村長が根拠を示さないまま村民を水防に従事させ、そのうち1人が洪水に流されて亡くなった。
補償はできる。ただし、どの法律を根拠に払うのかを決めなければ手続が進みません。
回答は水防法第17条だとしました。
一方で災害対策本部を設置していれば答えが変わります。
根拠を示さずに水防の作業をお願いした場合、補償は何を根拠にするのでしょうか。
特別法である水防法第17条の規定に基づくものと解するのが妥当と認められるとされました。
知事の指示で応援に出た消防団員が負傷した場合、費用は誰が負担するのでしょうか。
費用負担の原則により応援を受けた市町村が負担します。
ただし法第93条に該当する場合は指示をした知事の都道府県が全部または一部を負担します。
- 法的根拠を明確にしないまま水防事務に従事させた場合の動員は、特別法である水防法第17条の規定に基づくものと解するのが妥当とされました
- 災害対策本部を設置した時点においては、災害対策基本法に基づく応急措置への従事と解するべきとされています
- 知事の指示により出動した消防団員の公務災害補償は、費用負担の原則により応援を受けた市町村が負担します
- ただし災害対策基本法第93条に該当する場合は、指示をした知事の統轄する都道府県が費用の全部または一部を負担します
- 他の用途を有する施設を流出油等防止堤として認めた場合も手数料は徴収すべきで、2事業所で共用する場合は各事業所ごとに設置しているものとして徴収します
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目次
根拠を示さずに水防に従事させた場合

県内のある村で、村長が法的根拠を明確にしないまま村民を水防事務に従事させた。その1人が洪水に流されて亡くなりました。
補償はしなければならない。しかし何法に基づくのか。県の消防団員等公務災害補償組合では、水防法第34条による事務を取り扱っていませんでした。
なお、新潟県消防団員等公務災害補償組合では、水防法第34条による事務はとり扱つていない。
根拠を示さなかったからといって、補償ができなくなるわけではありません。行為の中身から根拠を割り出します。
やっていたのは水防事務です。水防については水防法という特別法があり、第17条に従事命令の規定が置かれています。だから動員は水防法第17条に基づくものと解する。
特別法たるという言い方が効いています。一般法より特別法が優先します。災害対策基本法にも従事命令はありますが、水防という場面に限った規定がある以上、そちらを先に見ます。
実務での教訓は明快です。あとから根拠を探すことはできますが、探す手間が発生します。動員するときにどの条文で頼むのかを決めておけば、補償の手続もそのまま流れます。
根拠が示されていなくても、補償の道はあるのですね。
特別法によると解されました。
依頼のときは、根拠を口頭でも伝えてください。
災害対策本部を設置していた場合

市長の命により水防作業に従事していた住民が、濁流に流されて亡くなった。これは災害対策基本法第65条第1項に基づく作業と解してよいか。
ただしこの事案には条件がありました。その時点で市は既に災害対策本部を設置していたのです。
なお、この時点において市は既に災害対策本部を設置していた。
前の項目では水防法第17条、こちらでは災害対策基本法。同じ水防作業でも根拠が変わりました。
違いは災害対策本部が設置されていたかどうかです。本部を立てた時点で、市の動きは災害対策基本法に基づく応急措置の枠に入ります。その中で行う水防作業は、応急措置への従事として扱われます。
前の記事で見たとおり、事前措置の指示は本部の設置と関係なく出せました。ここでは逆に、本部の設置が根拠法を切り替えています。
本部の設置は組織の話にとどまりません。補償の根拠まで動かします。設置の日時を記録に残しておくことが、あとの手続を左右します。
本部の設置が分かれ目になるのですね。
状況で根拠が変わります。
設置の時刻を、記録に残しておきましょう。
応援出動した消防団員の補償は誰が負担するか

災害対策基本法第72条により、知事は市町村長に対して応援を指示できます。その指示を受けて出動した消防団員が公務災害にあった場合、補償の費用は誰が持つのか。
施行令第40条の応援のために要した費用として都道府県の負担に含めるのか、それとも応援を求めた市町村が負担するのか。
都道府県知事の指示を受け出動した消防団員の公務災害補償を法施行令第40条の規定による応援のために要した費用として都道府県の費用負担に包含せしむるべきか、あるいは、応援を求めた市町村が負担すべきか。
ただし、同法第93条(法施行令第39条)に該当する場合は当該指示をした都道府県知事の統轄する都道府県がその費用の全部、または一部を負担することとなる。
指示を出したのは知事です。しかし費用を持つのは、応援を受けた市町村になります。
根拠は第91条の費用負担の原則です。応急措置に要する費用は、その応急措置を実施すべき者が負担する。応援は受けた側の応急措置を助ける行為なので、費用も受けた側に付きます。
指示した人が払うのではなく、助けてもらった人が払う。この考え方は前の記事で見た応援要求の話ともつながります。応援は相手の善意ではなく、受けた側の責任で行われる作業の一部です。
応援協定を結ぶときは、この原則を前提に費用の扱いを書いておく必要があります。
原則は、応援を受けた側が負担するのですね。
費用負担の原則です。
応援の要請は、書面で残してください。
都道府県が負担する場合もある

