流出油等防止堤と防油堤を、それぞれ別に設けるのが難しい場所があります。
前の記事で見たとおり、防油堤で防止堤を代替することは一般には認められません。
ただし別の道が用意されています。2つを一体の構造で作る共用堤です。
認められる代わりに細かい要件が付いています。
防止堤と防油堤を1つの構造にまとめてよいのでしょうか。
それぞれ別個に設置することが著しく困難と認められる箇所については、一体的な構造で設置したもの、いわゆる共用堤として差し支えないとされています。
別々に建てる場合、防油堤との間隔はどのくらい必要でしょうか。
防油堤の高さに相当する間隔をとることは十分な条件とは認められず、一般には少なくとも4メートル以上の間隔をとることが適当な場合が多いとされました。
- 別個に設置することが著しく困難と認められる箇所は、一体的な構造の共用堤として差し支えありません
- 共用堤の高さは防油堤の必要高さに30センチメートル以上を加えた高さとします
- 水抜口はできるだけ共用堤部分を避けて設置し、やむを得ず設ける場合は自動遮断弁を設けます
- 天端幅6メートル以上の通路等で要件に該当するものは、共用堤として差し支えありません
- 防油堤と防止堤の間隔は、一般には少なくとも4メートル以上をとることが適当な場合が多いとされました
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目次
防油堤と一体構造にできるか

防止堤を設けることが困難な場合に、防油堤との一体構造にできるか。認められるなら強度や高さの基準はどうなるのか。
認められましたが、入口が狭く作られています。
条件は著しく困難と認められる箇所であること。困難というだけでは足りず、著しくが付いています。用地に余裕がないとか、既存の設備が動かせないといった事情が要ります。
そのうえで、共用堤という呼び名が与えられました。名前が付くということは、満たすべき要件が定められるということです。
前の記事で見た防油堤による代替と読み比べてください。代替は一般には認められませんでした。代わりに使うのは駄目で1つにまとめるのは可という整理です。
違いは何を守るかにあります。代替は防油堤の性能で防止堤の役割まで賄おうとするもの。共用堤は両方の要件を満たす1つの構造物を作るものです。
著しく困難な箇所に限られるのですね。
入口が狭く作られています。
まず別置きが可能かを、検討してください。
共用堤の高さはどう決めるか

防油堤としての必要高さがまずあり、そこに上乗せがあります。
上乗せの理由は、1つの堤が2つの役目を負うからです。防油堤としてタンクの油を受け止めるだけでなく、その油を敷地の外へ出さない役目も果たします。
ただし、ただし書きで2つの例外が示されています。
1つは、タンクとの間にタンクの高さの2分の1以上の間隔がある場合。距離があれば、油が勢いよく乗り越える心配が減ります。
もう1つは、かさ上げ後の高さが3メートル以上となる場合。もともと十分な高さがあるなら、さらに30センチを求める意味が薄くなります。
距離か高さのどちらかが確保できていれば上乗せは要らない、という組み立てです。用地の条件に応じて選べるようになっています。
高さには上乗せがあるのですね。
2つの役目を負うためです。
いまの堤の高さを、測っておきましょう。
強度と水抜口の扱い

共用堤は盛土や中込土と組み合わせて作られることがあります。その場合でも、鉄筋コンクリート部分だけで防油堤として成り立つ必要があります。
(3) 水抜口は、できるだけ共用堤部分を避けて設置し、やむを得ず共用堤部分に水抜口を設置する場合には自動遮断弁を設けること。
(2)は、盛土をあてにするなという要件です。鉄筋コンクリート部分それ自体で防油堤としての強度を持たせる。そのうえで、盛土や中込土を加えても支持力に支障がないことを確かめます。
(3)が実務でつまずきやすいところです。堤の内側には雨水が溜まるので、抜くための水抜口が要ります。しかし穴を開ければ、そこから油も抜けます。
だから、まず共用堤部分を避けて設置する。避けられない場合に限り、自動遮断弁を設ける。
自動という語が重要です。人が閉めに行く前提の弁では間に合いません。前の記事で見た土のうと門扉の関係と同じ考え方です。人が動かす前提のものは常設の代わりになりません。
盛土をあてにしてはいけないのですね。
鉄筋コンクリート部分で成り立つことが要件です。
構造の内訳を、図面で確かめてください。
天端幅6メートル以上の通路も共用堤になるか

