屋内貯蔵所でアルキルアルミニウム等を扱う場合、通常の屋内貯蔵所と同じ発想で設計すると許可の壁にぶつかることがあります。
空気や水に触れると激しく反応するこの危険物は、消防法令上「アルキルアルミニウム等」として専用の特例基準が定められているためです。
基準を知らないまま計画を進めると、建物の配置や設備を大きく見直すことになりかねません。
この記事では、アルキルアルミニウム等の屋内貯蔵所に求められる特例基準と、他の危険物には使える緩和が使えない理由を解説します。
うちの倉庫、アルキルアルミニウムを扱う設備を屋内貯蔵所として計画しているんですが、普通の屋内貯蔵所と同じ基準で大丈夫ですか。
アルキルアルミニウム等は空気や水に触れると危険な反応を起こすため、通常の基準に加えて専用の特例基準を満たす必要があります。
知りませんでした。
何がそんなに違うんでしょうか。
漏えい対策の設備と、他の建築物と同居できない制約の2つが柱です。
順番に見ていきましょう。
- アルキルアルミニウム等及びヒドロキシルアミン等を貯蔵する屋内貯蔵所は、通常の屋内貯蔵所の基準に加えて専用の特例基準(危険物の規制に関する規則第十六条の六・第十六条の七)を満たす必要があります
- アルキルアルミニウム等の屋内貯蔵所には、漏えい範囲を局限化する設備と、漏れた危険物を安全な場所に設けられた槽に導入できる設備を設けなければなりません
- 指定数量の倍数にかかわらず、他の建築物に同居する特例(令第十条第三項)は適用されません
- ヒドロキシルアミン等の屋内貯蔵所は、温度の上昇による危険な反応を防止する措置を講ずることが求められます
- 対象となる危険物は規則第十六条の五で定義され、製造所の特例にあるアセトアルデヒド等は屋内貯蔵所の特例には含まれません
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目次
アルキルアルミニウム等の屋内貯蔵所とは何を指すのか

この危険物を屋内貯蔵所で貯蔵・取り扱う場合、政令が定める特例の対象になります。
条文は「基準を超える特例」と書いており、通常の屋内貯蔵所の基準に何かを足す方向の規定です。
指定過酸化物(有機過酸化物のうち一定の性状を持つもの)にも同じ第七項が根拠になりますが、具体的な基準は危険物ごとに別の条文で定められています。
アルキルアルミニウム等とヒドロキシルアミン等については、次の見出しで対象範囲を確認します。
特例って聞くと基準がゆるくなるイメージだったんですが違うんですね。
はい、アルキルアルミニウム等のように危険性が高い物質ほど、基準は厳しくなる方向で特例が使われます。
屋内貯蔵所の特例はどの危険物が対象になるのか

屋内貯蔵所の特例で対象になるのは、2つの物質群です。
製造所の特例(規則第十三条の七)では、この2群に加えてアセトアルデヒド等も総務省令で定める危険物に含まれますが、屋内貯蔵所の特例にアセトアルデヒド等は入りません。
消防法別表第一では、アルキルアルミニウムは第三類の危険物のうち自然発火性物質及び禁水性物質に区分されています。
施設の種類によって対象となる危険物の範囲が変わる点は、見落としやすいところです。
製造所では対象なのに屋内貯蔵所では対象外になる危険物があるんですか。
そのとおりです。
アセトアルデヒド等は屋内貯蔵所の特例には含まれないので、施設ごとに根拠条文を確認する必要があります。
屋内貯蔵所にどんな設備を追加しなければならないのか

アルキルアルミニウム等を貯蔵する屋内貯蔵所には、通常の屋内貯蔵所には無い設備が2つ加わります。
まず漏えい範囲を局限化する設備で、漏れた危険物がその場にとどまり広がらないようにします。
次に、局限化した危険物を安全な場所に設けられた槽へ導く設備をあわせて設けます。
条文はこの2つの設備の具体的な工法までは定めていないため、実際の設計は所轄消防署の審査基準に沿って確認することになります。
漏えい範囲を局限化する設備というのは、具体的にどんな形のものなんでしょうか。
条文には工法の指定までは無く、傾斜や堰などを組み合わせた設計例が一般的です。
詳しい仕様は所轄消防署に確認するのが確実です。
なぜ他の建築物と同居する特例が使えないのか

アルキルアルミニウム等の屋内貯蔵所では、この選択肢そのものが閉じられています。
令第十条第三項は、指定数量の倍数が20以下の屋内貯蔵所を他の建築物の一部に設けられる特例です。
通常の危険物ならこの特例を使って建物内に間借りできますが、アルキルアルミニウム等はこの規定が適用されないため、量にかかわらず使えません。
あわせて令第十条第四項(指定数量の倍数が50以下の屋内貯蔵所に総務省令で基準の特例を定められる授権規定)も適用されず、必ず独立した専用の建築物として計画することになります。
うちは量が少ないので、他の倉庫と同じ建物にまとめられないかと考えていました。
アルキルアルミニウム等はどれだけ量が少なくても、他の建築物との同居は認められません。
独立した建物での計画が前提になります。
明日からなにを確認すればよいのか

最後に、明日からできる確認をまとめます。
まず、貯蔵している危険物がアルキルアルミニウム等またはヒドロキシルアミン等に当たるかどうかを安全データシートで確認します。
次に、漏えい局限化設備と安全な場所の槽が図面どおりに機能する状態か点検します。
最後に、建物が独立した専用の建築物のままか、増築等で他の建物と接続していないかを確認しておくと安心です。
わかりました。
まずは安全データシートで対象物質かどうかを確認してみます。
それが一番確実な第一歩です。
気になる点があれば、いつでもご相談ください。
よくある質問
まとめ
アルキルアルミニウム等の同居できないという制約、盲点でした!
設計段階での見落としが多い箇所です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法第十一条第一項・第五項
- 危険物の規制に関する政令第十条第七項
- 危険物の規制に関する規則第十六条の五
- 危険物の規制に関する規則第十六条の六第一項・第二項・第三項
- 危険物の規制に関する規則第十六条の七
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





