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密集住宅市街地の空き家はなぜ消防の指導対象になるのか|管理不十分の目安と改善指導の手順を解説

密集住宅市街地の空き家はなぜ指導対象になるのか

隣の空き家が荒れているのを見て、うちに燃え移らないか心配になったことはありませんか。
令和7年11月に大分市で起きた大規模火災を受け、消防庁は令和8年3月、密集住宅市街地の空き家等に向けた新しいガイドラインをまとめました。
対象になるのは、消防本部が「密集住宅市街地」に指定した地域にある、管理が行き届いていない空き家や住宅です。
把握から改善指導、措置命令までの手順が一つのガイドラインとして初めて整理されました。

うちの隣、もう何年も誰も住んでいない家があるんです。
庭木も伸び放題で、正直火事が心配で仕方ありません。

令和8年3月、消防庁がまさにそうした空き家に向けたガイドラインを出しています。
大分市の大規模火災を教訓にまとめられた最新の文書です。

消防が空き家に指導できるとは知りませんでした。
どこまで踏み込んでもらえるのか知りたいです。

ガイドラインには把握から措置命令までの手順が並んでいます。
今日はその中身を順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • ガイドラインは令和7年11月18日に発生した大分市大規模火災を教訓に、令和8年3月27日付でまとめられました
  • 対象は消防本部が密集住宅市街地に指定した地域にある、管理が不十分な空き家と現住家屋です
  • 把握した空き家は台帳やデータベースで管理し、改善指導は原則として文書で行うことが求められています
  • 個人の住居への立入りは消防法第4条により、承諾がなければ原則できません
  • 指導しても改善されない場合は躊躇せず措置命令に移行することが適当とされています

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空き家等の把握・目安の確認・改善指導・措置命令という四つの手順をまとめた図解

大分市大規模火災はなぜ空き家ガイドラインを招いたのか

密集した木造住宅の並びと大規模火災を受けた検討会報告書のイメージ
ガイドラインの前書きには、策定のきっかけとなった火災と検討会の名前がそのまま記されています。
まず何が起きて、なぜ全国向けのガイドラインにつながったのかを確認します。
密集住宅市街地における空き家等に対する火災予防ガイドライン等について(消防予第111号・令和8年3月27日・消防庁予防課長) 令和7年11月18日に発生した大分市大規模火災を受けて、消防庁では「大分市大規模火災を踏まえた消防防災対策のあり方に関する検討会」を開催し、報告書をとりまとめたところです。本報告書において、「密集住宅市街地における空き家等について、消防本部において把握する対象や、管理が不十分で改善すべきものの目安、改善指導等の手順、関係部局と連携した情報共有や関係者への働き掛けに係る体制整備等を分かりやすく示すことが必要である。」と提言されたことを踏まえ、別紙のとおり「密集住宅市街地における空き家等に対する火災予防ガイドライン」を策定しました。
大規模火災の検討会が、空き家対策の手引きを生んだ形です。
大分市大規模火災の発生は令和7年11月18日で、ガイドラインの日付は約4か月後の令和8年3月27日です。
検討会報告書は、消防本部が空き家をどこまで把握し、どんな状態なら指導すべきかが分かりにくいという課題を指摘しました。
つまりこのガイドラインは、密集住宅市街地の延焼危険という大きなテーマの中から、空き家という一つの要因を切り出して手順化した文書です。
背景には、老朽化した空き家が飛び火や延焼の起点になりやすいという消防庁の認識があります。