幅が十分にあり、車両が通れるようになっているものです。これも共用堤として扱えるのか。
天端幅とは堤の上面の幅です。6メートル以上あれば、通路として使われていても共用堤として差し支えありません。
ただし無条件ではありません。1(1)の高さの要件と、1(3)の水抜口の要件は満たす必要があります。
興味深いのは(2)の強度の要件が挙げられていないことです。天端幅6メートル以上の構造物なら、車両が通る前提で作られているので、強度は自ずと確保されているという判断だと読めます。
現場から見れば、これは有利な整理です。すでにある通路が要件を満たしていれば、新しく堤を建てずに済みます。既存の構造物を測ってみる価値があります。
通路として使っている堤も、扱える場合があるのですね。
幅が条件です。
天端の幅を、実測してみてください。
防油堤との十分な間隔とは

運用通達では、防止堤の設置位置は防油堤との間にタンクの規模等に応じた十分な間隔を置いて設置することが望ましいとされていました。
では、防油堤の高さに相当する間隔があれば十分な間隔と認められるのか。
認められないとすれば「十分な間隔」とはどの程度をいうのか。
質問者が持ち込んだ基準は否定されました。防油堤の高さに相当する間隔では十分な条件と認められません。
代わりに示されたのが総合判断です。タンクの規模、特に高さ。タンクからの距離。防油堤の現況。これらを合わせて判断します。
それでは設計ができないので、なお書きで具体的な数字が添えられました。一般には少なくとも4メートル以上。
書きぶりに注意してください。4メートルは基準ではなく目安です。適当な場合が多いと考えられる、という表現にとどまっています。タンクが高ければ、4メートルでは足りないこともあります。
なお、防止堤の容量については別の回答があります。防油堤の容量が最大タンクの110パーセントを超えていても、防止堤の容量は110パーセント以上としてよいかという問いに、さしつかえないとされました。
間隔にも目安が示されているのですね。
高さだけでは足りません。
配置の計画に、目安の数値を入れてください。
よくある質問
まとめ
- 共用堤が認められるのは別個の設置が著しく困難と認められる箇所です
- 高さは防油堤の必要高さに30センチメートル以上を加えます
- タンクの高さの2分の1以上の間隔がある場合等はこの限りでありません
- 鉄筋コンクリート部分がそれ自体防油堤として十分な強度を持つ必要があります
- 水抜口はできるだけ共用堤部分を避け、やむを得ない場合は自動遮断弁を設けます
- 天端幅6メートル以上の通路等も要件に該当すれば共用堤として差し支えありません
- 防油堤との間隔は一般には少なくとも4メートル以上が適当な場合が多いとされました
すでにある通路が使えるかもしれないのですね。
すっきりしました。
新しく建てる前に、天端幅と高さと水抜口を測ってみてください。
㈱防災屋でもご相談を承っています。
参考・出典
- 流出油等防止堤の設置について(昭和53年6月2日 消防地第106号 消防庁地域防災課長から関係都道府県消防防災主管部長あて)
- 同前(昭和53年6月22日 消防地第126号 消防庁地域防災課長から関係都道府県消防防災主管部長あて)
- 流出油等防止堤の設置に関する運用指針について(昭和52年10月25日付け 消防地第211号)
- 石油コンビナート等災害防止法の運用に係る資料の送付について(昭和62年1月12日 消防地第12号)
- 危険物の規制に関する規則第22条第2項第1号
- 消防実務六法 質疑応答編
※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。掲載した回答には昭和50年代から60年代のものが含まれ、条番号や機関の名称等は当時のものです。個別の事案についての適用は、所轄消防署または自治体にご確認ください。




