屋内消火栓設備の水を送り出す加圧送水装置には、高架水槽・圧力水槽・ポンプの3方式があります。
このうち圧力水槽方式は、水槽にためた水と圧縮した気体の圧力で送水するしくみで、水槽の水量にも決まりがあります。
ところが、この水量の決まりを守らなくてよい圧力水槽があります。
この記事では、水量の規定が要らなくなる条件と、その代わりに何が求められるのかを、平成20年の消防庁通知から読み解きます。
ウチのビル、圧力水槽式の消火栓なんですけど、水量の規定を守ってなくても大丈夫らしいんです。
それはガスボンベで圧力をかけるタイプですね。
水量ではなく別の基準が適用されます。
え、水量を測らなくていいってことですか。
じゃあ何を見ればいいんですか。
ガスの充てん量です。
今日はこの特例の中身を一緒に確認しましょう。
- 屋内消火栓の圧力水槽方式は、加圧用ガス容器(ガスボンベ)で圧力をかけるものに限り水量の規定が適用されません
- 免除されるのは水槽の水量の1項目だけで、圧力の計算式と付属機器の規定はそのまま適用されます
- 交換条件として、必要な圧力を得るのに十分な量のガスを容器に充てんしておくことが告示で求められます
- 同じ改正でインバータ方式の制御盤にも機能に支障を生じさせない基準が整備されました
- 現場ではまず、自分の建物の圧力水槽が空気圧縮式かガスボンベ式かを見分けることが実務の出発点になります
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目次
屋内消火栓の圧力水槽はなぜガスボンベ式に特例が認められたのか

この水槽の圧力をどこから得るかによって、扱いが変わります。
(ロ)圧力水槽の水量は、当該圧力水槽の体積の三分の二以下であること。
通常の圧力水槽は、水槽の中に閉じ込めた空気の圧縮エネルギーで送水するため、圧力を保つには水槽の体積の3分の2以下という水量の下限が定められています。
これに対して加圧用ガス容器(ガスボンベ)で外部から圧力を送り込む方式は、圧力の供給源が水槽の外にあるため、水槽側の水量で圧力を保つ必要がありません。
この整理を明確化したのが平成20年12月26日の消防予第344号です。
ただし免除されるのは水量の規定だけで、圧力の計算式や付属機器の規定は引き続き適用されます。
うちの消火栓、圧力水槽って書いてあるけど、水量は見なくていいってことですか。
はい、ただしそれはガスボンベ式の場合だけです。
詳しく見ていきましょう。
どの圧力水槽が対象になるのか

免除の対象になるかどうかは、圧力の供給源で決まります。
告示は圧力水槽の加圧用の気体として圧縮空気や窒素ガスを挙げていますが、このうち水量の規定が適用除外になるのは、ボンベ(容器)の作動によって圧力を得るものに限られます。
水槽に取り付けたコンプレッサーで空気を圧縮するだけの方式は対象外で、これまでどおり水槽の体積の3分の2以下という水量の下限を守らなければなりません。
見分け方は単純で、水槽のそばにガスボンベがあるかどうかを確認すればわかります。
点検報告書や仕様書に「加圧用ガス容器」の記載があれば、免除の対象になっている可能性が高いといえます。
水槽の横に大きいボンベが立ってるんですけど、あれのことですか。
それです。
コンプレッサーだけの水槽とは、そこが違います。
免除される規定と代わりに求められる規定は何か

その代わりに、告示側で新しい要件が課されます。
イ 電動機の回転速度を切り替える際に、電動機の運転及び接続されている発電機その他の設備の機能に支障を生じないよう措置されていること。
規則第12条第1項第7号ロの(イ)圧力の計算式と(ハ)圧力計・水位計・排水管・補給水管・給気管・マンホールの設置は、ガスボンベ式でも引き続き適用されます。
そのうえで告示は、十分な量のガスをボンベに充てんしておくことという交換条件を新たに定めています。
同じ改正では、ポンプの回転速度を切り替えるインバータ方式の制御盤についても、切り替え時に機能へ支障が出ないようにする基準が整備されました。
水量という目に見える数字から、ガスの残量という別の管理項目に置き換わったと考えるとわかりやすいでしょう。
水量を測らなくていい代わりに、ガスの量を見るってことですね。
そのとおりです。
ゲージや付属機器の規定は、今までどおり残ります。
実務で見落としやすいのはどこか

現場で実際に起きやすい取り違えを挙げます。
「圧力水槽イコール水量を確認する設備」という通常の圧力水槽のイメージで覚えていると、ガスボンベ式でも同じ感覚で水量だけを確認して満足してしまいがちです。
ガスボンベ式で本当に見るべきなのはガスの充てん量(圧力計の指示)で、これが不足していると、いざというときに必要な送水圧力を確保できません。
また、インバータ方式の制御盤を採用している設備は、回転速度の切り替え時に異常が出ていないかも点検項目に含める必要があり、ここが漏れやすい落とし穴です。
水槽の水量だけを確認して安心するのではなく、圧力水槽の付属機器とガスボンベの両方を点検の対象として意識することが必要です。
じゃあ点検のときは、業者さんに何を見てもらえばいいんですか。
ガスの充てん量と、制御盤の切り替え動作の2つです。
ここを忘れずに伝えてください。
明日から何を確認すればよいのか

自分の建物にあてはまるかどうかを順番に見ていきましょう。
消防用設備等の点検報告書や竣工図には、加圧送水装置の方式(高架水槽・圧力水槽・ポンプ)が記載されています。
圧力水槽方式であれば、次にガスボンベの有無を見て、ガスボンベ式かコンプレッサー式かを見分けます。
ガスボンベ式であれば、点検のたびにガスの充てん量を確認してもらい、インバータ制御盤があれば切り替え時の動作もあわせて確認します。
この3つを押さえておけば、水量の数字が無いことに戸惑わずに済みます。
うちの設備がどっちなのか、まず竣工図を見てみます。
それが一番確実です。
わからなければ、点検業者さんに聞いてみてください。
よくある質問
まとめ
疑問がすっきりしました!
竣工図を確認してみます!
水量ではなくガスの管理を意識してくださいね。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行規則第12条第1項第7号ロ(昭和36年自治省令第6号)
- 加圧送水装置の基準(平成9年6月30日消防庁告示第8号)第二・第四・第六
- 消防法施行規則等の一部を改正する省令等の公布について(通知)(平成20年12月26日消防予第344号 消防庁予防課長)
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