大分市の火災は遠い出来事だと思っていました。
まさか自分の地域のガイドラインにつながるとは驚きです。

密集住宅市街地に指定された地域なら、どこでも関係します。
次は対象の範囲を見ていきましょう。

密集住宅市街地のどんな空き家が対象になるのか

密集住宅市街地に指定された地域の地図と管理不十分な空き家のイメージ
ガイドラインの「対象範囲」の章を読むと、地域と建物の両方に条件があることがわかります。
把握の対象と指導等の対象が分かれている点を確かめます。
本ガイドラインにおいて対象とする密集住宅市街地及び空き家等の範囲は、次のとおりである。⑴密集住宅市街地 「木造の建築物が多い地域など大規模な火災につながる危険性が高い地域」として消防本部が指定した地域。⑵空き家等 前⑴の密集住宅市街地に存する次の空き家等を把握及び指導の対象とする。ア空き家 〇把握の対象:空き家 〇指導等の対象:火災予防上管理が不十分な空き家 イ火災予防上管理が不十分な現住家屋
対象になるのは消防本部が指定した密集住宅市街地の中の建物だけです。
指定の根拠は、木造建築物が多く大規模火災につながりやすい地域として消防本部が指定した区域で、指定されていない地域は対象になりません。
建物側は「空き家」と「管理が不十分な現住家屋」の2種類が対象になり、人が住んでいても管理状態が悪ければ含まれます。
空き家は火災予防上管理が不十分になる前の段階から把握の対象ですが、実際に指導等が行われるのは、管理が不十分な状態と判断されたものだけです。
つまり空き家であること自体が問題視されるのではなく、管理が行き届いているかどうかが線引きになります。

空き家ならなんでも指導されるのかと思っていました。
管理さえきちんとしていれば大丈夫なんですね。

そのとおりです。
問われるのは空き家かどうかではなく管理の状態です。

ガイドラインは空き家等の把握と指導になにを求めているのか

空き家の状態を台帳に記録する作業着姿の人のイメージ
ガイドラインの本文には、管理が不十分な状態の目安が具体的に列挙されています。
まず何を基準に判断するのかを見ていきます。
本ガイドラインにおいて、火災予防上管理が不十分な状態の目安としては、何らかの火源により容易に着火し、又は火災となった場合に延焼拡大する危険性が高まっている状態を想定しており、その目安は次の例のとおりである。〇草木が放置され、繁茂している。〇大量の落ち葉・枯れ草が放置されている。〇敷地内に危険物品や、大量の可燃物がみだりに存置されている。〇家屋の開口部(扉や窓など)が大きく破損している。〇屋根や外壁が老朽化等に伴い破損、ずれ等が生じることにより、大きく開口し、又は下地材が大きく露出している。
目安は外観からわかる5つの状態で示されています。
草木の繁茂や落ち葉・枯れ草の放置、敷地内の危険物品や可燃物の存置、扉や窓の大きな破損、屋根や外壁の老朽化による開口の5点です。
これらは、火源があれば着火しやすい状態や延焼拡大の危険が高まっている状態として、外観確認・関係部局との情報共有・消防団や住民からの聞き取りで把握します。
把握した空き家等は所在地・所有者情報・敷地内の状況・建物の外観の異常などを台帳やデータベースで管理し、人命検索や飛び火警戒の優先度を判断する火災防ぎょ計画にも反映することが求められています。
指導する際は原則として文書で行い、火災予防条例(例)第24条第2項の空き家の管理義務を根拠に、具体的な火災危険性を丁寧に説明することとされています。

台帳やデータベースで管理するなら、うちの地域の空き家状況も消防が把握しているということですね。
火災の時の対応にも使われるんですか。

はい、火災防ぎょ計画にも反映される想定です。
次は指導の限界と落とし穴を見ていきましょう。

改善指導で見落としやすいのはどこか

施錠された住宅の玄関と財産管理人制度の書類のイメージ
ガイドラインの注釈には、現地調査の限界がはっきりと書かれています。
指導する側が忘れてはいけない前提を確認します。
個人の住居は、消防法第4条の規定において、関係者の承諾を得た場合又は火災発生のおそれが著しく大であるため、特に緊急の必要がある場合でなければ立ち入ることはできないとされていることに留意する。
消防法第四条 消防長又は消防署長は、火災予防のために必要があるときは、関係者に対して資料の提出を命じ、若しくは報告を求め、又は当該消防職員(略)にあらゆる仕事場、工場若しくは公衆の出入する場所その他の関係のある場所に立ち入つて、消防対象物の位置、構造、設備及び管理の状況を検査させ、若しくは関係のある者に質問させることができる。ただし、個人の住居は、関係者の承諾を得た場合又は火災発生のおそれが著しく大であるため、特に緊急の必要がある場合でなければ、立ち入らせてはならない。
個人の住居には、承諾なしに自由に立ち入れるわけではありません。
外観確認で管理不十分と判断できても、敷地内への立入検査は消防法第4条の要件を満たす場合に限られます。
所有者等の特定も一筋縄ではいかず、消防法第35条の13に基づき登記事項証明書や戸籍情報の照会を行うことまで想定されています。
所有者が不明な場合は、空家法に基づく財産管理人制度を関係部局と連携して活用することも考えられるとされています。
それでも改善されず状況が悪化しているなら、指導を続けるより措置命令への移行を躊躇しないことが適当とされている点も見落とされがちです。