災害対策基本法第93条に該当する場合は、指示をした知事の統轄する都道府県が費用の全部または一部を負担します。
原則と例外がセットで示されているのが、この回答の要点です。
原則は第91条で、応援を受けた市町村が負担します。例外は第93条で、指示をした知事の統轄する都道府県が全部または一部を負担します。該当するかどうかは施行令第39条で決まります。
つまり、指示を出した側がいつも払わないわけでも、いつも払うわけでもありません。条文の要件に当てはまるかどうかで分かれます。
実務では、応援を求めた時点でどちらになるのかを確かめておくのが確実です。あとから負担者を巡って揉めると、いちばん困るのは出動した本人です。
指示した側が持つ場面もあるのですね。
例外が置かれています。
該当するかどうかを、事後に確かめてください。
流出油等防止堤の手数料は誰が納めるか

流出油等防止堤の検査手数料について、2つの問いが並んでいます。
他の用途を持つ施設を防止堤として認めた場合はどうか。2事業所で共用する場合はどうか。
問7 流出油等防止堤を2事業所間で共用する場合に、手数料の納付はどうするか。
答7 各事業所ごとに当該事業所の防止堤を設置しているものとして徴収する。
問6は、もともと別の目的で作られた防潮堤等を防止堤として認めた場合の話です。答えは徴収すべき。防止堤として認める以上、検査は行われるので手数料も発生します。
問7が実務的です。1つの堤を2事業所で共用していても、手数料は半分ずつにはなりません。各事業所ごとに、その事業所の防止堤を設置しているものとして徴収します。
考え方の筋は前の項目と同じです。費用は物ではなく義務に付きます。防止堤という物は1つでも、防止堤を設けるべき義務は事業所ごとにあります。だから手数料も事業所ごとに発生します。
共用を検討するときは、工事費が半分になっても手数料は半分にならないことを見込んでおいてください。
共用していても、それぞれに手数料がかかるのですね。
事業所ごとに見ます。
共用の計画は、費用も含めて確かめてください。
よくある質問
まとめ
- 根拠を示さずに水防事務に従事させた場合の動員は特別法たる水防法第17条に基づくと解されました
- 災害対策本部を設置した時点では災害対策基本法の応急措置への従事と解します
- 同じ水防作業でも本部の設置の有無で根拠法が変わります
- 知事の指示で出動した消防団員の公務災害補償は応援を受けた市町村が負担します(第91条)
- ただし第93条に該当する場合は指示をした知事の都道府県が負担します
- 他の用途を有する施設を防止堤として認めた場合も手数料は徴収すべきとされました
- 2事業所で共用する場合は各事業所ごとに設置しているものとして徴収します
費用は物ではなく、義務に付くという考え方なのですね。
すっきりしました。
頼む前にどの条文で頼むかを決めておけば、補償の手続もそのまま流れます。
㈱防災屋でもご相談を承っています。
参考・出典
- 法的根拠を明確にしない水防従事者の災害補償の根拠法律について(昭和41年9月16日 自消丙発第221号 新潟県あて回答)
- 市長の命により水防作業に従事中死亡した者の取り扱いについて(富山県あて回答)
- 災害対策基本法第72条に基づく知事の指示により出動した消防団員の公務災害補償について(自消丙総発第247号)
- 石油コンビナート等における特定防災施設等及び防災組織等に関する省令の運用に係る資料の送付について(昭和53年3月9日 消防地第42号)
- 災害対策基本法第65条第1項・第72条・第91条・第93条
- 災害対策基本法施行令第39条・第40条
- 水防法第17条・第34条
- 消防実務六法 質疑応答編
※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。掲載した回答には昭和40年代から50年代のものが含まれ、条番号や機関の名称等は当時のものです。個別の事案についての適用は、所轄消防署または自治体にご確認ください。




