地下街の中に、小さなクリニックや介護施設のようなブースが入っていることがあります。
そうしたテナントは、隣の一般店舗と同じ物差しで面積を見てよいのでしょうか。
実は消防法施行令には、地下街全体の面積を一切問わない特別な号があります。
この記事では消防法施行令第12条第1項第9号が定める用途連動の基準を、条文だけで確かめます。
地下街の中に小さなクリニックが入っているテナントがあるんですが、これも普通の店舗と同じ扱いでいいんでしょうか。
いいえ。
地下街の中の病院や老人ホームのような部分には、別の号が適用されます。
面積が小さくても対象になることがあるということですか。
そのとおりです。
まずは条文がどう区別しているかから見ていきましょう。
- 消防法施行令第12条第1項第9号は、地下街の中の病院や老人ホームなどの部分に、面積を問わずスプリンクラー設置義務を課す号です
- 対象になるのは、別表第一(六)項イ(1)(2)又はロに掲げる病院・診療所・老人ホームなどの用途に供される部分です
- 同じ地下街でも、一般のテナント部分は延べ面積1,000平方メートル以上で判断する第6号とは別の基準です
- 延焼を抑制する機能を備える構造として総務省令で定める構造を有するものは適用から除かれます
- 除外の要件は施行規則第12条の2が細かく定めており、単なる耐火建築物というだけでは足りません

目次
地下街の中に病院や老人ホームがあるとなぜ扱いが変わるのか

ところが地下街の中に限っては、部分ごとに違う号が適用される場合があります。
別表第一(十六の二)項とは地下街そのものを指す項です。
地下街全体の面積で判断する号とは別に、用途で区切って適用される号がここに置かれています。
対象になるのは同表(六)項イ(1)(2)又はロに掲げる、病院や老人ホームなどの用途に供される部分です。
まずはこの部分がどんな施設を指すのかを具体的に見ていきます。
地下街の中に病院が入っているビルなんて、あまり意識したことがなかったです。
実際に駅の地下街などにクリニックが入っている例は少なくありません。
次はどんな施設が対象になるのかを確認しましょう。
どんな病院や老人ホームがこの号の対象になるのか

どんな施設が当てはまるのかは、引用先の項目で決まっています。
イ(1)(2)は、特定診療科目があり入院施設を持つ病院・診療所を指します。
ロは、避難が困難な要介護者を主として入居させる老人ホームなどを指します。
外来だけのクリニックや、要介護度の低い方向けの通所施設は、この号がそのまま対象にする区分とは異なります。
自施設がどちらの区分に当てはまるかを、まず名称ではなく実態で確認することが出発点になります。
うちのテナントは入院設備のある内科クリニックなんですが、これはまさに対象になりそうですね。
入院施設の有無が大きな分かれ目です。
次は、地下街の他の部分の基準との違いを見ていきましょう。
地下街の他の部分の基準とは何が違うのか

第9号は、その基準とはしくみが根本的に違います。
これに対して第9号は、地下街全体の面積とは無関係に、病院や老人ホームの用途に供される部分だけを取り出して判断します。
たとえ地下街全体が1,000平方メートル未満で第6号の対象にならなくても、病院や老人ホームの部分があれば第9号は別に適用されます。
逆に、同じ広さの一般店舗のブースだけを見れば、その部分単独ではスプリンクラーが不要な場合もあります。
地下街全体で見るか、用途部分だけで見るかという視点の違いが、この2つの号を分けています。
地下街全体の広さだけ見ていたら、うちのテナントの扱いを見落とすところでした。
用途ごとに別枠で判断されるケースがある、という点が重要です。
次は、除外される場合の条件を見ていきましょう。
延焼を抑制する構造があればなぜ除外されないことがあるのか

ただしこの除外は、思っているより要件が細かく決まっています。
基準面積が1,000平方メートル未満か以上かによって、準耐火構造でよいか耐火構造まで必要かが変わります。
区画する壁や床の開口部の面積にも上限があり、その開口部には自動閉鎖装置付きの防火戸が必要です。
「壁で仕切ってあるから大丈夫」という自己判断では、この要件を満たしているとは限りません。
除外を主張するのであれば、施行規則第12条の2の各号を1つずつ照らし合わせる必要があります。
壁で区切ってあれば大丈夫だと思っていましたが、そんなに単純ではないんですね。
開口部の面積や防火戸の仕様まで細かく決まっています。
最後に、明日からの確認手順をお伝えします。
明日からなにを確認すればよいのか

まず用途を確認し、次に区画の状況を確認するのが正しい順番です。
- 自施設が入院施設を持つ病院・診療所か、避難が困難な要介護者向けの老人ホーム等に当てはまるかを確認する
- 該当する場合、地下街全体の延べ面積にかかわらず第9号の対象になることを前提に検討する
- 除外を検討する場合は施行規則第12条の2の区画・防火戸・開口部の要件を1つずつ照合する
- 判断に迷う場合は自己判断で結論を出さず、所轄消防署に相談する
うちも入院設備の有無から確認してみます。
それが一番確実な第一歩です。
不安な点があればいつでもご相談ください。
よくある質問
まとめ
面積だけを見ていたら判断を誤るところでした。
用途から確認する視点が持てて助かります!
用途と区画の両方の確認が欠かせません。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令第12条第1項第6号・第9号・第2項第1号(スプリンクラー設備を設置する防火対象物)
- 消防法施行令別表第一(六)項・(十六の二)項(病院・老人ホーム等の用途区分と地下街)
- 消防法施行規則第12条の2(スプリンクラー設備を設置することを要しない構造)
- e-Gov法令検索(デジタル庁)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





