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指定過酸化物の屋内貯蔵所はなぜ隔壁で細かく区画されるのか|150平方メートルごとの防爆構造と保安距離の強化を解説

指定過酸化物の屋内貯蔵所はなぜ隔壁で細かく区画されるのかを解説する記事のアイキャッチ画像、危険物倉庫の隔壁の突き出し構造を点検する担当者の写真

屋内貯蔵所で有機過酸化物を扱う場合、通常の屋内貯蔵所と同じ感覚で設計すると許可が下りないことがあります。
自己反応性の強い一部の有機過酸化物は消防法令上「指定過酸化物」と呼ばれ、専用の特例基準が定められているためです。
基準の中身を知らないまま図面を引くと、保安距離や倉庫内部の区画をやり直すことになりかねません。
この記事では、指定過酸化物の屋内貯蔵所に求められる特例基準と、実務で見落としやすい落とし穴を解説します。

うちの倉庫、有機過酸化物の製品を保管してるんですけど、普通の屋内貯蔵所と同じ基準で大丈夫ですか。

有機過酸化物のうち一定の性状を持つものは「指定過酸化物」という扱いになり、通常より厳しい特例基準を満たす必要があります。

知りませんでした。
何がそんなに違うんでしょうか。

保安距離・貯蔵倉庫の区画・窓の面積の3つが柱です。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 有機過酸化物のうち第一種自己反応性物質の性状を有するものは、消防法令上「指定過酸化物」として専用の特例基準(危険物の規制に関する規則第十六条の四)を満たす必要があります
  • 指定過酸化物の屋内貯蔵所は、通常の屋内貯蔵所より保安距離と空地の幅が長くなります
  • 貯蔵倉庫は150平方メートル以内ごとに隔壁で完全に区分しなければなりません
  • 隔壁は外壁から1メートル以上、屋根から50センチメートル以上突き出す構造にすることが求められます
  • 出入口には特定防火設備を、窓には高さと面積の両方に制限が課されます

指定過酸化物の倉庫はなぜ隔壁で細かく区画されるかを示す4ステップのインフォグラフィック、容器の性状・保安距離・区画割り・窓と出入口を確認する流れ

指定過酸化物の屋内貯蔵所はなぜ保安距離が長くなるのか

指定過酸化物の屋内貯蔵所の周囲に広い空地と塀を設けたイメージ
有機過酸化物のうち、分解が急激に進みやすい性状を持つものは「指定過酸化物」に当たります。
この危険物を貯蔵する屋内貯蔵所には、通常の屋内貯蔵所より厳しい保安距離が課されます。
危険物の規制に関する規則第十六条の三 令第十条第七項の有機過酸化物及びこれを含有するもののうち総務省令で定める危険物は、第五類の危険物のうち有機過酸化物又はこれを含有するものであつて、第一種自己反応性物質の性状を有するもの(以下「指定過酸化物」という。)とする。
指定過酸化物は自己反応性が強く、急激な分解や発熱を起こす危険があります。
政令第十条第七項は、この危険性に応じて総務省令(危険物の規制に関する規則)で通常基準を超える特例を定めることを認めています。
規則第十六条の四第2項は、屋内貯蔵所の外壁から周辺の建築物までの距離を、指定数量の倍数に応じた表で細かく定めています。
例えば指定数量の倍数が10以下の屋内貯蔵所では、塀や土盛りを設ける場合でも20メートル以上、設けない場合は40メートル以上の距離が必要です。
一般の屋内貯蔵所より距離の水準が引き上げられているのが特徴です。

敷地が狭いと指定過酸化物の屋内貯蔵所は建てられないんですか。

塀や土盛りを設ければ距離を短縮できます。
敷地の形状に合わせた設計は、早めに所轄消防署へ相談すると安心です。

貯蔵倉庫はなぜ隔壁で細かく区画されるのか

貯蔵倉庫の内部を厚い隔壁で複数の区画に仕切ったイメージ
保安距離だけでなく、貯蔵倉庫そのものの内部構造にも特例が課されます。
柱になるのが、隔壁による区画です。
危険物の規制に関する規則第十六条の四第五項第一号 貯蔵倉庫は、150平方メートル以内ごとに隔壁で完全に区分するとともに、当該隔壁は、厚さ30センチメートル以上の鉄筋コンクリート造若しくは鉄骨鉄筋コンクリート造又は厚さ40センチメートル以上の補強コンクリートブロツク造とすること。
区画の目的は、一部で分解反応が起きても被害を広げないことです。
一般の屋内貯蔵所には床面積の広さに応じた区画の義務はありませんが、指定過酸化物ではこの150平方メートルという具体的な面積の上限が定められています。
1棟の貯蔵倉庫が広い場合、隔壁を複数本設けて区画を細かく割ることになります。
隔壁の厚さも鉄筋コンクリート造とコンクリートブロック造で数値が変わるため、施工前に構造の種別を確認しておく必要があります。

倉庫全体が150平方メートル未満なら、隔壁はいらないということですか。

条文上は面積が上限を超えない限り区分の義務は生じません。
ただし面積の測り方は図面ごとに確認したほうが確実です。

隔壁はなぜ外壁や屋根から突き出す構造にするのか

隔壁の端が外壁と屋根から突き出している構造の詳細
隔壁は倉庫の内部にとどまらず、外壁や屋根の外側にまで突き出す形で設けます。
これは条文で明示された寸法です。
危険物の規制に関する規則第十六条の四第五項第一号(続き) かつ、当該貯蔵倉庫の両側に外壁から1メートル以上、上部に屋根から50センチメートル以上突き出したものであること。
隔壁を外壁や屋根から突き出させるのは、区画の外へ火炎や爆風が回り込むのを防ぐためです。
隔壁の面が外壁や屋根の面と完全に一致しているだけでは、隣の区画の外壁沿いや屋根の上を炎が伝って回り込む隙間が残ります。
そこで隔壁の両側を外壁から1メートル、上部を屋根から50センチメートル突き出させることで、隣接区画への延焼経路を物理的に断ち切ります。
図面上は隔壁の厚みだけでなく、この突き出し寸法も別枠で確保しておく必要があります。

