同じ病院なのに、敷地の中で建物ごとに消防設備の扱いが違うと聞いて戸惑ったことはありませんか。
本館のほかに外来棟や別館があるとき、消防法上の区分や職員数の数え方は1つにまとまるとは限りません。
とくに「職員の数」の算定は、棟をまたいで合算できるかどうかで結果が大きく変わります。
条文と消防庁の通知をたどると、複数棟の病院ならではの取り扱いと、見落としやすい例外の条件が見えてきます。
うちの病院は本館のほかに外来棟が別の建物になっています。
これも同じ病院として扱われるんでしょうか。
建物が分かれていると、棟ごとに扱いが変わることがあります。
とくに外来棟と職員数の数え方は要注意です。
職員数の数え方まで消防法令に関係するんですか。
病床数に対する職員配置の基準に直結します。
順番に確認していきましょう。
- 同一敷地に複数の棟がある病院は、消防用設備等の扱いが棟ごとに変わることがあります
- 病床を持たない外来棟は、消防法施行令第32条の適用で(6)項イ(4)に準じた扱いにできます
- 規則第5条第3項の「職員の数」は、原則として棟単位で算定します
- 異なる棟の職員を含められるのは、自動火災報知設備の移報など迅速な対応体制がある場合に限られます
- 区分や算定に迷ったら、着手前に所轄消防署へ確認しておく必要があります
▼

目次
同一敷地に複数の棟がある病院は消防法上どう扱われるのか

建物が分かれていても、消防法上は必ずしも1つの防火対象物として一律に扱われるわけではありません。
病院は(6)項イの中でさらに(1)から(4)まで区分され、区分によって設置しなければならない消防用設備等の範囲が変わります。
建物が複数棟に分かれている病院では、棟ごとの実情を踏まえてこの令32条が使われる場面があります。
代表的なのが、病床を持たない棟をどう扱うかという論点です。
建物が分かれているだけで、そんなに扱いが変わるものなんですね。
はい。
まずは病床の有無で変わる代表例を見てみましょう。
病床のない外来棟はどんなときに区分が変わるのか

この場合の扱いについて、消防庁が実際の質疑応答で答えを示しています。
(答)差し支えない。(「消防用設備等に係る執務資料の送付について」平成28年3月31日消防予第100号)
(6)項イ(4)は入院施設のない診療所や助産所と同じ区分で、(1)から(3)に比べて設備の基準が軽くなります。
本館が(1)に当たる重い区分だからといって、病床のない別棟まで一律に(1)扱いになるわけではありません。
ただしこれは自動的に決まるものではなく、所轄消防署が令32条を適用して初めて認められる取り扱いです。
外来棟は届け出るだけで自動的に軽い基準になるんでしょうか。
いいえ、所轄消防署の判断が前提です。
建物の実情を伝えて確認する必要があります。
職員の数はどの単位で数えるのか

この「職員の数」を、複数棟の病院ではどう数えるのかが問題になります。
一 勤務させる医師、看護師、事務職員その他の職員の数が、病床数が26床以下のときは2、26床を超えるときは2に13床までを増すごとに1を加えた数を常時下回らない体制
二 勤務させる医師、看護師、事務職員その他の職員(宿直勤務を行わせる者を除く。)の数が、病床数が60床以下のときは2、60床を超えるときは2に60床までを増すごとに2を加えた数を常時下回らない体制
(「職員の数」とは、一日の中で最も職員が少ない時間帯に勤務している職員の総数を基準とするものであり、職員の数は原則として棟単位で算定を行うこと。平成27年3月27日消防予第130号)
宿直を含めた総数と、宿直を除いた人数の両方の基準を、常時下回らない体制になっているかを確認します。
病床数が増えるほど必要人数も段階的に増える仕組みで、13床や60床が増員の節目です。
複数の棟がある病院では、この「棟単位」という前提が次の見落としにつながりやすいところです。
うちは本館と病棟が別の建物になっています。
両方の職員を合わせて数えていいんでしょうか。
そこは原則できません。
次の章で例外の条件を確認しましょう。
異なる棟の職員を算定に含められる例外はあるのか

ここを知らずに他の棟の職員をそのまま合算してしまうと、実態と違う体制で判断してしまいます。
(答)認められない。
ただし、「職員の数」の算定を行う棟の患者の看護等を異なる棟に勤務する職員が担当している場合で、火災発生時に当該異なる棟に自動火災報知設備の火災信号を移報することにより、当該職員が迅速に駆けつけ、初期消火や避難誘導等を実施できる体制が確保されている等、適切な対応ができると認められる場合は、この限りでない。(平成28年3月31日消防予第100号)
含められるのは、自動火災報知設備の火災信号をその棟へ移報する仕組みがあり、担当職員が迅速に初期消火や避難誘導を行える体制が確保されている場合に限られます。
「近くにいるから」「連絡すれば来られるから」といった運用だけでは、この例外には当たりません。
移報の設備と実際の対応体制の両方がそろって初めて、棟をまたいだ算定が認められる余地が出てきます。
移報さえしておけば、それだけで合算できるということですか。
設備だけでなく実際に駆けつけて対応できる体制まで必要です。
両方をセットで確認してください。
明日からなにを確認すればよいのか

建物の配置と職員の勤務体制を、あらためて棚卸ししてみてください。
まず敷地内の建物が何棟に分かれ、それぞれどの用途に使われているかを図で整理します。
次に各棟の病床の有無を確認し、外来棟のように病床がない棟があれば区分の見直しを検討します。
最後に、最も手薄な時間帯の職員数を棟ごとに数え、他の棟の応援を前提にしていないかを点検します。
移報による例外を使いたい場合は、設備面と運用面の両方が整っているかを所轄消防署に相談するのが確実です。
まずはうちの敷地図から棟の配置を見直してみます。
建物の配置・病床・職員体制の3点を押さえれば見通しが立ちます。
迷ったら早めに確認しておくと安心です。
よくある質問
まとめ
外来棟の扱いと職員数の数え方、どちらもよく分かりました。
まずは敷地図と勤務表を見直してみます。
棟の配置と職員体制を整理すれば、区分の見通しが立ちます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令第32条
- 消防法施行令別表第一(6)項イ
- 消防法施行規則第5条第3項
- 「消防法施行令の一部を改正する政令等の運用について」(平成27年3月27日消防予第130号)
- 「消防用設備等に係る執務資料の送付について」(平成28年3月31日消防予第100号)
- e-Gov 法令検索
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





