤を高くする方法も、認められる場合があるのですね。
目的を果たせるかで見ます。
施設の配置を、図で確かめてください。
止液板にゴム製材料を使えるか

この止液板は金属材料を用いることとされています。
では、エラスチックフイラー等のゴム製材料は使えるのか。
一言で切られています。前の項目とは対照的です。
違いはどこにあるか。前の項目は措置の目的が定められていて、達成する手段が問われました。こちらは材料そのものが金属と指定されています。指定がある以上、代わりの材料は入りません。
理由は書かれていませんが、想像はつきます。止液板は油に長時間さらされ、火災になれば熱も受けます。ゴム系の材料は油で膨潤したり熱で軟化したりします。
実務で押さえておきたいのは、基準の書き方によって交渉の余地が変わるということです。目的で書かれていれば別の手段を提案できます。材料で書かれていれば提案の余地はありません。
材料が指定されている場合は、動かせないのですね。
書き方が違います。
基準の文言を、条文で確かめてください。
門扉の代わりに土のうを置いてよいか

さらに門扉の外側にも、危険物の漏出を防止することができる有効な措置を講じることとされています。
その有効な措置とは具体的に何か。そして、土のうを準備しておけば門扉そのものを省けるのか。
同じ土のうが、2つの問いで違う扱いを受けています。
門扉の外側に講ずる措置としては、土のう等を準備しておくことが具体例として挙げられました。ここでは認められています。
しかし門扉そのものの代わりにはなりません。門扉は常設の構造物で、閉めればその場で堤の一部になります。土のうは人が運んで積む必要があり、間に合うとは限りません。
つまり門扉に足すもので引くものではありません。
この線引きは、消防用設備でも同じ形で出てきます。人が動かして使うものは、常に働いている設備の代わりにはなりません。
土のうは足し算であって、代わりにはならないのですね。
門扉そのものは必要です。
出入口の設備を、現地で確認してください。
防油堤との兼用や隣接事業所との共用

そこで2つの代替案が示されました。防油堤と兼用すること。隣接事業所と共用すること。
2つの案が正反対の扱いになりました。
隣接事業所との共用は差し支えありません。境界に1つの堤を設ければ、両方の事業所にとって外へ油を出さない役割を果たします。役割は同じで、持ち主が2人になるだけです。
一方、防油堤による代替は一般には認められません。防油堤はタンクから漏れた油をタンクの周りで受け止めるもの、防止堤は敷地から外へ出さないもの。置かれている位置も守る範囲も違います。
ただし特殊なケースは個別に検討するとされています。門前払いではありません。次の記事で見るとおり、一体構造の共用堤という形は別に認められています。
共用はできても、兼用は難しいのですね。
扱いが分かれます。
計画の前に、どちらに当たるか整理してください。
県の防潮堤を代替措置にできるか

すでにそこに堤があるのなら、防止堤の代わりにできないか。
あわせて、山地等について占有権や管理権がない場合の扱いも問われました。
一般的には認められないという結論です。
問いの後半に理由が示唆されています。占有権や管理権がない場合はどうか、という部分です。防止堤は特定事業所が設置し、維持し、検査を受けるものです。他人が管理する構造物では、事業所の側で状態を保てません。
県が防潮堤を改修したり撤去したりすれば、防止堤としての機能も一緒に失われます。それでは義務を果たしたことになりません。
前の項目の共用と比べると違いがはっきりします。隣接事業所との共用は、双方が同じ義務を負って境界の堤を維持します。県の防潮堤は、県に防止堤を維持する義務がありません。
ここでも特殊なケースは個別に検討するとされています。相談の道は残されています。
他人が管理する堤は、当てにできないのですね。
管理の権限がないためです。
自社で管理できる範囲で計画してください。
よくある質問
まとめ
- 設置地盤面を高くする方法は十分に高くできる場合に流入防止措置とみなせます
- 止液板のゴム製材料は認められません
- 土のう等の準備は門扉の外側に講ずる措置として考えられます
- ただし土のうのみで門扉に代えられません
- 隣接事業所との境界における共用は差し支えありません
- 防油堤による代替は一般には認められません(特殊なケースは個別検討)
- 県の管理する防潮堤を代替措置とすることも一般的には認められません
目的で書かれた基準と、材料で書かれた基準は違うのですね。
すっきりしました。
代替を相談するときは、まず基準がどちらの書き方かを見てください。
㈱防災屋でもご相談を承っています。
参考・出典
- 石油コンビナート等における特定防災施設等及び防災組織等に関する省令の運用に係る資料の送付について(昭和53年3月9日 消防地第42号 消防庁地域防災課長から関係都道府県消防防災主管部長あて)
- 石油コンビナート等災害防止法
- 石油コンビナート等における特定防災施設等及び防災組織等に関する省令
- 危険物の規制に関する規則第22条第2項第1号
- 消防実務六法 質疑応答編
※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。掲載した回答には昭和50年代のものが含まれ、条番号や機関の名称等は当時のものです。個別の事案についての適用は、所轄消防署または自治体にご確認ください。




