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アルキルアルミニウム等を取り扱うときはなぜ不活性ガスを封入するのか|アセトアルデヒド等との圧力基準の違いも解説

アルキルアルミニウム等とアセトアルデヒド等の取扱いの基準を解説する記事のアイキャッチ画像、ガス圧力計を確認する作業員の写真

危険物の規制には、施設を作るときに満たす「位置・構造・設備の基準」と、実際に作業する場面で守る「取扱いの基準」の二種類があります。
アルキルアルミニウム等とアセトアルデヒド等は、この取扱いの基準の中でも危険物の規制に関する規則第四十条の十から第四十条の十三までに専用の条文を持っています。
設備さえ整えれば終わりではなく、実際に取り出す作業のたびに守るべき手順が条文で定められている点が見落とされがちです。
この記事では、製造所・一般取扱所と移動タンク貯蔵所のそれぞれで求められる取扱いの基準の中身を条文から整理します。

うちはアルキルアルミニウムとアセトアルデヒドを両方扱っているんですが、設備さえ整えれば大丈夫ですよね。

実は設備の基準とは別に、作業そのものを縛る「取扱いの基準」が条文で定められています。

作業のたびに守ることがあるということですか。

はい。
令第二十七条第七項に基づく規則第四十条の十から第四十条の十三が、その中身を定めています。

この記事の結論
  • アルキルアルミニウム等とアセトアルデヒド等には、設備の基準とは別に「取扱いの基準」(規則第四十条の十から第四十条の十三)が定められています。
  • 製造所又は一般取扱所でアルキルアルミニウム等を取り扱う設備には、不活性の気体を封入しなければなりません
  • アセトアルデヒド等は、爆発の危険が生じた場合に不活性の気体又は水蒸気を封入します(タンクは不活性の気体のみ)
  • 移動タンク貯蔵所から取り出すときは、アルキルアルミニウム等は0.2メガパスカル以下、アセトアルデヒド等は0.1メガパスカル以下の圧力で同時に不活性ガスを封入します
  • この四つの条文に、ヒドロキシルアミン等は登場しません

設備の基準と取扱いの基準の違いを示す四列のインフォグラフィック、製造所や一般取扱所での不活性ガス封入から移動タンク貯蔵所での圧力管理までの流れを示す

なぜ設備の基準とは別に取扱いの基準があるのか

タンクと配管を備えた建物と、その横でバルブを操作する作業員のイメージ
まず、取扱いの基準がどの条文に根拠を持つのかを確認します。
対象になる危険物の範囲も押さえます。
令第二十七条第七項 アルキルアルミニウム、アルキルリチウム、アセトアルデヒド、酸化プロピレンその他の総務省令で定める危険物又は第四類の危険物のうちメタノール若しくはエタノール若しくはこれらを含有するものの取扱いの技術上の基準は、前各項に定めるもののほか、当該危険物の性質に応じ、総務省令で定める。規則第四十条の九 令第二十七条第七項の総務省令で定める危険物は、第十三条の七に規定する危険物とする。
基準には「作るとき」と「使うとき」の二段階があります。
これまで見てきた第十三条の八や第二十八条の六十四などは、施設を作るときに満たす位置・構造・設備の基準でした。
一方、令第二十七条第七項は、実際に危険物を取り扱う作業の場面で守るべき技術上の基準を、別に総務省令へ委任しています。
規則第四十条の九が対象を「第十三条の七に規定する危険物」(アルキルアルミニウム等・アセトアルデヒド等・ヒドロキシルアミン等)と定めていますが、実際に個別の作業手順が定められているのはこのうちの二種類だけです。
まずは自施設で扱う危険物が、この対象に含まれているかを確認してください。

設備の許可を取ったら、それで終わりだと思っていました。

設備の許可とは別に、作業のたびに守る基準があります。
次に中身を見ていきましょう。

製造所や一般取扱所ではアルキルアルミニウム等をどう扱うのか

反応槽にホースでガスボンベがつながれ気体が送り込まれているイメージ
アルキルアルミニウム等を取り扱う設備に課される義務を確認します。
条文はシンプルですが、常時の義務である点が重要です。
規則第四十条の十 令第二十七条第七項の規定により、製造所又は一般取扱所のアルキルアルミニウム等を取り扱う設備には、不活性の気体を封入しなければならない。
条件は付いていません。取り扱う設備には常に不活性ガスが必要です。
製造所又は一般取扱所でアルキルアルミニウム等を取り扱う設備には、不活性の気体を封入しなければなりません。
「爆発のおそれが生じたときに」といった条件は付いておらず、対象設備であれば常時封入されている状態を保つ必要があります。
これは施設を作るときの位置・構造の基準とは別に、日々の運転管理として求められる義務です。
封入している不活性ガスの有無や圧力は、日常点検の対象として確認してください。

常にガスを入れておく、という意味ですね。

はい、条件なしの常時義務です。
アセトアルデヒド等では条件の付き方が変わります。

アセトアルデヒド等の取扱いはどこが違うのか

タンクの左右にガスボンベと水蒸気の配管がそれぞれつながれているイメージ
同じ枠組みでも、アセトアルデヒド等は条件と選択肢が付きます。
三つの階層に分けて確認します。
規則第四十条の十二 令第二十七条第七項の規定により、製造所又は一般取扱所のアセトアルデヒド等を取り扱う設備には、燃焼性混合気体の生成による爆発の危険が生じた場合に、不活性の気体又は水蒸気(アセトアルデヒド等を取り扱うタンク(屋外にあるタンク又は屋内にあるタンクであつて、その容量が指定数量の五分の一未満のものを除く。)にあつては、不活性の気体)を封入しなければならない。
アルキルアルミニウム等の「常時」とは要求の形が違います。
まず封入が必要になるのは爆発の危険が生じた場合で、常時ではなく条件付きです。
封入するものは原則として不活性の気体又は水蒸気のどちらでもよいのですが、指定数量の五分の一以上の容量を持つタンクに限っては不活性の気体のみに絞られます。
つまり「条件(爆発の危険)」「選択肢(不活性ガスか水蒸気か)」「タンクの容量による絞り込み」という三段階の構造になっています。
自施設の設備が、水蒸気を使ってよい範囲かどうかをタンク容量から確認してください。