屋根から突き出す部分は、屋根の形状にも影響しそうですね。

そのとおりです。
設計段階から屋根の勾配や納まりと合わせて検討しておくと、後戻りが少なくなります。

窓はなぜここまで小さく制限されるのか

小さな高窓を設けた壁面と大きな窓を設けた壁面の対比
貯蔵倉庫の開口部にも、通常より厳しい制限がかかります。
特に窓は、高さと面積の両方が条文で数値化されています。
危険物の規制に関する規則第十六条の四第五項第四号・第五号 四 貯蔵倉庫の出入口には、特定防火設備を設けること。五 貯蔵倉庫の窓は、床面から2メートル以上の高さに設けるとともに、一の面の壁に設ける窓の面積の合計をその面の壁の面積の80分の1以内とし、かつ、一の窓の面積を0.4平方メートル以内とすること。
窓は「無ければよい」のではなく、設けるなら高さと面積の両方を絞り込む設計です。
床面から2メートル以上という高さの制限は、外部からの衝撃や延焼源から窓を遠ざける狙いがあります。
面積の上限も壁面積の80分の1、かつ1つの窓で0.4平方メートル以内という二段階の制限があり、単に小さい窓を1つ設ければよいわけではありません。
出入口についても、随時開けられる自動閉鎖の特定防火設備という条件が付きます。
採光目的で大きな窓を計画すると、この基準に抵触することがあります。

採光のために窓を大きくしたいという要望が現場からよく出るんですが、難しそうですね。

採光は照明設備で補う設計が一般的です。
窓を増やすより先に、面積制限の範囲内かどうかを確認してください。

明日からなにを確認すればよいのか

指定過酸化物の屋内貯蔵所を点検する担当者
指定過酸化物の特例基準は、設計時だけでなく日常の維持管理でも意識しておく必要があります。
最後に、明日からできる確認をまとめます。
消防法第十一条第五項 市町村長等は、製造所、貯蔵所又は取扱所における危険物の貯蔵又は取扱いが技術上の基準に違反していると認めるときは、(略)当該製造所、貯蔵所又は取扱所の所有者、管理者又は占有者で権原を有するものに対し、当該貯蔵所又は取扱所の使用を一時停止すべき旨を命じ、又はその使用を制限することができる
基準に適合しない状態が見つかれば、使用の停止や制限を命じられる可能性があります。
まず、貯蔵している危険物が指定過酸化物に当たるかどうかを、性状試験の結果や安全データシートで確認します。
次に、貯蔵倉庫の隔壁や窓が図面どおりの寸法・面積を保っているかを点検します。
在庫の増加で貯蔵区画をまたいで積み上げていないかも、あわせて確認しておきたいところです。
最後に、設置時の許可図面が手元に残っているかを確認しておくと、増設や改造の際にもスムーズです。

分かりました。
まずは在庫が区画をまたいでいないか確認してみます。

それが一番確実な第一歩です。
気になる点があれば、いつでもご相談ください。

よくある質問

Q指定過酸化物を貯蔵する屋内貯蔵所は、一般の屋内貯蔵所とは別に許可が必要ですか?
A別枠の許可ではなく、屋内貯蔵所の設置許可・変更許可の審査の中で、指定過酸化物特有の特例基準(規則第十六条の四)への適合が確認されます。
Q指定数量の倍数が少なければ、保安距離や空地の基準は緩和されますか?
Aはい。指定数量の倍数が5以下の屋内貯蔵所では、貯蔵倉庫の外壁を厚さ30センチメートル以上の鉄筋コンクリート造等とすることで、周囲の塀・土盛りの設置に代えることができます。
Q隔壁の厚さに指定はありますか?
A鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート造なら厚さ30センチメートル以上、補強コンクリートブロック造なら厚さ40センチメートル以上と定められています。
Q貯蔵倉庫に窓を全く設けなければ面積の基準は関係ありませんか?
A窓を設けない設計自体は可能ですが、その場合は採光・換気の設備を別途確保する必要があります。窓を設けるなら、高さと面積の上限の両方を満たさなければなりません。

まとめ

有機過酸化物のうち第一種自己反応性物質の性状を有するものは「指定過酸化物」と呼ばれます
根拠は政令第十条第七項と規則第十六条の三・第十六条の四です
指定過酸化物の屋内貯蔵所は保安距離と空地の幅が長くなります
貯蔵倉庫は150平方メートル以内ごとに隔壁で完全に区分すること が基準の1つです
隔壁は外壁から1メートル以上・屋根から50センチメートル以上突き出す構造にすることも基準の1つです
出入口には特定防火設備を、窓には高さと面積の両方の制限が課されます
日常点検で在庫の区画割り・隔壁・窓の3点を確認しておくと見落としを防げます

指定過酸化物の隔壁の突き出し寸法、図面を見ても気付けなさそうな細かさですね。

設計段階での見落としが多い箇所です。
㈱防災屋でもご相談を承っております

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法第十一条第一項・第五項
  • 危険物の規制に関する政令第十条第七項
  • 危険物の規制に関する規則第十六条の三
  • 危険物の規制に関する規則第十六条の四第二項・第五項

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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