所有者が分からない空き家もありそうです。
そういうときはどうにもならないんでしょうか。

財産管理人制度という手段が用意されています。
最後に明日からできる確認を整理しましょう。

明日から防火管理者はなにを確認すればよいのか

所有者へ改善指導の文書を手渡す作業着姿の人と関係部局との連携会議のイメージ
ガイドラインは最後に、住民理解の促進と関係部局との連携の重要性を強調しています。
身近な場所から始められる確認を整理します。
密集住宅市街地の防火安全性を高めるためには、当事者である住民の理解・協力が不可欠である。このため、全国火災予防運動や建築物防災週間の機会等を捉え消防本部と建築部局等が連携して、密集住宅市街地の火災危険性、防火安全対策に係る法制度や支援措置等について、住民への広報啓発を行うことが重要である。
まず自分の地域が密集住宅市街地に指定されているかを消防本部に確認することから始まります。
指定地域内であれば、隣接する空き家の草木の繁茂や開口部の破損など、5つの目安に当てはまる状態がないか外観から確認しておくこと。
気になる空き家があれば、消防本部や空き家対策主務部局の相談窓口に情報提供することもガイドラインが想定している動きの一つです。
自分の敷地についても、感震ブレーカーや住宅用火災警報器と連動した戸外警報器の設置など、地域の面的な防火安全対策に参加できないか確認すること。
そして全国火災予防運動などの機会に、密集住宅市街地の防火安全対策について地域の集まりで話題にしてみることです。

まずは自分の地域が対象かどうか、消防署に聞いてみます。
気になる空き家のことも一緒に相談してみようと思います。

はい、情報提供も地域の防火対策の一歩です。
気になったらまず相談窓口に連絡してみましょう。

よくある質問

Q自分の地域が密集住宅市街地に指定されているかはどこで確認できますか?
A指定は各消防本部が行っているため、所轄の消防本部・消防署に直接確認するのが確実です。住宅・まちづくり部局が把握している危険地域の情報と連動している場合もあります。
Q近所の空き家について消防に情報提供すると、すぐに立入検査が行われますか?
Aいいえ。個人の住居への立入りは消防法第4条により承諾や緊急性が前提となるため、まずは外観確認や所有者への働きかけから始まります。
Q空き家の所有者が誰かわからない場合はどうなりますか?
A消防法第35条の13に基づく登記事項証明書等の照会で所有者の特定を試み、それでも不明な場合は空家法に基づく財産管理人制度の活用が考えられます。
Q指導に従わないとどうなりますか?
A改善されず状況が悪化する場合は、消防法第3条第1項や第5条第1項に基づく措置命令に移行することが適当とされています。命令に従わなければ罰則の対象にもなり得ます。

まとめ

✔ガイドラインは令和7年11月18日の大分市大規模火災を教訓に、令和8年3月27日付でまとめられました
✔対象は消防本部が密集住宅市街地に指定した地域の空き家と管理不十分な現住家屋です
✔管理不十分の目安は草木の繁茂・落ち葉や枯れ草・危険物品の存置・開口部の破損・屋根や外壁の老朽化の5点です
✔把握した情報は台帳やデータベースで管理し火災防ぎょ計画にも反映することが求められています
✔個人の住居への立入りは消防法第4条により承諾や緊急性が無ければ制限されます
✔所有者が不明な場合は財産管理人制度を関係部局と連携して活用することも考えられます
✔指導で改善されなければ措置命令への移行を躊躇しないことが適当とされています

まずは近所の空き家の状態を外から確認してみます!
気になるところがあれば消防に相談してみます。

早めの相談が延焼を防ぐ一番の近道です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防予第111号「密集住宅市街地における空き家等に対する火災予防ガイドライン等について」(令和8年3月27日・消防庁予防課長)
  • 消防法第3条第1項・第4条・第5条第1項・第35条の13
  • 火災予防条例(例)第24条第2項
  • 消防組織法第37条

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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