水蒸気を使ってもいい場合と、ガス限定の場合があるんですね。

はい、タンクの容量で分かれます。
次は移動タンク貯蔵所からの取り出しを見ましょう。

移動タンク貯蔵所から取り出すときの圧力はなぜ違うのか

タンクローリーからホースでタンクに危険物を送り、圧力計を確認しているイメージ
移動タンク貯蔵所からの取り出しは、製造所等とは別の条文で定められています。
数値の違いを取り違えないよう確認します。
規則第四十条の十一 令第二十七条第七項の規定により、移動タンク貯蔵所において、移動貯蔵タンクからアルキルアルミニウム等を取り出すときは、同時に〇・二メガパスカル以下の圧力で不活性の気体を封入しなければならない。規則第四十条の十三 令第二十七条第七項の規定により、移動タンク貯蔵所において、移動貯蔵タンクからアセトアルデヒド等を取り出すときは、同時に〇・一メガパスカル以下の圧力で不活性の気体を封入しなければならない。
二つの数値は五倍違います。取り違えるとそのまま基準違反です。
移動タンク貯蔵所の移動貯蔵タンクから危険物を取り出すときは、「同時に」不活性ガスを封入することが条件になっています。
上限の圧力は、アルキルアルミニウム等が0.2メガパスカル以下、アセトアルデヒド等が0.1メガパスカル以下で、同じ枠組みの条文でありながら数値が異なります。
製造所・一般取扱所向けの第四十条の十・第四十条の十二とは適用場面が別で、移動タンク貯蔵所からの取り出し作業だけに課される独立した基準です。
現場で扱う危険物ごとに、圧力計の上限値を混同しないよう表示や手順書で区別しておくことが実務上の対策になります。

二つの薬品を両方扱っていると、圧力の数値を間違えそうです。

そこが最大の落とし穴です。
最後に確認の手順をまとめます。

明日から何を確認すればよいのか

クリップボードを持つ作業員がタンクの計器類を点検しているイメージ
最後に、実務で確認すべき手順を整理します。
順番にチェックしてください。
(危険物の規制に関する規則第四十条の九から第四十条の十三までに基づく確認手順)
  • 取り扱う危険物がアルキルアルミニウム等アセトアルデヒド等のいずれに当たるかを確認する
  • 製造所・一般取扱所の設備には、対象危険物に応じた不活性ガスの封入状態を日常点検で確認する
  • アセトアルデヒド等を扱うタンクは、容量が指定数量の五分の一以上かどうかで封入できるものが不活性ガスのみに限られることを確認する
  • 移動タンク貯蔵所からの取り出し時は、アルキルアルミニウム等0.2メガパスカル以下・アセトアルデヒド等0.1メガパスカル以下の圧力上限を取り違えていないか確認する
  • 判断に迷う場合は許可申請や日常点検の前に所轄消防署へ相談する

チェックリストに沿って、自施設の点検項目に落とし込んでみます。

判断に迷う項目があれば、点検の前にご相談ください。

よくある質問

Q取扱いの基準は、位置・構造・設備の基準とは何が違いますか?
A位置・構造・設備の基準は施設を作るときに満たす基準で、取扱いの基準は実際に危険物を取り扱う作業の場面で守る基準です。令第二十七条第七項が根拠になります。
Qアルキルアルミニウム等の不活性ガス封入は、常に必要ですか?
Aはい。規則第四十条の十には条件が付いておらず、製造所又は一般取扱所で取り扱う設備には常時不活性の気体を封入しなければなりません。
Qアセトアルデヒド等はどんなときでも水蒸気を封入してよいのですか?
Aいいえ。指定数量の五分の一以上の容量を持つタンクは不活性の気体のみに限られ、水蒸気は使えません。
Q移動タンク貯蔵所からの取り出し時の圧力上限は、どちらも同じですか?
Aいいえ。アルキルアルミニウム等は0.2メガパスカル以下、アセトアルデヒド等は0.1メガパスカル以下と、五倍の差があります。

まとめ

位置・構造・設備の基準とは別に、令第二十七条第七項を根拠に「取扱いの基準」が定められています
アルキルアルミニウム等は、製造所・一般取扱所の設備に常時不活性ガスを封入する必要があります
アセトアルデヒド等は爆発の危険が生じた場合に、不活性ガスか水蒸気のどちらかを封入します
アセトアルデヒド等の大容量タンクは不活性ガスのみに限られます
移動タンク貯蔵所からの取り出し時は、アルキルアルミニウム等0.2メガパスカル以下・アセトアルデヒド等0.1メガパスカル以下と圧力の上限が異なります
この四つの条文にヒドロキシルアミン等は登場しません
日常点検では封入の有無だけでなく圧力の数値まで確認してください

設備の基準とは別に、作業のときに守ることがあると分かって安心しました。

まずは封入の有無と圧力を確認してください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法第十一条第一項・第五項
  • 危険物の規制に関する政令第二十七条第七項
  • 危険物の規制に関する規則第四十条の九
  • 危険物の規制に関する規則第四十条の十・第四十条の十一
  • 危険物の規制に関する規則第四十条の十二・第四十条の十三
  • 危険物の規制に関する規則第十三条の七

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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